《死に戻りと長チートで異世界救済 ~バチ當たりヒキニートの異世界冒険譚~》第83話『みんなでニューゲーム』

<決死の一撃>を放って気を失った後、気がつけばシェリジュの森だった。

今回はお稲荷さん出てこなかったな。

服裝は例の麻の服。

ステータス畫面で1年前に戻ったことを確認した。

「よし! とりあえずトセマに行くか」

今回は狩りなどはせず、まっすぐトセマへ。

「あ……ショウスケくん」

門番のアディソンさんが俺を見て戸う。

「どうも、お久しぶり? ですかね」

「えっと、うん。あれ? えっと……」

アディソンさんが百鬼夜行でどうなったかは知らないが、まぁひどい目にあったのは違いないだろう。

トセマは東にある分、帝都より被害は大きかったはずだ。

「一応言っておきますが、1年前に戻ってます」

「はぁ?」

「まぁ詳しいことは後で説明するので、ってもいいですかね?」

「あ、ああ……どうぞ」

と顔パスで門を通過。

そのままデルフィの宿へ向かう。

これは事前に打ち合わせていたことだ。

デルフィはロビーみたいなところで待ってくれていた。

「お待たせ」

「準備できてるわよ」

そう言って踵を返したデルフィについて行き、彼の部屋へ。

俺がトセマへ來るまでの間に、デルフィには安い古著を買ってもらっている。

サクッと著替えた後、冒険者ギルドへ。

「どうも、フェデーレさん」

「あ、や、やあ……」

やっぱ戸ってんな。

「おお!! ショウスケェ!!」

ついでにガンドルフォさんも出てきた。

「おいショウスケ!! なんか知らんが俺は変な夢を見たぞ!!」

「あ……そうか、夢」

「あー、それ、夢じゃないっす」

夢オチに逃げようとする二人を現実に引き戻す。

「詳しくは後で説明します。とりあえず紙とペンを」

何か言いたげな二人を制し、とにかく紙とペンを急いで用意してもらう。

そして、考えに考えていた文面で事の説明文を書く。

とにかく簡潔に。

「これを複製してとりあえず冒険者・魔士・三工ギルドとダンジョン協會へ。あとエレナさんとガンドルフォさんにも同じものを渡してあげてください」

さらに別の手紙を書き、それはしっかり封をする。

「これは帝都のギルドマスターへ」

これには皇帝に宛てた親書も同封している。

ついでに金の無心もしておいた。

続けて薔薇の戦士連隊の名簿を元に、全員の名前を書きだす。

「先程の文書を出來るだけここに書かれた人全員に行き渡るよう周知してください」

第一報はこんなもんでいいだろう。

ついでに冒険者ギルドへ登録を済ませておいた。

「で、何か質問は?」

とりあえずギルドマスターからの返事待ちの間、ガンドルフォさんにコーヒーを奢ってもらった。

エレナさんも出勤しており、先程の文書を門番のアディソンさんに渡してもらっている。

ハリエットさんにはデルフィが直接渡しており、ついでにフランツさんとフレデリックさんの店にも行ってもらった。

あの二人はこの場にいなくても、ここの支店経由で渡せるはずだ。

「いやぁ、お前さんの説明文で何となく事はわかったけどよぉ……何がわかんねぇのかわかんねぇから、もうちょっと落ち著いてから質問するわ」

他の人たちも今のところ質問は控えるようだ。

そうこうしているに、ギルドマスターからの返事が屆く。

といっても「明日宣言通り參せよ」とだけだけど。

ついでに1萬G振り込んでもらえたうえ、本部ギルドマスター権限で『ヤマオカズ』の二人はとりあえずAランクとなった。

「先立つものも手にったことだし、とりあえずエベナに行くか」

馬車の出発までし時間があるようなので、服屋で最低限謁見に耐えうる服を購しておいた。

夕方に出発した高速馬車に乗り、エベナに到著したのは夜中だったので、そのまま宿屋で一泊。

翌朝駅の廄舎を訪れた。

《ウェーイ!! あるじー!!》

《おう、テキロ。元気だったか?》

《もちろん元気ッスよー!!》

エベナで待機しているテキロと合流した。

「えーっと……ショウスケ様でよろしいでしょうか?」

この人は前回も會った廄舎擔當のギルド職員さん。

殘念ながら彼は隊員じゃないんだよね。

「どうも、はじめまして。ショウスケと妻のデルフィーヌです」

紹介されたデルフィが軽く頭を下げる。

「ああ、これはご丁寧にどうも。えーっとですね、ギルドマスターから指示がありまして……、この的盧馬のスレイプニルを自由に使っていいとの事です」

「そうですか。どうもお世話かけてすいません」

「ああ、いえ……」

職員さん、いろいろ聞きたそうだけど遠慮してるじだなぁ。

悪いけどこの場はスルーさせてもらおう。

《テキロ、服従のフリ》

《ウェーイ!!》

テキロが膝を折り、俺に向かって頭を下げる。

「おお!! もう調教テイムを!?」

「まぁ、そんなトコです」

「なるほど……。事はよくわかりませんが、これなら安心してお預け出來ますな」

「では街を出る手続きを済ませたらすぐに出発しますね」

「あー、それはこちらでやっておきますから、すぐに出発していただいて結構ですよ」

「お、そりゃどうも」

というわけで、俺はテキロ連れて廄舎の外へ。

デルフィとともにテキロの背にのり、空を駆けてもらう。

「おお! スレイプニルが空を……!!」

職員さんめっちゃ嬉しそうだな。

《ウェーイ!!》

テキロがノリノリで駆け出したため、エベナの街はあっという間に見えなくなった。

半日とかからず帝都に到著。

し前から地上に降り、門へ。

