《死に戻りと長チートで異世界救済 ~バチ當たりヒキニートの異世界冒険譚~》第84話『日本刀を出しときゃいいってもんじゃない』
現在俺とデルフィは、フェイトン山でゴーレムを狩りまくってる。
非公開の26番口ってとこがあり、そこからってるんだけど、ホントすげーわ。
なんつーか、無雙系ゲームの雑魚みたいな覚で金屬系ゴーレムがワラワラ出てくんの。
ミスリルだろうがオリハルコンだろうがお構いなしですよ。
なんでこんなことになったかというと、フェイトン山のダンジョンコア停止のための條件として、採取のお手伝いをお願いされたんだな。
ここのダンジョンコアは停止されると1年は復活しないらしく、その間の金屬を採り貯めといてしいと頼まれたんだ。
そんなわけで、とにかくゴーレムを倒しまくってるんだわ。
他の冒険者にも手伝ってしいところだけど、いま冒険者ギルドは全力を上げて各地のダンジョンコア停止に奔走してるんでね。
深淵のダンジョンに関しては、前回のダンジョンコア停止の報が引き継がれているらしく、帰還玉が使えるようになったみたいだ。
各階層への転移陣はそもそも存在しない仕様なんでどうにもならないが、それでも帰還玉が使えるってのはかなりありがたいってさ。
一応前回俺たちが攻略した時の報を覚えてる限り提供したところ、帰還玉と合わせれば俺たち以外でも攻略は可能だろうってことで、そっちは冒険者ギルドに任せることにした。
かれこれ1ヶ月ほど狩り続けてるんだが、出現數が減りそうな気配はない。
26番口では出現數のない銅と錫すずをベースにしてたら、鉄は3年分、ミスリルは10年分、オリハルコンに関しては過去の累計採取量を超えたみたい。
やり過ぎたか……。
普通に考えれば希金屬価値の大暴落が起こりそうだが、フェイトン山のダンジョンコア停止は確定しているわけだし、価格の安定化については鉄工ギルドに頑張ってもらおう。
あと、たまにロックゴーレムも出たんだが、そいつが大理石みたいな綺麗なで出來てんの。
見た目通り価値の高い石材らしく、石工ギルドの人が大喜びしてたよ。
木工ギルドが恨めしそうにしてたけど、おたくらは樹海の木をいくらでも採れるんだから我慢してくれや。
**********
約束通り、というか約束以上の金屬を納めた俺たちは、の26番口よりさらに匿の高い0番口というところに案された。
ここが唯一ダンジョンコアに通じる出り口らしく、知っているのはダンジョン協會とヘグサオスク評議會のダンジョン擔當の偉い人だけみたいだ。
0番口からってしばらく進んだところに、坑道を塞ぐような形で扉が設置されていた。
「お、あったあった。コレだな」
この扉を開ける方法はなく、破壊して進まなければならない。
つまり、この扉を破壊出來るだけの力がないやつはお呼びでないってわけだ。
「どうする?」
とりあえずデルフィに確認。
今のところ一撃の破壊力は俺よりデルフィの方が高いからな。
「ん。私がやるわ」
デルフィは弓を構えると弦を引いた。
大きな魔力の流れと風の力が構えた弓に集まる。
そしてデルフィが引き絞った弦を離すと、竜巻のような風と魔力が大きな門を襲う。
門は風を空けつつ、その魔力の嵐に巻き込まれ、壁の辺りまでボロボロと崩れていった。
「やり過ぎじゃね?」
「……えへ」
一応ここはダンジョンなので落盤の心配はないらしいが、ちょっと不安だわ。
無殘に破壊された扉の後を見るとなんだか可哀想になってくる。
そして數秒後、「ゴウン」となにか大きなものが崩れる音が、扉の向こうから聞こえてきた。
扉の殘骸を越えると先には大部屋があった。
「変わった形のゴーレムね」
部屋の中央、おそらくは門の向こうで通せんぼするように立っていたであろう二の巨像が、折り重なるように倒れていた。
向い合って立っていたのか、それぞれの左右半がえぐり取られている。
ゴーレムっつーか、これ仁王さんじゃね?
