《死に戻りと長チートで異世界救済 ~バチ當たりヒキニートの異世界冒険譚~》第13話『魔の練習』
「じゃ、ショウスケちゃんのご希は生活魔ってことでいいのね?」
「はい、お願いします」
初級魔道講座を終えた俺は、再び付に戻ってハリエットさんの前に座っていた。
さっきのヘクターって人はもういなかったけど、ハリエットさん、なんかお疲れ気味だな。
習得施設で覚えられる魔の料金一覧見てるんだけど、高ぇな、おい。
一番安いのでも200Gだぜ?
待の『浄化』は一番グレードの低い『下級浄化』で5,000Gだってよ!! 手が出ねぇよ!!
「おすすめは『冒険者基本パック』ね。『燈火』『點火』『加熱』『冷卻』『乾燥』『製水』『止』『収納』の8點セットでなんと1000Gなのよ」
おお、個別に全部習得すると3000G近くになるのにすげーな!!
「あー、でも『下級浄化』は……?」
「『下級浄化』は……さすがに、ねぇ……? でも、単品で1,000Gの『収納』がタダ同然で覚えられるのはお得よ?」
「ふむう……確かに。でもここで覚えられる『収納』ってどれぐらいの収納力があるんです?」
「それはショウスケちゃんの甲斐次第ねぇ」
「甲斐?」
「そうよぉ。どれくらいの収納庫を借りるか次第だもの」
え? どゆこと?
「あら、よくわかってないみたいね。『収納』っていうのはね、契約した収納庫からものを出しれする魔なのよ。だから、安いものだとトランクひとつ分ぐらいだし、高ければ置まるごとってのもあるわね。場所によっては溫度管理や時間経過管理なんてオプションもあるわよ」
なんだってーーー!?
『収納』って亜空間みたいなところにを置いておく魔じゃなかったのか!!
……まぁ、でもこれはこれで便利か。
「はいこれ。ギルド提攜の収納屋さん」
そういってハリエットさんは一枚の紙をくれた。
簡単な地図が載ってある、広告みたいなものだった。
多分ここからキックバックとかがあるんだろうな。
だから『収納』がタダ同然で覚えられるんだろう。
「えーっと、それで相談なんですけど……」
「なぁに?」
「分割後払いでもいいでしょうか?」
「もっちろん! ショウスケちゃんは信用あるからねぇ」
「じゃあ! ついでに『下級浄化』も分割で……」
「それはダメ! Fランク魔師のローン上限は1,000Gまでなのよぉ」
ぐぬぬ……、結局のところ俺個人への信用じゃなく、ギルドランクへの信用じゃんか。
「じゃあ、とりあえず『冒険者基本パック』お願いします」
カードを渡してローンの手続きを済ませると、俺はそのままハリエットさんに連れられて、今度は20畳ぐらいの部屋に行った。
部屋の中は薄暗く、壁に何本か蝋燭が立っている。
ハリエットさんがなにかつぶやくと、蝋燭に火が付き、しだけ明るくなった。
し明るくなった部屋の床を見ると、魔法陣っぽいのが大きく描かれている。
「じゃ、えーっと、これと、これと、これと……」
ハリエットさんはなにか分厚い本のようなものを手に取り、1枚ずつページを破り取っていった。
「……はい、これで全部ね。じゃあこれ持って魔法陣の中央に立って」
8枚の紙を渡された俺は、ハリエットさんの指示に従い、魔法陣の中央に立つ。
「じゃ、リラックスしてね」
ハリエットさんが俺に向かって手をかざし、なにか念じ始める。
「うおっ!?」
しばらくすると、手に持っていた紙が1枚、灰のようにボロボロと崩れ、消え去ってしまった。
その後も1枚、また1枚と紙は消えていき、8枚全て消えた。
《スキル習得》
<生活魔>
《魔習得》
『燈火』『點火』『加熱』『冷卻』『乾燥』『製水』『止』『収納』
「はい、おしまい。お疲れ様でした」
えらいアッサリしたもんだな……。
「ありがとうございます」
「じゃあ今度は訓練場に行きましょうか。ちゃんと使いこなせるか確認しないとね」
ハリエットさんに連れられて地下に向かう。
った部屋は、魔道講座をけた部屋の倍ぐらいの広さのところで、ちょっと薄暗い。
何人か魔の練習をしてるみたいだった。
ハリエットさんに促され、俺は床にあぐらをかくような形で座った。
「じゃあまずは『燈火』から。使い方は何となくわかると思うけど、一応説明するわね」
そうなんだよな。
不思議な事に、魔を習得すると、なんだかそれが當たり前に出來るような気になってるんだよ。
「じゃあ、人差し指を立てて『燈火』と念じてみて。上手く行かなければ口に出したほうがいいかもね」
「はーい」
とりあえず念じてみる。
すると、指先にほのかなを放つ球が現れた。
「あら、お上手ねぇ。じゃあ消せるかしら」
燈りが消えるようにイメージすると、フッとの玉は消えた。
「じゃあ次は『點火』ね」
同じように人差し指を立て『點火』と念じると、ライターから出るぐらいの小さな火が出た。
これも消そうと思ったらすぐに消えた。
「あらぁ、ショウスケちゃんってば優秀ねぇ。じゃあ次これ」
そう行ってハリエットさんは洗面ぐらいの桶を取り出し、俺の前に置いた。
「じゃあここに『製水』で水を出してみて」
桶を見ながら『製水』と念じると、桶が水で満たされた。
ちなみにこの『製水』、空気中の水分を集めて水を作り出す魔だと思ってたんだが、ぜんぜん違うらしい。
いや、もともとはそういう原理の魔だったんだが、それだと例えば砂漠みたいな気ゼロのところでは使えない、という欠點があるんだわ。
”いやいや本當に水が必要なところ水出せないなんて不便じゃね?”ってことで過去の研究者たちが頭を捻った結果、”じゃあ水のあるところから持ってくればいいじゃん!”っとことで改良されたのが現在の『製水』。
どういう原理かというと、魔士ギルドが管理する貯水槽から転移させてんの。
貯水槽っつってもダムみたいなところを何箇所も作ってるらしく、水が汚れないようきっちり浄化もされてるんだと。
萬が一のため海水から淡水を生する施設も作ってるから、水不足になることはありえないらしい。
海水の淡水化なんて、元の世界でもなかなか実用レベルに達せないってのにさ。
しかも分離した不純から、塩を取り出す施設もついでに作っちゃったらしく、塩の安定供給にも貢獻しているんだと。
さらに、純粋な塩だけじゃなく、海水に含まれるミネラルやら何やらの旨味分も合わせた旨味塩的なものも製できるんだとか。
……すごくね?
