《不良の俺、異世界で召喚獣になる》3章13話

「……告白って……キョーちゃんが、アルちゃんに?」

「はい……どうやら、そのようなんです」

お湯に顔を浸つけ、表を見せないようにブクブクと泡を立てるアルマ。

だが、表がよく見えないとしても、そのから放たれる幸せそうな雰囲気は隠せれていない。

―――キョーちゃんが、アルちゃんに告白した?冗談だろう?

確かに、アルちゃんがキョーちゃんの事を好きに思っていたのは……日頃の態度を見ていればわかる……が。

キョーちゃんがアルちゃんを好きというのは……あまり想像できない。というか、あり得ない。

だって、あのキョーちゃんだ。暴力的でガサツなキョーちゃんだ。そもそもがあるかすらも怪しいキョーちゃんだ。

そのキョーちゃんが告白なんて……うん。100%あり得ない。

「えっと……♪ちなみに、なんて言われたの?」

「……お前の人生、俺に背負わせろって……お前の荷、一緒に持たせろって……言われた、ですぅ」

「ふ、ふ~ん……♪」

―――それは、告白と言うのだろうか?と、言葉になるのをグッと呑み込む。

よくわからないが……なんか、告白というにはし……いや、かなり言葉足らずだ。

「……アルちゃんはさ、キョーちゃんが好きなの?」

「………………はいぃ……」

小さなに手を當て……ポツリポツリと言葉を溢す。

「キョーガの事を考えると、モヤモヤして……何だか、を握り潰されるようなじがするんですぅ」

―――キョーガの顔を見ると、ドキドキして、ソワソワして。

キョーガの聲を聞くと、心臓が跳ねそうで、耳が幸せで。

キョーガがれてくれると、れた箇所が熱を持ったように熱くなって、離れたくないって思って。

キョーガに名前を呼ばれると……溶けてしまいそうなくらいに頭がぼーってして。

「……ボクは……キョーガが好き……ですぅ」

蚊の鳴くような聲は―――けれども。

リリアナとサリスの耳に、しっかりと屆いた。

「あは~♪……それは、あたしたちにじゃなくて、キョーちゃんに言いなよっ♪」

「サリス……?」

「あたしたちにキョーちゃんが好きだ~って言っても意味ないよっ♪……そ~いうのは、本人に言わないと……ね♪」

グシグシと濡れた青髪を掻き回し……キョトンと見上げるアルマに、笑みを見せる。

「……ほら♪いつまでも下向いてちゃ、キョーちゃんに思い、伝えられないでしょ♪」

「………………はいぃ……そうですねぇ……」

湯船から立ち上がり―――アルマの顔が、覚悟を決めた表に変わっている。

し、キョーガと話してきますよぉ……では、失禮しますぅ」

「頑張ってください、アルマさん」

「頑張れ~♪」

浴室の扉を開け、アルマが所へと消えて行く―――と。

「……良かったの、リリちゃん?」

「良かったって……何がです?」

「キョーちゃんの事だよ♪……アルちゃんの後押しをしたあたしが言うのも何だけど、リリちゃん、キョーちゃんの事―――」

「仕方ありませんよ。私とキョーガさんでは、そもそも種族が違いますから……『人類族ウィズダム』と『死霊族アンデッド』がし合うなんて……無理ですよ」

を洗うリリアナが、湯船に浸かるサリスに視線を向ける。

「ん~♪……前にも……っていうか、日付的には昨日言ったんだけどさ♪もうちょっとハッキリした方がいいよ♪」

「………………サリスさんは、どちらの味方なんですか?」

する乙の味方だよ♪……この場合は、アルちゃんの味方でも、リリちゃんの味方でもあるんだから♪」

「ハッキリしませんね」

「お互い様だよ♪」

―――――――――――――――――――――――――

「―――そこでオルヴェルグが言ったのであります!『オレン名前ァオルヴェルグ。最強の『死霊族アンデッド』だァ……喧嘩売る相手を間違えたな三下がァ!』と!」

「はァ……なるほどなァ。それで『盾神アテナ』と戦闘になったのかァ……」

「『盾神アテナ』の種族能力、『絶対障壁アブソリュート・シルド』っ!ありとあらゆる攻撃や魔法を通さない最強の障壁っ!対するオルヴェルグは靜かに拳を構え、放つ一撃で障壁を砕っ!しかぁし!『盾神アテナ』だって『神族デウスロード』っ!たかだか拳なんぞ簡単に避けるでありまぁすっ!」

―――さて、早朝の外。

朝早くから外に出たキョーガは……シャルアーラと一緒に、『プロキシニア』をウロついていた。

「避けた『盾神アテナ』にオルヴェルグは『焼卻角砲ホーンファイア』を放ち追い討ちを掛ける!『盾神アテナ』は咄嗟の判斷で剣を『絶対障壁アブソリュート・シルド』で覆い、オルヴェルグに斬りかかるがぁしかしっ!オルヴェルグに近接攻撃を選んだのは愚の骨頂っ!その圧倒的な力を前に、『盾神アテナ』は簡単に吹き飛ばされ―――!」

