《外れスキルのおで最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜》第41話 事案発生?
「サトシ様。ようこそ、我らが『ベルクフリート』へ。」
 芝居がかったヴィリーの橫を、苦笑いで通り過ぎ、街の中へと足を踏みれる聡。
「ここが、ベルクフリート…。」
「宜しければ、宿をご案しましょうか?」
「あ、それは助かります。取り敢えず、道順を教えて下さい。」
「私がお連れしますが?」
「いや、そこまでしてもらうのも悪いので、教えてくれるだけでいいですよ。それに、し見て回りたいですし。」
「そうですか…。えっと、この道を真っ直ぐに進むと、十字路の所で、右手に剣と盾の絵が書いてある看板が下がっている武屋がありますので、そこで右に折れて頂いて、さらにし進むと、左手に、ベッドの絵が書いてある看板が下がっている建があります。そこが、私のオススメする宿屋、安らぎ亭になります。」
「なるほど。武屋の所で右に折れると、進んだ先で左手側に宿屋があるんですね。」
「はい、そうです。それと、何か困った事がありましたら、お手數ですがここまで來て頂ければ、お力添えしますので、遠慮なく來て下さい。」
「ありがとうございます。余裕が出來たら、顔を見せに來ます。」
 一禮して、街中へと足を踏みれる。大通りは石が敷いてあり、裏道は土が踏み固めてあるようだ。
 緒溢れる街並みに、ついついお上りさんみたいに、キョロキョロしてしまう聡。
「おっと…。」
 しかし、今の聡は、フードを被った怪しい人なので、自制して不審なきを止める。
ーほうほう…。結構、人が行き來して、賑わってるな。一応、ここもディストア領だけど、防衛ラインだから、國が直接統治してるってのは、本當だったんだな。ー
 この辺り一帯を、ディストア家に押し付けたが、流石に重要地點をその統治に任せっきりにし、いざという時に使いにならないと困るので、國から文を派遣し、ベルクフリートの管理をさせているそうだ。
 そんな訳で、ディストア領にも関わらず、比較的賑わっているこの街を、浮かれた足取りで進む聡は、珍しさに気を取られながら、ゆっくりと『安らぎ亭』へと向かう。
ー屋臺に店…。中々日本じゃ見られない景だな。…むっ!あれは、獣人族か!?あ、あれはエルフ!!くぅ〜!!漸く異世界っぽくなってきたじゃねぇか!!ー
 こちらに來て初めて、獣耳と尾がある獣人族や、耳が細く尖っている綺麗なエルフを発見し、歓喜に震える聡。もちろん怪しまれるので、必死に心の中でぶだけに留めているが、大聲でびたい衝に駆られる。
ーお、落ち著け、俺。そうだ。冷靜になれ。どうせこの先、嫌ってほど見られるんだ。今は取り敢えず、目立たず、落ち著く事を最優先に生きるんだ!ー
 聡が必死に耐えていると、視界の端に、10歳くらいの犬(?)の耳が生えた、茶髪のの子が、コケる様子が映った。
「わぁ!」
「…。」
 道行く人々は、我関せずといった風に、通り過ぎて行くだけであり、流石にこのまま放置するのは心が痛みそうだったので、仕方なく聡はコケたの子に近付いて行く。
「…君、大丈夫?」
「うぅ…。だい、じょうぶ。」
 今にも泣きそうな表で、聡の方を向かずに答える獣人族のの子。
 だが、よく見ると、膝からが出ていて、大分痛いようだ。
「ありゃあ。膝をりむいちゃってるな。今、手當するから、ちょっと待っててね。」
 肩に擔いだ皮袋から水筒を取り出し、そしてまた皮袋に手を突っ込み、アイテムボックスから綺麗なハンカチを3枚取り出す。
 そして、1枚に水をかけて、程よくらせてから、地面にしゃがみ込む。
「ちょっと傷口拭くけど、大丈夫?」
「う、うん。」
 聲をかけてから、優しく傷口の汚れを落とす。そして、次は乾いたハンカチで水分を吸い、最後に3枚目のハンカチで、傷口が隠れるように、膝に巻き付ける。
「よし、もう大丈夫。よく我慢したね。」
「…あ、ありがとう、お兄ちゃん。」
「どういたしまして。歩いて1人で帰れそうかな?」
 笑いかけながら、の子に問う。
 
「うん、大丈夫。…痛っ!」
 すると、の子は普通に立ち上がろうとしたのだが、バランスを崩して転びそうになってしまう。
「おっと。足を挫いちゃったのかな?」
 それを慌てて支えてやる聡。
「うん、そうみたい。」
「お家は近くなの?俺がおぶってこうか?それとも、この辺に知ってる人はいる?」
 の子をおぶるなど、現代日本でやれば、普通に事案な上、今はフードを目深に被った怪しい人なので、出來ればこの場を即離れたい気持ちで一杯の聡は、期待を込めて聞いてみる。
 だが、そんな聡の希も虛しく、は首を橫に振る。
「…お使いに行くところだったから。」
「あ〜なるほど。」
ーお使いを済ませないと、家には帰りたくないと。しょうがない。最後まで付き合ってやるか…。ー
 捕まっても、ヴィリーが衛士長をしているこの街で、そう酷い目に遭わないだろうと高を括る聡。
「よし分かった。お兄さんが、お使いに付き合ってあげるよ。おんぶにする?あ、それとも肩車にする?」
「え、良いの!?じゃあ肩車!」
「りょーかい。ほら、乗って。」
 聡はしゃがんだまま、の子の前で、背を向ける。
「…よいしょ。」
「じゃあ、立ち上がるね。」
 こうして、灰のローブに、フードを目深に被った怪しい男が、の子を肩車をするという、なんとも奇妙な構図が出來上がったのだった。
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