《外れスキルのおで最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜》第16話 エンデ村へ
 驚きから回復した聡を連れ、マリウスは村へと向かう。先程水浴びをしていた他の村人は、これから畑仕事だそうで、サボる口実の出來たマリウスに、ぶぅぶぅと文句を垂れていたが、現在は、『そんなに俺と喧嘩してぇのか?』という、マリウスの言葉と獰猛な笑顔により、全員せっせと働いている最中だ。
「仕事の邪魔をしてすみません、マリウス村長。」
「いや、気にするな。今の時期は、そんなに忙しくないから、人手は足りてんだ。」
 文句を垂れていた村人達を思い起こし、歩きながら恐した様子で謝る聡だが、マリウスは全然気にしていないようだ。
「あの、し質問良いですか?」
「おう、何だ?」
「ちょっとヤバい質問んですけど、ここって何という名前の國なんですか?」
 聡はずっと疑問だった事を聞く。聡が持っている地図では、アーツレンドという國になっていた。だが山が吹き飛ばされている以上、國が滅んでいても仕方無いと、地図を信頼していないのだ。
「確かにヤバい質問だな。出會い頭にしてたら、警戒されまくりだぞ?」
「す、すみません。こうも目印が無いと、正直自分の位置が、分からなくなってしまいまして。」
「…まぁサトシは信用出來ると、俺の直が言ってるから、別に良いんだがな。ここは、リスカント王國だ。」
 聡の言い訳に若干目を細めるマリウスだが、問い質すのを止めて教えてくれる。
「…さっきの言い訳、完全にアウトじゃないですか。」
 リスカント王國という名前から、この大陸には1つしか國が無いと判斷し、顔を青ざめさせる。
 そんな聡に、マリウスは苦笑しながら言う。
「まぁな。このリスカント大陸には、1つしか國が無いのに分からないとなると、よっぽどヤバい奴だよな。」
「マリウス村長に、人を見る目があって助かりましたよ。なくとも悪人では無いと、判斷していただいてるんですよね?」
 マリウスの表を見て、一応は信用されていると安心する聡。
「まぁな。それに…。」
「え?それに…何ですか?」
 急に言葉を途切れさせ、黙り込むマリウスに、聡は不安を覚える。
「いや、何でもない。それよりもサトシ、年は幾つだ?」
「え、えっと、21歳・・・です。」
 一瞬不穏な空気になったものの、その後は特に問題無く村へと歩いていく2人であった。
 川から10分も歩いたところで、段々とエンデ村の影が見えてきた。
「お、見えてきましたね。って、思ってたより立派ですね。」
 予想外過ぎて、思わず本音を言ってしまう。
「サトシがどんなものを想像していたのかは、取り敢えずは聞かない事にしようか。まぁ、立派と言われるのは、村長である俺も鼻が高いってもんよ。」
 『ガハハハ』と笑いながら、隨分と嬉しそうなマリウス。これは聡の知る由もない事だが、エンデ村には滅多に來客は來ないため、外の人からから褒められる事はまず無いので、余計に嬉しいのだろう。
 聡は牧歌的な、木造りの家々が十數軒バラけて點在する村を想像していたのだが、意外にもしっかりとした、石造りの家が並んでいた。そして村の周囲には堀が掘ってあり、その側には丸太で組まれた柵が設置されている。
「村の口は、反対側だから、し回り込むぞ。」
「はい。やっぱり、川からはあんまり魔が來ないからですか?」
「そうだな。直ぐに迎撃出來るように、川とは反対側に門がある。」
 この世界の通常の魔は、RPGの魔と同様に、一旦敵を見つけると、永遠と追いかけて來る質を持つらしく、ならば早いところ決著を著けるという結論に至っているらしい。
 幾ら守りを固めても、何時までも付近を彷徨かれるのは、気分の良いものでは無いのだろう。それにプラスして、おちおち畑にも出られなくなってしまうというのも、困りものだ。
「そういえば、この頃魔の向はどうですか?やっぱり増加傾向で?」
「何だサトシ?暫く人里離れていた所で、ずっと引き篭もっていたみたいだぞ?そりゃ勿論、ここ數百年ずっと増加傾向だろ?」
 『何を言ってるんだ?』と呆れながらも、ちゃんと教えてくれるマリウスは、厳つい見掛けによらず、案外優しい格なのかもしれない。
「そ、そうですよねー。あはは…。」
 一方聡は自分の危なっかしさに、肝を冷やしていた。何でか分からないが、信用してくれているマリウス相手で無かったら、今頃首を刎ねられていても、問題無いくらいには怪しいのだ。…まぁ、即座に回復するのだが。
「さて、そろそろ門番に聲掛けないと、矢でられちまうからな。主にサトシがな。」
 門が見える位置になった所で、いきなり人の悪い笑みを浮かべながら、冗談に聞こえない口調で言うマリウス。
「か、勘弁してください。まだ死にたくは無いです。」
 「まぁ、俺が居るから、そんなすぐにはってこないだろうがな。」
 即座に冗談を取り消すマリウスだが、どうにか嫌な予がする聡は、念の為門の方向に注意を向ける。
「何か、嫌な予がします。」
「嫌な予?ってあれ?何か大事な事忘れてるような。ま、いっか。お〜い!」
 聡の呟きに反応するマリウス。そんな彼の口から、不穏な言葉が聞こえてきたため、引き攣った笑みを浮かべる聡。
 するとなんと、マリウスが大聲で村に向かってんだ瞬間、1本の矢が高速で聡に向かって飛んでくるのだった。
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