《不良の俺、異世界で召喚獣になる》2章7話
『―――『破壊の咆哮デストロイ・クライ』』
『金竜ファフニール』の口に浮かぶ球から、破壊線が放たれる。
町を巻き込みながら放たれた線は、浮かんでいた『機巧族エクスマキナ』3機を破壊し―――『金竜ファフニール』の背後に、2機の『機巧族エクスマキナ』が回り込んだ。
その左手に付けられた銃口にが収束しゅうそくし、『金竜ファフニール』に向かってレーザーが放たれ―――
「させませんよぉ―――『結晶技巧ブラッディ・アーツ』、『大盾シールド』」
『金竜ファフニール』にレーザーが當たる寸前、アルマが赤黒い結晶の障壁を召喚し、『機巧族エクスマキナ』の攻撃を妨害した。
「…………【理解】 『吸鬼ヴァンパイア』の魔法―――」
『ふん―――『追撃の風爪エア・クロウ』』
現狀の把握を急ぐ2機の『機巧族エクスマキナ』―――と、そのが、障壁ごとバラバラに引き裂かれた。
『……妙だな……數が多すぎる』
「そうなんですかぁ?ボクにはさっぱりですよぉ……」
気怠そうにため息を吐くアルマ……その顔はいつもより青白く、疲れているのは明あきらかだ。
それを庇うようにして飛ぶ『金竜ファフニール』……疲れた様子のアルマの背後には、2人の『人類族ウィズダム』の姿がある。
『……無理はするな『吸鬼ヴァンパイア』、我に任せておけ』
「そうは言ってもですねぇ……ボク、そろそろ倒れそうなんですよぉ……ですから、戦えるに戦っておかないと、本當に役立たずになっちゃうんですよぉ」
『しかし……お前が倒れては、主を守る者がいなくなる。できるだけ無理はするな―――『追撃の風爪エア・クロウ』』
暴れる『金竜ファフニール』を見て―――アルマは、形容しがたい歯はがゆさをじていた。
―――ボクのご主人様を、他の召喚獣に守られるなんて。
こんな屈辱は、味わった事がない。
ボクが本気を出せば、ここにいる『機巧族エクスマキナ』全部……いや、『金竜ファフニール』だろうと『地獄番犬サリス』だろうと……それこそ、もしかしたら『反逆霊鬼キョーガ』ですら倒せるかも知れないのに、こんな『金竜ファフニール』ご・と・き・に守られるなんて……!
「……『金竜ファフニール』……代ですぅ、ボクが戦います」
『何を言っている?『吸鬼ヴァンパイア』は太が出ている間は、力を制限されて―――ッ?!』
ローブをぎ―――アルマの紅眼が現れる。
それを見た『金竜ファフニール』が、恐怖をじたようにを引いた。
『……お、前……『紅眼吸鬼ヴァンパイア・ロード』か……?!』
「はい、そうですよぉ」
『…………まさか、20年前に『厄災竜ディザスター』を瀕死寸前に追い込んだ『紅眼吸鬼ヴァンパイア・ロード』と言うのは―――』
「あ、ボクの事ですねぇ―――『力けつりょく解放』」
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ……何かが脈打つような音が辺りに響く。
その音が、アルマのから出ていると気づくのに、さほど時間は掛からなかった。
『く、ぬッ……!主、我の背中に乗れッ!』
「な、ファニア?急にどうしたんだ?」
『良いから早く乗れ!そこのもだ!早くしないと、巻き込まれてしまう!』
「あ、ああっ……あああぁああああアああああァあああああああアっ、ァああああアアああぁああああああァあああアッ!」
と、アルマのから『赤黒い霧』が放たれ―――青い空を覆った。
地獄のような景に、リリアナとデントが息を呑む。
『金竜ファフニール』が棒立ちの2人を爪で引っ掛け、上空へと舞い上がった。
無防備な『金竜ファフニール』目掛けて、『機巧族エクスマキナ』が銃を構えながら近づくが―――
「―――『結晶技巧ブラッディ・アーツ』、『四重紅弾フィーア・バレット』」
空中に、20個以上の魔法陣が現れる。
そこから『赤い結晶で作られた弾丸』が放たれ―――近くにいた『機巧族エクスマキナ』全てが地面に沈んだ。
『……歴代最強の『紅眼吸鬼ヴァンパイア・ロード』……『アルマクス・エクスプロード』……まさか、あいつが……』
アルマのから放たれていた赤黒霧が止やみ……そこに、いアルマは立っていなかった。
小さい長はキョーガと同じくらいにまでび、穏やかな目付きが三白眼へと変化している。
短い青髪も腰までび、鋭すぎる牙が剝き出しとなって―――
「……機械風ふぜいが……ボクの前に立つな。分ぶを弁わきまえろ」
アルマとは似ても似つかないが、腕を上に向け―――それだけで、倍以上の魔法陣が浮かび上がる。
それらの魔法陣は―――はるか遠くを捉えていた。
「……『結晶技巧ブラッディ・アーツ』、『四重紅弾フィーア・バレット』」
100発以上の紅弾が放たれ……遠くから、何かが発するような音が響いた。
おそらく、紅弾が直撃した『機巧族エクスマキナ』が発したのだろう。
「……ご主人、ボクも住民を探しに行きたいのだが、よろしいか?」
「へっ?あ、はい……どうぞ」
「すまない……『金竜ファフニール』、ボクのご主人を任せる」
上空に飛び上がり、黒翼で加速を付けて遠くに飛び去る。
その堂々とした姿は……本當に、いつものアルマには見えなかった。
―――――――――――――――――――――――――
「……なんだこりゃァ……?!」
空を見上げ―――空を覆っている赤黒霧を見て、キョーガが驚愕に目を見開いた。
―――これは、なんだ?
