《スキルイータ》第三十二話

/*** ヨーン=エーリック Side ***/

會議室には、族長が揃っていた。

俺が最後のようだ。決められた席は無いのだが、なんとなく定位置のようになっている。

白狼族の定位置は、獅子族の隣で、テーブルの一番端だ。

「皆様。ダンジョンは、大丈夫でしたか?」

「あぁ」

ロロットが答える。

「既に、利用可能になっておりますので、ご自由にお使いください」

「アルベルタさん。大事なことを聞き忘れている」

「何でございましょうか?」

「今回もじゃが、スキルや魔の素材を手にれた。これらはどうしたらいい?」

そうなのだ。上納分の割合を決めていない。

「そのままお持ちください。あっ必要ないは、こちらで引き取る事ができます。居住區に持っていって、腐らせるくらいなら、私どもで処理します」

え?どういう事?

「そうでした、大主様からは、珍しいスキルの時や、こちらで取得していないの時には、換せよと指示されておりますが、取得者が必要ないと判斷した時で良い、とも言われておりますので、得たスキルや素材や魔核は、お持ち帰りください。必要ないの場合には、こちらで何かと換させていただきます」

え?得たものは、得た自分の

ダンジョンは、ツクモ様のだから、そこから得たは、ツクモ様ので、俺たちは、そこからなにかをもらうだと思っていた。

皆が同じ思いなのだろう、戸っている。渉で、魔や生活に必要な素材を貰えれば十分と考えていた。それでも、すごく優遇してもらえていると思える。それどころか、スキルや魔核まで・・・大丈夫なのか?

「それは、スキルや魔核や魔の素材もなのか?」

「はい。そう思っていただいて大丈夫です。農場や畜産のは、別途協議したいとは思いますが、倒された魔に関しましては、倒した者に所有権があると思ってください。大主様が搾取したり、上納を要求する事はありません。私からも1つ皆様にお聞きしたい事があります」

「今日、5階層まで行きましたが、出てくるのは、ブルーフォレストでは中位程度の魔だと思います」

「・・・そうだな。ゴブリンアーチャーやファイターが居たようだったが」

「はい。実際問題として、種族といたしまして、戦闘系種族で無いと難しいですか?」

パーティーを組んで挑むのなら、兎族でも対応は可能だろう。相手が複數なら、スキルを使ってよいのなら、問題なく対応できるだろう。ただ、コストの事を考えると、ゴブリンアーチャーをスキルを使って倒すのはもったいない。素材としても、弓矢は殘るだろうが、後はレベル1かレベル2程度の魔核が取れるだけだろう。

ロロットが同じような説明をしている。

「そうですか?その他の皆様は?」

白狼族や熊族や獅子族なら対応できるだろう。

覚的に、武と防を揃えて、パーティーを組んで挑めば、レベル3程度の魔核を殘す魔なら大丈夫だろう。

「そうなると、20階層程度なら大丈夫という事ですね。大主様にそうお伝えしておきます」

ん?20階層?

