｢いっぷたさいせい？｣

『あれ？違うのか？』

 呆けた様子で呟く聡に、一輝は首を傾げる。異世界といえば、男の夢 (一部のみ)であるハーレムであるという、酷い偏見を持っている一輝は、心底不思議そうである。

｢そ、そういえば、この世界だと、不貞行為には厳しいくせして、一夫多妻制は認められてるんだった！というより、貴族なら當たり前。一般人でもそれなりに居るってレベルだった！｣

 聡は目を見開いて、大聲でぶ。

 この世界では、普通の野生に加えて、魔や魔族などがいて、地球よりも人間の天敵が多いのだ。

 その為、財力に余裕があれば、一般市民でも複數の妻を娶る人が居るくらいである。

｢反対に、一妻多夫制は何故か認められないという！が男を何人囲おうとも、産める子供の數は限られるからって事だろうけど！｣

 婚姻については、世界を學ぶ上でも結構な基礎となるので、早い段階で覚えたのだが、他人事のようにじていた為、すっかり忘れてしまっていたのだ。

 というより、知識としてはあるものの、実としてそういう世界に生きているという覚が無かったのだろう。

｢え？つまり？『俺、結婚してるから…』っていう言い訳は使えないって事か!?格良い子から告られたら、マトモに斷る理由が無くないか!?何このハーレムもののエ○ゲみたいな世界！｣

『大分混してるところ、申し訳無いんだけど、言ってる事が最低だぞ？』

 言い訳ばっかり気にしてる聡に、呆れながら一輝は言う。

｢うぐ…。それは分かってる。でも、急展開すぎて、頭がついていかないんだよ。｣

『う〜ん。第三者である俺も、何が何だか分からなくなってきてるから、當事者の聡ならそれは當然か。というか、聡はどうしたいんだよ。』

｢また俺がどうしたいかか。｣

『そりゃそうだ。當事者のお前がどうしたかってのが大事だろ。相手はもう、意志をハッキリと行で示してるんだろ？』

｢俺の為に、必要とされたいとか何とか言われたな。俺の為になりたいとか、そういう事だろうけど、それが何を意味するのかは、大分かる。｣

 つまりは、必要とされたいのは、恩義もあるし、更には好意を懐いてるから、為になりたいからという事である。

『すっげぇ良い子じゃん。お前これ斷るとか、流石に無いわ〜。』

｢さっきは俺の気持ちが大事とか言っといて、急に熱い手のひら返しかよ。｣

『いやまぁ、さっきのはただの建前で、本音としては、なぁ？』

｢『なぁ？』じゃねぇよ！その本音は、ちったあ隠せ！｣

 さっきと言ってる事が真逆な一輝に、ツッコミをれる。聡の意思なぞ、どうでも良いという風である。

『野郎の気持ちなんざ知らんわ！可いの子とキスしやがってこんちきしょう！』

｢ただの嫉妬じゃねぇか！気持ちは分からんでもないが。｣

 先程までの一輝は何処に行ったのか、みっともなくをにする。

『だってよぉ…。あんな可いの子に、キスを求められるとか、どんだけ恵まれてるんだって話だ…。』

 エーリカの時とは違い、実際にフラウの姿を見ているという事が、一輝に大ダメージを與える要因になったのだろう。

｢はぁ〜。頭がついてがなくて、もうどうすれば良いのか、全くもって分からん！｣

 エーリカの事は、それなりに前向きに検討すると決めたが、そこにフラウまで追加されてしまい、聡はすっかり及び腰になってしまった。

『そこは男らしく、ドーンと思いをけ止めてやろうぜ？』

｢今どき男らしくとか、古いとは思うけど、いっその事開き直った方が良いかもな…。｣

 言いながら、聡はあの2人の姿を思い浮かべる。

 そんなに長い付き合いでは無いし、寧ろ知り合って間もないが、2人の人柄は好ましいし、何よりとても可いく綺麗だ。

｢…。｣

『ん？どうした？決意、したのか？』

 無言だった聡に、一輝が聲をかける。すると聡は、し落ち著いた聲音で答えた。

｢ん。いや、決意とは程遠いけど、今ようやく、あの2人をちゃんと見たってじかな。｣

『…そういう事か。ま、頑張ってくれよ？』

｢2日以に答えを出さないとだから、ホントに考えを振り絞らんとダメだからな。ようやくスタートラインに立ったじだよ。｣

『待たせてる時點で、相當ヤバいと思うけどな。』

｢うぉい！痛いほど理解してるから、言わんでくれぇ！｣

 自のけない所を指摘され、聡はガックリと項垂れながら、頭を抱える。

『因みに、他には告白してきた子は居んの？』

｢はははは。面白い事言うなぁ。俺に告白してくる子なんて…いや、居るんだけど、エーリカとフラウ以外は居ないね。｣

 聡は自ネタに走ろうとしたが、ついに使えなくなってしまった事に気が付き、表を引き攣らせる。

 ある意味、モテないという事を持ちネタとして、歓迎していた聡には、この事実は何とも言えないものだった。

『そんじゃあ、他には仲良くなったの子は？』

｢何でそんな事を聞くんだ？まぁあと…3人か。一応仲良くさせてもらってる子は居るけど？｣

『…こりゃ増えるな (ボソッ)』

｢何か言ったか？｣

『い〜や、何でもないぞ？』

 一輝の不穏な呟きが聞こえなかった聡は、胃は痛いものの、比較的平穏な夜を過ごす事が出來たのであった。