《不良の俺、異世界で召喚獣になる》3章3話

―――その日は、唐突にやって來た。

耳がイカれそうになる轟音が響き渡り―――眠っていたキョーガは、勢いよく飛び起きた。

その直後―――キョーガの腹部を拳撃が襲い、いきなりの攻撃に反応できず、家の壁を壊しながらぶっ飛ぶ。

壁を壊し、外にぶっ飛んでいくキョーガ……慌てたようなアルマの聲と、聞き慣れない聲が、部屋の中に響いた。

「キョーガっ?!」

「……こんな所にいたのか……アルマ……いや、アルマクス」

ふわりと、月を浴びながら部屋に著地する男

爛々と輝く『蒼眼』に、闇夜を集めたような黒翼。そして、鋭すぎる牙。

間違いない―――『吸鬼ヴァンパイア』だ。

「えっ………………そ、そんな……」

「久しぶりだな……まさか、こんな所で召喚獣なんぞにり下がっているとはな?」

壁を砕し中にってくる男が、壁の破片を踏みながらアルマに近づく。

いやいやと首を振るアルマが……男に向かって言った。

「…………お、父さん……?」

「そうだ」

震えるアルマが、目の前の父親を見上げる。

「なん、で……なんでお父さんが、ここに……?」

「簡単な話だ……私も召喚獣として召喚されたからだ」

恐怖でけなくなるアルマ……その肩に、父親が手をばし―――

「【駆除】 『魔の熱線イグナイツ・レーザー』」

渦巻く蒼熱線がアルマの橫を通り過ぎ、その先にいたアルマの父親を吹き飛ばした。

「ま、マリーちゃん?!いきなりどうしたんですか?!」

「【警告】 近寄るなリリアナ、部屋の外で……いや、1階に避難していろ……コイツは、マズイ」

「あは~♪……どしたの、この狀況っ♪」

「【理解不能】 ……だが、マスターが吹き飛ばされ、さらにアルマがけない狀況だったため、當機が焼き飛ばした……のだが」

突然の轟音を聞き付けたマリーが、右腕を元に戻しながらアルマに近づく。

「【解析】 先ほどまでここにいた召喚獣の気配……まさかとは思うが、『吸鬼ヴァンパイア』か?」

「……………」

「……【質問】 聞いているかアルマ?先ほどの男は、お前の知り合いか?念のため、出力を抑えたのだが……おい、聞いているか?」

「ん~……?なに、どうしたのアルちゃん?」

かなくなってしまったアルマに話し掛けるも……呆然としたまま、ガタガタと震えている。

「……な~んかよくわからないけどっ……マリーちゃん。アルちゃんの事、任せるね~♪」

「【了解】 だが、サリスはどうするのか?」

「あは~♪……決まってるでしょ~?」

ニコニコと笑ったまま、ゆっくりとサリスが振り向く。

「……家ぶっ壊した大バカに、禮儀ってのを教えてやらないとね~♪」

「―――お前が、私に禮儀を教えると?」

背後から、聲が聞こえた。

バッと振り返るサリスが、剛爪を構え―――しかし、アルマの父親の方が早い。

瞬間的に間合いを詰め、鋭い蹴撃が放たれる。

咄嗟に腕を盾にして防ぐも―――その蹴撃の強さに、サリスが家の外に吹っ飛ばされた。

「……【理解】 『幻魔法』か」

「ほう……よくわかったな。お前は…………生きか?それにしては、機械臭いな……?」

「【嘲笑】 當機は生ではない。そのくらいわかれ」

アルマを守るように立ち、両腕を変化させる。

右腕を機関銃に、左腕を狙撃銃に変化させ、それぞれの銃口をアルマの父親に向けた。

「ふむ……まあ、どうでもいい。お前が生だろうとなかろうと―――私には勝てない」

「【冷笑】 そういう事は、當機の本気を見てから言うべき―――『魔弾の豪雨スコール・レイン』」

『ドルルルルルルルルッ!』と、數え切れない量の弾丸が放たれ、目の前の敵を撃ち殺さんと迫り―――

「―――『幻視覚イリュージョン』」

と、アルマの父親の姿が消えた。

突然消えた父親に、マリーは驚く―――事なく、辺り一面に機関銃をし、壁や家砕していく。

―――『幻魔法』は、視覚に作用する魔法。

つまり……姿が見えないだけで、近くには存在する。

だったら、辺り一面をして、炙あぶり出してやればいい。

そうやって、合理的な方法を思い付いたマリーは、ひたすらに銃を撃ち続け―――唐突に、マリーのが吹き飛んだ。

「……姿の見えない敵に対して、辺り一面吹っ飛ばして炙り出す……悪くない考えだ」

「くっ……【理解不能】 何故、無傷で立っている……?」

