《不良の俺、異世界で召喚獣になる》3章11話

「よォ……終わったみてェだなァ、サリスゥ?」

「………………あはっ、キョーちゃん♪うん、今終わったよ~♪」

黒コゲになったレテインを前に、サリスがいつもの笑顔を見せる。

「サリス……ありがとうございますぅ。キョーガも、ありがとうございますよぉ」

「ん~……♪どういたしまして、だねっ♪」

ニコッと笑みを深めるサリスに、背負われるアルマも思わずにへらっと笑みをらす。

「……サリスゥ、ソイツァ―――」

「大丈夫、生きてるよっ♪一応、アルちゃんのパパだからね~♪……殺しちゃ、マズイでしょっ♪」

「はっ、あんだけ大量の『吸鬼ヴァンパイア』ぶっ殺しといてェ、殺しちゃマズイとかよく言えたなァ」

―――殺しちゃ、マズイ。

サリスの口からその言葉を聞けて……かにキョーガはホッとした。

あの無表のサリスは……上手く言えないが、どこか怖かったのだ。

元の世界で何度か拳をえた、プロの殺し屋に似た冷たい殺意……いや、殺し屋なんかよりずっと濃厚な殺意。

幾度となく『実験』で死を近にじていたキョーガは……あのサリスの姿に、どこか危ない気配をじていた。

―――ああ……思い出した。

あの気配は……『殺しを日常としている者』の気配だ。

殺しを悪い事と思っていないから、何のもなく相手を殺せる。

だから……サリスが『殺しちゃ、マズイ』と言ったのに、思わず安心してしまったのだ。

「キョーガ?」

「んァ……何もねェ……つーかよォ。おめェの父ちゃんがあっちの世界……『アナザー』に來たって事ァ、召喚獣として召喚されたっつー事だよなァ?」

「えっとぉ……はい、そうなりますよぉ」

「……あんだけ好き勝手暴れさせてェ、召喚士は何やってんだァ?」

「ボクに言われてもぉ……適當な契約條件を結んだんじゃないんですぅ?」

召喚獣として召喚された……それなら、レテインやミロードを倒しておいて良かった。

レテインが召喚獣なら、『アナザー』と『サモンワールド』を自由に行き來ができるだろう。

となると、しつこくアルマを狙う可能があった……のだが。

今ここで父も祖父も倒したため……今後、アルマに手を出す事は、ビビってなくなる……はず。

「まァ、終わったから何でもいいかァ……帰ろォぜェ」

「そだね~♪それじゃキョーちゃん、あたしにれててね~♪」

「あいよォ」

キョーガがサリスの肩にれる―――と、サリスの手が眩く輝き始める。

そういや置いてきたリリアナたちはどうしてるかな、とか思っている間に、辺りがに包まれて行き―――

―――――――――――――――――――――――――

「―――あァ……不思議なじだなァ」

「あ………………キョーガさんっ!」

が晴れ……いつものリリアナ家に帰ってきた。

キョーガたちが帰ってきた事に気づいたリリアナが、嬉しそうに駆け寄ってくる。

窓の外は、し明るい。もう夜が明けようとしているのか。

「おゥ、しっかり連れて帰ってきたぜェ、リリア―――ナァ……?」

「す………………すごい……で、あります……」

―――なんか、いる。

白い髪に、褐。そして、青い空を封じ込めたようなしい蒼眼。

長はアルマと同じくらいだろうか……いかにも小のようなが、普通にリリアナ家にいた。

「……おいリリアナァ、この小はなんだァ?」

「しょ、小でありますか?!」

「え、えっと……『霊族スピリット』の『地霊ドワーフ』……最上級召喚獣……です」

「んな事聞きてェんじゃねェよォ。この小はどっから連れてきたんだって聞いてん―――今、何つったァ?」

「『霊族スピリット』の『地霊ドワーフ』……キョーガさんたちと同じ、最上級召喚獣です」

チョコンと、自分たちを見上げる小ドワーフ。

目が合い、嬉しそうに表を輝かせるが、惚れ惚れするほどにしい敬禮を見せた。

「はっ!自己紹介がまだだったであります!自分、『シャルアーラ・オルオン』であります!リリアナ殿の説明の通り、『霊族スピリット』の『地霊ドワーフ』であります!気軽に『シャル』と呼んでしいでありまぁす!」

「……リリアナァ……この迷子はどっから連れて來たァ?」

「つ、連れて來たと言いますか……たまたま偶然、召喚できたと言いますか……」

もじもじと、言いづらそうにリリアナが―――え?

「召喚できたってェ……おめェがかァ?」

「………………はい……」

どことなく嬉しそうなリリアナ……その後ろに、丁寧に描かれた召喚陣が。

まさか……本當に……リリアナが……?!

