《金髪、青目の人エルフに転生!》第百話 勇者の魔法
「ソフィア! レオンが、怪我して……」
「なっ?! レオンが?! わ、分かった。すぐ行く」
私はたくさん作ってあったジュースを飲んでから、泣きそうな顔をしたルアンナについて行く。
「ソフィア! ごめんなさい、ごめんなさい……」
「気にしないで。それより、大丈夫?」
「うん……。でも、僕のせいで、ソフィア……」
レオンは悲しそうな顔をして俯いた。気にしなくて良いのに。
怪我と言うのは、右手にある大きな傷のことだろう。切り口から考えると……。剣か。
「何があったの? 治癒師は?」
「実は……。東側で、大きな決戦が始まっちゃったんだ。そっちに行っちゃって」
「ルアンナ……、何て言った?」
「東側で、決戦をやっている。お願い、ソフィアも早く行って!」
私はレオンの治癒を一瞬で済ませ、勢いよく立ちあがる。
「じゃあ、行ってくる。ここはもう平気なんだね?」
「そうだよ。ありがとう。あと、ごめんなさい」
「もう良いんだよ? 無事でよかった」
そう、死なないことが、一番大切。だからこそ……。
東側にいる、みんなが心配だ。
「もう止めてよ! お兄ちゃん!」
「それはだめなんだよ……。ナタリア、ごめん」
「いやあぁぁ! やめてぇぇ!」
ナタリアの泣きぶ聲が聞こえ、私は鼓が速くなっていくのをじる。
人をかき分け、聲の方に向かう。人々は、みな、驚いた表で固まっている。
人の向こう側についた私は、その理由をすぐに理解した。
だらけで、ボロボロのニコライが、なぜか剣を持っている。
その後ろで、左足に包帯を巻かれたナタリアが座っている。座っていたい、というわけではなくて、立てない、と言うのがが正しいだろう。
その前には……。黒髪、グレーので、メイド服を著ているダークエルフ。
「逝かないで! 離れないって、言ったじゃん!」
「大丈夫だから……。大丈夫だから、ね……」
それだけでは、なかった。
桃の短い髪をしたエルフが、剣を持ったまま、倒れている。
重そうな黃い鎧を著たエルフが、破壊された盾を持って、倒れている。
紫のローブを著た、ベージュの髪のエルフが、倒れている。
明らかに、クララ、ヴェリ、アラーナだ。
「ここまで來て……。このまま帰れないでしょ?」
「でも、スカーレットも、インディゴも……。もう、やだ……」
「二人は、頑張ったよ。彼は、それほどの、化けものさ」
このまま、黙って聞いている事はできそうにない。私は二人の前に飛び出した。
「なにが、あったの?!」
「ソフィア……。うぅ、來てくれたんだぁ!」
ナタリアは喋れそうにないので、ニコライに何があったのかを聞く事にする。
「なんか、いきなりクララから連絡があって、苦戦してるって。
それで來たら、ヴェリは倒れてるし、アラーナは泣きながらクララに治癒魔法かけ続けてた。クララは、來てくれたんだって、言って、また、ダークエルフに、剣を振り出した。
ごめん……。でも、僕たちじゃ、戦える相手じゃなかったんだよ」
噓だ、噓だ、噓だ……! そんなはず…………。
「いきてるの……?」
私が恐る恐る聞くと、ニコライは、首を橫に振る。
悲しみより、ダークエルフへの憎しみ、怒りが勝った。
「あなた……。良くも私の仲間に、酷い事をしてくれたわね?!」
「あれ? ソフィアはアリシアの擔當じゃなかった? おっかしいなぁ」
ダークエルフは楽しそうに首をかしげる。ニヤッと笑って「あの子、お仕置きだね」と言った。
「あ、やっと見つけた。ソフィア様!」
「ジェイド、下がってなさい」
「ひ、ひぃ! はい!」
私の魔力は、明らかに回復どころか、マックスを超えている。
こいつは、絶対に殺す!
殺意が芽生えた途端、魔力が、増えていった。
「あわわ……。ソフィア……」
「どうしよう……。ソフィアが怒った……」
魔力のが、違う。いつもより、濃い、赤をしている。
絶対に、當たるようにしてあげるよ。け止められるかな。
「全ての神々よ、ここに集いたまえ。我に力を貸したまえ。今、力を解き放ち、我の敵を滅するのだ」
「全ての魔法オール・マジック」
気づけば、勝手に呪文を詠唱していた。本當に、勝手に、だ。
私の魔力は、を変え、虹になり、空間を覆う。私の見える範囲、すべてが、虹になっていた。
「えっ?! きゃああああ!」
「オール・マジック、パワーMAX」
「いやああああああ!」
ダークエルフはぶと、すぅっと溶けるように消え去った。
それが済むと、魔力はふわっと溶けて、景は元通りになる。
「ソフィア! 大丈夫?」
「う、うん……。多分……」
魔法が終わると、私はその場に倒れこんでしまった。すごく、魔力と、力を使う魔法なんだ。
ソニア様は、この魔法を必殺技として使ったって言ってた。多分、普通に使ったら魔力切れで倒れるってことか。
オールマジック、全ての魔法。
自分の見える範囲が、使用範囲。自分に敵意を持つものを、消し去る能力を持つ。
いざ使うと、これは死ぬかもしれないって思うくらい大変だった。
にしても、あんなに急に、使えるようになるものなんだ……。
「ソフィ! 大丈夫?!」
「リリ、リナ、マリ。私は、ね。でも……」
クララが。ヴェリが。アラーナが……。
それを見たエベリナは、目のが変わった。怒りに満ちた、鋭い目。
パッと手で髪を払い、目を一度閉じて、開く。躊躇うことなく、スッと手を天に向けた。
「治癒をつかさどる神よ。ここに降りたまえ。我に力を貸したまえ。今、力を解き放ち、この者たちを癒したまえ」
「蘇生回復リヴァイヴ・ヒール」
辺りに暖かいが降り注ぐ。し緑をしているのは、ララ家のが、緑だから。
ニコライとナタリアの傷も、癒えたようだ。そして……。
「あれ……? どう、なってるの?」
「俺って……。あれ……?」
「なんか、眠っちゃったのかな……」
「みんな!」
目を開き、立ち上がって、ちょっと不思議そうにしている。
「ああ、よかった。みんな、元気そうで……」
「リナ! 大丈夫?」
「うん。でも、ちょっと疲れたかも」
エベリナも、勇者の魔法を……。
リヴァイヴヒール、蘇生回復
自分の目に見える範囲が、使用範囲。自分の仲間を、回復、蘇生できる。
「とりあえず、話したい事もあるけれど、休んでからにしよう」
「そう、だね」
私たちは、すぐに移魔法で家に飛んだ。
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