クルシュ達が転移した先に、彼がいた。

「ジーク」

クルシュがそう言うと、ジークはこちらに気づいて振り向く。には激しい戦闘の跡が殘る。

「ル、ルイさん大丈夫ですかっ！？」 

「ああ、かすり傷だ」

「クルシュと同じこと言ってますわこの人.........」

狀態を見て真っ先に心配するミナと返事を聞いて呆れながら笑みをこぼすフィオーネ。対面のジークはクルシュの傷とリアに支えられて気絶しているアリスを見て穏やかに言う。

「取り返したか」

「ああ。そっちも目的を果たせたみたいだな」

「し手間はかかったが、まぁ誤差だ。.........クルシュ、頼みたいことがある」

「何だ？」

聞き返すとジークが一歩後ろに下がり、その先に彼がいた。銀灰の髪、見た目150センチ程、現在目を瞑って仰向けになっている彼は、間違いなくイルーナだと、クルシュ自も思うほど。そして仰向けになっているのが2人。

「どういうことだ？」

「イルーナの魂、イルーナの。2つが分離している」

「確か傀儡神は死者の魂を抜き取るんだったか」

「ああ、その結果がこれだ。...............頼めるか？」

クルシュはジークの橫をすり抜けてイルーナの元へ向かう。そして膝を著いた狀態で容態を確認した。

「........魂が眠り、は死んでいる、か」

そう呟いては、イルーナのと魂を覆うほどの魔方陣を足元に展開した。

「リア、俺の右肩にれてくれ」

「いいけど.........なんでよ？」

「今の魔力殘量じゃあとし足りなくてな。何せ今から行うのは神をどうこうする作業だ、俺達のような人間に行うとは訳が違う。お前は俺の肩にれてくれるだけでいい、あとはこっちで魔力をし貰う」

「わ、分かったわ」

し遅れてアリスをミナに預けたリアがクルシュの肩にれる。

「んぁっ..........」

同時にリアから抜き取られた魔力の覚に彼はしだけ艶のある聲を出してしまい、座り込んだ後にし赤面する。だが當然、今ここにそれを気にする者がいるはずもなく。

「ジーク、お前はイルーナのにれてくれ。そして祈れ、功の次第はお前の祈りの強さだ」

「ああ」

ジークも膝をつき、イルーナの肩に手を置いた。それにて準備が整う。直後、魔法陣が輝いた。

――転生魔『思想祈念リ・ウェルネス・シア』

発した魔は彼が夢見た時代へ向かうために使った『転生魔』。今回はそれをさらに改造したものだ。名の通り、祈りの強さが影響するし特殊な式となっている。

――失った。

――する者を。

――大切なものを。

発したクルシュに、思念が流れる。名の通り祈りが思想となってれ出ている。當然それはクルシュにしか屆かない。

――守れぬ。

――死ぬのを見ることしか出來ぬ。

――俺は無力だ。

――肝心なをこの手から零してしまう愚か者だ。

彼と死に別れた時のだろうか。気丈に振舞おうとも、必ず心には負のが溜まる。悲しみのが溜まる。誰だってそうだ、當然俺も。する者との別れなど、特にだ。

――だからこそ

――だからこそ俺は

――必ず見つける。

続いて流れ込んできた思念に、俺は確固たる思いをじた。固く強い決意をじた。

――その魂を。

――その神を。

――どこにいようとも必ず。

――必ず見つけてみせる。

――それが俺の贖罪だ。

この決意だけで、彼を探し続けた。する者を、無限に近い時間を賭して。

――だからこそ

――今度は必ず守り通す。

そこまで伝わってきた所で、俺は瞳を開けてイルーナを見た。

「ここまで想われ、道はつくった。いつかお前は俺に伝えたな、ジークの幸福が自分の願いだと。だがその幸福にはどうやらお前も必要らしい。想いを、願いを司るなら分かるはずだ。帰ってこい、イルーナ」

