《【新】アラフォーおっさん異世界へ!! でも時々実家に帰ります》第6話『おっさん、商都に著く』
一行はまだそこそこ日の高いに商都エトラシへと到著した。
ここはヘイダの町と比べて、面積は約3倍、人口は約10倍という規模を誇る、テオノーグ王國きっての大都市である。
「おおー、壁が高いなぁ」
町を囲う市壁もヘイダの町とは比べにならないほど立派であり、馭者席でガンドの隣に座る敏樹は、高い壁をぽかんと見上げながら思わず聲を上げてしまった。
「さて、罪人はり口で引き渡す手はずとなっておるゆえ、しばし待たれよ」
「あ、死はどうしましょう?」
「うむ、賊徒どもの死については冒険者ギルドで構わぬ」
山賊捕縛や討伐の報酬は冒険者ギルドが支払うのだが、生きている犯罪者をそのまま町にれるわけにもいかないので、警備に兵に預けるのが一般的なのだそうな。
一行の中で最高位ランクの冒険者であるガンドと、依頼人の代表者であるファランが警備兵のもとへ行ったが、ものの數分で戻ってきた。
このあたりのシステムも、上手い合に確立されているのだろう。
「冒険者ギルドに中間報告を済ませた時點で解散とする。宿はドハティ商會の好意で用意していただいておるので、各々ひと息ついたら共に夕食をとろうか」
エトラシの冒険者ギルドも街の規模同様、ヘイダのものより立派な建だった。
併設された酒場も広くて清潔があり、付の人數も多い。
ガンドとともに報告を終えたあと、敏樹は〈格納庫ハンガー〉に収納していた山賊の死を提出した。
ちなみに死の収納に関しては、事前にエトラシで収納庫の契約があったということである程度ごまかしている。
検分が終われば報奨金がでるので、それについては今回同行した冒険者で均等割にすることで話がついた。
「うん、いいじのホテルじゃないか」
今回ファランが用意してくれたホテルは、敏樹らが普段暮らしているバルナーフィルドホテルよりは數段グレードの下がるところだった。
『狹いところで申し訳ないんだけどねー』
とファランは言っていたが、敏樹とロロアにあてがわれた部屋はビジネスホテルのツインルーム程度の大きさはあるので、特に不満はなかった。
旅裝を解き、ひと息ついたところで夕食にちょうどいい時間となったので、全員で食堂に集合する。
「では今後の予定だが、明日はこの町で1日自由に過ごして結構。明後日の朝出発とする」
細かい行程についてはあえて言及しない。
いつどのルートでどの當たりに野営を……などと話して、もし誰かに聞かれでもしたら面倒なことになるからだ。
食事が始まり、誰からともなく明日の予定を話し始める。
「シゲル殿、よろしければ明日はこの街のギルドで訓練などいかがですかな? ヘイダの町よりも冒険者の數は格段に多いですし、中には面白い者もおるやもしれませんぞ?」
「おお、そうかぁ。じゃあそうすっかなぁ」
「お、だったら俺たちも付き合うぜ。ランザもモロウもいいだろう?」
「ええぞ」
「もちろん」
「あたしらも行こうかな。この街の冒険者ってのも気になるしね」
「そうですわね」
「ん、付き合う」
どうやら冒険者組はシゲルと共にギルドの訓練場へ行くようである。
「ねぇねぇ、トシキさんも行くのー?」
「んー、いや、馬車と野営で疲れたからなぁ」
ファランの問いかけに、敏樹はし疲れ気味の調子で答える。
〈無病息災〉があるので、的にも神的にも疲労はないはずだが、気分的なしんどさというのはどうしようもないのだ。
狹い馬車に乗り続けるだけでも疲れるのに、周りを警戒する必要もあったので、気疲れは結構なものだった。
それなりに立派なテントを用意していたとはいえ、その寢心地はホテルのベッドに遠く及ばない。
そのうえ數時間おきに見張りの代があるので、気の休まる暇がないのだ。
「あー、わかるなぁ」
ファランもまたお疲れのようである。
周囲の警戒もなく、テントよりも寢心地の良い馬車で気兼ねなく眠れるとはいえ、長時間の馬車移によって蓄積された疲労を解消できるほどではない。
〈無病息災〉を持つ敏樹にくらべて疲れは溜まっているだろう。
「あぁー、溫泉にでもつかってゆっくりしたいわー」
明日1日オフであれば、実家に帰って近くの溫泉宿でゆっくり過ごすというのもありではないだろうか。
「へええ、いいねぇ溫泉」
「お、なんならみんなで行くか?」
敏樹の提案に対し、ファランは力なく微笑みながら軽く首を振った。
「殘念ながら、ボクたちは明日仕事なんだよねぇ」
そもそも今回は観のためにエトラシやセニエスクを訪れるわけではない。
ドハティ商會で扱う荷を運んだり、支店の様子を見たりするという仕事が、ファランたちにはあるのだ。
