《能無し刻印使いの最強魔〜とある魔師は來世の世界を哀れみ生きる〜》EP.108 兵の宴

同時刻、地下図書館にて、薄暗い通路を通っている6人がいた。彼らは誰もが白いローブと仮面を付け、皆何も話さずに先導する者の後に続いている。靜かな空間に6人分の足音が反響していく。だがそんな時間もいつかは終わる。

「ここだ」

彼が止まり、パチンと指を鳴らすと、一斉に周りがライトアップする。そして眼前に巨大な空間が存在することを認識した。その空間を支配するのは、1隻の船にも似た何か。先頭に立つクルシュ以外の5人が唖然とそれを見上げた。

「な、なによこれ!」

「ほう、飛空艇か。これはすごい」

「ひ、飛空艇って...........失われたものの一つですわよね!?」

「なるほど、クルシュがよく何処にもいなかったのはこれを作ってたからなんだね」

「逆にこれをたったの1ヶ月で作り上げるのも凄いですよね.........」

5人5様の聲を上げ、飛空艇を見上げる。そして次の瞬間、クルシュが『転移魔』を使ったことによって6人は飛空艇の制室にった。

「まぁ、中々に作りがいのある玩だった。久しぶりに熱中してしまった」

「そういえば、名前はなんなの?」

「名前..........そうだな。ハルピュリオスとでも名付けるか」

正式名稱、魔力駆型飛空艇艦ハルピュリオス。世界最高度の鉱石、オルムバレスを裝甲に使い、その表面をアンチマテリアルコーティングしており、迎撃用として右翼と左翼に5門ずつ、合計10門の『オーケストラ』の砲門が搭載されている。そしてハルピュリオスに蔵されたコアに付與している2つの魔が空の旅を補助する。見た目としては宇宙で散りそうな船に似ているが他意はない。無いったら無い。

「さて、作は俺がする。出るぞ」

「え?どうやってでるのよ?」

「もちろん転移だ」

「..........はい?」

「ハルピュリオスには2つの魔が搭載されている。1つ、『飛行魔法』。1つ、『転移魔法』。俺が何も考え無しに地下図書館に繋げると思うか?」

そういえばクルシュはそんなのだったと改めて自覚し直したリアはそれ以上何も言うことは無かった。

「さて、テストは何もしていないからな、これが初フライトだ。出るぞ」

ニヤッとクルシュが笑った瞬間、ハルピュリオスは地下図書館から姿を消した。

次にハルピュリオスが現れたのは、大軍が戦している帝國領空。

「わーお、やっぱり始めちゃってるね」

「攻めるタイミングはあちらに任せてあるからな。まぁ見てもまだ開戦して數十分と言ったところか」

「って、待ちなさいよ。何よあれ!」

リアが驚きと共に指さしたのは、結晶でできた塔。城からせり上がるようにしてびた塔は、今まで無かったものだ。當然吸い寄せられるように視線がそこに集中する。

「........なるほどな、あの塔は太を吸収し、それを線に変換、出できるようだ。言うなればあれ自がどこからでも出可能の砲塔という所か」

「って、冷靜に解析してる場合じゃ無いですわっ!」

「そうだね、フィオーネさんの言う通り、あれがここに直撃したら厄介だ」

「ああ。だからこそ巻きで行くぞ、捕まっておけ」

ジークにツッコミをれるフィオーネの橫でクルシュはハルピュリオスの速度を上げた。だか當然、迎撃するように塔の一部がった。直後、弾幕のように線がされ、ハルピュリオスに襲いかかる。しかしクルシュもクルシュで、卓越した作テクニックでいとも簡単に線の雨を回避し続ける。やがて掃が止むが、ハルピュリオスに傷はひとつもついていなかった。

「クルシュ........これが本當に初運転なの?」

「ああ、當然だ。先程も言っただろう」

「クルシュって用だからさ、こういうことよくあるよ」

用ってレベルじゃないわよさっきのっ!」

リアがツッコミをれる中、ついにハルピュリオスは塔の上空に著いた。6人全員が制室から甲板に出ていく。なお、作の方は予め作してあったハルピュリオス専用のゴーレムに任せている。

