ミカを連れてきたのは町の真ん中に位置する闘技場だ。

「んー？　うちを闘技場で働かせるつもりだったりしないよねー？」

「違う違う、実は明日ここで武道大會が開かれるらしいんだ。それに俺とミカで參加しようという話」

「武道大會？　なんでー？」

ミカは口を開けてポカーンとしている。

「ミカは強くなったけどまだ実戦での練習は足りていないだろ？　その練習になると思ってさ」

「まあそうかもだけどー、アルフも參加するなら優勝狙えないし面倒めんどいなー」

「俺も今回は特訓だ。ジャキ対策として魔法じゃなくて剣で戦うから、ミカにだって勝ち目はあるぞ」

「ふーん。じゃあ一応でてみよっかなー」

二人でエントリーシートに名前を書いて武道大會の參加費を払う。

これで明日の大會に出場できるはずだ。

◇　◆　◇　◆　◇　◆

――翌日、闘技場

「わー、全然參加者いないじゃん」

「何でだろうな……」

見渡す限りリングの上に集まったのは俺とミカ、それに拳法家らしき太っちょのおじさんと全鎧の剣士だけだ。

「いやー、アルフさんが參加するとなってから出場キャンセルが相次いでしまいましてね」

聲をかけてきたのは司會の男。

「あー、そういえばこの町では無駄に名前が売れちゃってるもんな」

「その分盛り上げてくれることを期待していますよ！　是非優勝賞品を手にれてください！」

「優勝賞品って何なんだ？」

「叡智の杖という、ＭＰを攻撃力に変換して戦えるレアの武ですよ」

それって結構ジャキ戦に使えるアイテムな気がするな。

場合によっては賞品ゲットの為に全力で戦うとするか。

「さて、そろそろ始まるのでこのまま待機していてくださいね」

司會の男はリングから離れていく。

それにしてもさっきから気になるのは剣士からの視線だ。

ちらちらと橫眼で俺のことを覗いてくる。

「あの、俺の顔になんかついてます？」

「――な、なんでもない」

聲をかけると慌てたようにそっぽを向いてしまった。

彼は長い金髪を頭の橫に結えていて、キリッとした顔立ちをしている。

その風貌は戦士というよりは、お嬢様だ。

どういう剣技を振るうのかはちょっと気になるな。

「會場の皆様、長らくお待たせいたしました！　これからトーナメントの選を行います」

いつの間にか司會の男が戻っていて、大聲でアナウンスを開始した。

「これから參加者の四名には選箱からボールを引いてもらいます。同じのボールを引いた人が一回戦の相手となります！　それでは最初に滅茶苦茶強い賢者と評判のアルフさん、引いてください！」

俺は箱からボールを取り出した。青いボールだ。

「では続いてアルフさんのお仲間の遊び人ミカさん、引いてください。自己ＰＲ文を見るとお気には自信があるそうです」

……お気？　あのおで？

いや、でもある界隈では貧をステータスと見る向きもあるそうだ。

と、そんなことはどうでも良い。

できればミカとは一回戦では當たりたくないな。

二人とも決勝まで行って二回ずつ戦うほうが特訓になるし。

「ミカさんは黃のボールです！」

司會の聲が響き渡る。

「やっり～！　アルフとは別のだー」

ミカはガッツポーズを見せる。

「続いて隣町からやってきた刺客、しい金髪に不釣り合いな鎧をまとった剣士キャロルさん、引いてください」

キャロル……？　何か聞き覚えのある名前だな。

何処で聞いたんだっけか？

キャロルは箱に手をれて勢いよくボールを取り出し頭上に上げる。

そのボールのは――青だ！

一回戦の相手はこの騎士か。

「これで殘りの黃いボールは町一番の拳法使いパイロンさんに決まりました！　それでは試合の準備にりますので、會場の皆様は今しばらくお待ちください！」