馬車には人だけでなく、大量の荷が積まれており、それらの大半をここで降ろし、新たに別の荷を積んでセニエスクに屆けるのだとか。
「そういうのってさ、【収納】を使って運べないの?」
「あのねぇ。隣町とは言え馬車で3日の距離にある収納庫からを取り出すのに、どれだけ魔力が必要かわかってる? それだけの力を持つ魔士を雇うより、馬車で運んだほうが安いの」
「じゃあ魔石を使った収納庫同士の転送も似たようなもんか」
「だね。日用雑貨や日持ちのする食材なんかは、やっぱり馬車で運ぶのが一番安いと思う」
【収納】を利用した流も一応確立はされているが、それなりにコストがかかるので、積や重量の割に価値の高い寶飾品や、鮮度が命の高価な生鮮食品くらいにしか使われないらしい。
それなりの魔力量を持つ魔士を雇えば、遠く離れた場所からでも【収納】魔でをとり出せるが、それでも馬車いっぱいの荷を何日も離れた場所で取り出すとなれば、人數を何日も拘束するか、大人數を雇うかしなくてはならないので、それなりの護衛を雇って馬車で運んだほうが安くあがるのだ。
「ファラン以外はどう過ごすんだ?」
「私はファランの専屬護衛なので、彼とともに行します」
「ウチらは研修で來とるさかい、いろいろ見て回らないかんな」
「せやな。溫泉なんぞにつかっとる暇はないな」
ドハティ商會組はファランと共に行するようだ。
「私はファラちゃんの紹介でいろんな食材を見て回ろうかと」
「わたしは例の漂白剤を……うふふ……」
どうやら全員この町で何かしら用事があるようだ。
「ロロアはどうする?」
「私は敏樹さんと一緒ならなんでもいいです」
「だったらさぁ、ふたりで行ってきたら? 溫泉……」
ファランの提案にどう反応していいかふたりが迷っているところへ、ガンドが割ってってくる。
「トシキ殿、殘念ながらこのあたりに溫泉はござらんぞ?」
「あ、あー、そーなんですねー。殘念だな―」
「そ、そーですねー。明日はどーしましょーかねー」
「うーん、宿でゆっくり過ごそーかなー」
「そーですねー」
「うむ。冒険者にとっては休息も大事である。悪くない選択だと思うぞ」
「あー、俺らも訓練頑張りすぎないようにしないとなぁ」
なんとも下手なごまかしであったが、ガンドやジールたちはそこまで疑問を持たなかったようだ。
**********
「金を稼がないと……」
夕食を終え、部屋に戻った敏樹はふとあることに思い至り、そうらした。
「えっと、お金ってそんなになかったですか? 昨日の山賊討伐報酬もるから、大丈夫なんじゃ……」
「あー、いや、そうじゃない。ゴルドは問題ないんだよ。円……実家で使える金をなんとかしないといけないんだわ」
先日敏樹は〈影の王〉スキルのレベルアップにおよそ32億という、大量のポイントを消費した。
それでも殘り數千萬ポイントはあるのだが、このポイントが日本のメインバンクと連しているのだ。
つまり、メインバンクの殘額も數十億から數千萬に減っているわけである。
そしてこのメインバンクとポイントの因果関係が、し面倒なことになっている。
まずこちらの世界でポイントを消費した場合、メインバンクの殘高は減する。
あちらの世界でメインバンクから預金を引き出した場合、ポイントも減する。
こちらの世界でポイントを獲得した場合、メインバンクの殘高は増加する。
――ここまでは問題ない。
問題はもうひとつの仕様である。
メインバンクには預金が出來ない・・・・・・・。
ATMだろうがネットバンク畫面だろうが、『お預れ』の項目がグレーアウトして選択できないのだ。
実店舗を持たないネットバンク専用銀行のため、窓口での預金もできない。
そして電話やメールで問い合わせたところ、敏樹の口座は存在しないというのだ。
なので、他の口座からの振込もできない。
しかし、預金の引き出しは可能である。
これについて町田に問い合わせてみたところ、
「そういう仕様なんでご容赦をー」
と返されてしまった。
下手に銀行をつついて引き出しもできなくなっては困ると思い、これはこういうものだと納得することにした。
つまり、ポイントを稼ぐにはこちらの世界で経験を積むしかないのだ。
そしてせっかく貯めたポイントも日本円で使ってしまうと減し、日本円を稼いで補填することができない。
「できれば口座からはこの先1円たりとも引き出したくないんだよなぁ……」
幸いゴルドはそれなりに保有しているし、冒険者として活すれば問題なく稼げそうである。
「となると、ゴルドを円に替える必要があるよなぁ……」
- 連載中340 章
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