《スキルイータ》第十五話
やっと44階層フロアボスの前に來ている。
長かった、主に、カイとウミの喧嘩が、兄妹喧嘩だったのだが、兄が妹に勝てるはずもなく、ウミの主張が通された。
結局、どちらの主張を採用しても、大きな違いがないことは、すぐにわかったんだが、それでもカイとウミは納得できなかったようで、同じ場所にたどり著くのに、二種類の経路をたどることになった
「二人とも満足したか?」
『主様。申し訳ありません』『カズ兄ごめん』
『ウミ。何度も言いますが、主様に向かって!』『だってぇカズ兄は、カズ兄だよ』
はぁいつもの・・・
「二人とも・・・」
『カイ兄も、ウミ姉も、あるじの前ですよ』
『あっ申し訳ありません』『ごめ~ん』
「はぁまぁいい。いくぞ!」
転移式のようだ。
魔法陣がっている。低階層で、この方式を見たときには、戸ってしまった。確認のために、俺だけが乗っていたら、魔法陣が発してしまって、俺だけでボスに挑むことになってしまった。簡単に倒せたから良かったが、強い相手だったりしたら大変なことになっていた。
その教訓から、呼子を俺が使えるようにして、魔法陣には全員でタイミングをあわせて乗ることにしている。
俺が殘って、カイとウミとライだけで魔法陣を発させようと思ったが発しなかった。そのことから、俺がいないとだめなのだろうとい結論にはなっている。ただ、一度でも、通っていれば、カイとウミとライだけでも魔法陣は発する。そういうものだと思って使うことにしている。
44階層のボスの前に出た。今までと同じで、魔法陣から出ない限りは、襲ってこない。そして、この魔方陣は一方通行ではない。出てしまうと、戦闘が終わるまで消えているが、一定時間、魔法陣に留まっていると、もとの場所に戻されるのだ。
魔法陣は、その時點で消えてしまって、一定時間が経過しないと再度現れない仕組みになっているようだ。
フロアボスは、一匹の場合もあれば、複數のときもある。今回は、複數のパターンのようだ。
蛇の魔が、眷屬を従えて待っている。全部で、40匹はいそうだ。ちなみに、蛇の魔は、どれも味しく食べられる。最近わかってきた事だが、人形の顔がある魔は食べられないか、味しくない。ラノベ設定なので、オークは味しく食べられるのか思ったが、食用には向かなかった。素直に、ボア系の魔を食べたほうが味しかった。
「いくぞ!カイは右側から、ウミは後ろで援護。ライ。アインスとツヴァイを呼び出して、カイを援護。エット/トヴォで、ウミを守れ。ライは、俺と一緒に正面から行くぞ、遊撃に、ドライとフィーアとフェムを呼び出しておけ」
『はい』『わかった。スキルは?』『了解しました』
ライの眷屬である、蜂で最初の一匹には、ヌル。それから、進化した5匹に順番に、"アインス/ツヴァイ/ドライ/フィーア/フェム"と、名付けた。蟻の最初の一匹は、ゼーロ、それから、進化した順番に、"ウーノ/ドゥーエ/トレ/クアットロ/チンクエ"と、名付けた。蜘蛛は、ヌラと名付けてから、"イェダン/ドヴァ/トリ/チェティリ/ペト"と、名付けた。エントにも名前を用意してある。エルダーエントには、スーンと名付ける予定で、"ヌン/ソーン/サーム/スィー/ハー"を予定している。五稜郭の各場所を守ってもらうエントのリーダにつける予定にしている。
俺とライが中央の、眷屬たちを撲殺していく、力も速度も違うので、それほど苦労する事なく躙できる。ライの酸弾が強力すぎるという事もあるが、仕留め損ないを俺が倒す程度になっている。
カイを見ると、同じ様に、眷屬を一匹一匹かくじつに屠っている。ウミのスキルによるサポートがかかっているようだ。
ドライとフィーアとフェムが、多分ボスであろう、一を翻弄している。倒す事はできないようだが、速度で翻弄している。
「カイ!そっちが片付いたら、ウミと一緒に、ボスを頼む。俺とカイは、周りを始末する」
戦闘時間15分が過ぎたくらいで、大勢は決した。ボスは、カイとウミの攻撃でいつ倒れてもおかしくない狀況になっている。眷屬も數匹を殘して、抵抗できない狀況になっている。
「ライ。掃討を頼む」
『わかりました』
「カイ。ウミ。楽にしてやれ!」
『はい!』『わかった』
俺は、一旦下がって、カイとウミとライのきを見守る。
ボス蛇の頭に、ライの爪が食い込む。ウミから放たれた、雷のスキルがカイを通して、ボス蛇に伝わる。それが致命傷になったのだろう。を震わせながら、ボス蛇は、地面に倒れた。
