《【新】アラフォーおっさん異世界へ!! でも時々実家に帰ります》第5話『おっさん、冒険者になる』
ヘイダの街はテオノーグ王國ケシド州の最南端に位置する街である。
街の南にはハノウの森という名の森林があり、森を越えてさらに南下したところに水人の森と集落があった。
北西に州都セニエスク、西に商都エトラシがあり、東には魔がはびこるヌネアの森がある。
ヌネアの森を越えた先にあるジニエム山をさらに越えると迷宮都市ザイタがあるため、ここヘイダは中規模の街でありながらも、州都や商都と迷宮都市をつなぐ経由地としてそれなりに賑わっていた。
クレイグから紹介されたバルナーフィルドホテルは、この町でも最高級の部類にる宿屋だった。
ただ、そこそこの行商人や中級の冒険者でも利用できるリーズナブルな部屋も用意されている。
クレイグからの紹介狀を付に渡したところ、支配人が登場し、最高級の部屋全員分を個室で用意してくれるとのことだった。
「じゃあせっかくなんであたしは個室で」
とういことで、シーラ、メリダ、ライリーは遠慮なく個室に泊まることにしたようだ。
「ウチらは二人部屋でええかな」
「せやな」
と、ククココ姉妹は二人部屋を希。
「ツインとダブルがございますが?」
「どう違うん?」
「ツインはベッドがおふたつ、ダブルは大きなベッドがおひとつとなっております」
「ほなウチらはツインで殘りはダブルな」
「かしこまりました」
「おい、ちょっと待て」
ククココ姉妹と支配人とのやり取りに敏樹が待ったをかける。
「殘りって、俺とロロアのふたりだけじゃないか」
「せやな」
「なんでダブルなんだよ」
「嫌なん?」
「あ、その、嫌とかそういうんじゃなくてだな……、せっかくだし、ロロアも個室でのんびりしたほうが……」
そう言って敏樹は振り返ったが、ロロアは顔を赤らめて目を逸らし、もじもじとしているだけだった。
「と、とにかく俺とロロアはひとり部屋で――」
「もうしわけございません、ただいまスイートのシングルは満室でして」
敏樹の言葉を遮って支配人が答える。
支配人はスラリとしたスマートで長の紳士然とした男で、きっちりと手れされた口ひげが特徴的だった。
その支配人が、真面目な顔で敏樹に頭を下げた。
……どうも目が笑っているように見えなくもないが。
「いやいや、さっき全員分の個室を案できるって」
「なにぶん繁忙期ですので……」
「……そんなにごった返してるように見えないけど?」
「いろいろとあるのでございます」
「……じゃあ、グレードを落としてもいいから」
「まさか!! クレイグ様から紹介されたお客様をスイート以外にお泊めするなど……」
「わかった。じゃあツインで――」
「もうしわけございませんが、あいにく満室でして……」
このやり取りの間に何度か支配人とシーラやククココ姉妹の間で目配せがった。
(だからお前らは俺をどうしたいんだよ……)
ちなみに當事者であるはずのロロアは、いつの間にかフードを目深に被り、うつむいているだけだった。
「ってかさぁ、おっさんいつもロロアと同じテントで寢てたじゃんか」
「いや、あれは……!! なんというか、別に……」
言われてみればたしかにそうなのだが、元々彼が住んでいた家にお邪魔するのと、ホテルの同じ部屋に泊まるのとでは意味合いが変わってくるだろう。
(……いや、家に泊まるほうがアレなのか? んー、なんだかよくわからなくなってきたぞ……)
「ではごゆっくりおくつろぎくださいませ」
結局敏樹はロロアとダブルルームに泊まることになった。
翌朝、一度全員がチェックアウトした。
いい部屋だったが、クレイグが手配したスイートルームはあまりに豪華すぎて持て余したようだ。
しばらくのあいだ宿泊費はクレイグが持ってくれるということのなので、しグレードを下げて泊まり直すことにした。
「ほなウチらはファランとこ行ってくるわ」
「ファランが住むとこ用意してくれるみたいやから一旦ここでさよならやな」
などと言いながら、ククココ姉妹は敏樹らと一旦別れてドハティ商會へと向かった。
「じゃあ俺たちは冒険者ギルドでいいんだな?」
現在敏樹に同行しているのは、ロロア、シーラ、メリダ、ライリーである。
**********
「それでは今から冒険者ギルドについての説明を始めます。質問は最後にまとめてお願いしますね」
敏樹らは現在、講習室というところでギルド職員のから冒険者ギルドについての説明をけていた。
通常であれば付で説明をけるのだが、5名が同時に登録するのであれば一度に説明した方がいいだろうとの配慮からであった。
職員のはエリーという名の貓獣人であり、敏樹は彼の説明を聞きながらも、縞模様の尾がゆらゆらと揺れているのが気になっていた。
この男、犬派か貓派か問われれば、圧倒的な貓派なので。
「登録されますと、皆さまGランクからのスタートとなります」
冒険者はその実力や活実績に応じでランク分けされている。
最低ランクはGで最高ランクはA。
ただし、Aランクに収まりきらない冒険者は、例外的にSランクとなる場合もある。
また、Gランクの下にHランクというのもあるが、それは未年者限定の予備ランクであり、通常、人はGランクからのスタートとなる。
「難度に応じて依頼にもランクが振り分けられております。注できる依頼は冒険者ランクのふたつ下からひとつ上までとなっております」