「……いやでもォ……おめェ、召喚獣をまともに召喚できねェんじゃなかったのかァ?なんで急にポンポン召喚できるようにィ……?」

「……私が最初に試した召喚は、誰でも召喚できる初級召喚獣、『スライム』だったんです……でも、スライムすらも召喚できなくて……」

リリアナが言うには、こういう事らしい。

今まで試した事があるのは、初級召喚獣と中級召喚獣のみだった。

初級召喚獣も召喚できない者が、上級召喚獣や最上級召喚獣を召喚できるわけがない。

だから、上級召喚獣や最上級召喚獣には手を出さず、初級召喚獣の召喚を頑張っていた……のだが。

バカにされ続け、見返してやりたいと思ったある日、ヤケクソ気味に最上級召喚獣の『反逆霊鬼リベリオン』の召喚を試して―――キョーガを召喚できたらしい。

何が原因で召喚できたかは不明。

だが……初級召喚獣が召喚できないからと言って、最上級召喚獣が召喚できないわけではないらしい。

そして今日、この『地霊ドワーフ』の召喚を試したら……功したとの事。

「……しかしよォ……なんで『地霊ドワーフ』を召喚したんだァ?」

「マリーちゃんの提案です。『當機には家を直す機能は付いていない。よって、家を直す技を持つ召喚獣、『地霊ドワーフ』を召喚してほしい』って」

「……なるほどなァ……家が直ってるって思ったらァ、この小が直したって事かァ」

家は倒壊していないだろうか、と心配していたキョーガだったが……この小ドワーフが何とかしてくれたらしい。

「……シャルアーラァ……だったなァ」

「は、はっ!シャルと呼んでしいであります!」

「……家直してくれてェ、サンキューなァ」

「もったいないお言葉であります!……あ、えっと……その……あなたが『反逆霊鬼リベリオン』でありますよね?よろしければ、お名前を伺っても良いでありますか?」

「キョーガだァ……ってかァ、俺が『反逆霊鬼リベリオン』ってわかんのかァ?」

「あ、いえっ!リリアナ殿に聞いたであります!自分、『反逆霊鬼リベリオン』が大好きなのであります!」

敬禮したまま、嬉しそうに続ける。

「過去2度の『神殺し』をし遂げ、さらには『魔王』撃退の際に最も貢獻した最強の召喚獣っ!リリアナ殿から『反逆霊鬼リベリオン』に會えると聞かされた時、自分は嬉しくて発しそうでありました!」

「…………?」

キョーガは―――いや、キョーガとアルマ、そしてサリスは、ふと違和を覚えた。

……この『地霊ドワーフ』は、なんでここにいるんだ?

リリアナが召喚に功したというのは……まあ、ギリギリ理解できる。

だが、この召喚獣は、ここにいても何のメリットもない。

この『地霊ドワーフ』は、何の見返りを……リリアナとどんな契約條件を結んで、ここにいる?

話から察するに、『地霊ドワーフ』はを作ったり直したりするのが得意なのだろう。

だとすれば……を作ったり直すのが好きな可能が高い。

さて……ここで、思い出してしい。

マリーはどこにいる?

―――そう思った後の行は速かった。

キョーガの額から『紅角』が現れ、アルマが鋭い牙を剝き出しにし、サリスが笑みを浮かべたまま覇気を放ち始める。

その尋常ならざる殺気をけるシャルアーラが、恐怖にを固め―――

「……スッゴい……で、あります……!」

―――いや、固める事なく、尊敬の眼差しでキョーガの『紅角』を見つめる。

……おそらく……あくまで推測でしかないが……マリーはコイツに分こ解ろされた。

コイツがリリアナに出した契約條件は、『この機械を解させろ』とかだろう。

油斷するな……コイツの無邪気な笑顔には、絶対に裏がある―――

「……………………【察知】 この異様な覇気……マスターたちと判斷…………お帰り、マスター」

「あ……あァ?マリーかァ?」

「【肯定】 ……すまないマスター、魔力を分けてくれないか?」

疲れ果てたような表……に見えるマリーが、ゆっくりと階段を降りてきた。

思わずマリーとシャルアーラを互に見やり……あれ?勘違い?と、3人が顔を見合わせる。

「お、おゥマリー……珍しいなァ、疲れてんのかァ?」

「【肯定】 ……々あって、魔力を大量に消費してしまった」

にぎにぎと手を握ってくるマリー……その様子は、いつも通りだ。

「えっとよォ……シャルアーラァ」

「はっ!シャルと呼んでしいであります!なんでありましょうか?」

「んやァ……おめェがリリアナと結んだ『契約條件』ってどんなのだァ?」

キョーガの言葉を聞いたシャルアーラが、不思議そうに首を傾げた。

「はっ、自分がリリアナ殿と結んだ『契約條件』は『契約を結べば『反逆霊鬼リベリオン』に會わせてもらえる』でありますが」

「……は、ァ?それだけかァ?」

「はっ。それだけであります……が……?」

え?何か問題があったでありますか?とオロオロし始めるシャルアーラ。

「あァいや何もねェ、疑って悪かったァ」

「い、いえ!自分は気にして―――え?自分、疑われてたでありますか?」

―――アルマを連れ戻した今日。何故か仲間が増えた。

さて……日付が変わったため、リリアナの卒業式まで殘り3日。

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