《不良の俺、異世界で召喚獣になる》3章1話
「……あは……♪……なに、この狀況……♪」
扉を開ける茶髪のが、室の景を見て苦笑を浮かべた。
それも無理はない。
中の景は……し。いや、かなり異常だ。
「あァ……?どォしたんだよサリスゥ?」
「いや~……♪アルちゃんはともかく、なんでマリーちゃんも一緒にいるのっ♪」
ベッドに座る黒髪の男。
その首元に青髪のが抱きついており、男の左腕を金髪のが遠慮がちに握っている。
「なんかよくわかんねェがァ、コイツァ魔力をエネルギーとして活するんだとよォ……だから俺が魔力を供給してやってんだァ」
「あは~♪……こうやって見たら、2児の父親にしか見えないね~♪」
「あ、ふぅ……キョーガがお父さんって……想像できないですよぉ」
「【同】 アルマと同意見」
言いながら、青髪のと金髪のが男を見上げる。
そのい視線をける男が、舌打ちしながら口を開いた。
「勝手に想像すんじゃねェ……俺が父親なんざァ、想像したら気持ち悪わりィだろォがァ」
「あはっ♪確かに、その通りだね~♪」
「……てめェに言われるのはァ、なんかスッゲェムカつくなァ?」
「……それじゃ、今日もやろっか♪」
空いている右手に摑み掛かり、茶髪のと男が力比べを始める。
―――男の名を、百鬼なきり 兇牙きょうが。
『死霊族アンデッド』にして、最上級召喚獣の『反逆霊鬼リベリオン』である。
青髪の名を、アルマ。
同じく『死霊族アンデッド』で、これまた同じく最上級召喚獣の『吸鬼ヴァンパイア』だ。
茶髪の名を、サリス。
地獄を守る最上級召喚獣の『地獄番犬ケルベロス』で、先の2名と同じく『死霊族アンデッド』だ。
金髪の名を、マリー・ゴールド。
人工的に造られた種族『機巧族エクスマキナ』で、その小さなの中には、數えられないほどの兵が蔵されている。
そして……この4匹の召喚獣を従える召喚士は―――
「―――皆さん、おはようございますっ!」
「……あァ……おはよォリリアナァ」
「おはようございます、ご主人様っ!」
「おはよ~リリちゃん♪」
「【挨拶】 おはよう、リリアナ」
夕焼けのようにキレイなオレンジの髪。しく整った顔。無駄な脂肪のない、細めの。
リリアナ・ベルガノート……ついこの間まで、學院の仲間から『無能』と呼ばれていただ。
「んでェ?リリアナが俺の部屋に來るたァ珍しいなァ。何かあったんかァ?」
「いえ、マリーちゃんが私の部屋にいなかったので……ここかな、と思いまして」
「……だってよォ。おら、魔力の供給は終わっただろォ?リリアナんとこ行けやァ」
「【拒否】 當機はマスターと一緒にいる」
「……あァ?」
珍しくキョーガの言葉に反発し、リリアナの視線から隠れるように、マリーがを隠す。
「おいおい、急にどうしたんだァ?」
「えっ、ま、マリーちゃん……わ、私、怖くないですよー?」
「……【説明】 リリアナは當機を抱き枕にする。鬱陶しい」
「う、鬱陶しいですか?!」
心底ショックをけたようなリリアナが、フラフラとマリーに近づく。
「【警告】 それ以上近づけば……これからは、一緒に寢ない」
「そ、そんな……」
リリアナがピタリときを止め、羨ましげにキョーガを見つめる。
見られるキョーガは、『いや、そんな目を向けられても……』と困った表だ。
「ったくよォ……これじゃァ俺が子ども好きみてェじゃねェかァ」
「あは~♪……2人を連れてるキョーちゃん、お父さんって言うより不審者だね~♪」
「しばき回すぞてめェ」
「怖~いっ♪」
握力比べをしていた左手を抜き取り、思ってもないだろうに怖がるような仕草を見せる。
「てめェはいつまでくっついてんだよォ」
「え……ダメ、ですぅ……?」
「暑っ苦しいしィんだよボケがァ……くっつかれんのは寢てる時だけで充分だってのォ」
「……じゃあ今から二度寢しますよぉ……ね?」
「ね?じゃねェ」
くっつくアルマを引き剝がし、マリーの手を振り払う。
