《能無し刻印使いの最強魔〜とある魔師は來世の世界を哀れみ生きる〜》EP.118 魔王は復讐する

――時は同じくし遡る。

辺り一面が漆黒に染まるその空間は、先程まで水晶が輝く鏡のような広間であったとは思えないほど。そしてその玉座で、漆黒の中でもくっきりとわかる純黒の剣を攜え、魔王は愚者を見下ろす。

「お主っ............この魔力量は!?」

「俺は昔から慎重でな、萬一の時のためにアタルガディス周辺から魔力を吸い上げておいた」

語るジークの魔力は依然として膨れ上がり続けている。

「大地の魔力を吸い上げるなど..........正気か!」

「面白いことを言う。目先ののみで何かを殺める貴様の方が余程狂気だろう」

ふっ、と含み笑い、次には表が消えた。

「もはや貴様にかけるけは無い。ただ無殘に、愚かに散れ」

後半、し聲を強めて言い放ったジークの一言でキリシアに戦慄が走った。キリシアは咄嗟にき出す。

「無垢に彷徨う魂よ、儂の傀儡となりて踴れ、踴り狂え!『傀儡喧騒ヴィリチュード』!」

両手を広げてそうぶキリシアの眼前にいくつもの人を象った人形が出現する。すると次々とその人形が立ちあがり、ジークに襲いかかった。

「魂を利用するとは、どこまで貴様は外道を進む気だ。『壊神滅砲グレア・マーズ』」

10門開かれた漆黒の砲が襲い來る人形へと飛來する。だがその悉くは軽々しくそれを避けた。

「お主の行など分かっておるわ、儂の権能にはイルーナの分も追加されていると分からんかっ!」

ジークへと迫る人形達は『壊神滅砲グレア・マーズ』を投影して放った。今度はジークに向けて漆黒の砲が飛來する。

「くだらぬ、それは貴様の権能ではない」

「そこに移することも知っておるわ!」

ジークが漆黒の砲を回避した先に新たな人形が出現する。様々な武を持った人形達がジークへと襲いかかった。

「壱ノ太刀『廻腐』」

橫薙に払われた純黒の剣に切られた人形からそのを溶かしていく。瞬く間にジークの剣撃が人形達を切り裂き、溶解され無へと帰した。

「先が見えていようとも反応出來ぬのならば同じだ」

「まだ殘っているぞ!」

直後、上空から降り注ぐ『壊神滅砲グレア・マーズ』。キリシアがるもう1セットの人形の方だ。ジークはそれを避け、魔法陣を眼前に投影する。

「黒潰し『黒圧』」

魔法陣から黒い球が飛び出し人形を纏めて取り込む。次の瞬間、べキッ、バキッ、ゴキッ、と鈍い音が聞こえたかと思うと、直ぐにその黒い球は人形ごと消滅した。

「玩で遊ぶのは楽しかったか?」

「まだ終わりと言ったわけではあるまい!刈り時じゃ!宣告申して魂を捧げ!『死神奇奏人形ヴェリンテ・リーパー』!!」

黒い外套から見える顔は白骨。鎌を擔いだ姿はまさに死神。その人形を中心として様々な武を持った白骨人形が赤黒い瞳を骨の奧から見せる。

「死までも人形にするとはな」

「儂は傀儡神、神であろうと人であろうと、死であろうと、手駒にするのは道理というものよ」

「くだらぬと何度言えば分かる?」

「そのくだらない人形達に、お主は今から殺されるのじゃ。嗚呼、儂の『死神奇奏人形ヴェリンテ・リーパー』達は一撃必滅じゃからのう!」

その言葉を皮切りに死神達が放たれる。四方八方から迫る死神達を剣を以て対抗するジークだが、手數にしずつ押されていく。

「死に間際くらいは弱音を吐いても良いのじゃぞ?」

「論外だ。この程度で俺が死ぬと思っているその慢心、そして未だにイルーナの権能が自分のものだと思っているその稽さ、話にならぬ」

「.........けはかけた。ならば後は死ぬのみじゃ!」

直後、死神達に魔法陣が描かれる。それは『壊神滅砲グレア・マーズ』、漆黒の砲だ。當然イルーナの権能により幾分か割り増しされたため今のジークでは死神の數放たれるため防ぐことが出來ず、至近距離で全砲門が直撃した。

