｢はぁ…。何でこんな事に…。｣

 ジメジメとした石造りの牢屋･･の中、聡は1人、深いため息をつく。

事の発端は、今から約6時間前に遡る。

 小鬼の森から走って40分後、漸く門の前に著き、聡がほっと一息安堵した時、事件は起こった。

｢いや〜、著きましたよ。｣

｢…ぅ。｣

｢う？｣

｢…ぅ、うわぁぁぁ〜ん!!!｣

｢え、ちょ、え!?｣

 そりゃあ、直接的な被害をけてない聡ですら、安堵してしまう狀況で、骨に染みる程の恐怖を味わってきたが、安堵のあまり泣いてしまうのは、仕方無い事であろう。

 だがしかし、間の悪さと、聡の格好、そしてのボロボロな格好が合わさり、とんでもない事態へと発展する。

｢き、貴様!!そのお方･･を離せ!!｣

 聡は見るからに怪しい、ローブの男。そして、は布を巻いているが、隙間から見える服はボロボロ。そして髪もボサボサで、すっかり疲労困憊した表を浮かべている。

 その為、聡はを拐し、暴した不屆き者。そしてはその被害者である、という狀態に見られてしまった。

｢あ、いや、俺は｢貴様！抵抗するか!!｣…はぁ。ここに下ろしますね〜。｣

 釈明しようとするが、怒り狂った表の兵士から槍を向けられて、『あ、もうめんどくさ』となった聡は、大人しくお縄にかかることにした。

 泣きんでるの下に、アイテムボックスから更に取り出した布を敷き、その上にゆっくり下ろしてやる。そして、背負っていた採取袋をその隣に置いてから、手を上にあげて、から10メートルくらい離れる。

｢そ、総員、かかれ〜!!!｣

『おう!!!』

 その瞬間、リーダー格っぽい男が発した命令に従い、騒ぎを聞きつけて外に出てきた兵士たち、およそ10名が一斉に聡に飛び掛ってくる。

｢ちょ！抵抗しないんで、もうしお手らかに！｣

｢黙れ外道!!貴様にかけるけなど無いわ!!｣

｢あ、聞く耳もtぐぅえ!!｣

 最後まで文句は言わせて貰えずに、聡は兵士たちに押し潰され、されるがまま毆られ、蹴られ、押さえ付けられなど、ありとあらゆる暴力のフルコースを味わっていた。

ｰいやこれ、普通の人間なら死んでるから！幾ら俺が痛みをじない･･･････からと言っても、不快にはじるんだぞ!!ｰ

 數分後、漸く躙が終わった頃には、聡は両手足を縛り上げられ、うつ伏せの狀態で地面に転がされていた。

 ローブはボロボロで、フードも完全に取れて素顔がになった狀態だが、一切の傷は見けられない。

｢えっと、満足されましたか？｣

｢く、クソがっ！何で無傷なんだ!?｣

｢出來れば、衛士長のヴィリーさん、冒険者のルドルフさん、付嬢のエーリカさん、ギルドマスターのルドガーさんに、聡が捕まったと伝えてくれると助かります！｣

 兵士の言葉は無視して、取り敢えず助けを呼ぶ事にした聡は、それなりの聲量でぶ。

｢うるせぇ！黙れ！さっさとコイツを、牢にぶち込んでやれ!!｣

『はっ!!』

 兵士から、更にローブをに回され、ずるずると引き摺られて行く聡。

 そのまま、街にった瞬間、先程と同じ事を1回ぶと、兵士の1人から頭を踏みつけられる。

｢黙れよ、下衆が。今すぐ首を撥ねてやろうか？｣

｢騒がしくして、すみません。｣

 穏やかな聲で謝っておく聡。そんな聡に、チッと舌打ちをして、兵士は足を退けてからまた、引き摺って行く。

 その後、暫く引き摺られた後、暴に地下の牢屋にぶち込まれ、現在に至るのだった。

｢う〜ん、そろそろ誰か來てくんないかな？｣

 最初に兵士が聡を咎めた際、の事を『そのお方』と言っていたので、はこの街でそれなりの分の者だと理解出來る。

 そして、そんな人の恩人を、いつまでもこんな牢屋にぶち込んでおくなど、通常では有り得ない仕打ちであるからして…。

 と、そこに、1人の兵士が相を変えて、聡の牢屋の前に現れる。

｢さ、サトシ様！ご無事ですか!?｣

｢お、ヴィリーさん。はい、無事です。無傷ですよ。｣

 鉄格子が嵌められた出口に近付いて、笑いかけながら言う。

｢そ、そうですか。來るのが遅れてしまい、申し訳ありませんでした。｣

｢いえ、私の予想した限りでは、もうし時間がかかってもおかしくないと考えてたので、謝る必要は無いですよ？全て、あのから聞いたんですよね？｣

｢はい、そうです。この街の代である、コルネリウス･ベルクフリート様の息の、ニコラ･ベルクフリート様から、全て聞かせていただきました。｣

｢へ〜。あの子、代の娘さんだったんですか。｣

｢はい、そうなります。ニコラ様から聞いたところ、小鬼の森にて、調2メートルはあるゴブリンに襲われていたところ、聡様がこれを殲滅、後に周囲のゴブリンも殲滅されたと。｣

｢えぇ、その通りです。あ、ギルドカードをどうぞ。｣

 聡は、懐からギルドカードを取り出して、ヴィリーに見せる。

 そのカードの討伐履歴の欄には、新しく、

･ゴブリン:157匹

･ゴブリンキング:1匹

 と記載されており、今日作ったばかりなので、ニコラを救出した際に倒した數となっていた。

｢こ、これは、ゴブリンキング!?サトシ様は、ソロでこの數を討伐されたのですか!?｣

｢はい、そうです。｣

｢こ、こうしちゃ居られないですよ！早く上に行きましょう！皆様がお待ちです！｣

 鍵をガチャガチャと開け、扉を開け放ちながら焦ったように言うヴィリー。

｢え？出ていいんですか？｣

 意地悪く、ニヤリと笑いながらそんな事を言ってみる。

｢出てきて下さい！お願いします！｣

 すると、泣きそうな表なヴィリーのびが、牢屋の中に響き渡るのだった。