その剛撃はどんな裝甲でも叩き切ることだろう。そんなことを連想させるほど暴力的な攻撃をエリカは繰り返していた。己の長の丈を優位に越す戦斧形態のヴェルディンを軽々と振るいながら。

相対するセリギウスはそのエリカの攻撃に全くじず、先程やって見せたように腕で防ぎ切っていた。なおのことその神には傷一つすらっていない。

「おらぁ！」

上段から振り下ろした戦斧は一直線にセリギウスへ迫る。だがそれを半を引いて避けたかと思うと、姿勢低くエリカの懐に潛り込んだ。當然幾重もの死線をくぐり抜けてきた彼だからこそ、2秒後の未來など余裕で想像できる。彼が想像出來たのは、セリギウスによって自の心臓が撃ち抜かれる、という事。故に想像通りに向かって突き出された拳を、戦斧を重心にしてセリギウスの背後へ飛び上がることで避ける。

だが彼の著地點に回し蹴りが迫った。それをなんとか膝でけ止めたエリカは片腕だけで戦斧を切り上げるも、先ほどと同じく半を引いて避けたセリギウスによってその攻撃は無に終わる。互いに距離を取って、睨み合う。先程から互いが一度も攻撃をけることなく、膠著狀態となっていた。

「ふむ、力を持たぬ人間と侮っていたが、中々やる」

「はぁ。お前の攻撃はもちろんだが、あたしの攻撃も當たんねーとなると、ホント終わる気がしねぇなこれ」

「今のままならば、な？」

「當然だよな？」

その言葉で、エリカは自のギアを2段階あげた。先ほどと同じく戦斧を舞の要領で振り回す。だがその速度は先程と比べるまでもなく、當然威力も跳ね上がる。それを察したセリギウスもついには、いなすようになった。確実にその神へと迫る戦斧をあさっての方向へと流し続ける。

互いに実力は互角、いや、セリギウスの方がし押されているか。いなすセリギウスのの表皮には、いくつかだが切り傷が付き始めていた。豪快な斬撃が振るわれる度に鉄と鉄がぶつかりあったような金屬音が響く。

「おいおい、どうしたよ？そんなものじゃ...............っ！！」

「余り甘く見るな、人間」

ついにエリカの剛撃は弾・か・れ・た・。なんと戦斧モードのヴェルディンにエリカ自の強化が乗った攻撃を、その神の腕で跳ね返したのだ。必然的にエリカは上段に打ち上げられた戦斧に一瞬だけ隙を曬される。

「っしま..............」

「遅い」

瞬間、突き出された拳は1つ、されどその手數は5つ。衝撃とともにエリカは背後の壁まで吹き飛ばされた。壁に亀裂がり、彼は背中を強打する。

「カハッ...........！！痛ッ！」

肺の空気が全て放出される一方で、その衝撃に後頭部を打ち付けしだけ脳震盪を起こすが、を噛んで意識を強引につなぎ止める。

「ほう、肋も持っていったはずだが」

「..........ただのだと思ってんじゃねーぞ。並の男より鍛えてんだよ」

「ふむ。武人としては1級というわけか」

セリギウスが心するその目の前で、し離れたところに刺さっているヴェルディンを見て小さく舌打ちした。

(やっぱりあ・れ・を使うしかねーか。............あーくそ、仕方ねぇもんな。さすがに死ぬよな使わねーと)

心何かを諦めたようにひとつ深呼吸をしたエリカは、その視線をセリギウス向けて睨みつけるように送った。

「...........『炎裝纏』」

瞬間、ゴウッ！と激しく空気が振し、彼を中心にして激しい火柱が上がる。その數、3柱。彼を取り囲むようにして発生したそれが、彼のを飲み込む。そして風が発生したかと思うと、エリカのそのには煌々と燃え盛る炎が纏われていた。

「あたしは『炎武の槌』なんて呼ばれてるが、別に戦鎚が主力じゃねーしそこに転がってる戦斧でもねぇ。武を持つ前は全部素手これでやってたからな」

軽く腕を振ってみせると、炎が激しく揺れく。素手に炎を纏い、その拳は槌のように全てを砕する。つまりは『炎武の槌』だと、つまりはそういうことなのだ。

「これがあたしの本気だ。當然これより先なんてねーし、これで通用しねぇならあたしは死ぬ」

「隨分と歯切れが良いな。まさか死を理解したか？」

「まさか、死ぬ気なんてこれっぽっちもねーよ。.............行くぞ」

剎那、その姿が掻き消えた。あまりの速さに、セリギウスを以てしても一瞬見失ってしまう。だが、彼にはそれで十分なのだ。

「はぁっ！！」

上空からの踵落としがセリギウスを襲う。だが當然セリギウスもその腕で防を計る。ぶつかり合う腳と腕、その衝撃でセリギウスの足が地面に沈みこんだ。

そのまま空中で捻った足がムチのようにセリギウスの脇腹を打つ。一瞬怯んだその神に膝蹴りがった。がくの字に曲がり、そのまましだけ吹き飛ばされたが、なんとか地面に足を著いたまま倒れることは無かった。