「死ねい!魔王!!」

ニヤリと口角がつり上がったキリシアによって武を持った死神人形達が次々に黒煙揺らめく、ジークがいるであろう空間を切り裂く。しずつ収まり始めている黒煙の外には激しい鮮、確実に必滅の攻撃が直撃していることを意味していた。

「..........大口を叩く割には呆気なかったのう。なんじゃったか?楽に死ねると思うな?ふっ、笑わせよるわ」

嘲笑混じりに笑いをこぼすキリシアは『死神奇奏人形ヴェリンテ・リーパー』達を戻そうと作した瞬間――

「.........なっ!?」

――跡形もなく人形達が吹き飛んだ。

呪、『萬鎖す闇ブライトネス・ダーク』。いつ使おうかと迷っていたが、さすがにもう我慢ならぬ」

赤黒の魔法陣を足元に展開し、なお禍々しさを全面に溢れ出すその魔法陣の上で平然と告げるジークのには明らかに『死神奇奏人形ヴェリンテ・リーパー』達にけたであろう大きな切り傷がのあちこちに。現在も出が足元に垂れ続けている。だがそれでも、ジークは不敵に笑って見せた。

「な、なぜじゃ!貴様は確かに『死神奇奏人形ヴェリンテ・リーパー』達の攻撃をけたはずじゃ!何故生きているんじゃ!!」

ヒステリックに目の前の現実にキリシアは子供のようにぶ。ありえない、信じられないと、現実を否定するように。それを見てジークはやれやれと肩を竦めた。

「あまりにも軽い攻撃だったのでな、ショックで地獄から舞い戻ってきた次第だ。...............とまぁ、貴様以外にならば言っていただろう」

そう告げてさらにニヤッと笑い、嘲笑を含めて続けた。

「貴様の様な畜生の法則ルールに従ってやる義理などあるはずがなかろう?」

「っ..........!」

端的にそう告げた。キリシアはそれに二度目の戦慄を覚えた。自の持ちうる中でも上位にる攻撃をなんという事も無く生き殘った衝撃は大きい。

「もういいか?、もういいな?、玩遊びは楽しんだな?。今度はこちらの番だ」

直後、純黒の剣を床に刺したジークが素手のまま地面を蹴って走り出す。

「ばっ、馬鹿め!死にに來たか!」

口では嘲笑するものの、キリシアの形相、行は必死。恐らく彼が作できるであろう最大數の人形を出現させ、その全てに5門ずつ『壊神滅砲グレア・マーズ』を描いた。そのままその漆黒の砲を出する。

「死ぬのはお前だと何度言えばその低俗以下の脳は理解する?」

対するジークは何事も無く、足元に展開していた赤黒の魔法陣を眼前に移させる。わずか數秒後、漆黒の砲が赤黒の魔法陣とぶつかり合っては、その中心へと消えていく。呪が、漆黒を飲み込んだのだ。ジークはそのままキリシアに接近を果たす。

「なっ!?」

「遅い」

驚きつつも距離を取ろうとするキリシアの頭を左手で摑みあげては、その行を封じる。

「返してもらうぞ。『魂奪魔手リズィルガ』」

右手をキリシアの心臓に熊手で突き刺した。指先、手首、腕、ぐんぐんと深く深く突き刺さっていく。しかし奧深くへと侵食する一方で、その神からは一滴たりとも出が見られない。そんな不思議な狀態で、ジークは何かを見つけたのかそれを摑み引き抜いた。

「ぐぬぅお!?」

急に力したような覚に襲われ、キリシアは間抜けた聲を出した。そんなキシリアに構うでもなく、ジークは純黒の剣が刺さる場所まで距離を取る。いつの間にかその片腕にはイルーナが抱かれている。

