《死に戻りと長チートで異世界救済 ~バチ當たりヒキニートの異世界冒険譚~》第32話『馬車に揺られてダンジョンへ』
俺は今、駅にいる。
馬車乗り場ね。
さて、目の前に馬車がある。
なぁ、馬車ってなんだ?
そうだよな、馬が引くあれだよな。
俺が思ってる馬車ってのは、4~6人乗りぐらいの、大きくても軽ワゴン車ぐらいのものかな。
そんなイメージだよな、馬車って。
で、目の前にあるこれはなんだ?
いや、馬車なんだけどさ。
でもこれ、軽ワゴンどころか高速バスぐらいの大きさがあるぜ?
20人ぐらい乗れんじゃね?
じゃあそんなでっかい車を何が引いてるかって?
馬車なんだから馬に決まってんだろーがよ。
くっそでかいけどな!!
俺が今までテレビとかも含めて見たとことある最大の陸上生はアフリカ象だと思うんだが、たぶんそれより一回りぐらい大きいな、この馬。
んで、腳が8本あるわ。
まあ腳8本の馬っつったらピンとくるわな。
一応訊いてみたよ。
やっぱスレイプニルだったよ……。
……お前さぁ、どっかの神話じゃ主神乗せるタイプの神獣じゃねーの?
なんで馬車馬ばしゃうまなんかやってんのよ。
しかもそのスレイプニルが駅には何頭もいるよ。
ゲームの序盤で熱いバトルを繰り広げた中ボスが終盤ザコとして群れで出現したような、そんな悲しい気分だわ。
とりあえず乗車手続き済ませるか……。
「エムゼタシンテ・ダンジョンまで」
「はいよ。50Gね。エカウナ橋で乗り換えだからね」
中にってこれまたびっくり。
外から見たより明らかに広い。
なんでも空間拡張魔を施してるらしく、100人ぐらい乗れるみたい。
俺が買ったのは一番安い座席なんだが、それでもかなりゆったりしてるわ。
リクライニングもあるし、クッションもあるし。
正直ギルドの寢臺より遙かに寢心地はいいな。
他にもフルフラットになる座席とか、個室とかもある。
現在防類は一旦収納庫に収めており、俺はいつものジャケットスタイルで座席にを投げ、出発を待っている。
時間が來てもかねえなー、と思って窓の外見たら、景が流れてた。
マジか?
話には聞いていたが、慣制すげーな。
そう、この馬車にはSFなんかでお馴染みの慣制がかかってるんだわ。
ただし、魔じゃなくスレイプニルの固有能力だけどね。
スレイプニルには重力制と慣制の能力がある。
その能力を買われて馬車馬として使われてるんだよね。
振に関しては魔で制してるみたいで、上下の揺れは微妙にあるかな。
それでも元の世界の車より全然揺れはないし、なんといってもスタート・ストップ時の前後の揺れとか、カーブ曲がる時の左右の揺れとかが一切ないのが嬉しいわ。
乗り心地最高だわ。
しかもすげー早い。
時速100キロぐらいは出てんじゃねーかな。
馬車と聞いてガタゴトいう地獄みたいな旅をイメージしてたんだが、これならどんどん利用したいね。
4時間半ぐらいでエカウナ橋ってとこについて、そこで一旦降りる。
トセマからダンジョンに行く場合は、まずエムゼタ行きに乗って、ここエカウナ橋で乗り換えるのが一般的なんだそうな。
このエカウナ橋ってとこは橋の手前に駅とちょっとした売店や小さい食堂があるんだが、あくまで乗り換え場所ってじで、小さな宿はあるものの宿場町ってほどじゃないかな。
まあこのまま1時間進めば州都があるわけだしね。
エカウナ橋からエムゼタシンテ・ダンジョンまでは普通の馬が引く馬車で行く。
車の大きさも軽ワゴンぐらいの奴ね。
ちなみにエカウナ橋は渡らず、手前で東に曲がるじね。
ダンジョン直通の馬車もあるにはあるんだが、スレイプニルタイプじゃなく、普通の馬車になるから、倍近い時間がかかるらしい。
普通の馬車といっても空間拡張魔は施されてるから車はゆったりしてるし、振制はもちろん、重力制と慣制もスレイプニルの固有能力には及ばないもののきちんと魔を施してあるから乗り心地はそんなに悪くなかったよ。
エカウナ橋での乗り換え待ちは10分ぐらいで、そこからエムゼタシンテ・ダンジョンまでは1時間ぐらいだったね。
ああ、余談だけどエムゼタ行きの馬車だが、あれはトセマ発じゃなく、西隣トウェンニーザ州の州都エベナから南隣エスタサミアス州の繁華街ケマトを経由して來たやつ……ってことだけど、土地勘ねぇからよくわかんないや。
そんなわけで、俺は快適な馬車の旅を経て晝過ぎにエムゼタシンテ・ダンジョンへ到著した。
**********
エムゼタシンテ・ダンジョン。
そのダンジョン口を中心に集落ができている。
中々活気のある集落だな。
ただ、街とは違って、そこはかとなく殺伐としているような気がしないでもない。
街に比べるとちょっと割高だけど、生活やダンジョン探索に必要なはこの集落でたいてい揃うようになっている。
そしてギルドの魔石買取出張所もあるみたいだ。
