「なっ……！？」

鋭い痛みが背中を襲った。相手も、相手の神も今俺の目の前にあるというのに。

目線を下に向けるとそこにあったのは俺のを貫いている、槍・だった。槍といっても刺突のみに特化した円錐形にびた形の。

(一どこから……！？)

俺が目を白黒させているとから槍が抜ける。

槍に柄はなく地面から直接生えて・・・いた。俺のから抜けた後、槍はみるみる小さくなっていき最後は完全に地面と同化した。

「これが俺の❬將皇アロンダイト❭の真の切り札。“変化・流„を司るこの神を応用した『質同化・支配マテリアル・アロンダイト』だ！……俺の力を見誤えたお前の負けだ。ハカリ」

「マジかよ……。神本以外にも能力が及ぶのか」

「ああ、しかも人の覚にも多の影響を及ぼす能力もあるからな。俺の負傷はもうほとんど無いに等しいし、お前の怪我はよりお前に苦痛を與える」

「なるほど……通りで苦しいわけだ」

中に焼けるような痛みが走り、暴れまわる。

「さて、どうする？今度こそ希が潰えたようだが？」

……確かにもう勝ち目はない。相手に傷を負わせても神を傷口に當てれば神が人と同化し止すると共に、一時的にだが治療を行える。しかも、神の能力によってこの部屋そのものが相手の武のようなものだ。どこからでも攻撃をくり出せる。攻撃の読みようがない。

(さて……どうするか……？)

「なんだ、來ないのか？ハカリ。さっきまでの威勢はどうした？來ないなら、こっちから行くぞ？」

その瞬間、足元からいくつも鋭い棘が出現する。そして、俺のを貫く。

「ガアッッッ！！」

全に鋭く痛みが走る。あまりの痛みに視界が白く點滅し、意識を手放しかける。

「ほら、どうしたぁ！？」

無數に地面から棘がび、次々に俺のを苦しめていく。

(もう……ダメか……)

出が止まらない。の覚が、意識が遠ざかってゆく。中が冷たくなる。ついには立てなくなり、地面に倒れる。そして、俺のからが抜けていきゆっくりと、赤いだまりが広がっていく。

「……これで終わりか。あんなに大層な口を叩いた割には呆気なかったな。カンザキはもう一度牢獄送りで許してやるが……ハカリ。お前はここで終わりだ。我が王を侮辱したその愚行、萬死に値する！」

意識が朦朧とする。視界がぼやけてくる。

(ああ、不味い……。もう、ダメか？こんな序盤で死ぬのか……？)

「じゃあな、ハカリ。恨むなら王を侮辱した自分を恨め。ゲームオーバーだ」

……俺が死を覚悟した、その瞬間だった。

「させるかぁ！」

黃金の一閃が走った。

グラハムさんが地面から神を引き抜く。

「……驚いた。もう戦えないとおもってたんだがな、カンザキ！」

「……そう簡単にはくたばりませんよ！」

二人の剣戟が始まる。

「へぇ、訓練の時より良いきをしているじゃないか！」

「そうですかッ！」

神崎が鋭い斬撃を見舞う。しかし、け流されグラハムさんが神崎との距離をとる。

「でも、甘い。連撃を仕掛けるならもっと腕を磨け。簡単に逃れられたぞ？あぁ、でも最後の斬撃は良かったと思う。スピード重視のラッシュの中に重い威力重視の斬撃を紛れ混ませたのはな」

「それを……読みきってけ流した人に言われたく……ないですよ」

神崎の息が上がっている。限界のようだ。やはり、とても戦える狀態ではなかったらしい。足元もおぼつかず、フラフラと立っている。

「……もう、戦えないようだな。よくやったよ、お前は。神を顕現させてるだけでも無理してたんだろう？お前のその勇気ある行は稱賛しよう。……だが、どう足掻いたってもう終わりだ、諦めろ」

「諦めろ……終わり……だって？グラハムさん？気づいてないんですか？俺が時間稼ぎをしていた事に」

神崎の顔に笑みが浮かぶ。

「お前、何を言って……？」

グラハムさんはようやく気づいたようだ。俺が、再戦の準備を進めていた事に。

「『……矮小なるこの魂に、

その偉大な力の斷片よ、顕現せよ。

此度、顕現するは生命の神、エル・ウィーネ。

生命と慈を司る一柱なり』」

詠唱を終え、から負傷が消えてゆく。

「……さあ、コンティニューだ！！」