「あ、ああ................ああああああああああぁぁぁ!!!?」

そしてそんなジークを見て、理解した途端、キリシアが奇聲をあげた。

「返せ!返せぇ!それは儂の.............儂のじゃァァァァァァ!!」

まるで子供が駄々をねるような、そんな稽な姿を連想させるキリシアは人形の大群をジークへと押しかける。正確には、その腕のイルーナへ向けて。その景を見て、かの魔王は再度冷徹な視線を向けた。

「おかしな事を言う。我が妻、イルーナは一度たりとも貴様のになった瞬間などありはせぬ。たとえ貴様のものになっていたとしても、それはまやかしに過ぎぬ。イルーナは過去生誕したその瞬間から、未來永劫、永久に俺のものだと決まっている。他の誰にも渡さぬ。.............それを、殺めた挙句に自分のだと謳う貴様は、死ですら生ぬるい」

再度、空間が激しく鳴した。ジークのが反映されるように眼前の赤黒の魔法陣が回転數を増やして行く。その指で魔法陣を描いたそれが、赤黒の魔法陣と融合しては、常闇の魔法陣へと昇華された。

「エルモラはこれを耐えたからな。貴様も耐えて見せよ」

――剎那、紡がれる覇砲

「『憐怨終黒闇葬砲ルズィド・ウェルグロヴァキル・リィ」

それはまさに世界の鳴か、有り得もしない終末の豪砲は無慈悲にキリシアを包み込んでは背後の壁を簡単に無へと帰す。接地面全てが更地と化し、その景は嵐のあとの慘事のよう。例えばこれをけた相手が現在のクルシュならば『逆証魔』で消せたかどうか、それほどまでの巨砲。

「ぐっ............がはっ...............!」

「別にそのまま滅んでもよかったが、まぁ耐えてもらわねば困る」

から出し、満創痍で仰向けに床へ倒れたキリシアへ片腕にイルーナ、片手に純黒の剣という狀態でジークは近づく。

「な、何......を.................」

「黒潰し『地獄葬』」

キリシアのを中心に半徑2m程の昏き闇が展開されると、すぐにズブズブとそのが闇へ吸い込まれていく。それを見たキリシアはもがこうと手をかすが、しかし闇がそれを許さない。

「っ!」

「無駄だ。底なし沼は知っているだろう?それと同じ原理だ。もがけばもがく程沈むのは早くなる。俺の魔から抜け出すはない」

その忠告も聞こえていないのか、必死の形相で抜け出そうとく。しかし當然沈み込むのが早くなり、ついには全て飲み込まれてしまった。ジークはその稽さにため息をつき床面の闇を中へ持ち上げると、闇は中ぐらいの球となって浮遊する。

「弐ノ太刀『開穿』」

一振した純黒の剣は空間を切った。それにより開いたのは次元の裂け目、その空間には果てしない無が続く。既に閉じ始めたその中へ闇の球を投下した。

「貴様には死程度では生溫い。人が死んだ先、地獄を模した悪夢の中で再生され続ける痛みと負のに苛まれ、永劫を無の空間で生きるが良い」

冷徹な視線で閉じていく空間へ向けてそう呟いた。そしてそれを最後まで見屆けると、ふぅ、とため息をついて呪を解除する。途端、純黒の剣が分擔され、いつもの廻剣と死毒剣に、さらにそこから2対の龍へと姿を変え、頭を垂れて寄せてくるそこにジークは手を置く。

「お前達も、よくやってくれた」

優しい微笑みでそう言うと、竜達は小さく「グオォ..........」とだけ鳴いてその場から消失した。

「..........さて」と、一間おいてイルーナを床に寢かせる。現在魂だけの彼は、目を閉じたまま何も言わない。

「...........やはり魂には語りかけれぬか」

そう理解して直ぐ、クルシュへと『思念伝達』を送った。

は、自の元へと。

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