どうりでこの世界の料理レベルが高ぇワケだわ。
っと、話がし線してしまったが、この『製水』って魔、名前も効果も<水魔>ってじだけど、実際は転移を使った<空魔>なんだな。
でも元の原理の名殘で名前は『製水』のままなんだとさ。
こんな風に大規模な施設を管理することで、魔士個人に掛かる負擔を軽減するってのも魔士ギルドの大切な役目らしい。
「じゃあ次は『加熱』でその水を溫めてみましょう」
桶の水を見ながら『加熱』と念じる。
かなり時間がかかったけど、風呂ぐらいの溫度には出來たよ。
もうし上手く魔力を込めるなり、時間をかけるなりすれば沸騰させることも出來るらしい。
「じゃ、次は『冷卻』ね」
お湯になった桶の水を冷やしていく。
これも時間かかったけど、薄ーく氷が張るぐらいには出來た。
頑張れば冷凍も可能みたいだ。
この『加熱』と『冷卻』は熱をってるだけだから、どっちも<火魔>だ。
やろうと思えば一つにまとめられるのだが、そこをあえて『加熱』と『冷卻』に分けることで効率をよくしてるってわけ。
「次は『乾燥』ね。これどうぞ」
ハリエットさんが手ぬぐいを渡してくれたので、桶の水に浸して軽く絞った後、『乾燥』と念じてみた。
し時間はかかったが、ちゃんと水気はとれてたよ。
「じゃあ最後に『止』ね」
ハリエットさんに渡されたナイフを使って、手の甲に軽く傷をつける。
ツーっとが流れてきたので『止』と念じてみる。
出が止まったところで、ハリエットさんが手ぬぐいを渡してくれた。
を拭ってみると、傷は開いたままだけどは完全に止まっていた。
「『止』はあくまで応急処置だから、回復魔や傷薬で処置することを忘れないでね。あと、太い管を切った場合には効果が薄いし、仮にを止められても長時間経過するとその先が壊死することもあるから気をつけてね」
そう言ってハリエットさんが俺の手の甲にそっと手を乗せてくれた。
その手を外すと、傷は綺麗に消えていた。
たぶん回復魔を使ってくれたんだと思う。
「『収納』は収納庫の契約をしないと使えないから、後日頑張ってね。もし契約後に上手く使えない時はお手伝いするわ」
「ありがとうございます」
立ち上がった俺は、激しい立ちくらみを覚え、倒れそうになる。
ハリエットさんが優しく支えてくれた。
「大丈夫? 魔力酔いかしらね」
ちょうど顔がおムネに當たる形になった。
(こ……これがラッキースケベってやつか!)
「ショウスケちゃん? 立てる?」
「あ、はい、もうって……、いやいや立てます」
「ふふ……。どうする? ウチ、泊まってく?」
「え……?」
ああ、いや、これはあれだ、寢臺で寢て魔力回復するかって意味だな。
「あの、大丈夫です」
1,000Gの借金が増えた今、10Gだって節約しないと。
頑張って冒険者ギルドまで行こう。
MP枯渇ってわけじゃないから、気をしっかり持ってればちゃんと歩ける。
「ショウスケちゃん、また來てね。いつでもおねーさんが魔教えてあげるから」
「はい、また來ますね」
魔教えてくれるっつっても覚えるのは有料だけどなー。
ま、余裕ができたら攻撃系の魔も覚えたいし、ここにはちょくちょく訪れることになるだろうな。
ハリエットさんもいるしね、ふへへ。
「あと、これからもダジギリの、よろしくねぇ」
「了解です」
**********
魔士ギルドを出たが、まだ全然明るい時間だった。
ハリエットさんが言ってた”魔力酔い”ってのは、魔力が枯渇しなくとも、一気に魔力消費すると出る悪酔いに近い癥狀のこと。
MPが0にならなくても、短時間で一気にMPを消費すると起こるものなんだろうな。
ただ、MPが0になるわけじゃないから、ちょっと時間を置けば自然に回復するんだわ。
冒険者ギルドに戻るころには魔力酔いも落ち著いてきたし、ぎりぎりランチの時間に間に合ったので、とりあえず食事をすませる。
とはいえ疲れていることに変わりはない。
清掃が終わった後だったので、そのまま寢臺に直行し、俺は翌朝まで寢た。
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