―――『吸鬼ヴァンパイア』。

夜の空を飛び回り、生者のを吸う種族。

を吸えば吸うほど力が増し、を限界まで吸った狀態だと、全ての最上位召喚獣の中で、５本指にる力を発揮する。

また、『魔法の才』を持つ者が多く、近距離も遠距離も戦える召喚獣。

「……この子は……？！」

「のの『紅眼』……間違いない。『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』だ」

その『吸鬼ヴァンパイア』の中に、『紅い眼』をした者が産まれる事がある。

―――『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』……最強と呼ばれる『吸鬼ヴァンパイア』だ。

最強と呼ばれる理由は、大きく分けて３つある。

１つは、普通の『吸鬼ヴァンパイア』の３倍吸を行おこなえる事。

を吸えば吸うほど強くなる『吸鬼ヴァンパイア』にとって、が多く吸える＝力なのだ。

２つは、長壽な事。

普通の『吸鬼ヴァンパイア』は人間と同じ程度の壽命しか無いが……『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』は２００年以上生きると言われている。

３つは―――特殊な『魔法の才』を持つ事。

炎を出すとか、雷を発生させるなどヤワなものではない……今ここに産まれた『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』で例えるならば―――魔法陣から『赤黒い水晶』を発生するという魔法だ。

「……ＸＸＸ……お前は期待されている……わかるな？」

「ぼっ、ボクがです……？」

「そうだ……お前は『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』に選ばれた。その力があれば……『吸鬼ヴァンパイア』の王になれる」

「王……ですか？」

い『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』は、父親の言っている事がわからなかった。

だが―――父親は勘違いをしていた。

それは……この『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』は優しすぎる、という事だった。

「………………ＸＸＸ……何をしている？早く止とどめを刺せ」

「お父さん……で、でも……もう勝負は付きましたよぉ……？これ以上攻撃しても―――っ？！」

喋っていたい『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』の頬を、父親が叩いた。

「優しさなど、『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』には必要ない……必要なのは容赦の無さと、殘忍だけだ……わかったな、ＸＸＸ？」

「………………はい、ですぅ……」

―――は、優しすぎた。

その格を直そうとした父は、を牢獄に閉じ込め、格を変えようとした。

「……………」

―――何故？

何が悪いの？

ボクが悪かったの？

ボクが何をしたの？

お父さんは、なんでボクを閉じ込めるの？

お父さんは、なんでボクを鍛えるの？

ボクが『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』として生まれたのが悪かったの？

他の『吸鬼ヴァンパイア』よりを吸うのが悪かったの？

年を取ってもい事が悪かったの？

優しい事が罪なの？

優しいって何なの？

悪い事なの？

ボクがもっと殘酷な格だったら……ボクがもっと他人に容赦無く攻撃してればよかったの？

―――ボクは、こんな力なんかんでない。

もっと普通に生まれたかった。

もっと笑って過ごしたかった。

夜の空を飛び回りたかった。

友だちを作りたかった。

普通の『吸鬼ヴァンパイア』みたいに過ごしたかった。

そんなある日、の足下に魔法陣が現れた。

暗い牢獄の中、異様に輝く魔法陣が、には希のように見えた。

―――その召喚された先で、まさか召喚士から帰りの魔法陣を破壊され、さらには契約も結んでもらえないとは思っていなかったが。

―――――――――――――――――――――――――

「キョーガっ！」

「チッ……朝っぱらからうるせェロリ吸鬼だなァ……吸だろォ？ちゃっちゃと終わらせよォぜェ」

「わーい！」

キョーガに飛び付くアルマが、嬉々として吸を始める。

―――夜の空を、飛び回れなくてもいい。

『吸鬼ヴァンパイア』の友だちがいなくてもいい。

『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』として、特別扱いされなくていい。

「あふぅ……味しいですぅ……」

「あんまり吸い過ぎんなよォ？もォ貧にゃァなりたくねェからなァ」

「わかってまふよぉ……んぁ、味ひぃ……」

「本當にわかってんのかァ？」

ため息を吐くキョーガ……と、部屋の扉が開けられた。

そこから現れたのは、橙髪のの子だ。

「おはようございます！キョーガさん、アルマさん！」

「あァ、おはよォリリアナァ」

「おはようございますご主人様っ！」

い『紅眼吸鬼ヴァンパイアロード』は心から思う。

―――この２人さえいれば、あとは何もまない、と。