《金髪、青目の人エルフに転生!》第百十話 新年のご挨拶で
「じゃ、行ってくるからね」
「うん、行ってらっしゃい」
今日は一月一日。元旦だ。
大晦日は楽しいイベントらしいけど、元旦はそうでもないとかで、國に居る必要もなさそうなので、私は実家に帰る事にした。
それに、シナモンの事もあって、お祝いは出來ない。
ああ、多分、ソニア様はわざと元旦を広めなかったんだろう。お年玉、ソニア様じゃ、絶対払う方じゃん。
「お帰り、ソフィア」
「ただいま帰りましたわ、お母様、お父様、ハナ」
「ソフィアお嬢様、ご立派になられて」
私は軽く挨拶をすませると、護衛としてくっついてきたジェイドの事も言っておく。普通にれて貰えた。まあ、そうじゃなかったら困るけどさ。
何を著て行くか迷ったけど、和服を準備して貰えたので、それで來た。當然、桃の。
「ソフィア、紹介するわ。ハナの両親、カレンさんと、レイさんよ」
「初めまして、ですよね」
初めて見た。ハナの両親。って、人間だと思うんだけど、ハナ、何歳だっけ? どう見ても若いカップルとかにしか見えないんだけど。この人たち何歳?
カレンさんは、黒い長い髪で、ポニーテールにしている。目も真っ黒。レイさんも髪も目も真っ黒。この世界では珍しい。
お母さんとお父さんは料理を作ると言ってキッチンへ行った。ハナもそちらの手伝いに。
その間、私たちは、ハナの両親と隣の部屋で話す事になった。
「あの、お二人はもしかして、日本人では?」
「?! どうしてそれを……」
『はじめまして、蒼空です』
「ソラ、さん……?」
日本語も伝わったようだ。やっぱりなぁ……。
この世界で、黒髪黒目なんて滅多にいない。だから、ちょっともしかして、と思っただけだ。
それと、年の事も確認しないとね。ジェイド、ごめん。何を話してるのか理解できないと思う。
「もしかして、こちらに來てから外見が全く変わらない、なんてことはありませんか?」
「えっと、何というか……。髪とかはびるんだけど、老いないって言うか……」
異常。やっぱり、マリンと同じ事を言っている。
マリンも、髪とか爪とかびるのに年取らないみたいだよ、とこの前言っていた。だから、私も子供扱いしてしまうわけだけど。でもさ、髪とか爪とかびるって明らかにおかしいじゃん。どうなってるんだろう。
転生してしまった人は、みんなそうなんだろうか? とすれば、老死はあり得ない事になる。変わってるなぁ。
「名前はそのままなのでしょうね……。もしかして、その時、既にこの子を?」
私はハナを指さして言う。
「ええ……。既に名前は決まっていたわ。でもまさか、生まれてくる子が、こんな……」
「人間の子が、ニンフだとは、驚きですよね」
まあ、大かたトレアのせいだけど。でも言ったって、仕方ないし。
「まさか、ソフィア様が日本人だなんて……。信じられない」
「ま、そうですよね。でも、マリもそうみたいですし」
「マ、マリア様が?!」
うん、マリアは明らかに日本人。時代もおそらく同じだろう。
じゃあ、何十年も前に転生した、この人たちの時代は、どこなのかな?
「何年くらいでしたか? 覚えてます?」
「それは――」
「あ……。同じだ」
まるっきり同じ年ってわけじゃない。でも、殘念ながら私の方が二年先。おかしいでしょ……。
ハナの年齢から考えて、ずっと昔に転生した事になる。それなのに、私の方が、地球の時間からすると、先に転生してる。
やっぱり、マリアの言ってた事、本當だったんだ。その年代の日本で設定されてるってこと……。
「ち、ちなみに、失禮ですが、地方の方は……?」
「ああ、かまわない。――」
「……!」
近い。隣の県、ってじか。うーん、この年代の日本の、地域まで設定されてるか。
ん? 逆に言えば、そのリンクを使えば、その年代の日本に行けるのか?!
それなら、帰ることも可能なんじゃ…………。
「ああ! そうか!」
「うわ?! ソフィア様、いきなりなんです?!」
「あ、ごめん。帰る方法考えてて」
ジェイドが驚いたような聲を出す。私は一応謝ったけれど、頭の中では全く違う事を考えていた。
マリン、もしかしたら、お母さんに、もうすぐ會えるかもしれないよ。
「ソフィアー。料理できたわよ、お二人さんもこちらへ」
「あ、わかりましたわ」
「ソフィア様、行きましょうか」
「にしても、今日來て良かった。ソフィア様にあえて、良かった」
「ふふ、そう言って貰えると嬉しい」
「ソフィア様……。なんか、今日はおかしいです……」
ま、まあ、ジェイドにとってはそうかもね。いきなり変なこと言いだすし、しかも何語か分からない言語使いだすし。ちょっと悪かったかな。
でも、同じ地方出の人だと嬉しいみたいに、地球から、しかも日本人だなんて、嬉しすぎる。それに加え、それが、自分のメイドの親なんだ。
「で、ソフィアは今年、どうするの?」
「気づかれないようにそっと冒険しようかと。秋になったら、魔王に挑みますわ」
「なに?! 聞いてないぞ?!」
あああ! そうだった! さすがに言わないとまずい事じゃん!
ということで、魔王から來た手紙の容を伝える。といっても、すごい短い手紙だから、全部読めばいいんだろうけど。
「へぇ……。大変ね……。じゃあ、その時までに援助の準備を整えておくわ」
「いえ……。兵士は、連れて行きません」
「え? 四人だけで、行くのですか?」
「いいえ。私とリリ、リナ、マリ。それから、ジェイド、あなたも來てくれるよね」
ジェイドは驚いたようだったけど、ちゃんと頷いた。
「兵士なんていりません。私が、必ずお守りしますから」
「うん、そう言ってくれると思ったよ。という事なのです、け取るのは、お心だけ、です」
両親は顔を見合わせてから、そっと微笑む。
「ソフィアらしいわ。ジェイドさん、この子を頼みます」
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