《死に戻りと長チートで異世界救済 ~バチ當たりヒキニートの異世界冒険譚~》第37話『続・パーティーのおい』
パーティーか……。
ジータさんと一緒ってのは悪くないけど、殘りの2人がなぁ。
俺、基本的に偉い人と偉そうな人は苦手なんだよね。
「ってか、なんで俺?」
「淺層のボスとはいえ、ソロにもかかわらず1分足らずで倒せる技量を見込んで、といったところでしょうか」
「それはあのじいさんか坊っちゃんが言ってたの?」
「はい。ただ、私もショウスケさんの戦い方には興味があります」
「そう?」
おっと、こんな人に興味を持ってもらえるとは男冥利に盡きるねぇ。
「……私、Eランク昇格に失敗してるんです」
あ……、そうなんだ。
聞けばジータさん、訓練のあとあまり間を開けずにランクアップ試験をけたらしい。
いかに細剣使いの人気が低かろうと、Eランクともなれば多需要はあるだろうと見越しての事だったが、殘念な結果に終わってしまった。
「実戦経験が足りないから、指定依頼攻略の方を勧められました。もし試験をけたいならエムゼタシンテ・ダンジョン5階層を攻略しろと」
ああ、確かにジータさんの剣はそんなじかもなぁ。
俺はなんやかんやで文字通り命がけの戦闘をくぐり抜けた経験あるし、カーリー教はその辺しっかり見抜いてそうだ。
「ショウスケさん、カーリー教の試験をけたんですよね?」
「ええ、まぁ」
「どうやって試験をクリアしたんですか? 私もその闘いぶりを見習いたいんです」
ありゃ、なんかこの子酔っちゃってない?
口數と勢いがどんどん増してきてるんだけど。
まぁ適當にあしらうか。
「今朝も言ったけど、俺は魔道剣士だからジータさんの參考にならないと思うよ?」
「魔道剣士?」
「そ。どっちかっつーと剣より魔のほうが得意だもん。試験の時だって開始早々『魔弾』で不意打ちかけたし」
「え……、それって大丈夫だったんですか?」
「教はそういうの好きみたいよ。あの人たぶん戦闘狂だから」
「そう、ですか……」
「せっかくパーティー組めてダンジョンにれるようになったんだからさ、とりあえず5階層攻略目指したら?」
「はい……」
「ってことでそろそろ時間だから俺行くわ」
話し込んでたら馬車の時間が近づいてきた。
パーティー云々の話はうやむやに……
「あの! パーティーの件は……?」
できないかー。
「あー、俺団行苦手だから行けるところまではソロで頑張るわ」
「そうですか……。明日もダンジョンへ?」
「いや、今から寢臺馬車で一旦トセマに帰るよ。魔師ランク上げたいから」
「でしたらエムゼタのほうが近いですよ?」
言えやしない……。
ハリエットさんの魅の谷間が見たいからわざわざ遠くのトセマに帰るなんて絶対に言えやしないんだ!
「いや、まぁ他にもいろいろ用事があるから」
っと、ハリエットさんのこと考えてたらついつい視線がジータさんの元へ……。
察知されたのか、ジータさんは隠すように元を押さえ、微妙にの向きを変える。
「……そうですか。ではお気をつけて」
あれ、さっきまでグイグイ來てたのに、突然無表になったぞー。
「う、うん。ビールごちそうさま」
**********
そんなこんなで俺はいま寢臺馬車に寢っ転がってる。
これはスレイプニルタイプじゃなく、普通の馬が引いてるんだが、三頭立てで、なおかつ車には各種魔が施されているため、かなりの広さと居住を実現できている
行き先はエカナ州の南にあるエスタサミアス州の繁華街ケマトだが、途中トセマを経由するのでそこで降りる。
快適な馬車の寢臺で、俺は今後のの振り方を考えていた。
今はまだ余裕があるものの、いずれソロでは限界が來るかもしれない。
その時にパーティーを組む必要は出てくるんだろうけど、大丈夫だろうか?
人と接するのは嫌いじゃなくなったけど、四六時中行を共にする、場合によっては他人に命を預ける、他人の命を預かるなんてことが俺に出來るだろうか?
「ま、まだ先の話か」
自分に言い聞かせるように言葉を吐き、寢返りをうつ。
そう。いずれパーティーを組むとしてもそれはもっとずっと先の話だろう。
エムゼタシンテ・ダンジョン5階層の時點で、まだまだ余裕だし、とりあえず10階層攻略とDランク昇格まではソロ確定だな。
……なんて思ってたんだが、まさかこの後すぐ他人と行を共にすることになるとは。
しかも相手はあのデルフィーヌさんだ。
**********
エムゼタシンテ・ダンジョンからおよそ8時間かけてトセマに戻ってきた。
晝の直通便よりかなり早いのはやはり三頭立てだからかな。
現在三刻半(午前6時)過ぎ。
ここから馬車はエスタサミアス州のケマトへさらに4時間かけて向かう。
急ぎの人はここでスレイプニルタイプに乗り換えることも可能だ。
それだと2時間足らずでケマトに、さらに2時間でヘルキサの塔があるトウェンニーザ州のエベナに行ける。
そうそう、あのスレイプニルタイプの馬車は通稱”高速馬車”というらしい。
語が高速バスに似ているのは<言語理解>さんの仕業か?