「........ちっ。頑丈なやつだな」

「ゴフッ...........なるほど、よもやを傷つけられるほどとは」

前方に吐したセリギウスはその神の膝蹴りがった部分を見た。當然炎を纏う彼の蹴り、皮が激しく焼け爛れている。

「ならば本気を出そう。.................はぁぁ！！」

瞬間、セリギウスのが隆起し、筋が荒々しくなっていく。極限まで発達した筋は、初期のセリギウスの2倍はあろうかという軀までになっていた。

「ははっ、おもしれぇ。力比べと行こうじゃねぇか！！」

その敵に対して変わらず獰猛に牙を向いたエリカは再度その速度を持ってセリギウスに接近する。だが今度はそれが分かっていたかのようにエリカの出現場所に拳が振るわれるが、それを間一髪で避けた彼が跳躍して首元に回し蹴りを放つ。

ムチのようにしなった炎の腳は首を穿ったかに見えた。しかしその堅固な筋に阻まれ、その神にダメージを與えることが出來ない。2度、3度、打ち込まれた打撃は全て阻まれた。

今度は強烈なセリギウスの拳がエリカの腹部を穿つ。メキメキと鈍い音を立てて彼のが浮き、続いて背中に振り下ろされた両手の一撃が彼を地面に叩きつける。その衝撃でまた彼のは浮き上がるが、彼は意識を失ってなどいなかった。その鋭い目は獰猛に相手を見據え、ついにはセリギウスの攻撃を回避して互いが互いに摑み合う形になった。

互いに押し合う度に地面に沈みこんでいき、どんどんと亀裂がる。その場には神と人間、されどもその垣越えた武人としての2人が存在する。見據えた互いが、獲に食らいつく獅子のように瞳を鋭くさせている。

「まだ生きていることに驚きだ」

「るっせ。てめぇすぎんだろいい加減にしやがれ。..........っカハッ」

吐しながらも、その力が緩められることは無い。だが當然膠著狀態もいつかは終わる。それを破ったのはセリギウス。その巨軀を以てエリカを放り投げた。極限までボロボロの狀態の彼の目には、何が映ったのか。その瞳は絶などしていなかった。回転する視線の中で、その瞳は壁際の自分の獲へと注がれている。

「負けて...............たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！」

炎の獅子が吠えた。

壁に著地したエリカは地面に突き刺さったヴェルディンを抜き、壁を突き破る勢いで蹴り放つ。

「っ！？ちぃ！！」

あの一撃で壁に叩きつけて終わらせるつもりだったセリギウスには揺が走る。しかし眼前に迫るその戦斧を、首を捻ることで避たのだが、咄嗟のことで完璧には行かず、振るわれたヴェルディンは神の首に深く切り傷をつけた。

當然エリカは勢いを殺しきれずに地面に首から突っ込むはずだった。しかし、今度も超人染みた彼の能力で地面に著地する。ブレーキをかけた足の筋が悲鳴をあげ、皮からが飛沫となって飛び出す。だがそんなのを構わず、ついに獅子がその隙を得た。

再度蹴りあげた地面は陥沒が起きるほど。急速に接近されたセリギウスは反応ができない。カシュン！と、まるで死神が死に際に鐘を鳴らしたかのようにやけに明瞭に響いた変形音。

「ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇ！！」

全魔力をヴェルディンに注ぎ込むと、その打撃面が発火する。覇聲一槌、今までのどの一撃よりも豪快な一振がセリギウスを背後から襲った。瞬間重量何トンという暴力的なまでの一撃はさすがに神が耐えきれず、部で発でもしたかのように飛沫が撒き散らされ、そのまま塔の壁を突破って外で大発を起こした。

「へへ.................やった ............ぜ...................」

彼は満足したかのようにそのまま仰向けに倒れた。

最後のインパクト、それは彼の最強技である『覇砕點火』。これは相手の心臓に直接発する魔法式を送り込み、逆流させるを點火元ととして心臓から砕するという技。ただし送り込めるのは彼が纏う炎からのみで、更には全魔力を消費するため確実に対人戦一撃必殺だ。もちろんその他にも々と條件はあるのだが、それはまた後の機會に。

発は蕓だ！

というわけで初手はエリカです。まぁエリカと來たら次はあの人ですよね。