《と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について》146話目 終わり!閉廷!以上!皆解散!君もう帰っていいよ
「まさか、あのお方は遙か昔にこの地をさった王の末裔――」
「我は信じぬぞ。そのようなお方が蟲と共に生きるなど――」
ざわざわ、喧々囂々けんけんごうごうとやかましい會話から要所要所を拾い上げて何を話しているのかを推測する。あっちこっちで似たような會話が起こり、それらを総括するとどうやら犬ドラ助がドラゴンの言い伝えにある王の子孫、末裔、先祖返り、生き殘りなどといった特別な存在であるようだ。合いとか鱗の形とかが、どうにも彼らとは全く違うようで誰がどう見ても伝説と一致しているようである。俺からすればコイツらとドラ助の違いが全く分からないが、日本人から見れば白人は全員白人で、黒人は全員黒人にしか見えないようなものだろう。あっちからすればアジア人はアジア人で一くくりにしか見えずとも、こっちからからすれば違いはハッキリと分かるといった合か。
魔法で映している場面が単にドラ助がシャル達と一緒にいる風景から、お腹を丸出しにしてわしゃわしゃと二人掛かりででられているものに変わる。それを見たドラゴン達は顎が外れんばかりに口をあんぐりと開け、今目に映るものが信じられずにいることが丸わかりだ。尚、俺もアホドラ助が希種と聞いて信じられずにいる。いや、だって今まさに腹どころかバカ丸出しでキャッキャキャッキャと遊ばれている犬ドラ助が歴史的大発見的な存在とか思い至る訳がない。口々に『まさか』だの『噓だ』などと言っているが、それはこっちの臺詞である。
全く以ってして信じられないが、期せずしてチャンスを得たと言っても良いはずだ。プライドの高いドラゴン共に、伝説の王の子孫というブランドは効果覿面だろう。俺はもったいぶるように咳ばらいをして、先程のドラゴンに再度話しかけた。
「あー、それでだ、あの・・ドラゴンが一緒に暮らしてるやつでな、し前から飛べなくなって困ってるんだよ」
話しかけられて我に返った様子でこちらを振り向くが、やはり気になるのかドラ助の方をチラチラと見ている。ちなみに今駄犬ドラ助はテンションがマックスになって激しくジタバタしている。尾もブンブンと振って大興だ。
「…………我らが空を飛べぬようになるなど、聞いたことが無い。あのお方が飛べぬようになった理由は分からぬ」
數度、口を開けては閉めて迷ったそぶりを見せた後、悔しそうにそう述べた。非常に悔しそうなので恐らく噓ではない。魔法で判定するまでもない。とはいえ、齎された報が良かったとも言えない。一縷のみをかけてようやく見つけたにもかかわらず、そのあては外れてしまったという訳だ。
最早拘束する意味もないと思い彼らに掛けていた魔法を解除して自由にする。『はぁぁぁぁ』と深いため息が自然と出てきた。やっべー、マジでどうしよう。何でも治せる超萬能薬とか作っても駄目だったのに、完全ノーヒントで治療できる気がしない。
「心當たりと言えぬことも無いが…………、我らはき頃は上手く空を飛べぬ」
自由になったドラゴン達がどっかに逃げるか襲い掛かるかしてくると思っていたが、意外にもこちらをじぃっと見ていた『悔しいドラゴン』がそう語った。
「それは、何でだ? 翼のかし方が分からないからか?」
「いや、翼ではない。力の使い方が分からぬのだ」
力、という単語が何を指すのかよく分からなかったので々質問をしたところ、協力的になった彼は律儀に答えてくれた。その結果、力とは自分のの中のエネルギー的な何かであり、使えば減り、休めば回復する。空を飛ぶためだけでなくブレスを吐くのにも使っており、大人になるまでにそれの使い方を習得するらしい。
「力は使い過ぎればそのを滅ぼす。特にき頃はその加減が分からぬ者が多い。時を掛けてその使い方を覚えていくのだ」
ここまで聞いた俺はピーンと閃き、今はフリスビーで遊んでいるドラ助の魔力を探ってみた。するとどうだろうか、前はどれくらいだったか的には憶えていないが、一目で分かる程異常なまでにその魔力は膨らみに膨らんでいた。
どーしてこんな不調が……、あー、あれか、この間リーディアの剣をバリボリと食ってたもんな。消化してに取り込むまでに數日くらいかかったってことか。てっきり翼に異常が出たのか、翼が上手く使えなくなったもんだと思っていたけど、そうか、お前って魔法で空飛んでたのか。そりゃリハビリとかしても無意味だわな。
魔力って多すぎると上手く扱えないもんね、うん、分かるよ、小さい頃にシャルが一度暴走しかけてたもんね、難しいよね。ドラ助のから、過去にシャルにしたように、いらない魔力を取り除く。するとどうでしょう、ドラ助は何かに気付いたようにハッとしたかと思うとその翼を羽ばたかせ、ふわりと宙に浮かび自由に飛び始めたではありませんか。
「やったー! ドラ助が飛べるようになったー! おめでとうドラ助ー!」
無邪気なシャルの聲に応えるかのように、ドラ助はフリスビーを咥えたまま縦橫無盡に飛び回り全で歓喜を表している。
………………。
おもむろに、魔法を発する。二つの空間を繋ぐ魔法だ。今、俺の目の空間とドラ助のケツのあたりが繋がった。
こうね、右手を振り上げてだね。
「自業自得じゃねーかボケがああああああ!!!」
「ギュオアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
スッパーン、と景気の良い音と二つのびが空に響き渡った。
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