「それは?」

「20階層付近なら、の確保もできます。また、護衛についていってもらう、魔蟲も進化後の者なら対処可能な階層です」

そうか、魔蟲は護衛の役目を擔っているのだな。

あとは、獣人族で決めてほしいと言われた。決まった事は、兎族がアルベルタさんに伝える事になった。

/*** カズト・ツクモ Side ***/

今日は、ピム殿たちの面談が予定されている。

その前に、アルベルタから、ダンジョンに関しての報告をける事になった。

「それで?」

「はい。現狀、30階層くらいが限界だと思われます」

「そうか、実際にってみれば、また違ってくるだろうからな。無理だけはさせるなよ?それから、何度も言うけど、俺への上納とかは必要ないからな」

「はい。大主のご意思は伝えてあります。ただ・・・」

「なんだ?」

「いえ、獣人族の総意として、”得たスキルカードの半數と、魔核をすべて、ツクモ様にお渡しいたします”と、言われてしまいました」

「アルベルタ。お前から強要したのではないのだな」

「はい」

「そうか、それなら、獣人族の気持ちの問題なのだろう、もらう様にしよう。スーン。問題ないよな?」

「はい。問題ありません」

「そうだ、もらったスキルカードは、武庫に置いておけ、ダンジョンにるときに必要になるだろうし、生活で必要になるかも知れないからな」

「そうですね。それがよろしいかと思います。魔核に関しても、ある程度まとまったら、大主が何かしらのスキルを付けて、下賜されても良いと思います」

「わかった。そうしよう。アルベルタ。その様にしろ」

「はい。かしこまりました」

なんか、忙しい。

なくても、カイとウミが居なければ、癒やされる事が無いだろう。

今日も、カイは膝の上で丸くなっているし、ウミは気にったのは、椅子の背もたれにを預けながら、俺の肩に前足をかけた狀態で用にバランスを取っている。

「大主。ピム殿たちとの面談はどうされますか?」

「そうだな。準備ができているのなら、いいぞ。今日は、それだけで、時間があったら、ダンジョンにる予定だけだから」

『主様。それなら、僕たちとし、ヒルマウンテンに行きませんか?』

「ん?いいけど、なにかあるのか?」

『はい。今日の話次第だとは思いますけど、スーン。後は、任せました』

「カイ様・・・」

カイは、言うだけいうと、また丸くなってしまった。

スーンは、ドリュアスに何やら指示を出してから、

「大主。以前から、カイ様。ウミ様。ライ様とご相談をしていたのですが、大主の眷屬を拡充したく考えております」

「ん?スーンたちが居れば十分じゃないのか?」

「嬉しいお言葉ですが、我らでは、進化しましても、絶対強者には太刀打ちできません。戦闘に特化した種族スキルを持っておりません」

「そう?十分だと思うけどな」

「いえ、大主は、これから、いろいろな種族や魔たちを束ねるお方です」

「え?そんなつもりはないよ?」

「はい。わかっておりますが、我らの希として、我らの中で、誰かが抜けていても、大主を守れる狀況がしいのです」

「そうだな。お前たちが安心するためなら、それもいいかも知れないな」

「はい。大主は、我らが傷つくことをお許しになりません。そのためにも、安全マージンの底上げを考えておりました」

そうか、俺がダンジョンにるときに、楽に勝てる範囲でやっているのを、そういう風に解釈したのだな。確かに、眷屬やエント/ドリュアスが傷つくのは気にらない。それは、自分たちを守る以外の事で傷ついてほしくないだけで、を守るためなら、ある程度はしょうがないとは思っている。見も知らない、獣人族や人族のために、が傷ついて良い訳がない。ただそれだけなのだ。

「わかった。それで?」

「はい。ヒルマウンテンには、黒狼族の集団があります」

「へぇそうなんだ」

「はい。その黒狼族が崇めるのが、竜族なのです。実態が解っていませんでしたし、ヒルマウンテンを降りてくる事はありません」

「へぇー竜族もいるのか」

「その竜族を、支配下に置こうかと思っております」

「いきなり端折ったな。できるのか?」

「はい。竜族は、長命種のために、暇を持て余しております。知識の塊と言っても良いかと思われます。彼らに、大主の知識の一端を見せれば、喰い付いてくると思われます」

「知識の一端と言ってもな・・・どんな事が好きなのか、わからないからな。行けば、何かしらのアクションが有るのだろう?」

「はい。エンシェントドラゴンとは顔見知りですので、いきなり襲われる事はないかと思います」

「わかった、お前たちが大丈夫だと思っているのなら、行ってみよう」

「ありがとうございます」

「手土産に、酒を持っていけばいいか?飲み手が居ないのに作ったがあるからな」

「十分だと思われます」

それに、ドラゴンに興味がないと行ったら噓になる。

話ができれば、なんとかなるかも知れないのなら、行ってみるのも一興だろう。

「大主。ノービスの方々が面會を求めております」

「わかった。場所は、會議室にしよう。向こうで待っていてもらってくれ」

「・・かしこまりました」

/*** イサーク Side ***/

ついに、カズト・ツクモ殿との面談だ。

俺たちの方針は、ピムとガーラントと何度も話し合って決めた。勝利條件は、ミュルダ街の狀況を知ってもらって、何らかの助力を引き出す事。最低でも、俺たちが無事帰り著く事だ。

