《金髪、青目の人エルフに転生!》第百三十二話 トレア、ありがとう

「実は、私、普通の魔法が一切使えなくて……」

「……?!」

どうやら、ダイアナは使役しかできないとか。それ以外は封印されちゃってる。

つまり、解けば平気なんだろうけど、解けないから使えないってことか。

封印が溶けるのは勇者が死んだ時。それまでは、配下が戦えばいいから、戦う必要ないし。

配下も、魔族が世界を支配するのが目的だから、何が何でも従うだろう。

魔族の格上、それは絶対だ。戦いが好きで、常に自分が一番で居たいから。

で、勇者が死んで、魔王が世界を支配したら。全員の目が自分に向く。

下剋上も心配しないといけないし、そうなると、ある程度は魔法が使えないといけないんだろう。

まあ、普通に勇者を倒して、という流れなら、この縛りは何の問題も無い。けど、この場合、問題しかないわけで。

「どうしよう。せっかく考えてくれたのに、ごめん」

「いや、いいよ。それより、別の考えるから待って」

「ソフィ、なんか悪いな」

「いや、いいよ。この中で、本當の事全部知ってるの私だけだし」

「?」

さて、どうしたものか……。ダイアモンドの魔力なんて知らないし……。

……え? あ! 知ってるよ、これだもん。ってことは……。

「ああああ! そっか。ちょっと待ってて」

「そ、ソフィ……? そっか、ソフィは出來るんだったね」

「上手く行くかしらぁ……」

私は魔力を集中させて、この石の中の魔力に合わせる。ジェイドの時と、同じように……。

もうちょっと水を減らして……、いや、違うな。火を増やして。魔力の屬を調整しながら、ピッタリ合うように合わせていく。

「よし……。あとちょっと」

あとは、明暗を合わせて。よし、これで良いだろう。このこそ、ダイアモンドの、ジェイドのした、魔力。

「失敗したら、ごめんね……」

「えぇ?! あ、うん……」

封印よ、解けろ。封印解除!

「え、ああ! なにこれ……」

「ダイアナさんが、って……」

ダイアナの周りにふわふわとが集まって、の中にっていった。

そして、何故か私たちの中にもっていった。それを見たダイアナは、顔をしかめる。

「あ、お母様の時と一緒。多分、死ななくなったよ」

「へぇ……ええ?! ちょっと、ソフィ?」

「し、知らなかったんだから、仕方ないじゃない!」

噓だろ……? 不死とか止めてよ。ただでさえ長命だっていうのに。

あ、でもそれを言ったらジェイドが可哀想。もう何千年も生きてるって言うのに、まだ……。

「はぁ。なんか、々ごめんね。それと、ありがとう」

「ううん、気にしないでね」

「何が起きてるんだかよく分からんが、とりあえず良い、のか?」

まあ、後でゆっくり話してあげるよ。今は、そんな気になれないからさ。

それにしても、隨分あっさりだなぁ。こんな簡単に終わっていいのかなぁ? でも、本當に魔法の練習していて良かった。ダイアナも嬉しそうだし。

そこで、私たちはある事に気がついて窓の外を眺めた。顔を見合わせて、頷く。

みんなで一緒に階段を駆け下り、廊下を走って、ハリケーンのせいで開いたを何とか越えて一階まで下りた。

「わぁ……。すごいわぁ……」

「初めて見たよ、こんなの。とても綺麗……」

「珍しいな……、この大陸で」

空には、はっきりと大きな虹が掛かっていた。

極端に雨がない魔族の國で、虹と言うのは滅多にない。一部は砂漠化してるし。

雨なんか降っていないのに、この大きな、言葉を失うような綺麗な虹。つまり。

「トレア、ありがとう。今まで、ね。それから、さっき、手伝ってくれたんじゃないかなぁ? ねえ、トレア?」

『ふふ……。何であれ、公には、救世主はあなたよ、ソフィアちゃん。ありがとう、これで、もう満足よ……』

「? と、トレア……?!」

サークレットから、力が抜けていくようなじがした。私は慌ててもう一度空を見る。

虹の向こうで、トレアが手を振っていた。泣きそうだけど、笑ってるような、そんな顔だ。

他のみんなは、気づいていない。見えていないのかもしれない。

トレアって、いったい、なんだったんだろう? どこに、行っちゃったのかな。

でも、多分……。星になったんだろう。この世界の星に、乙座はないから。

「どう、したの? ソフィ?」

「なにかあったのぉ?」

「ううん、平気。トレア、今まで、お疲れ様」

この世界を守るため。他の神に殺されそうになっても、やり通した。

知ってたよ。トレアは、他の神に、嫌われてた事。

みんなが地球を見捨てたのに、まだ留まってたし、そうかと思えば、滅亡寸前の星を救うのに全力を盡くす。

運命を捻じ曲げてしまう力を、私に使ってしまった。それは、いけない事だろう。

でも、間違ったことはしてないんじゃないかな。

「トレアって、結局、なんだったんだろう?」

「ソフィの神様? そうだね……」

「いつもソフィを守ってくれたしぃ。何の利益があるのか、よく分からないわよねぇ」

「だが、全てを解決させたのは、トレアだろう?」

そっか……。

綺麗な虹は、その後、何時間も消える事が無かった。

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