《【新】アラフォーおっさん異世界へ!! でも時々実家に帰ります》第13話『おっさん、戦いに備える』

「みんな元気になったようでよかったよ」

「ふふ……トシキさんのおかげですよ」

敏樹らが新たな裝備を調えた翌日、すっかり元気を取り戻した様子のたちの姿を思い浮かべながら、敏樹は慨深げにつぶやき、隣を歩くロロアが応えた。

ロロアは相変わらずマントのフードの端をつまんで引き下げ、うつむき加減に歩いており、敏樹は気を使って彼し後ろを歩いていた。

「みんなが頑張ったからだよ。俺はちょっと背中を押しただけ」

「そういうことにしておきますね」

そしてふたりは住人たちが戦闘訓練を行なっている広場に向かった。

集落からし離れた場所を切り開いた、訓練場のようなものができていた。

必要であればチェーンソウなどを用意しようかと敏樹は考えていたのだが、水人の膂力と魔法とで意外とあっさり広場を作ることが出來た。

そこでは住人の半數程度が訓練用の木剣や棒を使って訓練を行っている。

『パーティ編』機能に參加人數の上限はなかったので、戦いに參加する住人はすべてパーティに加え、適宜スキルを習得させている。

このとき、スキル習得に必要なポイントに個人差があることがわかった。

そのスキルに適正が高いほど、必要なポイントはなくて済むようだ。

それはスキルレベルアップにおいても同じだったので、使用武に関しては本人の希よりも適正を優先させてもらった。

模擬戦や素振りを行なっている住人の中に、ひと際目立つ存在があった。

40センチほどの木剣を二本持ち、數人の対戦相手を翻弄しているその人は、犬獣人のシーラだった。彼は〈雙剣〉に高い適正があった。

シーラは対戦相手を翻弄しつつ実戦であれば致命傷になるであろう一撃を軽くれていき、全員に負けを認めさせた。

「おう、おっさん! 元気か」

「まぁな。ほれ」

「おっ、ありがたい」

シーラは敏樹が投げてよこしたタオルをけ取ると、じっとりと全に浮かび上がった汗を拭き始めた。

「……なぁ、出多くない?」

「ん? いいんだよ、きやすいから」

いまのシーラの格好だが、だけ・・を守る革の當てにが半分見えるんじゃないかというほど裾の短いホットパンツ、手首に革の手甲、ショートブーツに革のすね當てという狀態であり、肩や腕、腹、太ももなどは惜しげもなく出していた。