できたら、何らかの攻撃系のスキルが借りられたらと思いがあるが、かえすことが難しいだろう。

「イサーク様。ピム様。ガーラント様。ナーシャ様。大主カズトが、面談に応じるとの事です。會議室でお待ち下さい。すぐに、大主カズトが伺います。會議室には、フィリーネが案いたします」

連れて行かれた部屋は、會議室と言っていたが、ミュルダの領主がいる部屋よりも立派だ。

特に、椅子が立派で考えたくない素材が使われているのだろう。テーブルの上には、人數分の飲みと先日出ていた、クッキーが置かれていた。早速、ナーシャが手を出しそうだったのを、ピムが抑えている。流石に、部屋の主人が來る前に、手を出すのはまずい。

奧の扉が開いた。

先頭に、スーン殿がってきた。その後に、見た目”フォレスト・キャット”を、腕の中と肩に置いた、10歳程度の子供がってきた。ピムの言ったとおりだ。ピムの報にはなかったが、街中ですれ違ったら、”の子”と勘違いしてしまうかも知れない容姿だ。

しかし、わかる。絶対強者だ。俺たちが束になって襲っても、勝てない。それどころか、傷一つ作る事ができないかも知れない。背中の汗が止まらない。ピムは、よくこのプレッシャーの前で・・・。

「あぁきにしなくていい。座ってよ。話しにくいよね?」

プレッシャーで知らないあいだに、立ち上がってしまっていたようだ。言われて、気がついて、慌てて腰を下ろす。

「改めて、ピム殿とは一度お會いしましたが、私が、カズト・ツクモです」

慌てて、俺たちも名乗りを上げる。

「イサーク殿とナーシャ殿とガーラント殿ですね。先日は、貴重な意見ありがとうございます。この辺りの事は、不慣れでわからない事だらけなのですよ」

「ツクモ殿は、この辺りのご出では無いのですか?」

「えぇそうですね。気がついたら、ここに飛ばされていました。スキルの暴走に巻き込まれたのかも知れません」

「そうなのですね」

「私の事より、皆さんの事を教えてください」

ツクモ殿は、聡明な方だ。とても、12歳とは思えない。話の流れで、年齢を聞いた時には、びっくりした。何かしらの問題で、子供に戻ってしまったと言われても信じてしまうだろう。

そして、俺たちの冒険の話や、なぜ、この森にったのかなどの話を、質問をえながら聞いてくれた。

「そうなのですね。皆さんのご希を聞く前に、いくつか、確認させてください」

「はい。大丈夫です」

「良かった。それでは・・・」

ツクモ殿の確認は、本當に一般常識というレベルのから、なぜそんな事を考えるのかというレベルのまでいろいろだ。

俺が一番驚いたのは、魔核の価値を知らなかった事だ。

「ツクモ殿。それでは、私たちに貸し與えてくれた”防の魔核”は、どの程度の価値だと思っておられたのですか?」

「スーン。あれは、たしか、レベル5の魔核に、やはり、レベル5の結界と障壁が付いたものだよな?」

「いえ、結界と防壁と障壁です。どれもが、レベル5です」

「そうか、そうなると、希を多考慮して、レベル6が一枚程度ですかね?」

やはりだ。

完全に勘違いされている。

「ツクモ殿」

俺は、ガーラントに目配せして、魔核をテーブルの上に置いた。

「これは、お返しします。これは、おいそれと出して良いではありません。確かに、魔核はレベル5相當ですので、価値的には、レベル5で大丈夫です。そして、付いているスキルもレベル5相當なのは理解しています。”回數制限”が1回だとしたら、レベル6が、4~5枚程度でしょう。しかし、これは、回數制限がありません。価値としては、レベル10を10枚出してもしいという者は現れるでしょう。オークションにだしたら、それこそ天井知らずの価値です」

