治療士ギルドは冒険者ギルドと道を挾んで向かいにあった。

冒険者ギルドと同じぐらいの大きさはあるだろうか。

聞けば、怪我や病気のための院設備があるから、かなり広いんだそうな。

中にると、そこは予想通り清潔な空間だった。

冒険者ギルドや魔士ギルドもかなり清潔なところだったけど、ここはまた違った清潔さがあるな。

まあ一言でいえば病院、ってじなんだけどさ。

待合室には一般人っぽい人がたくさんいた。

とりあえずギルド會員用の付に向かう。

付の人は、白いローブにを包んだ清楚なじのだ。

「本日はどのようなご用件で？」

「えーっと、ギルドへの新規登録とか回復魔の習得とかをしたいんですけど」

「ではギルドカードをお渡しください」

付のお姉さんにギルドカードを渡すと、例のごとく臺座にカードをはめ、採される。

「ショウスケ様、いつもお世話になっております」

ってことは、やっぱ薬草採取で貢獻してるのかな？

「ショウスケ様は薬草採取等で當ギルドの依頼をすでに數多くこなされておりますので、登録料は免除、Fランク治療士として登録が可能です。このまま手続きを進めてよろしいですか？」

このお姉さん、スラスラ話すね。

その後、治療士ギルドの説明もしてくれたが、まあ他のギルドの治療士版ってことで特に気になることはなかった。

聲がキレイで舌も抑揚もいいじだから、すーっと言葉が頭にってくるわ。

なんやかんやでお姉さんが手続きを済ませ、カードを一旦返してくれた。

「はい、登録作業は終了しました。魔士ギルドで基礎魔道講座は修了されているようですので、ご希でしたら回復魔の習得に移らせていただきますが？」

「よろしくお願いします」

回復魔の料金表をだしてもらう。

やっぱ高ぇなぁ。

「なにかお得なセットとかってあります？」

「ございますよ。ショウスケ様はソロの冒険者様ですか？」

「はい」

「でしたらやはり『冒険者基本パック』でしょうね」

あ、ここは魔士ギルドと同じ名前なんだ。

「『下級自己回復』『下級自己解毒』『下級自己強化』の3點で1,000Gとなっております」

おおっと、魔の方は8つなのに、こっちは3つで1,000Gか……。

個別だと合わせて2，500Gだから、半額以下にはなるんだな。

魔士ギルドほどのお得はないけど、まあいいや。

正直＜毒耐＞がある俺に『解毒』関連が必要かどうかってのが悩みどころだけど、じゃあここから『下級自己解毒』引いても、結局1,000G超えるんだよな。

『下級自己回復』単品で800Gかかるわけだし、パックでいっとくか。

……とその前に。

「すいませんが、ローンは組めますか？」

「はい。Fランク治療士の方は1,000Gまでのローンが可能です」

お、やっぱそうか。

「あ、魔士ギルドの方でもまだローンが殘ってるんですか……」

「問題ございませんよ。他ギルドとは別枠でご利用可能です」

よっしゃ！

「ではこの『冒険者基本パック』をお願いします」

「かしこまりました」

その後俺は別の人に連れられて習得部屋に行き、無事『下級自己回復』『下級自己解毒』『下級自己強化』を習得した。

この回復系魔とか補助系の魔は『聖』屬という複合屬だ、

『』をメインに『地』『水』『火』『風』四元素屬を混ぜ、ほんのちょっとだけ『闇』のエッセンスを加えると出來るのが『聖』屬。

人は四元素で構されているといわれ、そこに原初屬を加える事で人に影響を與える『聖』屬が出來るのだとか。

なんだかあれだね、DNAがATCGの4つの塩基で構されてるってのに近いね。

あと『聖』屬には穢けがれを祓はらう魔もあるらしいんだが、今は必要ないな。

訓練施設もあるようなので、とりあえず練習だけさせてもらい、ちゃんと使えることを確認した。

まず『下級自己回復』は、ちょっとした”自分の”怪我の治療が可能。

生活魔の『止め』と併用すれば、切り傷やり傷にはほぼ対応できるらしい。

骨折は直せないのだが、ちょっとしたヒビなら効果あり。

骨折の場合も、上手いこと骨接ぎすればある程度治療は可能だとか。

ちなみに他人の治療ができる『下級回復』は3,000Gナリ。

ただ、一定期間治療士として働くことを條件に覚えることも可能。

まあ、當分はソロのつもりだし、必要ないだろ。

『下級自己解毒』はその名前から想像できる通りちょっと弱めの毒を無効化出來る。

食あたりにも効果はあるけど、食中毒レベルだとちょっと厳しいらしい。

あと、即効のある毒にはほとんど効果がない。

これも他人を治療できるやつは高いけど、治療士ギルドでの労働を條件に習得が可能。

『下級自己強化』だけど、これは使えばなんかが軽くなって、いつもよりよくくじがする。

試しにステータス畫面見てみたら、『攻』『防』の基本値と、『力』『素早さ』『用さ』がちょっと上がってたよ。

これは結構使えそうだな。

これも他者に使える『下級強化』になると3,000Gとお高くなっております。

まあ、この冒険者パックは「最低限自分の面倒は自分で見ましょう」って理念が元になってるじやね。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

