《められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手にれたので復讐することにした》12・歪んだ笑み
スヤスヤと寢息を立てる優希とパンドラ。
焚火の火は消え、眠るにはちょうど良い靜寂と暗闇が二人を包む。
「さぁ~、お~行きなさ~い」
カルメンの掛け聲で不自然な葉音が立った。
優希達は変わらず夢の世界へ意識を溶け込ませている。
カルメンがっている魔族は十五。完全回復しきれていないのもあるが、これ以上はカルメンもに作しきれないのだ。
が石でできた蜘蛛――鋼蜘蛛。人間と同サイズで両腕に鋭利な刃を持った諸刃蟷螂。摑んだものを地面に引きずり込もうとする地獄土竜。それに、優希を恐怖に陥れた魔、狩猟虎もられていた。
気配を自然と一つにし、音足音を最小限でしずつ近づく。
疎らに並んだ木々のから姿を現した魔族の瞳は暗闇であろうとも優希達を捉えていた。
今だ起きる気配を見せない優希とパンドラ。カルメンの実力はなかなかのものだ。いくら一流の恩恵者でも寢るときは寢る。しかし、完全に眠るわけではなく、いついかなる時も反応できるように構えているのだ。
しかし、優希にそんな蕓當は出來ない。故に、カルメンは完全に無防備だと判斷したのだ。
準備は整い、カルメンの一聲で取り囲む魔族は一斉に優希に襲い掛かる。
「さぁ~聞~かせなさい。あなたの斷末魔だ~んまつまを……GO!」
カルメンの言葉は魔族たちまで聞こえないほどに小さいが、それでも【共】を使われた魔族はカルメンの命に従い襲い掛かる。鋼蜘蛛は鋼の糸を噴き出し、諸刃蟷螂はその両手の鎌を振り下ろす。
優希の脳天に鎌が直撃。かと思われたが、
「キィァェァ゛ァ!!」
両手の鎌を摑んでそのまま鋼糸が迫る方向に投げつける。鋼糸が諸刃蟷螂に巻き付ききを封じた。
間髪れず地獄土竜が優希の足を摑んで地面に引き込もうとし、優希のきを止めたところで、狩猟虎が優希のに牙を向ける。
しかし優希、狩猟虎の顎を裏拳で破壊。狩猟虎の下顎が飛んでいき、鋼糸を出していた鋼蜘蛛の頭部に牙が突き刺さる。狩猟虎は一瞬で絶命するも飛びかかった勢いは消えず、優希に大牙が迫る。優希はその牙を摑んで足元で優希の足を摑んでいる地獄土竜の脳天に突き刺す。
まだまだ増える魔族を優希は簡単にあしらい、が渇いた服に再び鮮を浴びる。
そして、頭部が破壊されても生きている鋼蜘蛛のを摑んで、
〖接続アクセス〗――〖検索リサーチ〗ッ!