魔石納品は魔士ギルドと冒険者ギルド共通の実績になるし、ある程度深いところまで潛れるとそこそこ良い稼ぎになるらしいから、冒険者の半數近くはダンジョン探索者になるらしい。
近年魔石の価格がどんどん下落していってるから、淺層だと大変みたいだけどね。
「あのー、初めてなんですけど」
さっそく俺はダンジョンり口からし離れたところにある、國際ダンジョン協會エムゼタシンテ・ダンジョン出張所を訪れた。
まぁプレハブみたいなじの建で、付スペースと従業員の休憩所が一になってる簡易な施設だけどね。
ダンジョン探索をするにはダンジョンカードを作する必要がある。
これは國際ダンジョン協會が発行するもので、各ダンジョン探索狀況を把握するためにダンジョン探索者全員が所持を義務付けられているカードだ。
本來ならいろんな試験や面談をけての発行となるが、ギルドカードを持っている場合はギルドが元保証をしてくれるため免除となる。
「はーい。じゃあ10Gね」
大銅貨を1枚払い、登録を経てカードを発行してもらう。
出來ればギルドカードと一本化してしいところだが、管理元が違うのでしょうがないか。
**********
ダンジョンカードの登録を終えた俺は、ダンジョン淺層のマップと攻略報が書かれた冊子を買い、屋臺で適當に軽食をつまんだあと、いよいよダンジョンにることにした。
収納庫から武防を取り出して裝備し、ダンジョン口へ向かう。
結構な行列ができていたものの、パーティー単位で一気に5~6人ずつ捌けていくので、15分ほどで自分の番が來た。
り口には5つほど付があり、俺はちょうど真ん中の付を通ることになった。
付にいたのは俺と似たような裝備のオッサンで、まずはダンジョンカードを渡す。
「はじめてかね?」
ダンジョンカードを専用の道に通すといろいろ報閲覧できるらしい。
「はい」
「パーティーは?」
「ソロです」
「ふむ。では念のためギルドカードを見せてもらおうか」
一応さっきのダンジョンカード登録時に提示はしてたんだがね。
ま、見せるだけだからいいけどさ。
このギルドカードにはいろんな報がっているんだが、専用の魔道がないと容の閲覧はできない。
本人だけはギルドにあずけてあるお金の殘高とか依頼の進捗度とかいろいろ見れるんだけどね。
ただ、カードのみでも名前と各ギルドのランクはわかるようになっている。
「Eランク冒険者か、いいだろう」
カードと一緒に、ビー玉ぐらいの明の玉をけ取った。
「帰還玉だ。使わなければ返卻、使えば100Gだ。決して安くはないが、命には替えられないから、危ないと思ったらためらわず使うように」
この帰還玉だが、地面に叩きつける等して砕くと、ある程度の範囲の者をり口まで転移させる効果がある。
『製水』や『収納』等この世界では當たり前の用に転移という魔が使われているが、転移には制限がある。
実はしか送れないのだ。
たしか”魂のある者”は送れないんだったかな。
なので、人に限らずも魔も送れない。
ただし、死や死骸は送れる。
余談だが、ゾンビやスケルトンといったアンデッドも転移出來ないことから、それらは空っぽの死がいているのではなく、何らかの魂が宿っているのだろうと言われているな。
転移はしか送れない、というのはこの世界の理ことわりみたいなものだが、ダンジョンとなると話は別だ。
この世界を何者が創り、何者が支配しているのか、大昔から議論はされているが、殘念ながら明確な答えはない。
しかしダンジョンは、ダンジョンコアが創り、ダンジョンコアが支配する世界。
そう、ダンジョンってのは小さな異世界なんだよね。
なので、ダンジョンコアが許可すれば、人でもでも転移できるし、場所によってはダンジョンで死んだ場合に限り生き返れるってところもあるそうだ。
その辺の設定はダンジョンコアを制圧するとある程度いじれるんだと。
ここエムゼタシンテ・ダンジョンは、転移以外の部分は外の世界とあんま変わらんらしいけどね。
「初めてでソロということだから、階層制限をかけさせてもらう。とりあえず2階層までだな」
ダンジョンってのはいくつもの階層が重なっていて、基本的に階層間の移は転移陣で行う。
ダンジョンカードを使った階層制限を行うことで転移陣の作を制し、実力のない者が深層へ行けないように出來るってわけ。
ダンジョンってのは危険なところだし、探索は自己責任で行うものだが、それでも死傷者はないほうがいいからね。
「先に進むにはどうすればいいです?」
「2階層の階層ボスを倒したら一旦地上に戻ってくれ。そこで階層制限を変更する」
「わかりました」
「では、気をつけてな」
場手続きを終えた俺は、ダンジョン口へ向かった。
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