《不良の俺、異世界で召喚獣になる》3章15話

「―――この番號はァ、そん時に付けられたァ……俺ァ生じゃなくゥ、道として扱われてたァ……」

ベッドの上に座り、キョーガが自に刻まれる番號の説明をする。

「……まァ、そんなじだァ……おもしろくねェだろォ?」

気味に笑みを浮かべ、向かい合って座るを顔を見る。

「……うぅ……ぐすっ……ヒドイですぅ……!本當にヒドイですよぉ……!」

ぐずぐずと鼻を鳴らし、號泣する

何となく、泣くだろうなとは思っていたが……まさか、ここまで號泣するとは。

「ったくゥ……オイ泣くなよォ」

「だって……だってぇ……!」

目元を拭ぬぐってやっても、次から次に涙が溢れてくる。

―――コイツは優しい。優しすぎる。

それがコイツの長所であり……唯一の短所でもある。

「……ひっ、ぐ……キョーガっ、大変だったんですねぇ……!ボク、まったく知らなくて……!」

「もういいんだァ……終わった事だしなァ」

グシグシと頭をで、キョーガが苦笑を浮かべる。

……ちなみに、アルマは現在も全だ。

泣きじゃくるアルマより、そっちの方に意識が行ってしまって、どうしても上りな言葉しか出てこない。

「……ボク、は……」

「あァ?」

「ボクは……ボクは、何があってもキョーガの味方ですぅ!キョーガの辛い事や苦しい事は、ボクも一緒に背負いますよぉ!」

涙が浮かぶ顔は―――けれども。

先ほどまでの雰囲気とは一変し、力強いものへと変わっていた。

そんな頼もしいアルマの頭をで、とりあえず服を著ろと言おうとして―――

―――《ザザッ》と。

キョーガの思考が、テレビの砂嵐に包まれたように不鮮明になる。

「……きょお……が?」

不安そうにキョーガを見上げるアルマ……しかし、返答はない。

『お前の『完全記《ザザッ》憶能力』があれば、最強の《ザザッ》兵隊ができる。お前は、ただの実験《ザザッ》だ。では……今日も、実験を始めよう』

……待て。

『気分はどう《ザザッ》だ、殺戮兵?いや……生と呼ん《ザザッ》だ方がいいか?どちらにせよ……お前《ザザッ》はもう、人間じゃない……まあ、元々人間じゃなく、た《ザザッ》だのモルモットだったがな』

……やめろ。

『筋増強《ザザッ》実験。これに耐えられた者《ザザッ》はいないが……お前なら、耐え《ザザッ》られるだろう?な《ザザッ》あ、『検番號 10002』?』

これ以上深く思い出すと……頭が―――

「……ふゥ…………!」

「どうしました?調が悪いようですけどぉ?」

「いやァ、なんもねェ……ちっと良くねェ事ォ思い出してなァ」

に手を當て、深呼吸を繰り返す。

……思い出すな……実験の事は、もう思い出すな。

これ以上深く思い出すと……俺は……

『おめで《ザザッ》とう。君は自分の力で『自由』を勝ち《ザザッ》取った……さあ、思いの《ザザッ》まま―――殺すがいい』

『―――この、人殺しめ』

「ァ……」

ダメだ……これ以上深くは、マズイ。

落ち著け。今までは、深呼吸したらどうにかなっただろ?

そうだ。今日だって、すぐに良くなる。

だから落ち著け……忘れろ。

忘、れろ……忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ―――忘れろッ!

―――どうやって忘れるつもりだ?『完全記憶能力』を持ってる俺が?

過去に見た景が鮮明に思い出され、キョーガの頭を埋め盡くした。

『紫の夕焼け』『勇気の』『日本語を話す犬』『深紅に染まる海』『人と同じ大きさの鳥』『重火を持つ淑』『落書きの習字』『右から7番目の年』『震えて眠る隣人』『奇妙な絵を描く研究員』『食えない晝飯』『川を流れる死』『飛び散る臓』『鎖に繋がれたトカゲ』『ナイフを構える貓』『毒ガスの実験』『鮮やかな空手家の蹴り技』『目を潰された絵畫』『監視カメラの日常』『走り去る実験』『大化した右腕』『獲を喰らう猛獣』『トゲ付きの棒』『空を飛ぶ機械』『圧迫実験』『死を歌う魚』『の涙を流す功作』『月明かりに照らされる鬼神』『優しい召喚士』『い吸鬼』『笑う地獄番犬』『無表の機巧族』『元気な地霊』『怪力の巨人』『吼える金竜』『無口な氷結銀狼』『強すぎる老騎士』―――《プツンッ》