その聲が伝わったのか、はたまたジークの想いが伝わったのか。と魂、2つがり輝き、空中へと上昇する。そしてそのままを放ちながらそのふたつが融合し、1つになった。

「せ、功したの........？」

「ああ、恐らくはな」

ゆっくりと下降してきたそのを、ジークが抱き抱えるようにしてけ止めた。2人の空間にはクルシュもリアも見守ることが當然だと認識して黙った。直後、その瞳がゆっくりと開かれた。

「目が覚めたか」

「...........ここは夢なのだろうか？」

「そうだな、傷だらけの俺がお前を抱いている狀態が夢であると言うならば、それはもうしマシなものに替えねばならぬ」

イルーナの頬から、雫が落ちた。

「.......本當に、本當に.................夢じゃない！」

「先程から何度も言っている。夢ではない、現実だ」

「探して.........？本當に私を探して.........？」

「昔言ったな、いくら離れていようとも必ず見つけ出す、と。どうだ？有言実行された気分は」

「.........會いたかった。會いたかった！あなたに、ずっとあなたに！」

「俺もだ。............待たせたな、イルーナ」

大粒の涙が零れたイルーナはそのままジークのに埋もれた。その空間には嗚咽が響き、リアやミナ達も涙を流していた。

「............」

「こういう系には強いのかな？フィオーネさん？」

「っ..........いえ、そんなことは無いです」

ただ1人を除いて。

「うぅ..........な、泣けるわ！」

「そうか」

「そうかって..........あんたも涙もないわけ？」

「いやまぁ..........もういいか」

「？、クルシュ？」

「すまないがあとは頼む」

「あとは頼むって..........ひゃっ！？」

その場の空気を壊すようなリアの驚愕の聲が響く。なんとクルシュがリアのへと倒れて行ったのだ。なんとかけ止めたリアがだが、當の本人はピクリともかない。

「ちょ、ちょっと........！」

「クルシュさん........？」

「あー、気絶してるね、これ」

エリルが肩を竦めながらそう言った。

「き、気絶って................クルシュが！？」

「魔力全消耗での魔力欠乏癥だね。それほどまでに膨大な式だったんだよ」

「じゃあ帰りは..............」

「それならば心配はない」

ジーク達の方から、聲がかかった。イルーナが涙を拭いて、こちらを見ている。

「問題ない、人の子。このが蘇る時、彼が私にひこうせん？なるの作方法を編み込んでいた。故に私はそれを知している」

「だそうだ。心配せずともこうして言った時のイルーナは問題ない、帰るぞ」

そうしてその場からジークの転送にて全員が消えた。誰もいなくなった唯一の玉座の間で、そこにふらりと現れたのはローブを被った小人。

「やれやれ、隠れていれば出ていくタイミングを失ってしまいましたが、まぁもう無理ですね。いやはや、あの天使と魔師をぶつけて相殺させ、そこで私が殺る予定だったのですが、殘念でしたね...........」

するとくるりと回って歩き出した。

「まぁいいでしょう、他にもやり方はあるんですから。いつか見ていなさい、魔王、天使、そして魔師。必ず次は殺して差し上げます」

そう言って小人、分魂神メギルストスはその場からいなくなった。

帰る後にイルーナが作方法を間違えそうになったり地面につまづいて転けたりしたがそれはまた別のお話。

あの後、リンドハイム王國はアルキメデス帝國を制圧、占拠。地下牢には何百という奴隷が捕えられいたために一旦王國へと輸送。元帝國の民や貴族達は全員が全員ここが帝國であったなどの記憶がなく、誰もが口を揃えて"ニルヴァーナ皇國"の名を語った。そしてそれを聞いた兵士達も思い出したかのように帝國が元はニルヴァーナ皇國であったと認識し始め、話は拡散して行った。後に大きな出來事の発端になるが、當然そんなことになるのを知るわけもない彼らの翌朝。

