《められていた僕は召喚された世界で奈落に落ちて、力を持った俺は地上に返り咲く》第54話 推測と答え
アレクが気晴らしに変裝して街を歩いていると、とぼとぼと歩いている男を見つけた。
「ん?あれは・・・・・・」
その男に聲をかける。
「神夜?ど、どうしたんだい?!」
「アレクか?いや、なんでもないんだ」
深く何かに落ち込んでいる神夜をアレクが放っておける訳もなく裏道に連れ込む。
「どうしたんだい?そんな世界が終わったかのような顔をして」
「・・・・・・・・・」
神夜は目を合わせようとしない。
「はぁ、仕方が無い。ちょっとおいでよ」
アレクは神夜をどこかへ連れていくのだった。
「マスター、いつもの2つ」
「かしこまりました」
アレクが連れて來たのはこの街の裏路地にある1つのバーだった。
周りに人はおらず、バーにいるのはマスターとアレク、神夜だけだった。
「それでどうしたんだい?」
「ステラが・・・・・・」
それから神夜はステラに言われた事をアレクに話した。
「なるほど臆病になったと。それでもうステラさんが著いて來てくれないんじゃないかと思って落ち込んでるのかい?」
「それもあるけどそういう訳じゃない・・・ステラの言うことが正しいと思ったからだ」
ステラが言うようにアリスを連れて行かないのはもしかしたらアリスのことを守れないかもしれないと思ったからだ。
そうなれば俺は絶対に後悔するし、元の俺に逆戻りかもしれない。
「けど神夜は神をも超えた存在なんでしょ?なら神夜が負ける敵なんていないんじゃないの?」
「・・・わからん」
「わからんって実際に魔神も倒したって言ってたじゃないか」
アレクが言っているのは傀儡神のことだろう。
ここで話しておくべきか?
「アレク、この事は誰にも言わないでくれ」
「ん?いいけど、どうしたの?」
「それよりも一応マスターさんにも・・・・・・」
「ああ、この人なら大丈夫だよ。僕の知り合いで信用できる人だから」
「・・・そうか」
アレクにそう言われ俺は念の為バーに結界を張って萬が一にも誰にも聞かれないようにした。そしてとある推測を話すことにした。
この世界について恐るべき推測を。
「創造神ソナーダは邪神かもしれない」
「えっ?」
俺の言葉にアレクはそう答えるしか出來なかった。バーのマスターもグラスにれていた酒がこぼれてしまっている。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って?!創造神ソナーダ様が邪神?!意味がわからない!」
「ああ、俺もそんなことは無いと思いたい。けど、アイツが何らかのを持っていてそれがこの世界に深く関わることは確かなんだ」
「神夜はどうやってその発想に至ったんだい?」
確かに気になるだろう。
なぜ俺がこんな推測をしているのかを
「俺達がどうしてこの世界に召喚されたかしってるか?」
「いや、僕は知らないけど・・・王國は他國へ侵略するために召喚したんじゃないのかい?」
「王國はそのつもりだった。けど、俺達が召喚される直前ソナーダは神の空間に俺達をった。」
その時、ソナーダが言った事を覚えてるだろうか?
「俺達は世界征服を企む魔王軍を撃退し、世界を救う為に召喚される・・・・・・ソナーダはそういったんだ」
「確かに勇者は対魔王軍の切り札ではあるけど。ん?けど僕達は魔王國と友好関係を結んでいるはずだ。」
「そうだ。今魔族はヴァーミリアンの力によって統治されており、他種族との友好関係を結ぼうとしている。魔王軍が活発だったのは先代魔王までだ。」
「じゃあソナーダ様は先代魔王軍を止めるために召喚したってこと?」
「本當にそうか?このゾルダ世界を管理する最高神が?ソルニア王國の召喚に合わせて?先代魔王が亡くなって今のヴァーミリアンになったのはもっと前・・・10年以上前の話だ。」
「・・・・・・おかしいね」
「そうだ。おかしいんだ。俺に渡したスキル【進化】もよく良く考えればおかしい。俺が大魔神ゾルーダの力をけ取ったからと言って都合よく【進化】なんてスキルを渡すか?」
「未來を見たとか?」
確かにアレクの言うことは最もだ。
だがーーーーー
「それができないんだよ」
「できない?神なのに?」
「いや、神だからだ」
基本的に神は萬能だ。だが、神は一人一人司る概念がある。
例えば例の傀儡神マリオルは【傀儡】を司る神だ。炎神であれば【炎】を司る神となる。水神なら【水】を、風神なら【風】を。
と言うようにソナーダも例外ではない。
創造神は【創造】を司る神。
や世界、概念、生命、文明・・・そういったものを生み出すことが出來るのが創造神の力だ。
だが、それ以外は普通の神とそう違いはない。
つまり未來視は未來視を司る神でなければ見ることは出來ない。
「未來予測ならまだしも確実な未來を見て、それに合わせた能力を授けるのは創造神じゃ出來ないんだよ」
「じゃあどうして神夜に【進化】のスキルを渡したんだい?」
「分からねぇ。けどもしソナーダがなにか企んでるのであれば、しかもこの世界にとって不吉なものであれば戦わなくちゃならない」
「・・・・・・・・・」
「その戦いに神であるステラやファフニール、オリエルティアならまだしも、ただの人間であるアリスが巻き込まれでもしたら一瞬で死んじまう」
神同士の戦いの余波は人間の戦闘の比じゃない。喋る間もなく蒸発してしまう。
「どうして・・・」
「ん?」
「どうして神夜はこの世界の住人でも無いのにこの世界を守ろうとしてるんだい?」
「は?」
アレクは何を言ってるんだ?