「さて、フリーフォールの時間だ」

「うぅ...........本當にやるわけ?」

「まぁこうするしかないからね。上空からなら」

「わたくしは楽しみですけど」

「皆が皆フィオーネさんみたいな人じゃないですよ.........」

「くはは、落下する恐怖を捨て去るいい機會だ。さて、行くぞ」

リアとミナがたじろぐ中、ジークとクルシュが飛び降りる。それを見てエリルがミナを支えながら飛び降り、フィオーネに支えられる形でリアも飛び降りた。そして空して直ぐにあるものが見えてくる。

「っ!クルシュさん!結界があります!」

「借りるぞ、ミナ」

ミナの『視の眼』が見えない結界を捉えた。クルシュは『視界共有』でミナの見ている視界を己の目に映し出す。そして『空間収納』から砲だけをのぞかせた銃が40門展開された。

當然クルシュはこの1ヶ月の間に魔道を開発すると共に改造もしていた。その1例が今クルシュが展開している銃、魔壊型浮遊散弾銃、ハチトリ・DBデュアルブラスト。ばら撒かれる弾幕は発口が1つ増え2倍になり、速度ではなく威力を重視したモデルに改造されていた。故に一丁だけでも5重の石壁にを開けるのはワケない。

さらに強化された死の弾幕がドバァァン!と一気に結界の継ぎ目へ掃されると、その一撃だけで結界が半壊するまでに至った。そして半壊することによってクルシュ達の下方の結界が消滅し、容易に領地に進する。クルシュは通り際にもう一度掃して完全に結界を消滅させたが。

「もはやあんなの魔道じゃないわよ。兵だわ............」

「今更気づいたのか」

「なに當然みたいな顔してんのよっ!!」

上空にてさえわたるリアのツッコミ。そんな彼らを今度は結界で飛行していた竜達が襲う。こちらへ向かって竜達の集団が飛來してきていた。

「よい、俺がやろう。...........來い、ウロボロス、ハイドラ。滅ぼせ、1匹たりとも逃すな」

魔法陣が現れその中から2対の影が飛び出した。竜『黒』の頂點、無限竜ウロボロス、竜『紫』の頂點、死毒竜ハイドラ。2対の竜はジークの命令に呼応するように咆哮を上げると真っ直ぐに竜の大群に突っ込んで行った。

「大丈夫なんですの?あれ」

「俺の使い魔はそこらの竜とは訳が違う。この程度で死ぬような弱竜ではない」

それを証明するように竜の大軍の中央で発が起きる。2対の頂點が戦っているのだ、しかも互角以上に。その音を耳に殘しながら、ついに塔の表面が近づいてくる。

そうだね、あれ」

「確かに、クルシュさんのさっきの魔道でも無理だと思います」

「ふむ、ならばこれで行くか」

次いでクルシュが『空間収納』から取り出したのはほぼ日の目が當たらなかった魔道、魔壊型殲滅ライフル、エルード・Vヴァルカン。ほぼ使われてなかったために影が薄かったが、當然クルシュはこれにも改造をれている。トリガーを引く度に魔力発による弾速と威力の強化が追加され、それは世界最高度のオルムバレスを容易に貫く威力となり。一點突破においてはクルシュの魔道の中で右に並ぶはない。

クルシュはそれを脇で支え、スコープ越しに照準を合わせる。そしてそのままトリガーを引いた。

ドパァァァァン!!

激発と共に発された魔弾は塔の外壁をいとも簡単に吹き飛ばした。そして吹き飛ばしたそこに口が作られる。彼らはそこに著地して塔への侵功した。

同時刻、戦中のエリカは戦斧を振るい敵をなぎ倒す。彼の豪快な一振の前には、防しようとしたも屈強な魔も、意味をなさない。

「ったぁくよぉ!うじゃうじゃといすぎなんだよ雑魚どもッ!」

文句を言いながら八つ當たりするように戦斧を振るい、敵を真っ二つにして行く。と、その時、結晶樓の塔の外壁が派手に吹き飛んだのが見えた。

「ちっ、やっとかよ」

文句を垂れる一方で、その表は酷く楽しげだった。釣り上げた目に狂気が走り、三日月のように裂かれた口から犬歯が剝き出しとなる。派手に吹き飛んだそれは、クルシュ達が結界を消滅させ侵功させたことを意味する。エリカともう1人、ユリアにはクルシュが事前に「派手な合図を送るからそれを見てから部に行け」と言われていたためしの間待機する必要があった。しかし、もうそれは必要ない。エリカは上を低く落とすと、強化魔法で地面を蹴りあげ走り出す。目に次々と敵が映るがそれは関係ない。ただ一つ、侵口へ向かってただ雑魚を蹴散らしていく。