敏樹らの場合、最初はGランクとFランクの依頼まで注可能だ。Gランクは主に薬草等の採取系が多く、Fになってようやく弱めの魔討伐依頼が含まれ始める。
「こちらが後でお渡しするギルドカードです。これは冒険者ギルドに限らず、魔士ギルドや治療士ギルド等、他のギルドに登録する際も併用できます。皆様の魔力パターンを登録していただくので、他者の不正使用はほぼ不可能となります。失くすと再発行手數料として10萬Gゴルド必要となりますのでご注意を」
エリーが半明のカードを全員に見えるようにかざした。大きさはクレジットカード程度だろうか。
「また、冒険者ギルドでは皆様のお金を預かり、このギルドカードで管理することも出來ます。提攜店ではカードを使った決済も出來ますので是非ご活用ください」
大きさもだが、用途としてもクレジットカードのような使い方のできる優れものである。
しかもクレジットカードと違って、持ち主の魔力パターンを登録したギルドカードは他者による不正使用がほぼ不可能となる。
「もしどこかで誰かのギルドカードを拾った場合は、速やかに各ギルドまでお屆けください。報奨金として1萬Gが支払われますので」
紛失時の再発行手數料は10萬Gだが、失として発見された場合は引取料として2萬Gで済む。
1萬Gが拾得者の取り分、殘り1萬Gが手數料等含むギルドの取り分となるわけだ。
持ち主が死亡している場合は、拾得者に支払われる分の1萬Gをギルドが負擔する形となる。
持ち主不在のカードというのはいろいろと面倒の種となりうるので、ギルドとしては多費用を負擔してでも回収しておきたいのである。
「ここまでで何かご不明點はございますか?」
エリーが5人を見渡すも、特に質問のある者はいないようだ。
「では皆さま、こちらに必要事項を記してください。文字か書けない方は代筆しますので遠慮なくお申し出くださいませ」
記するのは名前と出地、年齢、得意な武や魔程度のもので、最悪名前以外は空欄でもよく、名前も偽名で問題無い。
これは脛に傷を持つ者でもけれるという冒険者ギルドの方針によるものである。
一度所屬させてしまえば、以降の管理が楽になるので、登録のハードルはかなり低いのだった。
「おっさん、悪いけど……」
「おう」
町への場時同様、シーラの分は敏樹が代わりに書いてやった。
「講習は以上となります。登録作業は付で行いますので、こちらへどうぞ」
講習を終えた敏樹らは、全員分の登録用紙を回収したエリーにつれられて付へと戻った。
登録手続きも引き続きエリーが行うようだった。
「ではギルドカードを発行します」
エリーはノートパソコン程度の大きさの臺座のような道を出した。
そこにはすでにカードが1枚セットされている。
「ではここに手を置いてください。この裝置が自で魔力パターンを読み取りますので」
敏樹が指示された場所に手を置くと、セットされたカードが淡くった。
「はい、こちらがトシキ様のギルドカードとなります」
「どうも」
渡されたカードは先ほど見せてもらったのと同じ半明ので、プラスチックともガラスとも取れない、なんともいえぬ質ものだった。
敏樹はけ取ったカードをその場で〈格納庫ハンガー〉に収納した。
この世界では【収納】という魔があり、多くの人が使えるので、人前で〈格納庫ハンガー〉を使っても特に問題はない。
「では以上で登録は終了となります。おつかれ様でした」
ちなみにギルド登録料だが、1人1萬G必要となる。
これに関しては依頼料からの天引きという形での支払いも可能だが、敏樹とロロアは自分の持ち金から支払った。
敏樹は山賊のアジトにあったものをこそぎ奪っており、現金だけで1000萬G以上得ていた。
そこから支度金として、救出した1人あたり50萬Gを渡していた。
ともに山賊のアジトへ攻め込んだ仲でもあるし、最初は集落の住人も含めて山分けを提案したのだが、結局辭退されてしまった。
しかし、生活の再建に金は必ず必要になるものなので、敏樹は無理を言ってたちにだけは50萬Gを持たせていたのだった。
余談だが、集落の住人たちには、戦いの準備で用意した農や武類を渡しておいた。
「シーラ様、メリダ様、ライリー様は以前他のギルドに登録された経緯があるのですが、本日はギルドカードをお持ちではないですか?」
「あー、そうだった。でももうないわ」
3人の場合は紛失扱いとなり、再発行手數料を含めての支払いが必要となった。
「な、やっぱ金は必要だろ?」
「へへ、ほんとだな」
「なんだったら、その分くらいは俺が出そうか?」
「いいよ。いつまでもおっさんに甘える訳にはいかないからな」
敏樹から渡された現金で、3人は問題なくギルドカードの再発行をけることができたのだった。
「冒険者ギルドの報を追加しておりますので後ほどご確認を。本日は長い時間ありがとうございました」
そう言って軽くお辭儀をしたエリーの尾が真っすぐ立っているのを、敏樹はなんとなく視界の端に囚えていた。
この時をもって、この世界における敏樹の立場は、冒険者ギルドヘイダ支部所屬の冒険者となった。
シーラ達が手続きをしている間、敏樹はけ取ったギルドカードを〈格納庫ハンガー〉から取り出し、嬉しそうにニヤニヤとしながら眺めており、ロロアはその様子を溫かい目で見守っていた。
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