《悪役令嬢のままでいなさい!》☆316 最終決戦
両者は広々とした外に場所を移した。
ゾッとするような刀と大鎌のぶつかり合い。
炎を纏った東雲の日本刀は殆ど溶けてしまう寸前で、それが皮にぶつかってしまえば到底無事ではすまない。
人間のでければ泡のように火傷してしまうだろう。
幾重もの波狀攻撃を繰り返して、気が遠くなるほどの回數を重ねて。
千もの旋撃が無駄なものに終わったことに気が付いた時、月之宮幽司は笑い出したいような気持ちになった。
だが、幽司もまるで策がないというわけではない。
先ほどから打ち合っている大鎌の先には揮発の毒を纏わせてある。これだけの熱量に曬されれば、それはたちまち空気に混ざり――。
そこで、思ったように相手に効果がないことに気付き、幽司は小技を使うことを放棄した。
「く……くくく、貴様、さっきから呼吸をしていないな?」
「…………」
「つくづく人間離れをしていて忌々しいことだ。息をしている私に毒が通じないのはフラグメントとして抗を持っているからだが……そのようなやせ我慢、長く続くと思うな」
そこに、付近に青い炎が燃え上がる。
の危険をじた幽司は衝撃波でその炎から離するが、あることに気付き目を見開いた。
「な!」
それは、今の妖狐には使えないはずの浄化の炎。
アヤカシには余りある神としての力。それによってばら撒かれた毒を清めた東雲は渋面で吐き捨てる。
「僕も策がなくここに來ていると思うな」
「……はは、ははは! 面白い!」
一どのような手段を用いて神の力を取り戻したのか……。幽司の頭の中が熱くなり、顔を歪める。
舞うような旋撃が東雲を襲う。刀でそれが弾かれる。
加速していく戦い。重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、重ねて、刃と刃が差した。
相手に不足なし。むしろ、幽司の方が押されていた。
「お前え! どうした! どこでその力を手にれたぁ!」
「八重の友達の三人分の人間の信仰をもらって、一時的に神化してきたんですよ! あの瀬川にできて僕にできないと思うな!」
白波小春と、遠野ちほと夕霧昴。彼らの信仰を譲渡してもらい、東雲は一時的に神へと返り咲いた。元から社は殘っていたし、遠野は瀬川の巫としての経験がある。
「三人分……? 噓をつくな! その程度の人數でどうこうなるわけがないっ」
「噓ではない! お前は、只人の人間の力を侮り過ぎだ!」
「そのようなものがあれば、私がこのような苦労をするはずがないだろう!」
一筋、二筋の傷が東雲につく。だが、毒がに廻る前に神狐は己のを炎で焼いた。
毒とが清らかに蒸発する。
その恐るべき決斷力と所業に幽司が息を呑む。生きながらに炎に巻かれる苦しみは壯絶なものであるだろう。その気迫に幽司は気付かないままに後退りしていた。
青白い銀の炎をに纏った妖狐は真っ直ぐに刀を仇に向ける。
幽司はそれを見て、虛ろな笑いを浮かべた。
「何故だ、何故このようなことが起こる……っ 私の計畫は完璧だったはずだ、このようなことが起こるわけがない……」
「何度でもいう。貴様は人間の力を侮り過ぎたんだ。力に溺れた今のお前は、昔よりもずっと……弱い」
「そのようなことがある訳がない!」
追い詰められた幽司は持っていた大鎌を手放さない。己で自覚するよりも凡庸だった彼の目の前には、破滅の未來はけれられない。
狂ったように笑い、月之宮幽司は殘った式神をり出鱈目に襲い掛からせた。
「マイコンが壊れたとしても、こうして私が直々に支配を乗っ取ればまだ使えるのさぁ!! どうだ、まだこれで五千対一だぞ!」
流石の東雲も、それには顔を変える。
大規模な発の轟音が廃病院の建に伝わった。
「何、今の音!?」
息を呑んだ私が振り返ると、瀬川がびくっとを竦ませる。
「外から聞こえてきたよね? 誰か戦ってるのかな」
「ちょっと待って、これ、マズいかも――」
異変を察知した年の姿のウィリアムが、ぶ。
「伏せろ!」
床や壁や天井にヒビと亀裂がっていく。私たちのいた八時間階層がぐらりと傾きそうになった。
希未を抱えた狀態で、悲鳴を上げた私の腕を松葉が摑む。どこかが崩落するような音がして、塵が舞い上がった。
「…………っ 奈々子!」
窓ガラスが割れ、近くにいた奈々子のが外に投げ出される。ウィリアムが咄嗟に指をばして彼の手を摑んだ。
「八重……ちゃん……」
「奈々子! 諦めないで!」
子どもの姿のウィリアムと一緒に、落ちそうになった奈々子を私も支えようとする。その時、もう一度建が揺れ始めた。
「八重ちゃん、私のことは諦めて……っ 見捨てて、お願い」
「そんなことできるはずがない! 待ってて。今、結界を張るから!」
呪を唱え始めた私を見て、奈々子が首を振る。
泣きそうな顔で、彼は笑った。
「……八重ちゃん、あたし、もういいの。これって、あれだけ悪いことをしたあたしへの報いだわ」
「…………っ」
「あたしね、一度でも一緒に外に出ようって言ってもらえて嬉しかった。嬉しかったの。だから、もう……いいわ」
「黙って!」
ここは廃病院の八階だ。落ちたらひとたまりもない。
自分の汗によって、奈々子の手がり落ちていく。力をれても、抜けていく。
「今までありがとう、八重ちゃん」
あり得ないほどに、しく日之宮奈々子は微笑んだ。そうして、自分から彼は手を離してしまう。
私を守る為に、己のことを犠牲にした。
いつかの東雲先輩の言葉が蘇った。
それはどこまでもしい自己犠牲の神。
「奈々子――っ!」
彼のが投げ出される。私もそれを追って飛び込もうとしたところで、松葉に邪魔をされた。
「八重さま! 駄目だよ冷靜になって!」
「だって奈々子が! 奈々子が落ちて……っ」
「もう無理だよ……手遅れだ」
ウィリアムが暗い顔で首を振る。
私は後悔と共に自分の目から涙が溢れだすのをじた。
こんなのって……ない。
どうして奈々子は落ちそうになった時、私の手を離してしまったのだろう。もういいって何だ。なんなのだ。
勝手に納得して死んでしまうなんて、なんて酷い友達だったんだろう。
まるで子供に戻ったように、私は號泣をした。
「八重さま……」
松葉もショックをけているようで、萎れている。
建は今も余震でぐらぐら揺れていた。
「……おい、おい! 月之宮!」
ハスキーな聞き慣れた聲が、外から聞こえてくる。
目を見開いて聲のする方を見ると、そこには茫然とした奈々子を風の異能でけ止めた鳥羽が呆れたような顔で飛んでいた。
正にギリギリのタイミングで助けてくれたらしい。
「……えっ」
「ようやく見つけたと思ったらなんつー狀況だよ……焦ったぜ。ったく」
くしゃりとした顔で、天狗は堪えきれずに笑っていた。
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