それと同時か1歩遅れて、目の前を剣閃が走った。次の瞬間には眼前の敵が細切れになり崩れ去る。

「おいユリア、今までどこいってたんだよ」

「吹き飛ばされた左翼の援護に。あなたこそ暴れすぎて疲れていないでしょうね?」

「はっ、まさか。これからだぜ」

そんな軽口を叩きながら彼達の速度は上昇し、敵の減速度も早くなる。そして城門に近くなった瞬間、地面がせり上がり2のゴーレムが出現する。

「邪魔だおらぁ!」

聲を荒らげたエリカが地面を蹴って飛び上がり、上段一閃、地面まで振り下ろされた戦斧がゴーレムを両斷し、さらに地面をも深く亀裂をれた。

対してユリアはゴーレムの核の橫に飛び上がって立・っ・た・。そのまま刀で核を貫き、機能停止したゴーレムから離する。

通常、壁などに張り付くためにはアリスが使うような『重力魔法』を使用しなければならない。しかし、ユリアはそれを行っている訳では無い。

補助魔道靴。彼が今はいている靴の靴底にはアリスの指に使った石が散りばめられており、足裏に魔力を込めることで『重力魔法』が使えるようになっている。このようにクルシュの魔道は王國軍だけでなく、『3強』にも送られているのだ。

「ホントロクなのいねぇよ!雑魚ばっかじゃねぇか!」

「抑えなさい。城にはいい敵がいると期待しましょう?」

「ちっ!」

振りかぶった戦斧が門までの敵全てを蹴散らした。そしてそのままエリカは踏み込んで地面を蹴りあげると、クレーターと共に亀裂がった。それほどの威力で加速したエリカは戦斧を下段に構える。直後、カシュン!と音を立てて戦斧が戦鎚へと変形した。

完全思想変化型二種短棒、ヴェルディン。使用者の狀況に応じた変化を可能としている。當然ながら耐熱、耐久に優れ、滅多なことで壊れることは無い。特にいエリカが使うにはもってこいだ。

「ぬぅらぁぁ!!!」

気合い一発、強化されたでフルスイングすると派手に音を立てて鋼鉄の城門はいとも簡単に吹き飛ぶ。再びカシュン!と形態を戦斧に戻すと一旦立ち止まった。

「派手にやりますね、本當」

「いやぁ、爽快だなこれ!いいもん貰ったぜ!」

呆れたように笑うユリアとヴェルディンを掲げて目を輝かせるエリカは、二人揃って敵地へと足を踏みれた。

そしてこちらもクルシュの合図があった直後。

「『絶対零度アブソリュート』」

短くそう呟いたルイズの足元から一気に地面が凍結し周囲を完全に凍らせる。クルシュの固有魔、『凍結魔』を何故ルイズが使っているのか。それは彼が首から下げた青の寶石が特徴的なペンダントにある。

魔法投影裝飾品。中央の寶石にはクルシュの『凍結魔』絶対零度アブソリュートと零度地獄炎アブソリュートニヴルヘイムの魔法式が記述されている。氷系統の特殊能力を持つルイズにとっては、魔力を流すだけで発できるためコントロールもさほど難しくない。まさに鬼に金棒という訳だ。

『ん、生きている騎士、になってる騎士、とりあえず全に通達。エリカとユリアは先に行った。ここからは私が指揮を執る』

のペンダントに込められている『思念伝達』が騎士達に聲を通達した。その直後、まだ完全凍結しきれてなかった魔族が背後からルイズに迫る。

「はっ!油斷もいいところ................」

だがしかし、その魔族はそれ以上喋ることは無かった。なぜなら首とがおさらばしたからだ。魔族を屠ったのはレオ。氷の奧からさらに飛來する魔族や魔獣たちに囲まれ、ルイズと背中合わせになる。

「背後は請け負いますよ」

「ん、よろしく」

短くそう呟いたルイズの聲音は、どこか安心しているようだった。圧倒的強者達に埋もれて目立たなかったレオだが、彼もまた『孤高の獅子』と呼ばれ、王國騎士団長に選ばれるほどの実力を持つ。故にこの場においてはルイズの背後を任せるのに最適と言っていい。

「死なないでね」

「はい、もちろんです。弟が待ってますから」

互いにそれだけわすと、再度戦を開始した。

魔道だからいいよね。魔道だから。(いろんな意味で)

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