《不良の俺、異世界で召喚獣になる》3章14話
「………………あれ……あれぇ……?」
風呂から上がったアルマが、誰かを探すように家中を走り回る。
「【質問】 アルマ、何をしている?」
「マリー……キョーガがどこにいるか、知ってるですぅ?」
リビングで疲れた―――ように見えるマリーが、機に頭を預けてダラッとしている。
「【解答】 マスターは、シャルアーラと一緒に外へ行った」
「……え?」
「【説明】 シャルアーラが外に出て空を見たいと言い出した。さすがに1人で行かせるのは危険と判斷したマスターが、シャルアーラと共に家を出た……10分ほど前の事だ」
「……キョーガ、と……『地霊ドワーフ』が……2人きり……?」
「【知】 敵意の増幅を確認……どうした、アルマ?」
立ったまま固まるアルマ……と、異様な気配をじたマリーが、アルマの顔を覗き込んだ。
「……ボクなんて……ボクなんて、最初會った時、毆り飛ばされたんですよぉ……?それに、優しい反応をしてくれるようになったのも最近ですぅ……のに、あの『地霊ドワーフ』は……出會って數時間でお散歩ですぅ……?」
「……【理解不能】 どうしたんだ?」
「……マリー、キョーガと『地霊ドワーフ』がどこに行ったかわかりますぅ?」
「【不明】 散歩だから、そろそろ帰ってくると思うが……」
マリーの話を聞きながら、アルマが青のローブを手に取った。
「……ボクもし、お散歩してきますよぉ」
「【了解】」
玄関を出たアルマが、黒翼を打って空へと舞い上がる。
小さくなっていくアルマを見ながら……ポツリと、マリーが呟いた。
「……【理解】 なるほど……あれが生の持つというものか……溫厚なアルマがあそこまで理不盡に怒るとは、なかなか興味深い……勉強しなくては」
―――――――――――――――――――――――――
「はー……はー……!こ、の……!」
「んっだよオイこんなもんかァ?期待外れにもほどがあんだろっがよォ……」
水溜まりを踏み、退屈そうにため息を吐く。
「はぁぁ……!す、スゴいであります……!カッコいいであります!キョーガ殿、スゴく輝いてるでありますっ!」
「落ち著けってんだよォ。腕ん中で暴れんじゃねェ、落ちっぞォ?」
「はっ、失禮したであります!」
キョーガの左腕に抱かれるシャルアーラが、プランプランと揺れている。
―――相が悪かった。
『氷結銀狼フェンニル』が使う魔法は『氷魔法』の上位互換、『氷絶魔法』。
対するキョーガは、『焼卻角砲ホーン・ファイア』という氷を溶かす技を持っている。
つまり……魔法を使っても、キョーガにダメージを與える事はできない。
近接戦闘もキョーガの得意分野……完全に相が悪い。
「なァんか飽きてきたなァ……そろそろ帰るかァ」
「バカに、して……!」
「も、もうやめようよラナ……」
「いや、だ……!ラッセル……離れてて……!」
負けず嫌いなのか、ラナと呼ばれる銀狼はまだまだヤル気のようだ。
だが、睨まれるキョーガは……完全に興味が失せたのか、帰る気満々でアクビを溢している。
「……なァクソガキィ……てめェと遊ぶのァもう飽きたァ……こっから俺ァ遊ばねェぞォ?―――遊びじゃねェ俺とォ、まだ戦やるかァ?」
―――辺りの空気が、一気に張り詰める。
膨れ上がる殺気を前に、ラナがを強張こわばらせ……さっきまでは遊ばれていたという事実に気づき、悔しさにを噛み締めた。
「……もう、いい……『獣化』……する……!」
「だ、ダメだよ!ラナはまだ『獣化』をコントロールできないでしょ?!」
「……でも……!負けっぱなし……イヤだ……!」
「へェ……いい顔になったじゃねェかァ……」
ニイッと口を歪ませ、キョーガがラナと向かい合った。
「おもしれェ……てめェの本気ィ、見せてみなァ」
「言われ、なくても……!『獣―――」
「見ぃつけたぁあああああぁああああああああああぁああああああああああああああああっ!」
何かが、凄まじい勢いで落ちてきた。
ズドオオオオオッ!と地面が揺れ―――塵の中から、青髪のが現れる。
ギロッとキョーガを睨み、倒れそうなほどに青い顔でフラフラと近寄ってくるは、どこか怒っているようだ。
「おいおいアルマァ……何やってんだァ?」
今から戦おうとした所を邪魔されたのだ……さすがのキョーガも、し不機嫌そうにアルマを見下ろす。
「はぁ……はぁ……このぉ―――浮気者ぉおおおおおおおおっ!」
「……………あァ?」
「キョーガのバカっ!ゴリラっ!筋っ!変態変態変態っ!ロリコンっ!乙心を弄んで、そんなに楽しいですぅ?!」
「ちっと待てやオイなんで俺が浮気者―――てめェ誰がロリコンだとォ?!」
フラフラとヤバイじのアルマを右腕で抱き上げ、首元へ近寄らせて吸しろと促うながす。
「はぁ……はぁ……吸なんか後でいいんですよぉ!」
「んっだよなら何しに來たんだよォ?!」
「キョーガがこの褐ロリと遊びに行ったって聞いたから、慌てて探しに來たんですよぉ!なんですかなら誰でもいいんですかこの軽男っ!」
「何が言いてェのかサッパリわかんねェよォ!」
ジッとキョーガを見るラナとラッセル……その眼は、どこかキョーガを咎めているようだ。
「んっだよオイ俺が何したってんだよォ……!」
珍しく困ったようなキョーガが、気まずそうにその場を走り去った。
―――――――――――――――――――――――――
「……はァ……もうわけわかんねェよォ……」
風呂にった後、自室で1人ため息を吐くキョーガ。
―――なんだ、何が悪かった?