聞けば犬獣人の特として、関節を覆うのを嫌う、というものがあるらしい。

手甲に関しては、ある程度手首を固定した方が雙剣を扱いやすいということから裝備しているのだとか。

の裝備品に関してもドワーフのククココ姉妹が作していた。

金屬加工は困難だが、革製品であればそれなりの防も作れるようだ。

「ふふん。もしかして、あたしのしたのか、おっさん?」

シーラはタオルを首に掛け、両手で自分の房を持ち上げながら、敏樹に蠱的な笑みを向けた。

「ア、アホぬかせっ……!!」

とつっこんでみたもの、実際シーラの肢は魅力的である。

の大きさこそファランやロロアに及ばないものの、くびれた腰にほどよく付きのいいや腳、健康的な褐にじんわりとにじむ汗……。

冗談とはいえされて意識してしまっては、そうやすやすと目を離せないのが悲しい男のである。

「ちょ、ちょっとシーラ! はしたないよっ!!」

ロロアが抗議の聲をあげる。

その対象が、冗談半分に敏樹をしたシーラに対するものか、冗談とわかってなお鼻の下をばしている敏樹に対しての間接的なものかはともかく。

「あはは。冗談だよ冗談。ロロアの大切なトシキさん・・・・・を、取ったりしないから安心しな」

「や、私は……そんな……」

あたふたと狼狽したあと、ロロアはうつむいてフードを下げた。

「こら」

「いてっ」

敏樹がシーラの頭に軽く手刀をれる。

「あんまりからかうなよ」

「……へいへい。そうまんざらでもないって表で言われても説得力ないけどねぇ」

「くっ……!!」

顔を赤らめながら視線を逸らす敏樹や、相変わらずフードを引き下げておたおたと狼狽しているロロアを見ながら、シーラはケタケタと笑った。

シーラのように戦うことを選んだなくない。

先日髪の自慢をしていた熊獣人のベアトリーチェもそのひとりだ。

ただし、彼の場合はあくまで集落を、故郷に帰ってからは故郷を守るための力がしいということだった。

対してシーラは山賊達への復讐をんだ。

復讐は何も生まない、などというきれい事を、敏樹は言うつもりもない。

恨みつらみも立派なであり、前を向くための原力になり得るのだ。

山賊どもは復讐されるだけのことをしたのだから、せいぜい彼が前を向いて生きるための糧になってもらうのがいいだろう。

「わたくしも、シーラのような戦う力がしい……」

ベアトリーチェのように、ではなくシーラのような力がしい、と願う者がさらにふたりいた。

ひとりはハーフエルフのメリダ、もうひとりはヒト族のライリーである。

メリダはエルフのをひいているだけあって、〈弓〉と〈風魔法〉に適正があった。

25ポンドのコンパウンドボウがなんとか使える程度の腕力しかないが、放たれた矢に風をまとわせることでクロスボウ並みの威力を持たせることに功している。

標的をしっかり捉えていれば、多の軌道修正もできるようだ。

まっすぐな金の髪に空の瞳、真っ白いを持つ、スラリとした長である。

「ん、新しい魔、教えて」

ライリーのほうは魔に適正があった。

もともと生活魔をいくつか覚えていたが、さらに戦闘用の魔も覚えさせた。

これに関しては一段落ついたらすべて使えなくなり、改めて魔師ギルドで習得し直す必要があることは納得済みである。

現存する魔や回復は、すべて魔士ギルドや治療士ギルドが管理しており、ギルドを通さない魔の習得は厳しく罰せられるからだ。

これは魔という、便利だが使い方次第では治安の悪化につながるものを管理するためのものであった。

山賊などの犯罪組織にも魔師はいるが、そういった者はギルドに見つかった時點で処罰されるため、ギルド経由で魔を習得した後に犯罪者となった者は、それ以上魔を習得できないことがほとんどである。

まれにモグリで魔を習得できる場合もあるが、そういった非合法の魔というのはやたら効率が悪かったり、威力にムラがあったり、酷いときには暴発して自滅するということもあるらしい。

「なんというか、銃火の取り締まりや醫師免許みたいなじかな」

というのが、ギルドの魔や回復の取り締まりについて知ったときの敏樹の想であった。

ただし、ライリーは〈魔詠唱短〉〈多重詠唱〉〈消費魔力軽減〉〈魔効果増大〉といった高位の魔師でもなかなか習得できないスキルを多數習得できており、こういったスキルはギルドの管理ではなく個人の才能や努力によって得られるものなので、継続して利用が可能である。

長で彩の鮮やかなメリダとは対照的に、ライリーは黒髪の小柄な、し地味な印象のあるであり、基本的には無口で必要以上にしゃべることはあまりない。

「やぁ、トシキさん。それにロロアもごきげんよう」

「ゴラウさん、どうも」

「お、伯父さん……こんにちは」

訓練場の様子を見ながら歩いている敏樹とロロアに気付いたゴラウが聲をかけてきた。

救出されて以降、ロロアと集落の住人との距離はなからずまったようで、彼は母の兄に當たるゴラウを伯父さんと呼ぶようになった。

ちなみに長のグロウはお祖父ちゃんと呼ばれるようになり、そう呼ばれるたびに厳格な集落の長はだらしなく頬を緩めていた。

の読みづらい蜥蜴頭であるにもかかわらず、はっきりとわかるほどに。

「どうです、調子は?」

「ええ、トシキさんのおかげでみんな力をつけていますよ。それより……」

ゴラウが敏樹との距離を詰め、聲のトーンを下げる。

「山賊の城にいるみんなは無事なんでしょうか?」

「ええ、ご心配なく。いまは連中も下手にくつもりはないようですから」

敏樹は『報閲覧』を使って隨時山賊達の様子を確認していた。

もしアジトにいる水人がどこかに連れ出されそうなきがあれば、即座に救出へ向かうつもりだったが、いまのところ山賊どもは大きくくつもりがないらしい。

新たにが拐かされた場合も救出に向かうつもりだが、逃げられた原因がわからない以上、下手に人質を増やすつもりもないようである。

そのせいで山賊団の若くてそこそこ容姿のいい団員が大変なことになっているらしいが、山賊などにをやつした我がを呪ってもらうしかあるまい。

そんな殺伐としつつもどこか平和だった時間にも終わりが訪れる。

「みなさん、連中がき始めました」

集落に向けて、山賊団から5名の人員が派遣されたのを、敏樹が『報閲覧』で確認したのだった。

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