《能無し刻印使いの最強魔〜とある魔師は來世の世界を哀れみ生きる〜》EP.36 神狼は話してみる
これは放課後の事だ。廊下を歩く影が1つ、そして曲がり角の先の廊下を歩く者が1つ。2つの影は互いに迫り、そしてぶつかった。
「きゃっ........」
「おっと」
これだけ見ると典型的なラブコメ展開だ。制を崩したは地面に持っていた本の束を落とす。それを拾うのは年。
「大丈夫?ごめんね」
「あ、大丈夫です。........えっと確か」
「エリル、エリル・リリアスだよ。君は確か今日クルシュに頼んでたミナさんだよね?」
「はい。私の事覚えていたんですね」
「うん。普通に覚えるよ、それくらはね。あ、持つよ」
「あ、だ、大丈夫ですよ」
遠慮するミナから強引に本の束を奪い取ったエリルは、1つ笑顔をうかべる。
「大丈夫だよ、どこに運ぶの?」
「図書室です。大丈夫ですか?」
「あー、遠いね。でも大丈夫だよ、行こうか」
そうして2人は茜に染まる廊下を歩いていく。図書室に著いた後、本棚に本を戻した2人はし椅子に座っていた。
「す、すいません。手伝わせてしまって.........」
「僕も不注意だったからね、気にしてないよ」
申し訳なさそうに顔を曇らせるミナにエリルは笑ってみせた。
「そう言えば、君はクルシュのこと差別しないんだね?」
「あまりそういうの私嫌いですから。刻印が悪いだけで結局私達って同じ種族じゃないですか。それを刻印が使えないからって差別するのはおかしいと思うんです」
「同じ種族...........か」
呟くように言ったエリルの言葉をミナは聞き逃さなかった。
「?、どうしました?」
「別になんでもないよ」
「そうですか。.........エリルさんって優しいんですね」
「どうして?」
「だって先日グレイさんと戦ったのに特に嫌うことも無くまたグレイさんに話しかけたり、昨日今日の私の雑務まで手伝ってくれたりしたじゃないですか」
「あー。........僕は単純に人が好きなんだ。楽しく笑ったり幸せな表の人は特にね。だから優しいっていうか、好きだからそうしてるんだよ」
「それでも、エリルさんは優しいと思いますよ。だって人を想ってるじゃないですか」
「アハハ、そう言ってくれたのは君が二人目だよ。...............僕が優しい、か」
再び呟くように言ったエリルの両手を、ギュッとミナが摑んだ。
「優しいですよ!エリルさんは!」
「え?あ .......そう?」
「そうです!。だからそんな顔しないでください!」
「ご、ごめん」
「笑った方が余程エリルさんは素敵ですよ!」
「そ、それはいいけど大膽だね、ミナさんは.........」
ふと目を落としたミナはハッとしたように両手を離す。その際にしだけ頬が紅していた。
「あ、ご、ごめんなさい!ついが高ぶってしまって..........」
「別に気にしてないよ。なんか意外だね、ミナさん」
「そ、そうですか?」
「だってとても淑やかで品が高そうだもん」
「私だっての子ですからね。こんな時もあるんです」
「そう言えばミナさんはクルシュのことをどう思ってる?」
そう聞いたミナはし考える素振りをしてまたエリルの方を向いた。
「.........まだよく分かりませんが、悪い人じゃないと思います」
「なんで?」
「何となく、そういう気がします」
そう聞いたエリルは再び笑顔になった。
「アハハ!當てずっぽうなんだね!」
「だ、だって分かりませんから!」
「アハハ!まぁ仕方ないよね!。..........僕にとってクルシュは家族のような存在なんだ」
「親戚なのに家族じゃないんですか?」
「あ、そういう事じゃなくて、親戚だけど同じ家で育ったようなそんな、ね?」
「なるほど」
「昔、1人だった僕に聲をかけたのは他でもないクルシュだった。孤獨で、ひたすらに一人で生きてきた僕にね。最初はなんのつもりか聞いたけど、彼は「単純に暇だから」って言ったんだ。笑っちゃうよね、暇だから一人寂しいやつに聲かけるんだよ?」
自嘲気味に笑うエリルをミナは真剣な表で見つめながら話を聞く。
「そこから僕の人生は変わったよ。クルシュについて々な場所にいったり、そこで友達が出來たり。とにかく楽しかったよ」
「優しい人なんですね、クルシュさんは」
「うん。彼のおかげで僕も変わった。彼は僕にとってかけがえのない家族だよ。だから僕はクルシュを悪く言うやつは許さない。絶対にね」
「私もそんな風になりたいです」
「なれるよ。君は僕と違うからね。...........そう、僕とは」
「何が違うんですか?」
「あ、いや、別に気にしなくていいよ、忘れて。さ、そろそろ帰ろうか、送っていくよ」
「あ、私は真っ直ぐなので大丈夫です」
そうして學園を2人は學園を出た。既に街道には夕日が落ちかけている。
「今日はありがとうございました」
「どういたしまして。気をつけて帰ってね」
「はい。エリルさんもお気をつけて」
「じゃあまた明日ね〜」
「はい!」
そうして互いに手を振りあった2人は、そのまま帰路につくことになった。
んー、エリル君早くもフラグ立てましたねぇ..........あ、ども。徹夜明けの作者さんです。
いやーもう自転車を漕いでると向かい風の凄いこと凄いこと。徹夜明けもあって死にました、はい。
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