《外れスキルのおで最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜》第14話 人里目指して…30キロくらい? (2)
「おぉ〜、川だ〜!」
 轟々と音を立てて流れる川を前にし、興のあまりぶ聡。『河川、絶対探し出す君』を使ってから10分ほどで、漸く川に辿り著いたのだ。因みに聡の腳力はイカれているので、普通の人なら2時間はかかる距離を歩いている。
「懐かしいな。日本に居た頃は、友達と釣りとか化石掘りに、川まで良く行ったものだ…。」
 周囲の様子を見渡し、懐かしそうに呟く。その発言から、よっぽどの田舎に住んでいた事が伺い知れる。
 見ると、川はおよそ40メートルほどの幅であり、近辺には背の高い草が繁茂していた。
「月明かりだけじゃ、水質が良く分かんないなぁ。」
 聡は川の様子を注意深く観察しながら、指をれて流れを確認する。
「流れは…こっちが下流か。」
 どちらが下流か確認出來た聡は、川辺は石がゴロゴロとしていて歩きにくいからと、し離れた場所から川に沿って歩き始める。
「しかし、こうも人気どころか、生の気配がしないとなると、ワンチャン不地帯説あるよな〜。川魚も確認出來なかったし。」
 思考しながらも、スタスタと歩みを進める。最悪の場合、トイフェルから譲りけた魔導マジックアイテムでどうにかなるのだが、なるべく自分の力できたい聡としては、ここは限界まで徒歩を貫く事にしたようだ。
 そうして歩く事20分後。
「お?まさかあれは畑か?」
聡の視線の先には、2ヘクタールあるかどうかぐらいの広さの耕された土地が、川に沿って作られていた。
「流石に川辺に集落作ると、大水とか怖いだろうし、こっから川に対して直角に行けば、集落にぶつかるかな?」
 取り敢えず何らかの種族が、近くに存在すると分かり、安堵した聡は 懐から懐中時計を取り出す。まさか真夜中に押しかけても、不審者だと思われ門前払いをくらうと考えたのだろう。
「今は…午前4時か。そろそろ畑仕事に起きてくる時間か?」
 『日本だと、農家の人は早起きだったなぁ』と考えながら、集落があると予想される方角を見據える。
「となると、畑の付近に居ても、『泥棒か!!』とかなってもやだし、ちょっと川の方に隠れてるか。」
 考え過ぎな気もしなくは無いが、この世界に來てから初の人との出會いに、用心に用心を重ねる聡。
 なるべく不自然では無いように、アイテムボックスから旅人風の灰のローブを纏い、頭には帽子、そしてちょっと年季のった荷袋を肩に背負い、川辺で待機する。ローブの下には、現代日本人から見ても、高そうな服だが、ファンタジーの代名詞と言っても過言では無い職業、冒険者の中でも、中ぐらいの実力を持っていれば、買えない事もないらしい、シンプルな白いシャツとこれまたシンプルな黒いズボンを履いている。
「ふっふっふっ。まさかこの格好ならば、『曲者か!?』とか警戒されなくてすむやろ。そしてさり気なく報収集して、大都會に出て、靜かに溶け込むようにり込めば…。完璧だな。」
 これからの予定に、一切の間違いが無い事を確認していると、直ぐに河原に到著する。
「おぉ〜!超絶久し振りの太だ〜!!やっぱ生ってのは、太を浴びてなんぼだな!」
 空が白くなり始め、朝日が出てくる。そしてそのを反し、煌めく川面に聡はつい見れてしまう。
 だがそんな気分も、一瞬で吹き飛んでしまう出來事が、直ぐに起こってしまう。
『パシャッ』
 水面の煌めきに見れていた聡の耳に、下流の方からいきなりそんな音が聞こえてきたのだ。
「?水の跳ねる音?」
 ひしひしと嫌な予をじながらも、気になってしまい、つい音のする方向を見てしまう。
 するとそこでは―――
「何だ兄ちゃん?」
「怪しい奴だな…。」
―――10數メートル先で、筋骨隆々としたオッサン達が、全で水浴びをしていた。
「オーマイガッ!ファーストコンタクトがこれって、どんだけテンプレ裏切りゃ気が済むんだ〜!?」
 ざっと10人近くの全のオッサン達を前に、聡は大聲でぶ。
 ご褒タイムもとい、まだ見ぬヒロインによる鉄拳制裁タイムを想像していた聡には、良い方と悪い方の2つの意味で裏切られた気分なのである。
「うぉ!?なんだいきなり!?」
「兄ちゃんまだ若いのに、とち狂っちまったのか?」
「驚いてんのは、こっちの方だってのによ。」
 いきなりび出した聡に、男達は驚きの聲をあげる。
「あ、えと、失禮しました。まさか人が居るとは思いもしませんでしたので。」
 確かにこの狀況で悪いのは、明らかに自分の方であるので、慌てて謝る聡。
「お、おう。」
「いきなりび出したり、唐突に禮儀正しくなったり、良く分かんない兄ちゃんだな。」
男達は、急に畏まった口調で謝罪をした聡に、どうも戸っているようだった。
「で、兄ちゃんは何者だ?なくとも、この辺では見ない顔だが?」
 リーダー格らしき男が、のまま聞いてくる。その目は明らかに戸っていた先程までとは違い、真剣に聡を見定めようとしているものだった。
 そのリーダー格の言葉を聞いた聡は、気を引き締める。別にチャンスは1度きりという訳では無いが、なるべくなら早いところ、を落ち著けたいと思ってるからだ。
「…私は、ただの旅人です。」
 こうして、聡が異世界に來てから初の、神経を最大に張り詰めた問答が、幕を開ける事になるのだった。
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