《能無し刻印使いの最強魔〜とある魔師は來世の世界を哀れみ生きる〜》EP.96 魔師は月下で話す
収集が著いたのはそれから約1週間後のことだった。結果として學園流は殆ど果を現さなかったわけで、さらに人族側には行方不明という拐が起こっている。もちろん拐という所までを知っているのはクルシュ達だけであるが、同クラスの行方不明という事実は他のクラスメイトには厳しいものである。
結局なんとも言えぬ雰囲気のままリンドハイム王國へと帰國した一同はその日すぐに解散となった。レオは當然先生なので々と仕事と報告を済ませるために學園へ、クルシュ達はいつものように地下図書館へと赴いた。
「あら?意外と遅かったですわね」
椅子に何食わぬ顔でお茶を啜りながらフィオーネが座って本を読んでいた。こちらに気づいたのか読書用の眼鏡をを外してそう言葉をかけてくる。
「帰りは俺が転移魔法陣で全員を送ったんだが國の方が時間かかったぞ?総合的には」
「そうですか。まぁ、わたくしが言うのもなんですけど.............々とお疲れ様です。ここにアリスもいればみんな笑えましたのに..........」
し悲しげな表をするフィオーネにいつの間にか橫にいたジークがぽんと頭をでる。その時點で會話は途切れたと思いクルシュは奧の自の工房へ進んで行った。
「ふにゃっ!?」
「そんな顔をするな。クルシュも言っただろう、アリスは生きていると。それに生きているのなら必ず會える」
「そ、そうですわよね...........すいません」
フィオーネが謝る傍らでジークがしだけ悲しげな笑みを浮かべたのだがそれに気づいた者は誰もいない。クルシュがその場にいたら気づいていただろうが。
月が窓から差し込み、時計の針が頂點を指す頃。町の源だけが未だに煌びやかな王都から數十キロ離れた小さな丘の上でクルシュは白くる月を見ていた。今宵は満月だ、憎らしいほどその形は丸い。
「こんな所にいたか」
そこに背後から聞き慣れた聲が聞こえる。その聲の主は見上げたまま反応を示さないクルシュの橫に立つ。
「何やら魔の兆候が流れてきたと思ったら、何故こんな所に居る?」
「.........別に。なんとなく月見をしたくなっただけだ」
いつもの調子でクルシュは返す。するとジークは同じように月をその瞳に映した。
「俺がイルーナに初めて會った日もこんな満月でな」
「何だ?嫁自慢か?」
「まぁ聞け。..........その日はなんとなく玉座で考え事をしていたのだが、一瞬月が翳ったと思うとそこにイルーナが居た。その後殺し合いをして..........最後は確か飯を食わせたか」
クククと笑うジークはさらに続ける。
「神であっても腹が減ることがその當時は意外でな、つい面白くなったんだろう」
「.........それで?」
「次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、やがて毎日イルーナは俺を殺しにくるようになってな。最初は鬱陶しかっただけなんだがなんとなく毎日やっているうちに飽きてくるどころか楽しくなった。そうしてやっていくうちに俺はイルーナを嫁として迎えたという訳だ」
「............馴れ初めは聞いてなかったが今聞いた話にどうやったら結婚へ繋がる展開があるんだ?」
し訝しげにそう質問したクルシュに「愚問だな」と言わんばかりにフッと笑みを作った。
「まぁ心というのは変わりようのあるばかりだからな。俺もあの時は想像などしていなかった」
「そうだろうな」
「だが俺はイルーナを、大切なものを失った。俺のせいでこの手に守っていたものが一気に瓦解した。だからこそイルーナを殺した神々に復讐を誓ったのだが、まぁ誰かが思い半ばで見事に俺を倒すわけだ」
「その後復讐は完遂してやっただろう」
「ああ。まぁ現在復活しているみたいだが」
「そうだな」
ああ言えばこう言うとはこのことだろう。返事がめんどくさくなったクルシュは半ば棒読みで肯定した。とりあえず昔話はここまでだ、とジークは再び月を見上げる。
「それで、まさか嫁自慢のために來たわけではないんだろう?」
「當然だ」
そう答えるとしの沈黙の後ジークが口を開いた。
「今大切ながある、もしくはこれからその大切なができたなら、必ずその手を離すな。手遅れになったらもう引き出すことは出來ない。だから、しっかりとつなぎとめておけ」
「.......?、ああ、わかった」
それだけを伝えたジークはそのまま背を向け転移魔で家へ戻って行った。そうしてまたその場にはクルシュ1人だけの空間が作られる。
彼はひたすらに月を眺めていた。彼の頭の中に先程のジークの言葉が幾度も反響している。
「.........大切な、か」
そんな事は気にしたことも無かった。別に魔が研究できればそれでいいと思っていた。完全に研究したあとは暇つぶしをどうするか、しか頭になかった。だからこそあの時代の俺には大切ななど一切無く、作る事さえない、そんな人生だった。
――では今はどうか。............今もほぼ同じだ。多なりと今の方が騒がしいが、それまでだ。まだまだ地下図書館の魔導書を読破したわけじゃない。太古の、あの時代に作られた魔道の制作に取り組まなければいけない。だが今はそれをやっている場合じゃない。アリスを助けなければならない。
――なぜ?
何故アリスを助ける?助けたところで俺には何もメリットがない。それにアリスとは2年前から共に育ち、今もたまたま同じクラスな"だけ"。本當に助ける意味があるのか?助けたところで意味は..........
――違う
いいや、違う。アリスだからこそ助ける。アリスだからこそ助けなければならない。なぜならアリスは俺の――
俺の...............俺の何だ?教え子?違うな。馴染?違うな。友人?近いが違う。じゃあアリスは..............。
「また悩んでるの?クルシュ君」
聲がして、自問自答していた俺は振り向いた。その瞬間、俺の後ろから風がブワッと吹き出す。だが振り向いた先にアリスの姿はない。それはそうだ、今現在攫われているのだから、ここにいるはずがない。
「...........やれやれ、なぜ幻聴なんて聞こえるのか」
フッと笑みを浮かべて、なにか気づいたようにまた月を見あげる。見上げたそこには月下の自問自答など知らない月が爛々と靜かに輝いていた。
「............まさかな」
今は余計なことを考えるのはやめた方がいいな。次、神々あいつらと戦闘する時には新しい魔道でも持っていくか。
クルシュは自嘲気味な乾いた笑いを浮かべた後、くるりと反転して家へ転移した。
彼の気づいたこと、それは彼にしか分からず。
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