《金髪、青目の人エルフに転生!》第百十七話 再びアリシア

そこに居たのは、綺麗な黒髪のダークエルフだ。

見た事があるな。確か…………。

「アリシア!」

「やあ、君の今の名前はなんて言ったっけ? えっと、ジェイド?」

そう、アリシア。私をったダークエルフだ。おそらくは……。

「ところで、私の妹はどこに居るんだい?」

「アリアンなら、今ここにはいない」

「?! ソフィア様……?! 気が付いて……」

當然じゃないか。この子は、アリアンの姉だ。

名前だけじゃなくて、魔力のちょっとしたじとか、そっくりだった。それに、アリアンも、もとはダークエルフだった。

「あの子は強かったよ。なのに、まさかソフィアちゃんが解いちゃうなんてねー」

「アリシア……。いったいどういう事なの?」

「私は、純粋なエルフとダークエルフのハーフさ。私はダークエルフ、アリアンはエルフとして生まれた。大きくなってから、この子を味方につけたいって思ってさ。ダークエルフにしてみたんだ」

な……?! そんな事が、あり得るの?! ダークエルフと、エルフのハーフ……。

アリシアは、私の顔をさも愉快そうに眺めてから続ける。

「でも、ソフィアちゃんが解いたからさ。アリアンは、『記憶を持ったまま』エルフになった。いや、戻ったんだね。彼だけは、ダークエルフの時の記憶があると思うよ」

「そんなはずは……」

「君みたいな可い無知な子を騙す方法くらい、いくらでもあるさ」

ああ、演技してたってことか。悲しいな、あんなにそばに居たのに気が付けないだなんて。

ジェイドの事を知っているみたいだし、この人って、何者なんだろう。だって、ジェイドは、もう、千年も前に使えてたはず……。

「君もいい加減戻っておいでよ。あのお方も待っているよ」

「嫌です……。だって、ダイアモンド様は……」

「そうだねぇ。でも、子供は居るさ。どうだい?」

「嫌です……」

「君も頑固だなぁ。昔はもっと軽かったと思うけど?」

ジェイドの昔って、どんなじかな? でも、來たばかりは、とっても軽いじに見えた。だったら、違うのかな。

事を冷靜に考える事に欠けていたようなじはあったかも。力づくで悪魔仲間にしてくると事か、特に。あれは驚いたけど。

「完全に『裏』に寢返るってことじゃないですか」

「そうなるね。でもさぁ、君にとっては、悪くないと思うよー?」

「私は、ソフィア様を守ると決めた」

「そうかい。まあ、確かに似てるよねー」

私とジェイドの元主人が、似てる? そんなはずはないと思うけど。

だって、そうだったらここまで格が変わるなんて考えられないでしょ。その主人と會った時に変わると思うんだけど。

でも、ジェイドは否定しない。黙ってアリシアを見つめている。

「まあ、最悪力づくで呼び戻すよ。悪魔の線デヴィルビーム」

「止めろ! チッ……」

ジェイドは羽を広げて軽く地面をけると、自分の周りにバリアを張った。なんて強力な守備魔法……。

線はすべて解けるように消えていった。

「あれ、ずいぶん強くなってるね。君がこの線を防いだとはなかったと思うけど?」

「そりゃあ、人って言うのは、変わっていくものでしょう?」

「考えも、言葉遣いも丁寧になったね。ますます味方にしいよ」

何が起こっているのか分からないけれど、このままではジェイドが連れていかれそうで嫌だ。

でも、さっきまでみんなで練習試合してたし……。ここに居るみんなは、結構力を使いきっちゃってたりする。インディゴとスカーレットの魔法は効かないし……。それ以前に、この2人は明らかに強いアリシアに揺してる。それと話す、ジェイドにも。

「ゆきちゃん、こっち來て」

「にゃーん?」

「危ないから。かないでね?」

私は十分注意してから、魔力を溜め始める。アリシアの興味は、一瞬でジェイドから私に移った。

すべての魔法オール・マジックを、弱めに。消すほどは使えないから、ダメージを與えられればいい方だろう。

「全ての神々よ、ここに集いたまえ。我に力を貸したまえ。今、力を解き放ち、我の敵を滅するのだ」

「全ての魔法オール・マジック」

アリシアはニヤッと笑ってそれを見ていた。

「なるほど。あの忌々しいボスを倒したのは、この魔法ってわけね」

アリシアは笑ったまま手を前に差し出す。線ビームに設定したすべての魔法オール・マジックがその手にれたとき……。

バチッと火花が散って、線は跡形もなく消え去った。

「な……、あ……」

「ほら、こんな魔法が効くとでも思ってたの?」

「そ、ソフィア……」

どうしよう……。みんなを守りたいのに。このまま負けるなんて、出來ないのに……。

『私たちが何とかしてあげる』

『私たちに、任せて』

「! そう、だね。みんな、手伝って!」

ぴかっとって、大量のスライムが出現した。リーダーのみんなが唖然とした様子でそれを眺めている。

『……なんで?』

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「私たちが、倒してあげる」

「エリシュカ、ヤルシュカ。よろしくね」

それを見たアリシアは、初めて目を見開いて焦ったような聲を出す。

「ちょ、ちょっと! こんなの反則-! ズルすぎるって!」

「問答無用!」

エリシュカとヤルシュカは、大量のスライムをアリシアに飛びかからせた。

「こ、こんなの無理! 退卻ー!」

「あ、ちょっと!」

「仕方ないよね」

「もう終わり」

アリシアが逃げていくのを、2人はそのまま眺めていた。これ以上はどうしようもないってことなんだろう。

すると、スライム達も襲い掛かるのは止めた。と同時にアリシアは移魔法で消えていった。

「そ、ソフィア、いつの間にスライムを……?」

「この前、冒険した時なんだ」

「お姉ちゃん、海から來たの」

「流れ著いてた」

みんなは何が起こっているのか分からないようだったけれど、聲をそろえて呟いた。

『なんて、危ないことしてるの(ですか)、ソフィア(様)』

「ご、ごめんなさーい」

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