「――見つけたッ!」
優希は周囲の魔族を躙するとある方向に走り出す。
木々の隙間を最小限且最速のきで移し、右手には鋼蜘蛛が吐き出した鋼糸を持っている。
そして、數秒経たず優希はついに視認した。
太い枝に座って冷や汗を流すカルメンを。
カルメンは優希と目を合わせると激しく揺するが、鞭を構えて応戦する。
魔族の群れを一瞬で倒したことは驚くが、所詮魔境の魔達。自分には勝てまいと踏んで下手に逃げるより応戦した方が良いと判斷。何よりも、こいつは自ら手を下したいというが出ていた。
「さ~かかってき~なさい!」
********************
「グフッ……一何故な~ぜですか」
鋼糸で樹に縛り付けられたボロボロのカルメンは、現狀の理解が出來なかった。
圧倒的に優位だったはず。優希との練度差もかなりあったはず。なのにカルメンはあっけなく敗北した。
「何故ってこっちが聞きたい。なんで俺たちを狙っていたんだ?」
「そ~れはただた~んにわたくしの趣味しゅ~みであります。ここは私の狩場か~りば。あなた達はた~またま標的になっただけなのですよ」
縛られながらも余裕そうな口調。
再び火を焚き、殺した魔族をダガーで皮を剝いでを焼く。
出來るまで優希は座り込み、パンドラも起きてが焼けるのを待っていた。
「今度こ~んどはわたくしの番ば~んなのです。あ~なたは完全に眠りにつ~いてたはず」
「え、あぁ、まぁ寢てたからな。さすがに些細な気配で完全に起きれるような訓練はしてないんでね。あらかじめ設定しておいた」
「設定とはど~いうことな~んですか?」
縛られながらにカルメンは首を傾げる。
そして、優希は答える前に考え込むように數分間黙って、
「……相手の攻撃パターンに合わせて対応できるようにしたって言えばいいのか? ほら、熱いものにれると無意識に手を放すだろ。あんなじ」
本人もわかりきっていない説明にカルメンは腑に落ちないを抱きつつも、自分の狀況が危機を駆り立てて次の質問の答えに期待する。
「で、では次つ~ぎの質問で~す。ど~してわたくしの場所ば~しょが分か~たですか?」
「これも何て答えばいいんだろ。お前がっていた魔からお前のマナを辿って逆探知したって言うのか?」
疑問形の最後な上になぜか明確な答えをパンドラに任せようと顔を見る優希の姿に、カルメンも先ほどからの疑問が我慢できずに口から吐き出す。
「な~んであ~なたが分かってな~いんですか?」
カルメンの言葉に優希は頭を掻きながら、
「実のところ俺も分かってない。なんせコイツにさっき聞いたばっかだから」
そう言って優希は隣で焼けるを見ているパンドラを親指で指すと、パンドラは長い髪を掻きあげる。
カルメンはまたも腑に落ちない表。疑問を解消するために質問しているはずが、そこに浮かぶは疑問符のみという狀況。
「し~かし、あ~なた達はそんな會話か~いわはしていなか~ったはず!」
カルメンのぐるぐるに渦巻いた奇抜なゴーグルは優希を捉えたまま放さない。
縛られてきできないながらも、前に乗り出すかのように言葉に熱をれる。浮かぶ疑問にがくすぐられるようなもどかしい覚が我慢できない。プライドが高い分自分が何故負けたのかを早く知りたいのだ。
そんな中、パンドラは名指しされ自分の手番が回って來たのを待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべる。
「意識がはっきりしていない奴なら私の天恵〖純白の園ヴァイスガルテン〗に連れていくことができる」
〖純白の園ヴァイスガルテン〗が彼の天恵。優希がその世界に來たのは二度目だ。最初は弾丸鼠ガンガル―にを破壊された時、生死の境を彷徨っていた時、彼は優希をその世界に導いた。
そして今回、優希が眠りにつくかつかないかの境にいた時、彼は導いた。その世界ではや神の影響はけるが、現実の時間は數秒のもの。
その世界に導かれた優希は力の使い方をし教わったのだ。
「おかげでしマナが回復した魄籠は一瞬で空っぽ。もともとなかったから數分しか維持できなかったがな。それでもこの場での最低限のことは教えられたぞ」
初めての疑問の解消にもどかしさが軽減する。
しかしながら、聞きたいことはまだまだある。だが、カルメンのこの行はあくまでも表向きだけ。稼いだ時間でどうやって逃げるかを模索しているのだ。
