《自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十數年酷使したはいつのまにか最強になっていたようです〜》第17話:過信ってのは判斷を鈍らせる。過剰な力を持っているとロクなことが起きない。
俺たちは最上階の一歩手前までたどり著いた。
いや正確には最上階であろう場所だ。
重圧な雰囲気を纏った扉からは嫌なじがプンプンしてくる。
この先を潛ったら戻れない気すらする。
「どうしたの?」
「ん?あぁなんでもないよ。……最後の封印を解きに行こうか!」
「はーい!」
俺とリムは扉に手を當てた。
◇
ケイド達が頂上に著いた頃。
し下の階層で冒険者3人が魔相手に苦戦していた。
彼らは次々と襲い來る魔を切り捨てては進み、切り捨てては進んでいるが數が多い。
持ってきたポーションも盡きかけようとしていた。
思い返せば戦闘ではケイドがタイミングよく回復薬を渡していた。
回復薬の過剰摂取はに負擔がかかる。
全を回復し過ぎてしまい、大化などが起きる場合がある。
そのタイミングや危険を知してたケイドは流石と言える。
しかし彼らの考えは違っていた。
全てケイドが悪い。ただこの一點だった。
今回もケイド如きがこの量を捌けるはずがない。
何かズルい方法で自分たちにけしかけているんだと考えている。
ケイドを追放してから楽なのは初めだけだった。
最初は口うるさいおっさんを追い出せたことを喜んだ。
今まで我慢していたことは我慢する必要はなくなった。
だから自分達が思うように自由に行してきた。
絡まれたらボコボコにした。
酒に酔って気分が悪ければほかに八つ當たりもした。
SSSランクという権限で恫喝や恐喝もした。
全てが楽しかった。
しかしすぐに終わりを迎えた。
行が目に余ると注意され、これ以上問題を起こすなら冒険者の資格を剝奪するとも言われた。
名譽回復のために魔王討伐をすることにもなった。
だがそれは厄介払いされただけだ。
いつしかザブラ達は國からも同胞からも嫌われていた。
それは魔大陸でも同じだった。
しかしここは人族の管轄は殆どない。
何をしても咎められることはない。
彼らはまたやりたい放題へと変わっていた。
しかし目的は忘れていなかった。
魔王討伐。これをし遂げればまた元に戻れる。
いや元以上か。英雄として持て囃され、後世に語られる存在となれるだろう。
彼らは魔王討伐に燃えていた。自分達の野のためにも。
そして怒りの矛先は全てケイドに向けられていた。
自由になった反面めんどくさいことも増えた。
ケイドのせいにした。
他の冒険者ともめた。
街の出り止までされた。
全てケイドのせいにしていた。
いつしか悪いことが起きると、全てケイドのせいにしていたのだ。
ただの思い込みだが、時が過ぎれば思い込みも現実と區別がなくなる。
ひさびさにケイドと會った時、一瞬現実を見そうになったがすぐに振り切った。
安心した寢顔でおぶられている子供を見て、実はケイドがいい奴なのかと思った。
しかし長い年月をかけて恨んできた思いは消すことができなかった。
パーティでもし亀裂がっていた。
全員が全員に不満を持っていた。
今まではケイドを共通の敵として認識していたが今は違う。
そのケイドも今はここにいない。
メンバー同士の不満はケイドを悪者にすることによってなんとか保たれていた程。
この戦闘でもそれは出ていた。
「ザブラ!ポーション投げてよ!」
「あぁ!?今こっちやってっから無理なんだよ!」
「イコル、私のでいいなら……」
「はぁ?持ってんならさっさと出しなさいよね!」
戦闘にるたびにこれだ。
今まで培ってきた連攜はほとんどなくなっていた。
個人としては確かに強いので、今までピンチを迎えたことは殆どない。
だが、言葉も強くなり相手を思う余裕はない。
「だぁ!くそッ!!全部あのおっさんが悪い!!」
ザブラに至っては掛け聲になっている。
報がない狀態での塔攻略。
準備が疎かであれば死ぬ危険すらある。
それをケイドが行けるなら俺たちもいける。と勘違いからの今だ。
「ねー!もうおっさん死んでんじゃね?」
「気持ち悪いの……生きてそう」
ようやく一區切りをつけた時、イコルが口を開いた。
フレイもそれに乗っかるように聲を上げたが、ザブラには屆いていないらしい。
何かブツブツ言いながら剣の手れをしている。
「ねー聞いてんのザブラ」
「あ?うっせーな。おっさんみっけたらぜってーぶん毆ってやる」
この大量の魔もケイドが仕掛けてると思っているのだろうか。
魔とはいえ自分より遙かに強い相手には本來手を出さない。
ケイド達が順調に進んでいたのは訳があったのだ。
そのツケで生き殘っていた魔がザブラ達に襲いかかってるとも言えるが……。
「もうそろそろ頂上だろ。おっさんの死も見てねぇってことはそこにいる」
「最悪ね。魔王との戦いで邪魔しなきゃいいけど」
「……汚い」
3人はし休憩を取ると、頂上へ向かってまた歩き始めた。
◇
「リム!避けろ!!」
それは開けた瞬間だった。
俺は目の前から放たれたナニカを察知し、とっさに聲を上げた。
予知眼ビジョンアイが発する直前まで殺気を抑えていたのか。
それとも扉が開いた瞬間に何も考えずに放ってきたのかわからない。
だが間違いがないのは、俺たちが狙われてたってことだ。
間一髪避けることは出來た。
俺もリムも無事だ。嫌な汗だけがひたいを流れている。
「ケイド、あれが今回の目標?」
「あ、あぁ。そのようだな」
いつの間にかリムが戦闘モードへ移行している。
あの恐ろしい攻撃を避けるのに通常モードでは無理と判別したのだろう。
俺の予知眼ビジョンアイが発したってことは、そういう事だ。
だがしまずい事態になっている。
避ける時に分斷されるような形になった俺たちの目の前には悪魔達がいた。
1人は俺たちが攻撃を避けたことにし驚いた顔をしている男。
リムの目の前だ。
その男は青白いをしており、鍛え抜かれた筋が見える。
頭からは2本の立派なツノ生えており、濃厚な魔力を纏っていた。
間違いなく強敵。今までのどんな魔よりもだ。
そして俺の目の前にいるのは黒いの男。
目が赤くギラついていて、の線は細いが纏っているオーラは強者だ。
赤い髪を揺らしながら俺たちを睨んでいやがる。
「ほう、今のを避けたか」
リムの前にいた男が口を開いた。
その聲は靜かでありながら何かを確証するような言い方。
どうやら俺たちが來るのを待っていたみたいだ。
「リム、俺が相手をするかーー」
「絶対にダメ。ケイドに何て言われようとリムも戦う」
リムが俺に真剣な眼差しを送ってきた。
こうなったリムは歯止めが効かねぇ。
多分これ以上俺が何を言っても無駄だ。
「……おーけぃ。んじゃそっちを頼めるか?」
「はーい。ケイドも気をつけてね」
2人で立ち上がり構えを取る。
それを待っていたかのように悪魔2人も構えを取った。
「邪魔者は私が相手をする。ベリアルはそっちのおっさんを頼んだぞ」
「承知しました」
おいおいおい。
見ず知らずの悪魔におっさん呼ばわりされたぞ俺。
本來悪魔なら俺よりも年上……まぁいいか。
ここで勝てなかったら終わりだ。
最後の封印、必ず解いてやる。
そして、未來を摑む。
ここが予知眼ビジョンアイで見た景だとしてもな。
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