《スキルイータ》第三十三話

/*** イサーク Side ***/

スーン殿が戻ってきた。手には、なにやら小奇麗な袋を持っている。

ガーラントを見る。わからないという顔をしている。デス・スパイダーの作り出す布では無いようだ。

酒の前に、袋の話ができるのは嬉しい。

「ガーラント殿。この袋は、どう見えますか?」

ガーラントが、袋を手に取る。

「!!ツクモ殿!」

「どうされましたか?」

「いや、失禮した。もしや、この袋は、収納のスキルが付與されていますか?」

「えぇそうです。袋そのものは、人族が使っていたを使っていますが、それに、収納のスキルを付與しました」

「え?」

「どうしました?」

「いえ、今の言い方ですよ。ツクモ殿が作されたように聞こえたのですが?」

「えぇそうですよ。スーン」

スーン殿が、同じ様な、袋を5枚、目の前に置いた。レベル5のスキルカードが二枚置かれた。

「ガーラント殿。スキルスロットという言葉はありますか?」

「いえ、聞いた事がございません」

「そうですか・・・それでしたら、この5枚の袋で、スキルが付與できる袋を調べる事はできますか?」

「いえ、できません。そもそも、スキルの付與ができるかどうかは、運任せというのが定説です。何かしらの法則があるという見方もありますが、萬人を納得させるだけの材料を提示した説はありません。なくても、儂は知りません」

「そうですか・・・スーン。レベル1の魔核を大量に・・・あぁ持ってきているのだな。火種もだな」

スーン殿が、20個近い、レベル1魔核をテーブルの上に置いた。火種のスキルなのだろう、レベル1のカードも20枚置かれた。

「ガーラント殿。し実験に付き合ってください」

「あぁ構わない」

それを聞くと、嬉しそうに、魔核を分け始めた。それにしても、レベル1とはいえ、これだけの魔核がすぐに用意できるのだな。

7個と12個に分けられて、殘り1つは、別グループになるようだ。よく見てしいと言われたので、観察したが、や大きさに多の違いはあるが、ほとんど違いは見られない。ガーラントもピムも同じ意見だ。ナーシャは、別テーブルで幸せそうな顔をして、ツクモ殿から紹介された、パンケーキを頬張っている。

1つ別枠があった事に関係するのか、スーン殿が、もう一枚スキルカードを取り出した。

「ガーラント殿は、魔核にスキルの付與はできますよね?」

「あぁもちろんだ」

「それならば、この魔核に火種のスキルを付與してください。7つ功したら、そうですね。先程の袋を、チームノービスに進呈しますよ」

「ツクモ殿・・・いや、わかりました、やりましょう」

「お願いします。まずは、この多い方の12個からお願いします」

皆の予想通り、12個には失敗して、スキルが発して無くなってしまう。

そして、7個のグループの方は、全部火種のスキルが付與された。どのくらいの確率なのか、わからないが、最初の一個はそうなると予想していたが、7個全部となると、ツクモ殿は、付與できる魔核がわかる事になる。

そして、殘りの一個には、まずは火種を付與して、功する。連続して、もう一個のスキルを付與してみてくれと言われた。微風のスキルだ。流石に無理だろうと思っていた事が功してしまった。

「ツクモ殿!なぜだ。なぜわかる!」

「流石に、方法をお教えできませんが、私には、スキルが付與できる魔核/武/防/道がわかるのです。あっ実験に付き合って頂いてありがとうございます。その袋はお持ち帰りください。収納のスキルは、レベル7相當ですので、かなりの容量だと思います」

「・・・ちなみに、回數は?」

「え?無制限じゃないと使えないですよね?」

あぁダメなだ。返そうと思っても、ダメだろう。確かに、収納袋はしいと常々思っている。

その上、無制限となったら、それこそから手が出るほどしい。無制限のが、無いわけではない。ダンジョンの寶箱で、たまに出たという話を聞く。だから、俺たちが持っていても不思議に思われないだろう。

「ありがたく、頂戴いたします」

そう答えるのがやっとだった。

そして、テーブルの上には、いくつかのグラスが並んでいた。

酒が出てきたのだろう。酒と言えばエールが一般的で、領主や豪商などが、ミードを嗜むという話を聞いた事がある。一番最初にだされたは、エールに似ている。俺は、それほど酒に強いわけではないので、しだけもらう事にした。ピムも同じだ。