いろんな寺の口を守ってる、金剛力士像だと思う。
大きさは淺草寺の金剛力士像1/1スケールってじで、かなりでかい。
いや、でかかった、というべきだろうか。
「なによ、さっきから変な顔して」
「いや、別に……」
なんでだろ、ちょっと悲しくなってきた。
しばらくすると、金剛力士像はそれぞれ殘った方の腕を殘して消滅した。
この辺はゴーレムと同じなんだな。
「あ、これ木製じゃん」
しかも高そうな木材だわ。
こりゃ木工ギルドの連中喜ぶぞー。
とりあえず鉄工ギルドの納品用収納庫に預けとこう。
金剛力士像が消えた後、転移陣が現れたので、それに乗って移する。
移した先はやはり日本風の部屋。
ただ、今までと違って畳張りの和風な部屋だね。
まあさっきの金剛力士像見れば、なんとなく趣味は分かりそうなもんだけど。
そうなると最強の武ってのにちょっと不安が出てくる。
「ダンジョン攻略おめでとうございます」
俺たちを出迎えたのは、著姿のだった。
「どうも。聞かれる前に説明しとくけど、俺は日本人で山岡勝介。つよくてニューゲーム三周目ね」
「あらあら、いきなりとんでもない報ですわね。ということは最近よく起こっていた時間の巻き戻りはあなたが起點なのでしょうか?」
「そういうこと」
「そうですか。失禮、自己紹介が遅れました。わたくし、フェイトン山のダンジョンコアを勤めさせていただいております、本田沙彌香と申します」
「どうも」
「では一応訊いておきますが、ダンジョンコアを停止されるご意思はお有りで?」
「あるよ」
「そうですよね……。こういう資源供給のようなダンジョンを作ってしまったわたくしが悪いのでしょうが、何年も前に渋いおじ様が來て以來、誰も止めてくださらないのです」
「うん、だからあるよ、止める意思」
「またいつか、新たなダンジョン攻略者さんが訪れるまで、わたしは一人寂しくここでまっております。ではダンジョンカードをお出し下さい。ダンジョン制覇の報を力しますので」
「いや、俺の話聞いてる? 是非君のことを止めたいと思ってるんだけど」
「あの、ダンジョンカードを……」
「人の話を聞けって。俺はここフェイトン山のダンジョンコアを停止しに來たの」
「今なんと?」
「だから、本田さんを停止させたいの!!」
「まあ、なんということでしょう!! それならそうと早くおっしゃってくださいまし」
「最初っから言ってるけどね。で、その代わりと言っちゃ何だけど、武がほしい」
「ええ、そういうことでしたらおみ通りに。何かご要は?」
「防無視、耐無視、出來れば回避不可もつけてもらえると助かる」
「最初のふたつはお安い用ですわ。でも回避不可は威力を犠牲にする必要がありますよ?」
うーん、だったら當たるように頑張ればいいか。
「じゃあ回避不可は無しで」
「かしこまりました。では武のタイプはどうされます? 打刀、小太刀、田貫等々ご要にそいますが」
「レイピアで」
俺の答えを聞いた本田がマヌケな顔でこちらを見返す。
「レ……なんですって?」
「だから、レイピア」
「……わたくし、刀しか作れませんことよ?」
「はぁ? じゃあエリックのおっさんの時はどうしたの?」
「えっと……それは『妖刀:風刃斬魄』のことでしょうか?」
「妖刀? いや『風の剣』だよ。最初にここ攻略したおっさんに渡したってやつ」
「ですから『妖刀:風刃斬魄』のことですね?」
もしかして、それが正式名稱なの?
エリックじいさん、恥ずかしくて名前変えたな?
その気持ち、わかるぜ……。
「あー、たぶんそれ。それは普通の剣じゃないの?」
「打刀でしたわよ? 風の斬撃を飛ばすには適した形だとかで、威力を下げて追尾機能をつけましたわね」
そうだったのか……。
「いや、申し訳ないんだが俺はレイピアがいいんだけど」
なんか、だんだん本田が不機嫌になってきたぞ?
「あなた日本人でしょう!? 日本人にとって最強の武は刀以外にありえませんわ!! そうでしょう?」
とりあえず刀が最強っていう安易な設定はあんま好きじゃないんだけどなぁ……。
「そもそも日本人であるあなたがなぜレイピアを?」
「だって、刀なんて出回ってないもん」
「ぐぬぬ……。でも刀が使えるとわかったら刀がいいとは思いませんこと?」
「俺は刺突がメインだからなぁ……」
「あら? 新撰組の基本戦は刺突でしたのよ? 打刀でも問題ないのでは?」
知るかよ新撰組のことなんざ。
「いや、俺的にはあの反りがいらないんだよ、反りが」
「むむ……、あの反りがしいのに……。では反りがなければ刀でもよろしくて?」
「うーん……どうなんだろ」
「直刀でしたら片刃のレイピアみたいなものでしょう!? というか、それ以上の譲歩は出來ません!!」
こりゃこのへんで妥協するしかなさそうだな。
「あ、ちなみに弓は作れる?」
「先程から申し上げておりますように、刀しか作れません!!」
あー、なんか怒っちゃったな。
「あの、じゃあ直刀でおねがいします。刀の長さはコレぐらいで」
と參考までに竜骨のレイピアを見せる。
「わかりました。では殘りのDPと私の存在をかけてお作りいたしますわ」
「よろしくお願いします」
「なにやら大事な使命を背負われているご様子。私の武がそのお役に立てれば幸いです。ではごきげんよう」
と、本田はあっさりと消えた。
そして彼が消えた後には一振りの刀が殘っていた。
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