何故、わざわざ外に出てきたのか。

単純に家の中が暇だったというのもあるが……シャルアーラが外を歩きたいと言ったため、キョーガが付き合っているのだ。

「…………ふぅ……!ふぅ……!……い、以上が一度目の『神殺し』の全容であります……」

「……詳しィんだなァ。つーかァ、おめェの話ィ、おもしれェなァ」

「はっ、栄であります!……しかし、キョーガ殿は珍しいでありますね?自分の話がおもしろいなんて……」

「あァん?おもしれェよォ……ヘタな歴史よりおもしれェ」

気合いのった喋り方だからか。それとも説明がわかりやすいからか。

ちょこちょことキョーガの後を追い掛けるシャルアーラが、嬉しそうに笑みを浮かべており……その笑顔を見て、キョーガも釣られて笑みを見せる。

「それにしても……ここは靜かでありますね」

「朝っぱらだしなァ……ってかァ、この時間にウロウロしてる俺らがおかしィんだろォがなァ」

「まあ、そうでありますね」

寒そうに手をり合わせるシャルアーラ。

……まあ、無理もないだろう。

シャルアーラの服裝は……ヘソが丸見えの、し過激な服裝だ。サリスに比べれば可だが。

「……む……キョーガ殿、人がいるであります」

「へェ……こんな朝っぱらにかァ?」

向かい側から歩いてくる、2人の

片方は赤髪、もう片方は銀髪で……何かを話しながら、こちらに歩いて來ている。

―――と、銀髪と目が合った。

「……はっ……ピリピリしてんなァ……」

「はい?何か言ったであります?」

「んやァ……とァ思えねェ殺気だと思ってなァ」

キョーガと銀髪が歩みを止め、お互いに睨み合う。

突然の覇気に、シャルアーラが不思議そうにキョーガを見上げ……赤髪のも、不安そうに銀髪を見ていた。

「……あれァ……召喚獣かァ……?それともォ、アルヴァーナのオッサンみてェにィ、強すぎる『人類族ウィズダム』かァ……どっちだァ……?」

髪型がし変だが……それ以外は、普通の人間だ。

と、銀髪の口元が歪み、その奧から鋭い犬歯が現れる。

「む……あれは『獣人族ワービースト』でありますね」

「『獣人族ワービースト』だァ……?」

「はい、であります……あの様子だと、キョーガ殿の事を召喚獣だと気づいているみたいでありますね」

目を細め、『獣人族ワービースト』のを睨み付けるシャルアーラ。

……髪型が変だと思ったが……違う、あれは耳だ。

獣のような耳が、の頭のてっぺんから生えているのだ。

「……なに……ジロジロ見て……喧嘩……売ってるの……?」

「ちょ、ちょっと『ラナ』?どうしたの?」

歩み寄ってくる『獣人族ワービースト』のが、キョーガを下から睨み付ける。

「あァ?てめェクソガキィ、誰に向かって口利きいてんだオイしばき回されてェのかァ?」

「………………クソガキ……?……それ……わたしに言ったの……?」

「てめェ以外に誰が―――」

「『全面凍結コキュートス』」

―――の足下から氷が走る。

いや違う……凍っているのだ。地面が。この一瞬で。

咄嗟にシャルアーラを抱き上げ―――キョーガの足が凍り付いた。

ガチガチに固められ……そのままにしておけば、數秒で足が凍死してしまうだろう。

「氷ィ……?……『獣人族ワービースト』……銀……犬歯……そォか、てめェが『氷結銀狼フェンニル』ってやつかァ」

「……生意気……ムカつく……謝れば、許してあげる……早く、謝る」

「……あァ?俺が謝るゥ?……はっ、なァんで俺がザコに謝らなきゃならねェ?」

「………………殺す」

「上等」

キョーガが軽くをよじり……それだけで、足を覆っていた氷が々に砕け散る。

それを見たが、鋭い爪を放ち―――シャルアーラを抱えている手とは逆の手でけ止め、兇悪に口元を歪めた。

「……それェ、本気かァ?」

「……本気……だと、思う……?」

「はっ、口の減らねェガキだなァ」

「お互い、様―――『付屬魔法・氷結加護エンチャント・アイスブランド』」

の爪が凍り付き―――爪を摑んでいたキョーガの手も、肩付近まで一気に凍結した。

小さく舌打ちし、キョーガが爪を振りほどいて、後方へ飛んで距離を取る。

「……生半可な熱じゃ……溶けない……謝る、なら……解除……して、あげ―――」

「『焼卻角砲ホーン・ファイア』」

キョーガの額から『紅角』が生え、その先端に現れた太のような熱球が、凍っていた腕を簡単に溶かす。

「……生意気……殺して、あげる……」

「クソガキがァ……しつけてやんよォ」

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