「おお、ホントに來たよ。マジでスレイプニルにまたがってんのか?」

門番が呆れたように呟く。

るっつーか、普通に座ってるけどね。

何度も言うが、スレイプニルはデカいから。

門番の人はどうやら事前に言い含められていたらしく、都の手続きはあっさり終わった。

「えーっとですね、街道を通ると邪魔なので、帝城前の広場まで空を駆けてこい、とのことです」

そっか、ギルドマスターも皇帝も、俺が帝都近くでテキロに乗って空中戦やってたの見てるもんな。

**********

「まさか本當にこの日が來るとはな……」

無事城を果たし、謁見となる。

「ではさっそく本題にりましょうか」

この場には皇帝以外にギルドマスターと相國のおっさんしかいない。

をさらに詳しく説明していく。

特に重要なのが、ダンジョンコアの停止だ。

これに関しては出來るだけ早い段階で各責任者に周知してもらう必要がある。

「あいわかった。しかしショウスケが異世界の勇者とはのう……」

そういうことにしてある。

賢者サンペーと同郷の異世界人で、この世界を救うために召喚された、と。

前回の謁見の段階でそんなこと言っても鼻で笑われるだけだったろうが、一度滅亡を経験すれば、あれを回避するために藁をもつかむ思いになるだろうと思ってね。

案の定、すんなりとれられたよ。

「そしてあの狐の化けを倒さねばならんのだな?」

「はい。あれを討伐するまで、滅亡は何度もくりかえされます」

コンちゃんごめん、”あれ”呼ばわりして……。

「ふむう……あれを何度も経験するのは勘弁願いたいな……。よし、ショウスケの願い、聞きれようぞ。それが我らのためにもなろう!」

なんつーか、この人ちょっと立派になてね?

やっぱ<統率>スキル上げたからかねぇ。

なんかその様子を見る相國のおっさんの目が優しいわ。

「時にショウスケ、勇者といえば最強の武……、そうは思わんか?」

「はい?」

そういやチート能力はあるけど、チート裝備はないなぁ

「あの狐の化けを相手取るに、普通の武では心許なかろう」

普通の武っつーか、竜骨のレイピアもチートってほどじゃないけどかなり強力なんだけどね。

ただ希価値は高いものの、唯一無二ってわけじゃない。

竜骨を使った裝備ってのは、數はないが他にも存在するんだよな。

「もしかして、帝國に代々伝わる寶剣みたいなのがあるんです?」

「はっはっは。確かにそういったものもあるが、寶剣はあくまで寶剣。由來は立派だし、それなりの能ではあるが、あの化けを相手取るにはちと荷が重いの」

「では他になにかお心當たりでも?」

「ふふ……あのエリック・エイタスが持っている剣を知っているか?」

「……いえ」

そういやエリック・エイタスって、奇怪な行エピソードは有名だけど、裝備に関してはあんまり知られてないな。

「たしか銘は『風の剣』といったかな。防ぐこと、避けること能あたわず、あらゆるものを斬り裂くと言われておる。」

お、そういうストレートなネーミングは嫌いじゃないぞ。

っていうか、もしかして『防不可』『回避不可』の能力があるのか?

「その『風の剣』をエリック連隊長からけ取れ、と?」

「いや、そうではない。おそらく『風の剣』はエリック・エイタスにしか使いこなせんだろう」

おっと、じゃあどうしろっての?

「余が言いたいのはな、ショウスケも同じような武を手にれよ、ということだ」

「はぁ……しかしどうやって」

「ふむ、ショウスケはエリック・エイタスについて余ほど詳しくないようだな」

「ことエリック連隊長に関する造詣の深さという點で、陛下にかなうものはいないでしょう」

「そ、そうかな」

あ、嬉しいんだ。

「さて、武の話に戻るが、エリック・エイタスが『風の剣』をいかにして手にれたか?」

ここで皇帝がもったいぶったように一呼吸空ける。

「フェイトン山を攻略した際に得たのだ」

「フェイトン山?」

「そうだ。エリック・エイタスこそあのフェイトン山の初回攻略者なのだ。そしてフェイトン山のダンジョンコアを停止することで手にれたのが『風の剣』というわけだ」

「つまり、フェイトン山を攻略しろ、と?」

「そういうことだな。ただあそこは貴重な金屬供給源であるため、そうそう停止に了承はしてもらえまい。余の方からもダンジョン協會とヘグサオスクの評議會には話を通しておくが、なにかしら難癖をつけられるかもしれん。しかし、強力な武を手にれることが葉えば、勝利に一歩近づけるのではないか?」

たしかに、今回現れるコンちゃんは、2,000億程度のHPを保有しているはずで、ダンジョンコアの停止が上手くいったとしても1,000億削れるかどうかってところだろう。

今回でどれだけレベルをあげられるかわからないが、<決死の一撃>で1,000億のダメージを與えるってのは難しいだろうな。

だが、強力な武、それこそ『防不可』『回避不可』の機能を持つ武を手にれられたら、多時間はかかるにせよ通常攻撃でHPを削れるはずだ。

今回で決著を付けるのに、実はあと一歩足りないと考えていたのだが、思わぬところから助け舟が出たぞ。

「陛下、ご助言ありがとうございます。早速フェイトン山に行ってみようと思います」

「うむ。ショウスケ一人に重荷を負わせるようで申し訳ない。しでも助けになるよう、各地のダンジョンコア停止の手配は我らに任せてくれ」

「ありがとうございます」

最強の武か……。

ちょっとワクワクするぜ!!

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