一人のの目が覚めた。瞳を開き、最初にじたらかいと木目の板が見えるという視覚。上を起こすと窓から差し込んだ眩しいが彼の若干の眠気を覚ました。

「おはよう、アリス」

その聲の方に向くと、まさに真橫、木イスに座ってアリスを見ているリアがいた。

「っ、あ.............」

いつもなら普通に話すだろうアリスも今日ばかりはそうはいかない。當然思い出されるのは塔での出來事。リアへ行った仕打ちを思い出して言葉を詰まらせる。

「何？どうしたの？」

「あ.............と...........えっと............その」

今更こんなことを言っても許されるのだろうか、そんな思いが脳裏を過って彼に文句を言わせない。罪悪が彼の行を抑制する。

「あ、手とか大丈夫？」

「え？」

「あんたクルシュと戦って結構な凍傷負ってたの。まぁ眠ってるのか気絶してるのかしてたから覚えなんてないんじゃないかしら」

「だ、大丈夫............」

「そ。じゃあ何か食べるもの持ってくるわね」

「あ................リ、リア！」

名前を呼ぶ聲に、踵を返していたリアがピタリと止まった。そして振り返って何かと視線で問掛ける。

「そ、その.............怒って、ない？」

「ん？何をよ？」

「む、刺したの............」

「ん？あ、あれならクルシュの魔道のおかげで助かったわ。自分の心臓への攻撃を敵意を持つ他の誰かの心臓へと移させる魔道のおかげでね。ていうか意識あったの？」

「..............」

ほんの數秒の沈黙の後、アリスはコクリと頷いた。その反応を見てリアは、はぁ、とため息をつき再び椅子に座る。

「當然怒ってるに決まってるでしょ。痛いもの、あれ」

「..............」

「だから、本當のことを話してよ。何があって、どういうわけでクルシュと戦ったのか」

「.......うん」

そこからアリスはに起きたこと全てを話した。捕まった後、牢獄にれられ飢という名の拷問をけたこと、謎の天使の囁き、そして意識のあるままをられていたこと。

「ふーん、天使、ね」

「よく分からないけど............」

「もうこの手の事には慣れたけど、まさか天使なんてねぇ...........」

「それで..............その」

し言葉に詰まって、しかしながら何かを決心したように口を開く。

「多分、リアに言ったあの言葉は..............私の本音」

「..............」

その言葉に今度は逆にリアが押し黙った。そこへさらにアリスは続ける。

「どうしてか分からないけど、そう思ってしまった。.................最低だよね、私」

その言葉にしだけ影が落ちる。

「確かに、嫉妬だけで人を殺せるなんて、正気の沙汰じゃない。それは確かよ」

「っ.............」

「でも今は？今はどう？」

「それはっ................わからない」

その返事に、リアはニコリと微笑んでアリスを抱きしめた。

「分からないってことは、なくとも完全にそうじゃないってこと。なら今はそれでいい。それに多傷つけられたって私はアリスを嫌ったりなんかしないわ。もし間違っていたならそれを正してあげる、外れた道を行くなら引き戻してあげる、最後まで信じてあげる、それが友達ってもんでしょ？」

「リア.............」

唖然と見つめたアリスの瞳から雫がこぼれる。そしてそのままリアを抱きしめる力は強くなった。

「リアっ！................私！私ぃ............！」

「辛かったのよね、苦しかったのよね。うん、大丈夫よ、大丈夫」

「ごめんなさいっ..................ごめんなさいぃぃ...............！！」

「うん、大丈夫だから。................お帰りなさい、アリス」

しの間、その場にはの嗚咽が響いていた。

最との再開、そして親友との和解。

はい、遅れてしまってすいませんお待たせしました。筆が乗らない時って、あるんですよー(言い訳)

途中の事後経過の事については言葉足らずな文なのでし補足を。

帝國が完全占拠されたことによって今まで何故か忘れていたニルヴァーナ皇國という名前が帝國民や貴族の記憶に浮上、また王國の方も急にその単語が浮上して話題になる、と言ったじです。

今後の予定としましてはとりあえず當面は5章の執筆ですが、その5章は最初だけシリアスが名のこの小説に甘いラブコメ展開が..........？と言ったじです。

こう言いますのも、し迷っている部分があるからです。ええ、々と。なので予定は未定と。プロローグはちゃんとしたものですよ？ええ、はい。まぁきっと、ついに葉うのかもしれませんね、が。

そこら辺もお楽しみということで、次章でまたお會いしましょう