俺がアルマを置いて行ったのが悪かったのか?いやでも、怒られる意味がわからない。
てっきり吸するために追い掛けて來たのかと思ったのだが……違ったようだし。
それに……浮気者とは?
俺はそもそも、あいつと付き合っているわけでも、し合っているわけでもない。
別にシャルとも散歩のために外へ出ただけだし……何が悪かったのか?
「……浮気者ォ……?」
浮気……浮気?
浮気ってのは、結婚した夫婦に使われる言葉だ。
付き合っているだけだったら二とかになるだろうし……つまり?
「……俺とアルマはァ、結婚してんのかァ?」
まさかの想像に、キョーガがブルリと震える。
……いや……まさかそんな事は……
プロポーズしたわけでもないし……されたわけでもない。
「……いやァ……冗談だろォ」
両腕を組んで枕にし、目を閉じる。
……とりあえず、眠たい。
まあ、昨日は深夜からアルマ奪還に行ったし、そこから風呂にらず外に行き、『氷結銀狼フェンニル』と遊んで……正直、に負擔が掛かっている。
「……寢るかァ」
の力を抜き、思考を止めて睡魔にを任せ―――
「……キョーガ……?」
コンコンとノックが響き、ガチャッと扉が開けられた。
目を閉じているためわからないが……まあ、アルマだろう。
「……キョーガ……寢ちゃったんですぅ……?」
寢ているわけではないが……顔を合わせるのがし気まずいため、寢たフリする事にした。
「……よい、しょっと」
ギシギシとベッドが揺れ……ふと、キョーガのにズシッと、何かが乗った。
……重い……アルマか……?
「……暖かいですぅ」
布団越しに、ギュッと抱き付かれる覚。
いつもの覚だ……暖かくて、らかい。
「………………きょう……がぁ……」
……いい香りがする。それに、いつもよりらかい……なんだ?
うっすらと目を開け、青髪の姿を確認し―――固まった。
「……あっ、起きたですぅ?」
「あ、アルマァ……お、おめェ、なんでェ……?!」
―――全だった。
申し訳程度に黒翼で大事な所を隠してる場所以外は……一糸纏わぬ姿だった。
「なんでって言われましてもぉ……ボクたちは一心同なんですから、當然ですよぉ?」
「いやァ、わけわかんねェぞォ?!」
全のアルマがキョーガの服に手を掛け、一気にがせた。
割れた服部と鍛えられた部があらわになり―――ふと、アルマの視線が一ヶ所に集中する。
なんだ?とキョーガが自のに視線を落とし―――慌てて左の下を隠した。
「……キョーガ、それ―――」
「見た……かァ……」
観念したように力を抜き―――キョーガの左下に刻まれる、異様な番號が目にる。
そこには……日本語で『検番號 10002』と刻まれていた。
「……はァ……リリアナに背中流してもらった時ァバレなかったんだがァ……」
「それ……なんですぅ?」
「……気にすんじゃねェ……んな事よりィ、おめェ服著ろォ。その格好じゃァ風邪引くぞォ」
素っ気なく言って、キョーガがアルマの顔を見る―――と。
何故かアルマが號泣していた。
「う、うぅ……!ぐすっ、きょおがぁ……!」
「お、オイ、何泣いてんだよォ?」
「だってキョーガ、こんなに傷つけられて……!」
ぽろぽろと涙を溢しながら、アルマがキョーガの番號を指でなぞる。
「……別にィ、痛くも何ともねェんだァ……だからァ、気にすんなってェ」
「……何があったんですぅ?」
「ちっと事故っただけ―――」
「ウソですよぉ……ボクにはウソ、言わないんですよねぇ?」
ああ、そんな事も言ったな、と思いながら。
「チッ……わーったよォ」
ガシガシと頭を掻きながら……キョーガが自分の過去について話し始めた。
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