「お前の攻撃は、その機械から出される……なら、その機械のきにさえ気を付けていれば、簡単に避けられる……違うか?」

「【理解】 ……さすがは『吸鬼ヴァンパイア』。マスターには及ばぬが、かなりのデタラメだな」

壁にめり込むマリーが立ち上がり、両腕を元に戻す。

「どうした、降參か?なら、アルマをこっちに寄越せ―――」

「【嘲笑】 當機は先ほど言っただろう―――そういう事は、當機の本気を見てから言え、と」

冷たく、無機質な視線。

その視線をける父親が、理由のわからぬ悪寒をじた。

「【確認】 殘存魔力、94%……90%以上のため、『完全武裝形態フル・アーマード』を使用可能―――【展開】 『完全武裝フル・アー―――」

「どォ―――ッらあああァああああああああァああああああああああッッ!!」

突如、室発音が響き渡った。

「おうコラやってくれんじゃねェかぶっ殺し確定だてめェええええェええええええええッ!」

怒り狂うキョーガがび、眼前の『吸鬼ヴァンパイア』に飛び掛かる。

腕を振りかぶり、一切の躊躇ちゅうちょなしで拳を放ち―――

「『幻視覚イリュージョン』」

「なんッ―――あァ?!」

放つ拳撃が暴風を生み、目の前の父親を毆り殺す―――寸前、『吸鬼ヴァンパイア』の姿が消えた。

キョーガの一撃は大きく空振り―――直後、キョーガのが毆り飛ばされたように壁に激突。

「ぐっ、あァ……!んだコイツゥ……!」

「力任せの雑な攻撃……まるでザコだな」

「んっだとてめェ……!もう我慢ならねェッ!」

素早く立ち上がるキョーガの額ひたいから、しい『紅角』が現れる。

―――ここは、リリアナの家だ。

だから、できる限り被害を出さないように心掛けていたが……もういい。本気で殺すッ!

「ふん……『幻視覚イリュージョン』」

再び姿が消え、キョーガの一撃がまたもや空振る。

舌打ちするキョーガ―――と、何かが部屋にってきた。

「―――殺す♪『追撃の風爪エア・クロウ』っ♪」

「なっ―――ぬう?!」

外から現れたサリスが、何もない所に不可視の爪撃を放ち―――そこから、アルマの父親が姿を現した。

「まったく……最初っから『幻魔法』使うってわかってたら、こんな失態見せなかったのに……♪困っちゃうな~♪」

「ぬぅ……お前、何故私の場所が……!」

「に・お・いっ♪『追撃の風爪エア・クロウ』っ♪」

再び爪を振るい、爪撃が父親を襲う。

二度は食らわないと、父親が素早く回避し―――その先に、怒れるキョーガがいた。

「―――死ねッ!」

「いっ、『幻視覚イリュージョン』ッ!」

慌てた様子の父親が消え―――またも、キョーガの攻撃が空振る。

ビキビキとキョーガの額に青筋が浮かび、眼となって父親の姿を探す。

―――屈辱だ。

まさか、こう何回も攻撃を空振るなんて……!

俺のパワーも、スピードも、相手が見えないんだったら使えない。

つまり……俺に、攻撃手段はない。

「はァァァ……!ウッゼェなァ……!」

「ま、ここは任せなよキョーちゃん♪あたしなら、姿が見えなくても殺れるから、さ♪」

「ふざけんなよサリスゥ……!俺ァすっげェイラついてんだァ……てめェだけに譲るのはァ、我慢ならねェ……!」

「……なら、あたしが殺す前に殺しなよ♪」

「言われるまでもねェなァ……!」

怒れる『反逆霊鬼リベリオン』に、相手の位置を臭いで知する『地獄番犬ケルベロス』。

この2匹を前にした『吸鬼ヴァンパイア』は……ふと、思い出した。

……危ない危ない。

ここに來た理由を、忘れる所だった。

「……ん~……?」

すんすんと鼻を鳴らし、サリスが『吸鬼ヴァンパイア』の気配を探る―――と、アルマの近くにいたマリーが、サリス目掛けて吹き飛んだ。

思わずサリスがキャッチし―――その意図に気づいて、慌ててアルマに駆け寄るが―――遅い。

「帰るぞアルマ……私たちの家に」

姿を現した父親が、アルマの肩を抱き寄せる。

キョーガも、何が起こるか理解し、アルマに駆け寄るが―――

「さらばだ……お前たちとアルマが會う事は、二度とないだろう」

言い殘し、父親とアルマのが淡く輝き始める。

キョーガの手がアルマへと、サリスの剛爪が父親へと迫るも―――間に合わず、アルマとその父親は、姿を消したのだった。

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