一口飲んで見る

「!!」

びっくりした。

った時に、すごく冷たかったが、飲んだ時のを通る覚が、エールと全然違う。これなら、いくらでも飲めてしまいそうだ。

「ツクモ殿。これは?」

「製法は、そのうち公開しますが、今日の所は、こういう酒だと思ってください。エールとは違いますが、飲めますよね?」

「あぁ!あぁ!普段、エールを飲んでいたが、別だ。を通る時の覚や、舌の上のじ方、極上だ。もっとくれ、いくらでも飲めそうだ」

「それは後日にしましょう。ガーラント殿。日常的に、これが飲めると過程して、一杯、どのくらいなら許せますか?」

「飲む前なら、エール並のレベル3を2~3枚という所だと答えるが、飲んでしまうと、レベル4でも飲みたくなってしまう。できたら、レベル3が5枚程度なら毎日でも飲む!!」

そうだな。飲んでしまったら、レベル4でも安いとじてしまうだろう。毎日飲むにはし高いから、レベル3が5~6枚なら、毎日でも飲むな。

「スーン。どうだ?」

「はい。想定以上です」

「そうか、ありがとう。さて、ガーラント殿。イサーク殿。ピム殿。次からの酒は、酒がやたら高いです。そうですね。次のは、ミードを蒸留して作したで、酒が先程のビールの10倍近くになっていると思います」

「え?」「は?」

何度めかの衝撃だ。酔いの主な原因が、酒にあるのは知られている。エールよりも、ミードの方が酒が強い場合があるが、それでも、2倍程度だときいた事がある。それが、10倍?想像できない。

「ですので、絶対に、一気に飲まないでください」

そう注意されて、出されたは、琥珀の飲みだ。

先程のコップよりも、すごく小さいコップにっている。

匂いは、ミードのような気がするが、もっと違う匂いがする。これが、蒸留という手法を行ったからなのだろう。

しだけ口に含む。

びっくりした。鼻に抜ける、蜂の香りもだが、それ以上に、を焼くような酒。それでいて、甘く味しくじるのどごし。ピムも同じ様にびっくりしているようだ。ガーラントは、目を見開いている。

「ツクモ殿。ツクモ殿。後生だ。もう一口。もう一口」

「はいはい。後で、殘りをお屆けします。先に進めます」

なんだか、ガーラントの扱いが解っているようだ。

それとも、酔っぱらいに慣れているのか?

次に出された、大麥を蒸留したといわれたは、無明だったが、恐ろしく酒が強かった。先程のよりも、甘みが強いのに、酒が格段に強い。一気に酔ってしまいそうだ。

「さて、先程と同じ事を聞きたいのですが、さすがに、コップいっぱいだとわかりにくいので、これくらいの瓶にっていたら、どのくらいならいいですか?」

ツクモ殿が出されたは、かなり大きいものだが、俺たちがダンジョンに潛る時に使う水筒の1つと同じくらいだろう。

ガーラントは、レベル5でも買うと言っている。確かに、一度飲んでみたら、それでも安いと思えてしまう。多分、領主や豪商なら、レベル5を數枚から、もしかしたら、レベル6を出すかも知れない。

ツクモ殿が、なぜこんな事を聞きたかったかという事を教えてくれた。

直近は無理だろうけど、早ければ、數カ月後・・・數を用意するのなら、數年後とかに、獣人族が、これらの酒を作って、売ることができたら、彼らの獨立にならないかという事だ。正直、この酒のためなら、ブルーフォレストの奧地にる事もいとわないドワーフは多いだろう。領主や豪商も、大量の冒険者を雇っても元が取れると考えるだろう。

その事を正直に伝える。

なにやら、ツクモ殿は、また考え始めてしまった。

「大主。お話の途中です」

スーン殿が話を元に戻してくれた。

「そうだった。いろいろわかりました。ありがとうございます。あぁナーシャさん。デザートはどうですか?」

「すごぉぉぉっく味しいです!」

「それは良かったです」

ナーシャの話になると長くなりそうだ。

「ツクモ殿」

「あぁそうだったな。それで、貴殿たちは、私に何をみますか?ここでの生活なら、獣人族の居住區ができたので、そこで生活する事ができます。ミュルダに帰るのなら、途中まで護衛を出しますし、食料や水も提供いたします。何か、希が有るのなら、言ってください」