異世界には、空が赤くなる天気があるのか?それとも、『機巧族エクスマキナ』の仕業か?いや、いくら機械と言っても、天候をる事は不可能だろう。
となると……まさか、アルマかサリスのどちらかの仕業か?
「はっ……なんだよおい……こんなスゲェの隠してやがったのかァ……!」
ズキズキと痛む額ひたいを押さえながら、楽しそうに口元を歪めた。
―――天候をるなんて、もはや人智を越えている。
普段はなんやかんやでふざけてたり、頼りなかったりするが……さすがは最上級召喚獣と言った所か。
「……にしてもォ、住民どもはどこに―――ッ?!」
歩いていたキョーガが、ピタリときを止めた。
グルンと振り返り、遠くを見て目を細める。
―――なんだ……この気配は……?
今までじた事のない覇気……『金竜ファフニール』なんかよりずっと強い気配……
「俺と同等……それ以上かァ……!」
迫る気配に、キョーガはいつぶりになるかわからないの昂たかぶりをじていた。
―――『機巧族エクスマキナ』じゃない……ちゃんとした生だ。
しかし……妙な気配だな……?
知らない気配だが、どこかでじた事があるような気配だ……
「おいおい……まさかァ―――」
「見つけた……キョーガ、住民は見つかったか?」
キョーガの目の前に著地する……見た事のないだ。
だが―――この異様な覇気、鮮やかな青髪。そして、煌々と輝く紅眼……特徴だけで言えば、見知った人と重なる部分が多い……と、言う事は―――
「おめェ……アルマ、かァ?」
「ああそうだ……それで、住民は見つかったか?」
「……いや……なんも見つかってねェ。っつーかァ、なんのヒントもねェのにィ、住民を探すってのが不可能に近ちけェだろォ」
普段とは違うアルマの姿に困しつつ、キョーガが平靜を裝いながら答える。
「ふむ……困ったな。早くしないと……」
「あァ?なんだァ、早くしねェとヤベェのかァ?」
「……ボクの力には、時間制限がある……持って、あと10分だ。10分以に勝負をつけないと、元の姿に戻ってしまう」
「はァ、なるほどなァ……おめェ、本當にアルマなんだなァ」
「ああ……キョーガたちにばかり、迷を掛けられないからな。久しぶりに本気を出そう」
そう言って目を閉じるアルマ―――と、背後から高速で迫る気配をじた。
「【発見】 『人類族ウィズダム』と『紅眼吸鬼ヴァンパイア・ロード』の姿を確認。おそらく『人類族ウィズダム』の方が、『指示者コマンダー』の言っていた『得の知れない何か』と判斷」
「おォ……やっと來やがったかァ」
「……たったの1機か……キョーガも舐められたものだな」
「あァん?俺が舐められてんのかァ?」
額ひたいを押さえたまま、浮かぶ『機巧族エクスマキナ』を睨み付け、尋常ならざる殺気を放ち始める。
「……【理解不能】 ただの『人類族ウィズダム』が、ここまでの殺気を放つ事は不可能……『偵察機』から『指示者コマンダー』へ。至急、『殲滅組』の派遣を申請」
「さァ……やるか、アルマァ」
「ああ」
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