《能無し刻印使いの最強魔〜とある魔師は來世の世界を哀れみ生きる〜》EP.106 魔師は咎める
地下図書館の一角で、私有地となったために改造が施されたクルシュの工房が忙しなく稼働している。今作しているのは、3つの魔道。1つの魔道につき一、彼が拡張した工房で初めて作ったゴーレムが付いている。魔力駆式労働人形、ゴーレム。それは工房限定で意志を持つ人形で、作者の命を実行できる範囲で聞く。
彼がゴーレムに命じたのは「記憶される魔道を作れ」と「終われば知らせろ」という2つ。既にクルシュが作るものは今、ゴーレム達に記憶させて作している魔道を除けば終わっているので、彼本人はまだ読んでいない魔導書を紅茶を啜りながら読んでいた。
「全く、戦爭が近いのに呑気に............ 。図太すぎじゃないかしら?」
そんな呆れたような聲とともにコツコツと靴音を立ててリアが彼の隣に座った。訓練終わりなのか、首からタオルをかけている。汗ばんだ元や首筋が妙に艶めかしく見える一方で、まだ冬だというのに袖なしのタンクトップとホットパンツという夏仕様のトレーニング姿は寒くないのかと疑問を呈したくなる。しかしその疑問はクルシュが図書館の溫度調整をしているため問題ない、と解決する。
「訓練はいいのか?」
「まぁ、教えてもらうことは全て教えてもらったし、あとは自分なりの戦い方に変えていくだけよ。だから今日はもういいって」
「そうか」
短くそう返す。ちなみにリアを教えているエリカが何故こちらに戻らないのかと言うと、あれからさらに空間に改造を施し、あの空間から帰還する時は自の任意の場所に転移できるようにしておいたのだ。故にリアはこちらへ戻り、エリカはどこかへ行っている。
「...........本當に、もうしね」
何かを思うように、リアはそう呟いた。そんな聲にクルシュは魔導書を読みながら口を開く。
「だからといって俺達がやることは変わりない。アリスの奪還、帝國の陥落、前者は必ず功させる」
「...............ねぇ、クルシュ」
リアは、どこか弱気な聲で彼の名前を呼ぶ。いつもの強気な彼からはたまにしかじられない覇気のない聲音に、し不思議に思ったのかクルシュは彼へと視線を合わせる。
「どうした?」
「今回、攫われたのはアリスだけど.............その」
「何だ?」
「もし、アリスの代わりに私が攫われてたら、どうする?」
そう質問した瞬間に、リアは自で言った言葉を取り消したかった。當然、にめているからこそ口に出たわけで、しかしそれは今言うようなことではない。故に、やってしまったと。そして自らを戒めるしか無かった。
「縁起でもないことを言うな。アリスは攫われたくて攫われた訳じゃない、場合を、アリスの気持ちを、考えろ」
帰ってきたのは、予想していた言葉。返す言葉が見つからない。
「...........ごめん、なさい」
「それで、まさかそれが言いたかったのか?」
「え、えっと..............アリスとクルシュは馴染なのよね?」
「2年の月日が馴染にるのかは分からんが」
「その............クルシュはアリスの事、どう思ってるの?」
この、どう、という意味はもちろん彼が聞きたい答えが返ってくるかはわからない。だが自分でも何故こんな質問をしたのかわからなかった。ただ自然と、この言葉が出たのである。
「ほぼ家族のような暮らし方をして來たが、まぁそれなりに近しい存在だとは思っている。別に何かのがある訳では無いがな」
その答えに、どこかホッとした自分がいた。そしてこんな狀況下でそういう事を聞く自分が、許せなかった。非常識なのは自分でも分かっている、だが、口に出てしまったのだ、もう止められない。
「じゃあもし、仮にアリスが目の前で殺されたら?もしアリスが泣いたら?もしアリスが敵対したら?もしアリスが.............」
「リア」
「............ッ!」
ハッと、クルシュの一言で我に返ったような覚を覚えた。そして今自分で言ったことを思い出して、口を覆った。
「どうした?今日はしおかしいぞ」
「............あ、えっと、その」
「それに、アリスが死んだとかアリスが泣いたとか言っているがな、それを見て俺が起こす行にリアとなんの関係がある?」
「っ.............!」
「仮にもそれは俺とアリスの問題であって、第三者であるリアの問題じゃない。だからリアが気にすることではないはずだ」
「それはそう.............だけど.............っ!」
返す言葉が見つからないリアの表は、何かを焦っているような、し落ち著きが見られない。その様子を見てクルシュはため息をついた。
「し訓練に熱中し過ぎたか。とにかくし休め。脳を休憩させろ」
「あ.............でも!」
「くどい。休むところで休まなければ為そうとするも為せなくなるぞ」
クルシュは本をパタンと閉じると魔で元に戻し、立ち上がると紅茶を片付けて工房へと消えていった。そしてその場には、しの間固まっていたリアが殘った。
「はぁ〜、何やってるんだろ、あたし」
自分でも咎めたくなる様なおかしい態度。何故自分でもあんな質問をしたのかはわからない。この場で言うことではないとも十分にわかっていた、それでも質問をしてしまった自分に嫌悪を抱く。そのまま機に伏せるようにして腕を枕に頭を下ろした。
「はぁ.........」
再び深いため息をついて椅子から立ち上がると、リアは自の家に戻った。
一方でクルシュは完したという信號をけ取って工房を見る。すると、予定通りの魔道が。クルシュはそれらを『空間収納』にれて工房の電気を落とす。
(やれやれ、まさか戦爭前に不安でも抱いていたのか?)
先程のリアの表、言を思い出してそんな事を思った。
(まぁ無理もないが、それにしてはアリスに拘りすぎだな)
何故アリスのことを執拗に質問してきたのか。彼はアリスの友達で、それを思うのは當然の事だが、今ここでするような話で無い事はわかっているはずだ。じゃあなぜ?
(ここに來て悪い方向に向くのだけはやめてしいがな)
し脳に嫌な予が過ぎったが、そこで考えるのをやめ自の家へと戻った。
こちらもこちらで大変なご様子。
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