ここが勝負どころだ。

正直、これだけのを見せられると、”住む”という選択肢は魅力的だ。

だが

「ツクモ殿。俺たちは、なくても、俺は、ミュルダに一度帰ります。あそこは、俺の家だ」

「わかりました。それで?他の方々は?」

「儂も、イサークに付き合う」「僕も」

「わた「すまん。ツクモ殿。ナーシャをここでかくまってくれないか?」」「イサーク!」

「かまいませんよ。ナーシャさんがそれでよろしければ?」

「ツクモ殿。私は、イサークと一緒に行く!」

「だそうですよ」

ナーシャだけでもここに殘ってくれたら、そう思ったのだけどな。

「ナーシャ。ミュルダは、今大変な事になっているのだぞ。そのくらい、解っているよな?」

「うん。だからこそ、一緒に行きたい」

「ん?ミュルダ?大変?すみません。イサーク殿。ミュルダが大変という事ですが、もしかして、アトフィア教の事ですか?」

「えぇそうです」

「申し訳ない。世に疎いので、説明して頂けないでしょうか?」

/*** カズト・ツクモ Side ***/

うーん。

イサーク殿から、ミュルダと言われる街が陥っている狀況を聞いている。

そうだ!

「イサーク殿。アンクラムは、獣人族を、盾にしないと、ミュルダに攻める事ができないのですか?」

「そんな事は無いと思いますが、難しいと判斷する可能が高いです」

「そうですか、獣人族が襲われていて、囚われていた者を開放しましたが、それでもまだ攻めますか?」

「わかりませんが、アトフィア教の連中がいる限り、獣人族への弾圧は続きますし、ミュルダへの規制は続くと思われます」

「ミュルダに取って、アンクラムは、必要な街なのですか?」

「は?」

「いえ、話を聞いていまして、取引高とか・・・そうですね。概念があるかわかりませんが、アンクラムからの輸と輸出が占める、ミュルダ経済への影響が低いのであれば、ミュルダが切り捨てられるのではなく、ミュルダが、アンクラムや・・・えぇーとなんといいましたか、ダンジョンがある街」

「サラトガです」

「あぁそうそう、サラトガを切り捨てればいいのでは?」

「それでは、ミュルダはどうやって」

「居住區の獣人族と取引をしませんか?さすがに、ブルーフォレストの奧地まで毎回ってくるのは辛いでしょうから、ブルーフォレストとサイレントヒルの堺辺り、ダミーとなる獣人族の街でも作りましょう。そこと、ミュルダで商取引をしてもらうと言うのはどうでしょうか?」

「ちょっ、ちょっと待ってください。そんな大きな事、冒険者風では判斷できません」

「そうですか?誰に、進言すればいいですか?」

「一番は、領主ですね」

「イサーク殿は、領主とのつながりはありますか?いきなり、私のような人間が行って、話を聞いてくれるとは思えません」

「え?あっ領主への繋ぎは可能だと思います。こちらで頂いたを見せれば・・・それよりも、街を作るなんて事が可能なのですか?」

「スーン。森から出てしまうが、問題ないよな?」

「大主。問題ありません。規模にもよりますが、建材は準備できます」

「そうか、広さは、商業中心の都市にする予定だからな。そこから、まっすぐに、居住區に安全に移できるようにする事を考えてみてくれ」

「かしこまりました。スキルの使用は?」

「任せる。必要なら魔核に付與する」

「かしこまりました」

思いつきだけど、意外といいアイディアかもしれない。

居住區に住んでもらって、ダンジョンに潛ってもらう。これは、確定事項だけど、水と一緒で、人も、流れが無いと淀んでしまうからな。長崎の出島の様にそこでだけ商取引ができるようにしておけば、いろいろカモフラージュできるだろう。

「イサーク殿。街は問題ないと思います。お土産を持って伺えば、會って頂けそうですか?」

「話は聞いてくれると思います」

「そうですか、もうし、インパクトがほしいですね。領主が”借り”だと思うような事があれば嬉しいのですけどね」

イサーク殿と、ガーラント殿と、ナーシャ殿が、顔を見合わせる。

ピム殿がなにかに気がついたようだ。話の流れから、”借り”だと思ってくれるようななのだろう。

「「「「レベル7回復!!!」」」」

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