《生産職を極めた勇者が帰還してイージーモードで楽しみます》やっぱり東京
「ふんふんふふんふ〜ん」
自車を確保してから2時間強、俺は東京に向かって車を走らせていた。車を走らせているというと語弊があるか。俺が改造した魔導車は完全自運転だ。俺はアクセルもブレーキも踏んでいないし、ハンドルも作していない。ハンドルに手を置いているので一見俺が運転しているように見えるだろう。
『マスター、聞いてもいいですか?』
「なんだ?」
『どうして転移しないのですか?」
異世界魔法の代名詞の1つ転移魔法を俺は使うことができる。行ったことがあるところなんて制限はない。座標を指定すればいいだけだ。向こうの世界ではもっと不便だったがこっちでは緯度経度なんて便利なものがあるからかなり楽だ。
「《転移》を使わない理由は特にない。強いて言うならドライブを楽しみたいからだ。ほら、向こうでは自車なんてなかっただろう?」
『なるほど』
「と言ってもそろそろ飽きてきたし転移してもいいかな。金がないから高速に乗れなくて進むのが遅いんだよね」
俺は金がない。殘りないとかではなく、全くない。無一文である。
「じゃあそろそろ転移しようかなぁ」
『どこにしますか?』
「そうだな。もうだいぶ暗くなってきたしあそこにしよう《ポイント・東京渋谷》」
『イエス。転移します』
俺達は車ごと転移した。夜の渋谷は小遣い稼ぎにちょうどいい場所である。適當に稼いで味いもん食おう。
渋谷に転移した俺達は自車を丸ごと異空間にしまって夜の渋谷を歩き出す。
「タッタラララ〜♪さてさてどこかなぁ」
俺は辺りをキョロキョロ見渡しながら進む。々な人達がいるものだな。帰りを急ぐ會社員、稼ぎどきだとせいを出すキャバ嬢、思春期真っ盛りのチンピラども、今日もせっせと悪事を働く本職ヤクザ。かなりの人でごった返している。
「う〜ん、なかなかいないもんだなぁ」
お目當ての奴らがいなくてボヤく。
「ーーーーーーーーあっ!見つけた」
俺の視線の先には裏路地があってそこで1人の子高生?がチンピラ5人に囲まれていた。他の人は関わらないようにしているところに俺はズンズン近づいていく。
「いいじゃんかぁ!遊ぼうぜぇ!」
「そうそう。ちょっとだけだって」
「や、やめてください!」
「おうおう、嫌がってんじゃん。やめてやれよ、兄ちゃん達」
ニヤニヤしながら俺は突っかかっていく。
「あ?んだよおっさん!」
「すっこんでろや!」
俺はさりげなくチンピラと子高生の間にを割り込ませる。
「ここは任せて行きなさい」
大人の余裕でニカッと笑ってやる。子高生はどうしようかと迷った末、ぺこぺこ頭を下げながら逃げていった。自分が怖くても俺の心配ができるとは優しい子だな。
「おいおい、おっさん!何してくれてんだよ!」
「いい歳こいて正義の味方のつもりかぁ!?」
いきり立つチンピラ相手に鼻で笑って見下してやる。
「はっ、けねぇな!テメェ1人じゃナンパも出來ずに群れて脅しとはなぁ!」
「あぁ!?」
俺の言葉にキレて毆りかかってくる。俺は狙い通りとニヤリと笑って5人全員ボコボコにした。魔族どころか向こうの世界の一般人よりも弱いコイツら相手なら目を瞑ってでも勝てる。
「「「「「すんませんでした!」」」」」
數分後、俺の前に5人揃って土下座していた。
「粋がるのもいいが相手を見てやれや、小僧ども」
「「「「「は、はい!」」」」」
「じゃあ、誠意ってものが必要だわな。全員財布出せ」
「「「「「っ!」」」」」
「おう、ガキのくせに全員3萬も持ってやがんのかよ。夜にこんなに持ってたら危ねえからよ。俺が貰ってやるぜ」
俺は合計15萬を巻き上げてその場を離れた。
向こうの世界でもこうやって盜賊どもで小遣い稼ぎをしたものだ。俺の持論だが「小悪黨は金になる」日本にいた頃は暴力は良くないとか思ってた気がするけど20年も戦場で過ごしたらそんな倫理観は無くなっている。
『マスター、あの人達の記憶を作しなくてもいいんですか?』
「ああ、いいんだよ。ミシェ、いいこと教えてやろう。目に見えなくても金ってのは繋がってるんだよ」
『どういうことでしょう?』
「ん〜、すぐにわかるから緒。それより腹減った。飯を食いに行こう」
近くの夜でもやってるファミレスにって腹を満たす。向こうで過ごしたせいか俺は結構な大食いで3人前は軽く食べる。それにやっぱり日本の料理の方が向こうのより味い。
「あ〜、味い飯はいいなぁ」
『マスターは他の生産職は極めましたが料理だけは壊滅的でしたね』
「そうなんだよなぁ。何故か料理が発するんだよ」
俺は唯一料理だけが鬼門なのだ。
ステーキを5枚平らげて食後のコーヒーを楽しんでいると
『マスター』
「ああ、わかってる」
俺がいるファミレスにいかにもってじのチンピラが10人ほどってきてまっすぐ俺の所に來る。
「おう、ちょっとツラ貸せや」
「逃げんじゃねえぞ」
威嚇するように言ってくるが俺としては子供が粋がっているくらいにしか思えない。
「店員さん、ここに金置いとくよ。お釣りはいらない」
萬札を1枚テーブルに置いて立ち上がる。
「じゃあ、行こうか」
チンピラの後について店を出ながらミシェにこそっと話しかける。
「これが金は繋がってるってことだ。財布が自分から來てくれただろう?」
『る程。流石はマスターです』
そう。あの手合いのやつは一度痛めつけられたくらいでは反省しない。仲間を呼んでもう一度くるのがわかっていた。俺としては回収する財布が増えて喜ばしい限りだ。
因みに俺以外にミシェは見えていない。存在が見えないのではなく、見えないようにしているのだ。つまり幽霊の類ではなく、魔法的な學迷彩を使っていると思えばいいだろう。
この後、ビルの一室に連れていかれた俺はそこで待っていた奴らも合わせて26人ほどボコボコにした。収として30萬近く手にれた。
魔を倒して、その素材を売って金を得る。人間を倒して財布をとって金を得る。似たようなものだ。
俺は食後の運もできて々お高めのホテルで気持ちよく眠った。
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