「え?そうなのですか?たかだか、結界と防壁と障壁ですよ。それも、レベル5の?確かに、発時に、魔力を込めれば、それだけ強いにはなりますが・・・」

「へ?」「ん?」「は?」

「ん?どうかされましたか?」

ガーラントがを乗り出して、俺が疑問に思った事を問い合わせた

「今、ツクモ殿は、発時に、魔力を込めればとおっしゃいましたが、魔核のスキルを発するのは、詠唱するだけで、魔力を使うなぞ聞いた事がないぞ」

ガーラントが興して口調が戻ってしまっている。

「え?そうなのですか?スーン。どうなの?」

「ガーラント様が、おっしゃっている方法が一般的だと思われます」

「えぇぇぇそれなら、教えてよ。いろいろ試しちゃったよ」

「試したとは?」

衝撃の事実というべきか・・・。

ツクモ殿は、実際に見てもらったほうが早いと言って、ドリュアスたちに、スキルカードを持ってこさせた。持ってこさせたのは、火種のスキルだ。レベル1だが、一般家庭では手放せないで、需要もある。

おもむろに、火種のスキルを起した。え?詠唱は?

「これが、レベル1ですよね?」

個人差があるのは有名な事だ。ツクモ殿が使った火種のスキルは、ナーシャが使うよりも大きな火種になった。

したがって、ツクモ殿は、12歳にして、ナーシャの魔力を超えている事がわかる。

そして、火種のスキルを解放してから、同じくレベル1の火種のスキルを手に持った。レベル1なのは、皆で確認した。

ツクモ殿が火種のスキルを発した。

「え?」「うそ?」「はぁぁ?」「なぜ?じゃ?」

「今、レベル1火種のスキルに、レベル2相當の魔力を込めて、発しました」

確かに、火種が二倍程度の大きさになった。

「ガーラント・・・」「すまん。儂も、こんな現象聞いた事がない」

「あっレベル2の火種よりも、レベル1の火種にレベル2の魔力を込める方がコスト的にはいいですよね」

當然だ。レベル1とレベル2では、10倍の価値になる。

「ツクモ殿。魔力を込めるのはどうやるのじゃ?」

ガーラントが喰い付いた。

俺も知りたい。これができれば、よりレベルの低いスキルで、強い効果が得られる。

「どうって言われましてもね。そうだ、ガーラント殿。火種のスキルを詠唱する時に、”我の魔力”や”魔力を糧に”とかいいますか?」

「あぁもちろんじゃ。それじゃないと、スキルカードが発しない」

「それなら、その”魔力”の所に、例えば、”我のレベル2魔力”や”魔力レベル2を糧に”とか言い換えてみてください。私は、イメージで発しているのですが??」

ガーラントが、火種のスキルカードをもらって実際にやってみる事にした。

実験は功した。2倍ではなかったが、普段使うよりも大きな火種になったのは間違いなかった。

他にも、ツクモ殿は、俺たちが知らない。スキルカードの使い方を知っていた。

二枚同時使用の方法や、取り出さないでのスキルの利用は、戦闘時にも役立つテクニックだ。

「あっそうだ。あと1つ。スーン。収納服は、まだあるよな?持ってきてくれ」

「かしこまりました」

「フィリーネ。クッキーのおかわりと、ジュースをいくつか、デキャンタで持ってきてくれ。俺には、コーヒーを頼む。そうだ、ガーラント殿はドワーフなのですよね?お酒の方がいいですか?」

「酒があるのか?」

「えぇ私は飲みませんが、何種類か作ったがあります。飲んでみて意見をいただければ幸いです」

「ぜひ。ツクモ殿が作られた酒なら、期待できる。ぜひ飲ませてくれ!」

「わかりました。フィリーネ。まだ若いかも知れないが、ワインが有るだろう。ビールは、飲み頃だろう。あと、ミードと大麥の蒸留酒があったよな?」

「かしこまりました。適當に見繕ってみます」

「頼む。ガーラント殿。まだ、が進んでいない、若いしかないので、それほど味しくは無いかと思いますが、この辺りで作られているお酒との比較なんかを教えていただきたい」

ガーラントに酒?

今日は、長くなりそうだ。

隣のナーシャを見ると、クッキーを運んできた、ドリュアスとなにか話している。

ここまでは、ツクモ殿のペースと見るべきだろう。いや、こりゃ無理だな。ツクモ殿が、クッキーを持ってきたドリュアスに、ジャムや”バター”ももってこいと言っているし、それらを使った食べで、最近食べられるレベルになったと言っている”パンケーキ”なるも持ってこさせるようだ。今から作ることになると言っていたが、ナーシャが、待っているから大丈夫と言ってしまっている。

頭を抱えたくなってしまった。

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