《能無し刻印使いの最強魔〜とある魔師は來世の世界を哀れみ生きる〜》EP.38 魔師は勘づく
とある日の夕暮れ、家でレオの料理を待っている間にアリスからとある話を聞いていた。
「リアが最近學校に來ていない?」
「そうなの。クルシュ君が一人で帰って來た日の翌日から學園を休んでるみたい」
ふむ、俺があいつの母親と會った日か。特に風邪という様子でもなかったしあいつが何日も風邪が理由で休む事もないだろう。
「アリスさんもリアさんは気になるんだね」
「だって友達だもの。心配するのは當たり前よ」
「私もAクラスの擔任に一応聞いてはみたのだがな、どうやら理由は知らないらしいぞ」
教師が知らない、ということはまず無い。欠席の場合は必ず擔任に欠席の報が行き渡る。つまりリアはあえて連絡しなかった、もしくは擔任が何かを隠していることになる。
「そう言えば私達の擔任って最近なにか様子がおかしいのよね。妙になんかソワソワしてるって言うか、なにか気にしてるみたいな」
「私も職員室でよくあたふたしていたのを見たな。興味が無いから特に深くは観察していなかったがな」
「手っ取り早いのはAクラスの擔任に聞くことだと思うけど、どうかな?」
「聞いたところでおそらく教えないだろう。レオにだって教えなかったんだからな」
「確かにリアの格からして擔任に欠席容を喋らないはずがない。私だけでなく學園に隠し事をしてると見た方がいいか」
「そうだな。とりあえず警戒していた方がいい、特にアリスはな」
「う、うん。分かった」
その翌日、俺は學園を休んでセルシャーダ醫院に向かっていた。あの日から定期的に毒の治療のために赴いている。何度解呪しても毒を施す者には呆れすら出てくるがな。
「へー、ここなんだね」
「ああ。お前は今回が初めてか」
「そだね。もしかしたらリアさんに會えるかなー?」
「お前も休むことは無かっただろう」
「いいじゃん。どうせ學園に行ってもクルシュ居ないんじゃ面白くないし」
そのままエリルを連れて醫院にる。廊下を歩き、とある病室の扉を開けた。すると、新しい景が映った。朱の髪が窓からる風にたなびき、窓の方に顔を向けて外の景を見ている。起き上がっている彼の顔に、すっかり生気が戻っていた。
「あら?貴方達は..........」
「珍しく起きていたのか」
「えっと、誰かしら?」
に毒の形跡もない。諦めた、というわけではなさそうだな。それならばそうそうに退院させているだろう。それに最近リアが學園を休んでいることもし気になる。
「クルシュ・ヴォルフォードだ。見舞いに來た」
「エリル・リリアスだよ。僕も同じ」
「ああ、あなたがリアが言ってた人達なのね。初めまして、母のセレス・ニルヴァーナです」
こっちに向いセレスは小さく優雅にお辭儀する。やはり王族の末裔とはいえそこの教育はされているらしい。
「今日目が覚めたのか?」
「ええ。なんだか今日は調子がいいみたいなの」
「そうか、それは良かった。リアは毎日來ていたのか?」
「そうみたいね。意識だけはあったから、あの子の話はよく聞いていたわ」
そしてその時、ドアが開いた。その先で立ち盡くす彼は、他でもないリアだ。
「お母さん.........?」
「リア......!」
俺たちを無視して駆け寄ってきたリアはセレスと抱き合う。まるで失った時間を取り戻すように、母親のに頭をつけて數秒が経っていた。
「今日目が覚めたの?」
「ええ。今日は調子がいいのかしら」
「良かった.......」
と、そこでやっと気がついたと言わんばかりの視線をリアが向けてくる。
「あ、れ?.........クルシュに、エリル?」
「今気がついたの!?」
「久しぶりだな。お前ならこの時間に來ると思っていたぞ」
「な、なんで?」
「ただの勘だ。外れていたら帰っていたがな」
「二人とも學園は!?今日も授業よね!?」
「休んだ。模擬授業以外は特に退屈だからな。それにお前にも會いに來たからな」
「............し場所を変えましょうか」
「リア?學園には行ってるの?」
「ちょっと最近休んでたの。大丈夫、ちゃんと行くから。また後でね」
そういったリアは俺を引き連れ休憩所に向かった。俺達とリアは円型のテーブルに3つ並べてあった椅子にそれぞれ座った。
「..........どういう意味?」
「そのままだ。最近休んでいるからどうしてるんだろうと思ってな」
「どうもないわ。この通りよ」
「なんで休んでたの?」
「それは............」
リアは言うのをためらっている。..........やはり彼のに何かが起きたか、それとも母親が関係しているのか。し聞き出してみるか。
「言えないことか?」
「そんなことは無いわ。でもね.............」
「なんでそんなに躊躇ってるのさ?」
「..............」
そのまま黙って俯いた後、顔を上げた。そこに含まれていたのは明確な敵意、そして何か覚悟を決めたような表だった。
「お母さんの病気が治るかもしれないの」
「ほう、良かったな」
「醫者が治す方法がある、って。でもそのためにはクルシュ、あなたに死んで貰う必要がある」
「え?どういう事?」
その疑問はもちろんだが、言い方が遠回しすぎる。おそらくリアの背後には黒幕がいる。言えないのは奴隷魔法での言い聞かせか、それとも契約魔法か。
「詳しくは言えない。でもクルシュ、貴方には死んで貰わないと行けない」
「ふむ、俺を殺すと母親が助かる、と?」
「そういう事。明日が貴方の最後よ」
「うわぁ、すごい宣戦布告..........」
「悪いけど私にはこれからやることがある。お母さんには宜しく言っといて」
「待て、リア」
立ち上がって踵を返したリアを俺は2つ言葉で呼び止める。振り返ったリアは敵意が剝き出しになっていた。その顔は、學試験、初めて會った時のその表だ。
「俺を殺す、と言ったな?。面白い冗談じゃないか。それでも俺を殺す気があるなら言っておこう。今までの好全てを忘れて全力でかかってこい。俺はそれを踏まえた上でその上から叩き潰してやろう」
「.......相変わらず強気ね。明日、覚えておきなさい」
皮を言うことも無く彼はまた踵を返して去って行った。その姿が消えるまで、俺達はそれを見つめていた。
「いいの?敵を逃がすなんて君らしくないけど」
「エリル、わざわざリアが明日、と言う必要があったか?」
「え?それは.............うーん、無いね。殺すならいつでも殺せるはずだし」
「そうだ。リアには日時を宣告する必要が無い。そしてリアのに妙な魔力反応があった、魔法のな。そこから考えられるのは2つ、リアが契約魔法か何かで俺たちに助けを求められない狀態にあること、そして明日俺を殺すために何かを向けてくるということ」
「うーん、つまりリアさんはられてるってことか。そんな気配ひとつもなかったけどなぁ」
「悟らせないようにするというのはなかなか大変だ。リアがいつ脅されたのかは知らないが」
「ふーむ、面倒なことになったねぇ............」
まぁわかっているなら対処はしやすい。明日、おそらく學園に襲撃をかけてくるだろう。そこも勘ではあるがな。學園に、1つ聳える高い塔がある。おそらくそれを使って俺になにかしてくる、と言ったところだな。
「さて、戻るぞ」
「あ、そっか。お母さんに言っとかないとね、帰ったって」
そのままゆっくりと俺達は病室へ向かった。
リアさんは何を思ってクルシュを殺すことにしたのでしょうか........。そしてリアの背後にそびえる黒幕とは一!?
と、こんな次回予告をしますが次はお母様のお話です。
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