―――――――――――――――――――――――――

「―――かッ!……はァッ!はァッ!……はァ……!……あァ……?」

「キョーガさんっ!」

跳ね起き、荒々しい呼吸を繰り返すキョーガ。

目を見開いたまま、ゆっくりと辺りを見回し……キョーガの部屋に、全員集合している事に気づく。

「お、めェらァ……なんでェ……?」

「キョーガ、いきなり気絶したんですよぉ……どうしたんですぅ?」

「あは♪……キョーちゃんの部屋から素っのアルちゃんが出てきた時は、びっくりしたよ~♪」

「きょ、キョーガ殿、大丈夫でありますか?」

心配そうに手を握るリリアナに、反対側の手を握るアルマ。

いつもの笑顔を崩してはいないが、心配そうにキョーガを見るサリスに、不安そうに遠くから見つめるシャルアーラ。

「【不満】 1日に何度も専門外の事をやらされるなんて……」

やら點滴やら。

右腕を治療道に変えたマリーが、どこか不満そうに腕を元に戻す。

「………………俺ァ……」

「何かあったんですか?」

「……んやァ、リリアナが心配する事ァなんもねェよォ」

……なんだよ。

なんでお前ら、そ・ん・な・眼・で俺を見るんだよ。

やめろよ。やめてくれよ。

こんな弱そうな姿……『最強』じゃねぇよ。

「……すまん。心配かけたなァ」

「キョーガさん、まだかない方が―――」

「大丈夫だってのォ……俺ァ『最強』だかんなァ」

―――おい。

誰が『最強』だよ。ふざけんな。

こんな無様な姿……『最強』には程遠いだろ。

「……悪わりィおめェらァ、し1人にしてくれねェかァ?」

「【理解不能】 今のマスターは―――」

「ほらほら、行くよマリーちゃん♪……しだけ、1人にしてあげよ♪」

「【拒否】 1人にしたらダメだ。また気絶したら―――おい引っ張るな、マスターがまだ……」

何か言っているマリーを引きずり、5人が部屋を出たのを確認する―――と。

キョーガが拳を振り上げ、機に振り下ろした。

「チッ……!んだよオイふざけんなァ……ッ!」

に當たり、怒號を上げる。

「こ・れ・のッ……どこが『最強』なんだよォッ!」

―――俺は『最強』だ。

『最強』である事が、俺の存在理由で……存在意義。

『最強』じゃない俺なんて……俺じゃない。

なら……今の『俺』は、なんだ?

こんな弱々しい姿を見せて。みんなに心配を掛けて。カッコ悪くに當たって。

今の『俺』は……何者だ?

『最強』じゃない『俺』なんて必要ない。

なら……今の『俺』は、必要ない?

「なんっなんだよ……ッ!なんなんだよォッ!」

何に焦る?なんで焦る?

俺は強い。それは間違いないだろう?

―――だからなんだ。強いだけじゃ意味がないんだよ。

最も強くないと……『最強』じゃないと、俺は、リリアナの隣に立つ資格がない。

『最強』じゃない俺なんて……何の価値もない。

……もう、獨りは嫌なんだ。獨りには、なりたくないんだ。

リリアナの隣にいたいんだ。アルマと一緒にいたんだ。サリスの笑顔を見たいんだ。マリーに頼られたいんだ。シャルアーラの話を聞きたいんだ。

このままじゃ俺は……用済みになっちまう。

なら……どうする?

決まってる……強くなるしかない。

他の誰も追い付けないほどの高みに上のぼって、頼られたい。

獨りになりたくない……強くなれば、リリアナから頼られる……つまり、獨りにならない……なら、『最強』にるしかない。

ってやるゥ……!今度こそ、誰も追い付けないほどの『最強』にィ……!」

―――――――――――――――――――――――――

「【理解不能】 何がしたいのだサリス。今のマスターを1人にして良いと思っているのか?」

サリスの手を振り払い、珍しく怒ったようなマリーがサリスを睨む。

「【報告】 今のマスターは、神が不安定。診察の結果、脳に大きな負荷が掛かっていた。その狀態のマスターを置いて行くなど……」

「うるさい機械だな~♪ちょっと落ち著きなよ♪ちゃんと説明してあげるからさ♪」

リビングの椅子に座り、ヘラヘラとした態度を崩さないサリス。

そんな態度が気に食わないのか、憤慨するマリーがサリスに摑み掛かり―――

「落ち著いてくださいよぉ、マリー」

「【憤慨】 放せアルマ。邪魔するのなら、お前も排除するぞ」

「落ち著いてくださいって言ってるじゃないですぅ……今のキョーガは、1人にするべきですよぉ」

「【理解不能】 意味がわからない。非合理だ。1人にする理由がわからな―――」

「わからないのは、マリーちゃんに『』が無いからでしょ~?」

バカにしたような言葉に、マリーは怒る……事もなく、黙ってサリスの言葉を聞いた。

「キョーちゃんはね、とっても強いの♪自分が一番強くて、自分以外は二番以下……そんな考え♪」

「【既知】 當然だ。マスターが最強で、他の者はマスター以下……それが普通だ」

「さ~てここで問題♪常に一番強いキョーちゃんが気絶して、それをみんなに見られたら……キョーちゃんはどう思うでしょ~か♪」

ニコッと笑いながら、サリスが指をマリーに突き付ける。

「……【解答】 恥心の増加。自信の喪失。しかし、マスターがそれだけの理由で―――」

「それだけ理由があれば充分だよ♪……男の子は特にデリケートだからね♪の子に心配されるなんて、プライドが許さないんでしょ♪」

「……………………【理解】 當機が心を知らぬから、マスターが1人になりたい理由がわからぬという事か」

諦めたように目を閉じ、から力を抜く。

敵意が無くなった事を確認し、アルマがマリーを放した。

「【謝罪】 すまなかったなサリス。いきなり毆ろうとして」

「ん~いいんだよっ♪」

「【謝罪】 アルマも、すまなかった」

「いいんですよぉ」

まったくかなかった……いや、けなかったリリアナとシャルアーラは、不思議に思った。

本當にが、心が無いのなら……何故、マリーはキョーガを心配し、サリスに対して怒ったのだろうか、と。

さて……々あってすっかり忘れていたが。

―――リリアナの卒業式まで、殘りわずか。

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