治療士ギルドでは回復魔を覚える以外特筆すべき事も無く、俺は冒険者ギルドに戻った。

さくっとディナープレートを食って寢臺に行く。

さて、実は今日寢る前にやっておきたいことがあるんだわ。

それは＜魔力作＞のレベルアップ。

寢臺なら最悪MP切れで気絶しても大丈夫だろ。

俺は寢臺に橫になった狀態で、を流れる魔力を練り始めた。

ステータス畫面を見ながらでも出來るので、どういうふうに魔力をかせばMP消費が増えるのか、みたいなことを気にしながら魔力を練る。

他の人には真似できない訓練方法だよな。

しの量をゆっくりかす分にはほとんど消費はないんだよね。

早くかしたりかす量を増やしたりいろいろ試してみる。

MPってのは時間経過で回復するんだが、いい塩梅で魔力を全に巡らせるようにすると、何もしてない狀態よりMP回復が早くなることも発見した。

ガーッと作して消費し、魔力酔いに耐えつつ気絶寸前でMP回復を図る。

その夜はそれをひたすら繰り返していたが、真夜中過ぎぐらいにちょっと油斷してしまい、MP切れをおこして気絶した。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

翌朝、ステータスを確認すると＜魔力作＞はLv3になってたよ。

MPも結構増えてた。

たぶん魔士ギルドの寢臺で寢てたらもっと回復してたんじゃねぇかな。

HPとMPって最大値みたいなのがないからどこまで回復するのかは不明だけど。

一応冒険者ギルドの寢臺だと疲れは完全に取れるんだけど、それでも日によって寢起き時のHPは上下してたから、調とかの影響はけるんだと思う。

さて、昨夜の魔力切れによる疲れもあんま殘ってないし、今日は武レンタルして狩りに出かけるか！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

俺はかれこれ10分ほど武防レンタル表とにらめっこしている。

だって、よくよく考えれば武なんて使ったことないもんよ。

中學の時に育の授業で剣道やったけど、結局竹刀振り回してチャンバラごっこしただけだもんなぁ。

「隨分悩んでるねぇ」

付にいるのはイケメンリザードマンことフェデーレさん。

「いやぁ、武なんて使った経験がないんで、どれ選んだらいいかわかんないんですよねぇ」

まあファンタジー＝剣と魔法の世界っていうぐらいだから、剣を使ってみたいけど、ショートソードにロングソード、レイピアといろいろあるし、でも刃って何度も切ってたら切れ味が悪くなるっていうから、メイスみたいな鈍も捨てがたいし、正直魔に近づきすぎるのは怖いから槍もありかなとも思うし、いっそ弓ってのもどうかと思いつつも、さすがにソロで弓は厳しいかぁ、と思ってみたり……。

「ふっふっふ。そんなアナタに『基礎戦闘訓練』！」

「基礎戦闘訓練？」

「そ。ショウスケくんみたいに、戦闘経験がない人なんてたくさんいるからね。実際武なんて使ってみないと何が自分に向いてるかなんてわからないでしょ？　だからそんな見習い冒険者のために、ギルドでは基礎戦闘訓練というのを行っているさ」

「へええ」

「ちなみにショウスケくんの場合、Gランクでの依頼貢獻度が高いから、きっちり訓練をければFランクに上がれるよ」

「え、マジっすか？」

「マジマジ。ギルドランクっていうのはそのギルドに対する貢獻度や信用度を示すって意味合いもあるけど、こと冒険者ギルドに関しては実力に見合わない高ランクの依頼注を規制するっていう意味もあるんだ。基礎戦闘訓練をきっちりければ、なくともF～Eランクの依頼で命を落とすなんていう可能はかなり減せるからね」

「へええ……、で、おいくら？」

「1,000Gだよ。ショウスケくんはGランクだけど特別にローンも可」

「1,000G……」

いま魔士ギルドと治療士ギルドに合わせて1,900G借金があるんだよなぁ。

で、再來月から収納庫のレンタル代が毎月50Gかかるし、出來れば早く『下級浄化』も覚えたいからなぁ。

「すんません、基礎戦闘訓練は後回しで」

「ありゃ、ざんねん」

「とりあえず、今回は青銅の槍でお願いします」

「青銅の槍ね。じゃあこれ。円盾まるたてとかいらない？」

「んー、今は節約したいんで、円盾はいいです」

渡された槍は1mちょいの木製の柄に、30cmぐらいの青銅の刃……えーと槍だと穂ほっていうんだっけ？　が付いてる。

全長1.5m足らずだから、短槍ってやつか。

後で知ったんだが、冒険者が使う長柄系の武は大この短槍サイズが基本になってるらしい。

森や窟なんかを探索することが多い冒険者にとって、2m超えるような長槍は扱いづらいんだと。

手にとってみると、いいじの重さだね。

周りに気を使いながら軽く振ったり、突いたりの真似事をしてみたけど、結構扱いやすそうだ。

こっちに來てレベルアップしたり、薬草採取で何気に使ってるから、多筋力は上がってると思う。

ヒキニート時代の俺じゃあ軽く振っただけで落としてたかもな。

「ショウスケくん……やっぱ基礎戦闘訓練けたら？」

今のちょっとした槍の真似事だけで、俺の戦闘センスのなさが見してしまったというのか！？

「あはは……。とりあえず弱そうな魔だけ相手にするようにしますよ」

とりあえず笑ってごまかしとこ。