「だってそうだろう?神夜は元々別の世界チキュウの住人だ。今はこの世界にいるけど、その気になれば直ぐに元の世界に戻れるんだろう?なら、その戦いが起きた時に元の世界に逃げればいいんじゃないのかい?」
「・・・・・・・・・いや、まあそうなんだけどよ?アレクはそれでいいよかよ!?」
「いいさ」
「?!?!?!」
意味がわからない。
「短い間だけど僕達は親友と呼べる仲だと思う。いや、もう大親友だね。そんな君が危険な場所からいなくなって安全に暮らせるなら僕はそれでいいさ。この世界のことはこの世界で片付けなきゃならないからね」
「それは・・・確かにそうだけど・・・・・・」
なら、俺だって同じだ。
大切な親友であるアレクに危害が及ぶのを俺だけ逃げるなんて出來るわけない。
「神夜はどうしたいのさ?」
「俺?」
「君は神をも超えた存在になった。けど、君の心は人間の時のままのはずだ。それはもうわかってる。なら、人として君はどうしたいのさ?」
「俺は・・・」
俺は何をしたいんだ?
迷宮に落とされた時、俺は國王達と勇者に復讐することだけを考えていた。
けど、ステラと出會って・・・・・・この力を手にれていつでも奴らを皆殺しに、復讐できるようになった。
その後もなんだかんだで街の人やアレク達、魔王ヴァーミリアン達とも仲良くなった。
出會ったことで俺は誰かに認められ、いつの間にか復讐は二の次になった。
なら、この力はなんのために?
神をも超えるこの力に意味はあるのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、そうか。
俺は立ち上がる。
「アレク、俺はもっと自由に、もっと前に進みたい。そして俺は守りたい。これまで出會った大切な奴らのことを」
「そうか・・・じゃあ神夜はもう復讐だけに囚われているわけじゃないわけだ」
「そうだ。復讐は俺の生きる理由だ。けど、全てじゃない。復讐もアイツらもどっちも俺の生きる理由なんだ。」
「じゃあどうすればいいかな?」
「俺はもう自重しない。もっと自由に、もっと俺の為に、俺がやりたいことを、俺がやるんだ。そしてその道を邪魔するならば・・・・・・排除するまでだ!」
そうか、ステラもアレクも言っているのはこういうことだったのか。
「アレク、ありがとな」
「どういたしまして。あ、けど何でもかんでも自重無しは困るからね」
「安心しろ。大迷はかけねぇよ」
そう言って俺はマスターに金を払ってバーを出る。
「迷はかけるんだねぇ・・・」
アレクは神夜の居なくなったバーで一人呟いたのだった。
「ステラ!」
「神夜?どうしたの?」
神夜が走って屋敷に戻るとステラは普段のように寛ぎながら紅茶を飲み本を読んでいた。
「旅の仲間1人増えてもいいか?」
「・・・・・・私に聞く必要ある?神夜のやりたいようにーー」
「いや、俺はお前が1番大切だ。俺の"特別"なんだ。だからステラの意見が聞きたい。」
「"特別"・・・・・・ふふっ、わかった。アリスでしょう?構わないわ」
ステラはその言葉を噛み締めるように俯くと、しして許可をだした。
「ありがとな」
「元々フィルとエリーの2人のの子がもういるんだから今更1人増えたところで問題ないよ」
「いや、アイツらは龍だから一緒にするのはおかしいだろ。」
ちなみにフィルは開闢龍ファフニールで、エリーは幻想龍オリエルティアの事だ。
アイツらも俺のパーティにっている。事実上、というか確実に世界最強パーティだと自負している。
「神夜の目が覚めたなら良かった。」
「ああ、俺はもう自重しないぞ。」
「・・・・・・自重はしなくても遠慮はしてね・・・・・・」
ステラが苦笑いしながらつっこんでくる。
それを見て俺はポカーンとしてしまった。
「??どうしたの?」
「いや、ステラも変わったな」
「ん?どこが?」
自分でも気付いていないのだろう。
前はこんなにを表に出すようなの子じゃなかった。無表でいる時間が殆どな子だったのだ。
「ま、互いに々変わったってことだな」
「だからどこが?」
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