《められていた僕は召喚された世界で奈落に落ちて、力を持った俺は地上に返り咲く》第53話 覚悟と揺らぎ
アレクに報告したその日夜、ステラを膝の上に載せながら適當に取った本を読んでいると、部屋がノックされた。
「誰だ?」
「アリスです」
「っていいぞ」
「失禮します」
扉が開きメイド服姿のアリスが部屋にってくる。
「どうした?」
「お願いがございます。私を闇瀬様の旅に連れていってください」
「俺の旅に?」
ステラと顔を合わせる。
そしてーーー
「ダメだ」
斷った
「ど、どうしてですか!?私が弱いからですか?ならば訓練して強くなります!盾にしてもらっても構いません!」
「違う。むしろなぜ俺の旅に著いて來たがる?」
「それは・・・・・・」
理由を尋ねると吃って靜かになる。
「ダメな理由は2つ。ひとつはお前が言ったように実力が低いから。俺達の力は神と同レベル、それ以上の戦いが普通だ。だが、お前は一般人…明らかに実力不足だ。そしてそれを努力で覆せるとは思えない。2つ目はお前はもう俺のメイドではない。元々お前は勇者として召喚された闇瀬神夜に仕えさせられていた人間だ。だが、今の俺は違う。お前が仕える通りはない。」
「そんな……」
厳しい言葉にアリスは言葉を失う。
「私は……私の家系はし特殊なが流れています。」
「?」
アリスは突如そんな話をし始めた。
「昔…王國が誕生するよりももっと昔の話です。一人の霊が居たそうです。霊が瀕死の怪我を負ったところを一人のが助けたそうです。その後、二人はに落ちて子をなしたそうです」
「霊の子供?」
霊は存在そのものが魔法みたいなもので、使う魔法も特殊だ。世間一般では炎、水、風、巖、雷、、闇の霊がすべてだと思われているが、実はそうではない。
大昔には違った特殊な霊も存在していたそうだ。
話を戻すが霊は存在が特殊で子供ができるという例は非常にない。をしてもできないというのがほとんどらしい。
そんな中で子供ができるのはかなりレアケースといえるだろう。
「霊とは子供と共に靜かに暮らしていたそうです。その子孫が私なんです」
「ってことはアリスの言う特殊なっていうのは霊のの事なの?」
「はい、もう霊魔法も使えないほど薄くなっていますが、質というか格は今もけ継いでいるんです」
「質?」
「はい、その霊の屬というべきでしょうか?それは生涯ただ一人の主を見つけ、その方に仕えるというものです」
「つまりアリスはシンヤを主として仕えたいということ?」
「はい、そうなります。お願いします。覚悟はできています」
神夜はアリスの目を見つめる。アリスもまた見つめ返す。
そして突如、神夜はとてつもない圧を発し始めた。
「っ!くぅっ!!?!?」
「覚悟はできてるんだろう?これくらいの圧に耐えれなければ俺達についてくるなんてことは到底無理だぞ」
「くぅぅぅ!!!」
神夜の放つ圧プレッシャーは一流の冒険者も超えるものだ。ただの使用人には耐えることはできない。アリスは大量の汗をかき、足をがくがくと震わせる。
だがーーーーーー
「シンヤ、もうやめて」
「ステラ?」
ステラに止められて神夜は圧を放つのを辭める。
「今のプレッシャーは常人は発狂しして気絶してもおかしくない。けどアリスは――」
二人でアリスの方を見る。
「はぁっ!!はぁっ!!」
大量の汗をかき、膝に手を付いてはいるが何とか意識を保っている。
「アリスの覚悟は本」
「だが……」
「私は連れて行ってもいいと思う。」
「ステラ……」
「シンヤが連れて行きたくないのは怖いから」
「怖い?」
ステラは突然何をいいだすんだ?
「シンヤは一度騎士団長さんを失った。自分の理解者を。自分の力が足りなかったせいで」
「っ、ああ、そうだ。だが俺はもう…」
「力を得た。だけど、神レベルの戦いに巻き込まれた場合、アリスを守れるか分からない。だから、最初から手放そうとしてる」
「………」
ステラの言葉に何も言えない。自分でも気づかないうちにそう思っていたかもしれない。
「シンヤには自が無い。迷宮を出た時は違った。けど今は自分の理解者が増えて、力を手にれて………」
ステラは俺に向かって強い意志をもって言った。
「シンヤは弱くなった」
「なぁ!」
ステラの発言に驚き勢いよく立ち上がる。
椅子が倒れるがかまいやしない。
「俺が弱くなっただと?」
「もちろん力の事じゃない。ここの話」
そういって自のを指す。
「シンヤは迷宮を出る前、勇者と王國への強い復讐を誓った。そのためにどんな犠牲も厭わないつもりだったはず。けど、今のシンヤはアリスや私、アレク達を犠牲にしたくなくて、自分の心に従うことを忘れている。」
「ステラ様………」
「過去のシンヤは私は知らない。けど、私の知っているシンヤはもっと我が儘で、もっと自分の心に正直で、自分を貫き通す人だった。今の臆病なシンヤは私のシンヤじゃない」
「っ!……そう…か………」
ステラにそういわれ、神夜はふらふらと部屋を出て行ってしまった。
「闇瀬様………」
「……もしかしたら”あの”シンヤが”もともと”のシンヤなのかもしれない」
「確かに召喚されたころの闇瀬様は気は弱くて、苦笑いばっかりしている方でした。けど、臆病なんかじゃなかった。ずっと我慢してたんです。」
アリスはステラにを張って言う。
その様子を見てステラは優しく微笑んだ。
「アリスはシンヤが好きなんだね。」
「ふぁっ?!い、いえっ!決してそんなことは!」
顔を真っ赤にして慌てる。
「ふふふ、いいの。大丈夫、シンヤなら絶対に大丈夫。アリスも一緒に連れて行ってくれるよ」
「………そうで…しょうか。」
「さっきも言ったけどシンヤはアリスが邪魔だから連れて行かないわけじゃない。アリスを大切に思っているから、失いたくないから連れて行きたくないだけ。たぶん、シンヤはこれからさらに危険なことが起きると予測している。しかも自分を中心として。」
「危険?」
「私にもそれは分からない。けど、シンヤはたぶんそう思っている。そしてそれに巻き込まれれば命を落とす可能が高いから。今のシンヤはアリスや私を守れる自信が無い。けど、シンヤは本當はその力を持ってる。だから、大丈夫。ちゃんとおもいだすから」
ステラはアリスの頭をなでる。長がアリスの方が高いからかなり背びをしているが。
「あとはシンヤ次第。」
「はい……」
二人は神夜の出て行った扉を見つめるのだった。
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