「カイ。ウミ。よくやった。魔力の吸収と、他に生きている者が居ないか確認してくれ」
実は、前にコボルトとゴブリンの大群を、フロアボスとして対峙したときに、死の中に紛れていたコボルトを一匹殺しそこねていて、下の階層に行く扉が開かない狀況になってしまった事がある。それから、確実に殺す事と、カイとウミとライに、魔力の吸収を行うようにさせている。
これで、44階層も踏破した事になる。
『主様。吸収終わりました』
周りを見ると、死は綺麗になくなっている。出たスキルや魔核は、いつもどおりになっているのだろう。
「さて、45階層に行くか!」
/***** ??? Side *****/
「どうなっている?」
「は?」
豪華な部屋に、男が二人。一人は、椅子に深く腰掛け、手にはグラスを持っている。明らかに、酒に浸っている。
全から怒りをじられる男は、高価な法をまとっているが、だらしないがそれを安に見せている。
座っている男は、丈夫と言ってもよいイケメンだ。年齢は、今年で45になるはずだが、20代半ばでも通用するだろう。
「”は?”ではない。約束はどうなっている?」
「約束?そちらと約束した事は果たしたと思うぞ?」
法を來た男は、肩を震わせながら
「貴様!この街から、汚らわしい亜人を排除する約束だろう?」
「排除しましたよ?」
「どこがだ!街中に、エルフやドワーフだけではなく、獣人まで居るぞ」
「あぁ奴隷の事でしょうか?あれは、この街の住民の所有です。それまで排除する約束はしていませんよ?」
二人はにらみ合う。
「貴様、わかっているのか?わしらに逆らって・・・」
「それで、教會は、どうしたいのですか?」
「亜人たちを、教會に渡せ!魔が居る街を、浄化してくれる」
「それは困ります。奴隷は、この街にとって労働力ですからね?」
法を來た男に青筋ができている。を震わせて、全で怒りを表現している。
「わかった。それで何をしてしい!」
「はじめから、そう言って下さい。奴隷をすべてお渡しするための対価が必要になります」
「なんだそのくらいなら「レベル9完全回復」」
「なっ!」
「無いとは言わせませんよ。わが町の住民たちを殺して得たでしょ?正當なる持ち主に返されるべきだと思うのですが?」
「貴様!アトフィア教を敵に回すのか?」
「いやいや。そんなつもりはありませんよ。アトフィア教に逆らって、街中に、デススパイダーを放たれたら困りますからね」
法を來た男は、だらしないを怒りで震わせながら、ドアを壊すかと思われる勢いで開けて、叩きつけるようにして帰っていった。
「狂信者が!おい。アトフィア教を監視しろ、森に向かうようなら、森にった所で殺せ」
『はっ』
いくつかの聲が重なった。聲の主たちは、姿を見せないまま、屋敷から散っていった。
/***** イサーク Side *****/
俺は、ミュルダ街所屬の冒険者だ。ミュルダの冒険者組合ギルドに所屬している。
街ごとにギルドがある。俺たちが所屬しているミュルダギルドは、サラトガのギルドとはそこそこ仲がいいが、アンクラムの奴らとは敵対とは言わないが、関係は最悪だ。アイツラが、獣人を嫌いしているのが原因だが、俺たちも奴らとはかかわらないようにしているのが悪いのかもしれない。
そんな事は実際どうでもいい。
今、俺たちのパーティは、困っている事がある。
「イサーク。今日はどうする?」
俺ののナーシャで、白狼族という珍しい種族ので、俺たち黒狼族とは昔から仲がいい。
「ガーラントは?」
「え?鍛冶場の調整に向ったよ」
ガーラントは、ハーフドワーフが種族名になるが、珍しく人族とドワーフのハーフではなく、ドラゴニュートとドワーフのハーフで、長が低くなりがちなドワーフにしてはガタイがいい。それだけではなく、固有スキルを3つ持っている・・・らしい。2つまでは知っているが、あとひとつは知らない。
「そうか。ピムは?」
「え?さっきまで、ブルーラビットをさばいていたよ?」
ピムは、ミュルダ所屬の斥候だったが、俺たち専屬のような立場になって、いつの間にかパーティにるようになっている。ハーフホビットだ、ピムも人族とのハーフではなく、ハーフエルフとのハーフだと言っているが、真相はわからない。的な特徴は、ホビット族なので、本人が言っている事が正しいのだろう。斥候らしい固有スキルの、隠と疾風のスキルを持っている。