「あ~なたからはま~ったくのマナもじられなか~ったはず。し~かしあのスピードはど~いうことですか? そ~れにあ~なたは私の天恵に掛か~っていると思っていたは~ず」
カルメンを見つけてからの移の速さ。優希のマナから【迅腳】を使ったようには思えず、かといってあの速さときは槍兵並み。しかし優希は槍を持っているようには見えず、とりあえず目につく武は腰に攜えたダガーのみ。もちろん、本來の恩恵とは違う武を持つ者もいるがメリットがない。なぜなら恵はその恩恵に合っているため他の武では最大限の威力を出せないのだ。
「どういうことって言われてもなぁ。ただ単に走ったとしか言えないし。あと、俺が真っ先にお前の所に行ったのは天恵が解除されてると思ったからだ」
優希の推測では、周囲の魔達はカルメンの天恵のせいで襲ってこれないのだと思った。優希が外に出れないのと同じように外からもこちらに侵できないのでは? と。
優希が自由に行出來ていた時から、魔族の監視はあったが気配はあった。しかし、行が制限されてからは視線はじても気配は無かった。つまり、離れた場所からの監視、もしくは近づけなくなったと推測。
そして、魔達が襲ってきた時、優希は能力が消えていると踏みカルメンを探して向かった。
「ま、能力が解除されてなかったらなかったで良かったんだけど」
「そ~れはどういうこ~とですか?」
カルメンが返すと、もう食べ始めているパンドラを目に、優希は焼けたを手に取って、
「能力が解除されてなかったらこの森、燃やすつもりだったし」
魔境、魔界の樹が元の世界と同じかは知らないが、燃やせることは今こうして証明されている。
そして、葉が重なってつながるこの森は一本燃やせば、勝手に全にいきわたり、敵をおびき寄せるまたは追い出すことができる。
しかしこれは、あまり使いたくない手だった。なぜなら魔族を敵対するこの世界で何故この手を使わないのかが分からなかったからだ。森を焼き盡くせない理由が分からない以上、この手段は賭けになる。
「さて、質問にも答えてあげたし、そろそろ逃げる方法は見つかったか?」
優希の言葉にカルメンの心臓は強い鼓を生み出した。
額から出る冷や汗は、優希の歪んだ笑みで収まることを雄れている。
「まさか、ただの好奇心だけで質問してたのか? お前が俺やパンドラの返答を聞いてるとき、二割は聞いてるけど殘り八割ほどは別のことに頭を回していたな。上手く隠してたけど分かる奴には分かる」
優希は元の世界では人の態度や表を伺って生きていた。
まさかここで活きてくるとはと優希は何とも言えない気持ちが湧き出る。
揺が顔に出ているカルメンに、優希は歪んだ笑みを浮かべたまま、
「あんたも死にたくないだろうし、俺の提案をけれるなら命は取らないでやる」
その提案を聞かないまま、カルメンは勢いよく首を縦に振る。
その行に後ろで魔のを食しているパンドラは、あ~あといった憐みの表。
「俺の提案なんだが、俺は人間についてよく知らない」
樹に縛られたカルメンに、腰のダガーを抜いて近づく優希は、その剣先を首筋に突きつけ、でるように鉄の冷たさをカルメンに伝える。
「どこを切れば死ぬのか、どこの骨を砕いたらどうなるのか……いろいろ知りたいことがある」
淡々と言う優希にカルメンの心はざわつく。
久しくじる死の恐怖。時間を稼ごうとカルメンはを震わせながら、
「こ、殺こ~ろさないは~ずでは……」
カルメンに掛かる謎の重圧。それを我慢して吐き出した言葉に、優希は嘲笑うかのような笑み。
「死にはしないから大丈夫。あんまり記憶にないけど、俺も死ななかったから。自分の骨を生で見た時は軽くトラウマになりかけたぜ」
あくまでそれはパンドラの力があったからだ。
普通なら優希は死んでいる。それを理解した上で言うのだ。実験になれと。
「し、し~かし、そ~れは――――ッ!?」
カルメンの言葉を遮るように、優希はダガーをカルメンの足に突き刺す。
びた口調は一瞬で斷末魔へと変わる。鋼糸に縛られているは後回しに、見える場所にダガーを刺し、切りつけ、抉る。
優希に付著したはもう誰のものか分からず、響く斷末魔は優希を快楽の世界にう。
パンドラは興味薄にその景を見ながら、食い終わった魔の骨を捨てて橫になる。
優希があの時の弾丸鼠ガンガル―の気持ちをじる頃には、カルメンは以外ただの濡れた塊へと変化していた。
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