ジト目で見上げるアルマと、無機質なマリーの視線をけ、心底鬱陶しそうに舌打ちをした。
「てめェ、一応最年長だろォがよォ……だったらァ、相応の態度をしとけよなァ」
「さ、最年長の態度、ですぅ……?」
悩むような仕草を見せ……アルマが、キョーガに向かって両腕を広げる。
何事か?と首を傾げるキョーガに、アルマが妖艶に微笑みながら、囁くように言った。
「……おいで、キョーガ。お姉さんが優しく抱き締めて……あ・げ・る―――痛いッ?!」
をくねらせながらうアルマを、キョーガのチョップが襲った。
「え、えぇ?!でも今、最年長相応の態度って言ったですよぉ?!」
「アホかてめェはァ!誰がっぽくえっつったァ?!」
「痛っ!痛いですよぉ!止めてくださいぃ!」
涙目で抗議するアルマに、キョーガが連続でチョップを放つ。
「【理解】 マスターは年上より年下が好みだと把握」
「あァ?何言ってんだァ?」
「【説明】 マスターは、神がいアルマに甘い。しかし、年相応の態度のアルマ……年上のアルマには厳しい。つまり、マスターは小さい子が好き―――」
何か言い掛けるマリーが吹っ飛んだ。
「……コラポンコツゥ……だァれがロリコンだってェ?」
―――デコピン。
怒りにより額から『紅角』が生えたキョーガのデコピンが、マリーを吹き飛ばしていた。
「……【謝罪】 すまない、マスター……しかし、い子どもが好きなのであれば、當機を好きにして構わない」
気合いのった作を見せるマリーの姿に、キョーガは深いため息を吐いた。
「……あ、そうでした」
「あァ?……どうかしたかァ?」
「いえ、卒業式が4日後なので、両親に手紙でも書こうかと思いまして」
「……あァ……卒業式ってのがあったなァ……すっかり忘れてたなァ」
そう、卒業式だ。
そもそも、學生であるリリアナが、何故平日なのに家にいるのか。
リリアナが言うには―――座學は學年トップ。授業をける態度もトップ。先生からの評価もトップ。一応、卒業できる評価は貰っているから、あとは卒業式に出るだけ……らしい。
「……そォいやァ……なァリリアナァ」
「はい?どうしました?」
「學院にゃァ最上級召喚獣と契約してるやつってェ、あのデントって野郎以外にいるのかァ?」
「はい。『竜族ドラゴニア』の『金竜ファフニール』と契約しているデントさんと……『獣人族ワービースト』の『氷結銀狼フェンニル』と契約している『ラッセル』さん……學・生・の・中・なら、この2人が最上級召喚獣と契約しています」
「……あのアバンってやつが使ってたァ、『巨人族ギガント』の『サイクロプス』はァ上級召喚獣だったなァ」
「上級召喚獣と契約している人は……えっと……アバンさんの他に、4人ほどいますよ」
……つまり、上級召喚獣と契約しているのは、たったの5人。そして、最上級召喚獣と契約しているのは、それよりない2人。
しかも……その2人も、契約數は1匹ずつ。
という事は―――
「……んじゃァ、最上級召喚獣と契約してる數が一番多いのァ、リリアナって事かァ」
「え?……あ、言われてみれば、確かにそうですね」
「自覚無かったのかよォ……」
「あは~♪……あたしだったら、ぜ~ったいに自慢しに行くけどね~♪」
壁に寄り掛かるサリスが、ニコニコと笑う。
―――確かに、サリスの言いたい事もわかる。
リリアナは、學院の仲間から『無能』と呼ばれていた。
そんな弱者が、いきなり最上級召喚獣3匹と契約して、強者になれば―――普通、自慢したくなるだろう。今までバカにしてきたやつらを、見返したくなるだろう。
「そ、そんな……自慢なんて、私が……」
―――まあ、リリアナならしないと思うが。
「はっ、相っ変わらず甘あめェなァ……だがァ、それで良い……いやァ、『それが良い』だなァ」
楽し気に笑い、キョーガがベッドから立ち上がった。
「さァてとォ……朝飯でも作っかァ」
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