ひとまず俺は冒険者ギルドに行き、仮眠をとる。
ギルドの営業は一応四刻半(午前9時)と決まっているからな。
魔師ギルドは完全に活を停止しているが、冒険者ギルドには営業時間外の不寢番がいて、ちょっとした手続きならできるようになっている。
そのちょっとした手続きに、寢臺の利用も含まれるのだ。
ちなみに治療士ギルドも一般業務は停止しているが、救急外來は隨時付中で、當直の治療士もスタンバっている。
寢心地は悪いが寢起きはすっきりする冒険者ギルドの寢臺で仮眠をとった俺は、五刻(午前10時)に起き、モーニングセットを食べて魔師ギルドへ。
ちなみに冒険者ギルドのモーニングセットは、らかいパンとスープ、サラダが基本で、メインは日によってベーコンエッグになったりソーセージセットになったりする。
それにドリンクが付いてお値段4Gナリ。
朝食を終えた俺は支度を終え、魔師ギルドへ。
久々のハリエットさんだぁ、とニヨニヨしながらギルドのり口をぬけるも、付卓に座るヨボヨボのじいさんを見て一気に気分が下がる。
「おう、ヤンスケくん。息災かの?」
「ショウスケです。あの、ハリエットさんは……?」
「仕事でエムゼタの魔師ギルドに行っとるよ」
な、なんだってー!!?
わざわざとトセマで戻ってきたのに無駄足だったか!!
「そっすか……」
「そない骨に落ち込まんでもええじゃろうが、チョウサクくん」
「ショウスケです。じゃあすんませんけどランクアップを」
俺はうなだれつつもなんとか気力を振り絞ってギルドカードをじいさんにわたした。
「ほうほう。もう魔石10kgクリアしたんかね。じゃ早速ランクアップしちゃろ」
ってなわけで俺は無事Eランク魔士となった。
「で、ロウスケくん。何ぞ魔でも覚えていくんかね?」
「ショウスケです。あー、戦闘付與魔を覚えようと思ってたんですが、何を覚えるか検討してまた來ます」
ハリエットさんがいないことがショックすぎて、頭が全然回らんわ。
とりあえずギルドの食堂でお茶でも飲みながらゆっくり考えよう。
「じゃあの、ベンスケくん」
「ショウスケです……」
**********
冒険者ギルドに戻ってコーヒーを頼む。
そう、この世界にはコーヒーもあるのだ!!
いかなる狀況でもコーヒーはホットのブラックと決めている俺は、ランチ前で人のない食堂にぽつねんと座り、コーヒーをすすっている。
ちなみに今は夏真っ盛りで、冷房が効いているとはいえホットコーヒーを頼む客はない。
「ホントにホットでいいの? この季節は氷たっぷりのアイスコーヒーがオススメよー」
と食堂のおっちゃんに勧められたが、それを固辭してホットコーヒーをれてもらった。
どうせ水出しで作り置きのアイスコーヒーの方が楽だからそっちを勧めてるんだろうがその手には乗らないぜ!
ここにはコーヒーメーカーもドリップペーパーもないから、ホットコーヒーはネルドリップなんだよねー。
まあアイスコーヒーを水出しで作ってるところは評価してやってもいいけどな。
ホットコーヒーを濃いめに作って氷をれたコップに注ぐタイプのアイスコーヒーは正直どうかと思うんだが、そもそもアイスコーヒーを飲まないんだからどうでもいいか。
「なんでけちゃダメなのよ!」
おおっと、午前の靜かなコーヒータイムを邪魔する無粋な聲が聞こえてきたぞ。
聲の方向を見ると、ギルド付で冒険者がゴネてるみたいだ。
……デルフィーヌさんだったよ。
「いやー、ダメってわけじゃないんだよ? ただ、それちょっとワケありっぽいからさぁ」
相手してんのはフェデーレさんだな。
「でもEランクの依頼でしょ? だったらFランク私がけても問題ないじゃない」
「そうなんだけどさぁ。その容でEランクってのが怪しいんだよねぇ。普通はそれだとGかFだよ?」
「だったらなおさら問題ないんじゃないの?」
「いやいや、そういう容の割にランクと報酬が高いのはヤバいんだって」
うーん、さっきまで全然気にならなかったんだけど、いざ一言耳にるとその後の會話の推移が気になるもんだねぇ。
「せめてEランク冒険者の護衛ぐらいはあったほうが……」
「そんな知り合い……いないわよ……」
「うーん、なんかいい方法が……」
っと、ここでフェデーレさんと目が合ってしまった。
「あるね。あそこに暇そうなEランク冒険者がいるよ」
「え!? どこ?」
振り向いたデルフィーヌさんと目が合う。
「あ……」
デルフィーヌさん、固まったけど?
っつーか俺、そんなに暇じゃないんだけどなぁ。
いや、急ぎでやらなくちゃいけない用事があるわけではないけど、出來れば早いとこダンジョン10階層まで攻略してDランクになりたいんだよね。
いや、急ぐわけじゃないけどさ。
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