「そうか、ナーシャ。悪いけど、果や野草の確保を頼む。俺は、ガーラントの所に行ってから、問題がなければピムと二人で、昨日発見した場所の確認をしてくる」
「わかった。アプルがあったら、多めに持ってくるね」
「あぁ頼む。ピチもあれば嬉しいかな」
「了解」
ナーシャが森に向ってあるき出す。
困っているのは、この場所が、ブルーフォレストである事を忘れそうになる事だ。この場所を見つけたのは偶然だったが、この場所を含めて、周りの環境がものすごく適當に、そして、俺たちに都合よくなっている。
まず、俺たちが寢床に使っている場所だが、大きな巖に橫が3つ空いていた。2つは、部屋の様になっていて、もうひとつは簡単な調理や解ができる場所や、干しが作れるような場所になっている。それも、偶然巖がそうなったかのようになっている。これは、俺とガーラントとピムの統一した見解だ。それでは、誰かが以前に拠點として使っていたのかというとそういうわけではなさそうだ。
水場がすぐの距離にある事も最初は不思議に思わなかったが、よく考えればこれも不思議なのだ。
ブルーフォレストと言えば、最高峰の冒険者でも裝備を整えてから向かわなければ、1日も生きていられないというくらい過酷な環境だ。実際に、デススパイダーの気配が有ったり、ブルーベアという死を覚悟するほどの魔と出會った事がある。
しかし、この拠點に來てから、10日程度経過しているが、1度も拠點が襲われない。それどころか、俺たちの活範囲に、食用に適した魔以外の魔を見たことがない。食用魔も、強くてもブルーボアだ。これなら、俺とピムが居れば倒せるし、ナーシャが一人の時に出會っても、逃げ出す事ができる。
他にも不思議な事がある。
ガーラントが、武の手れをしたいといい出して、近くに鍛冶場を作ろうとした時に、翌日にガーラントが近場を探索に出たときに、鍛冶場に適した場所が見つかった、水場が近くにあり、拠點から適度な距離があり、巖には、いくつかの橫が空いていて、空気まであるがあった。橫の奧には、どうやってそうなったのかわからないが、標準的な鍛冶場の様になっていた。水をためておく場所や、火を使うようになっている場所。その隣の橫には、木材を置いておけるスペースまである。誰が狩ったかわからないが、ブルーベアの皮まで殘されていた。巖の奧には、鉄鉱石や銅や銀鉱石まで転がっていた。
その夜に、皆で報告をしている時に、ナーシャがそろそろを拭きたいといい出した。次の日に、水浴びに行く事になった。
しかし、翌日になって、水浴びは中止になった。水場の水は、確かに飲料に使えるほど綺麗なだったので、その場所で水浴びをするのには抵抗があった。そのために、ナーシャも遠慮していたのだ。
水場からし水が流れる方向に進んでみると、細いしなる木(拠點の周りに生えている木)で囲われた場所に、二箇所水が湧いていた。地面から、ポコポコと水が出ている場所が、木で目隠しされていたのだ。
驚いた事に、この水はしだけ土の匂いがしたので、飲料には適さないだろうとガーラントが下した。しかし、ってみると、暖かいのだ。熱くはない。暖かい程度なのだ。ガーラントが、竜人の谷にある”湯の泉”の様だと語った。を清めたり、汚れを落とす場所だと言っていた。ナーシャがるといい出して、俺とガーラントとピムも木々に覆われたもう一つの場所で、水に浸かる事にしたのだ。疲れが取れるというのだろうか?の奧から溫まっていくじがして、の奧に溜まっていた疲れが取れて、その夜はいつも以上に頑張れてしまった。
食事にも困らない。も果も近くで取れるのだ。
そして、夜も安全に過ごせる。代で、見張りをしているが、何かがくれば、周りの木々が揺れて音を出す。安心は、しないが、かなり安全な狀況になっているのがわかる。
拠點としては最高なのだが、ミュルダの街に戻るという目標を忘れそうになってしまう。
拠點の部屋のに生えている草が弾力も丁度よくて、寢やすい。どこに有ったのかわからないが、スパイダーシートが束になっていたので、それを敷いて寢ている。
「イサーク。アプルとピチ取ってきたよ!」
そう俺たちは、ここでの生活になれ始めてしまっている。
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