《不良の俺、異世界で召喚獣になる》4章2話

「………………へェ……」

「き、キョーガさん、あんまり見ないでください……普通に恥ずかしいですから……」

白い裝をに纏まとうリリアナが、キョーガの視線をけて恥ずかしそうに目を伏ふせる。

「ご主人様、スッゴくきれいですぅ」

「あは~♪うん、似合ってるよ~♪」

「【同】 リリアナ、似合っている」

「はっ!リリアナ殿、とても綺麗でありますっ!」

4人からも稱賛をけ、リリアナがますます顔を赤く染めた。

……普通に似合っている。

アルマのようなさもなく、サリスのようなエロいじもなく……清楚でしい。

々鎖骨さこつが出されているが……いつも全に近いサリスを見ているからか、この程度の出は何だか新鮮だ。

違う。いつもは出しないリリアナだから新鮮なのか。

「キレイだぜリリアナァ……スッゲェ似合ってるゥ」

「……本當ですか?」

「あァ―――」

一瞬だけだが……不覚にも見惚みとれてしまった―――と、口から出そうになるのを慌てて呑み込む。

―――卒業式の裝をけ取り、そのまま自宅へと帰ってきた。

サイズが合っているかを確かめるために、こうして裝を著ているのだが……サイズとか確かめるのは、普通は店でする事じゃないだろうか?

「それでェ、明日は俺らも付いて行くのかァ?」

「はい。キョーガさんたちがいないと……私、卒業できませんから」

「あァ……そんな事言ってたなァ」

「……私の卒業式に同席するなんて、嫌かも知れませんけど……お願いします」

「あァいや違ちげェんだよォ。俺が言いてェのァそういう事じゃなくてだなァ」

を暗くさせるリリアナを見て、慌てたキョーガが己の発言を訂正する。

「……卒業式って事ァ、おめェの家族が來んだろォ?」

「まあ、はい。そうですね」

「……おめェの父ちゃんの姉ちゃんに會うのはァ、なァんかちっと気まずいっつーかァ……」

「……あ、そうでしたね」

そう……以前キョーガは、リリアナの父親を大怪我させ、姉の顔面に傷を付けた。

さすがにし……いや、かなり気まずい。

「お父様とお姉様……それに、お母様に弟も來ますからね……でも大丈夫です!キョーガさんなら、すぐに仲良くなれますよ!」

「……あァ?……おめェ、弟もいんのかァ?つーかァ、そもそも何人家族なんだァ?」

「5人家族です!父の名前は『カミール・ベルガノート』、母の名前は『ユリエ・ベルガノート』……姉がシャーロットで、弟が『アグナム』って名前です」

「……おめェの母ちゃんと弟ってのァ、どんなやつなんだァ?」

「お母様は『魔法國家 マグアーナ』生まれの『魔士』です!弟は『帝國 ノクシウス』の騎士學校に通っている學生で……最近ずっと會えていないので、実はし楽しみなんです!」

そう言って、嬉しそうに笑みを浮かべるリリアナ。

「キョーガさんは、ご家族はいらっしゃらないのですか?」

「あァ?……んなもんいねェよォ……俺ァ生まれた瞬間から獨りだったからなァ」

キョーガの言葉に、サリスとマリー、シャルアーラが驚いたように目を見開く。

その言葉を聞いて、キョーガの話した『とある年の話』を思い出したのか、リリアナが申し訳なさそうに顔を伏せた。

気まずい空気が家を満たし、どうにかして話を変えようと―――

「……でもぉ、今は獨りじゃないですよぉ?ボクが隣にいますぅ……キョーガの過去は、ボクが一緒に背負いますぅ……2人なら、辛い事も半分こですよぉ」

―――ただ1人、アルマだけはいつもの調子を崩さず、キョーガにらかい笑みを向けた。

「……はっ……あァ、アルマの言う通りだァ。今ァもう獨りじゃねェ。おめェらがいるゥ……だからァ、んな顔すんじゃねェよォ」

「……すみません……」

「だァからァ、んな顔すんなってェ」

でてでて!と近寄ってくるアルマの頭をで……嬉しそうに笑みを浮かべるアルマが、ギュッとキョーガに抱きついた。

「惚れたですぅ?キョーガ、ボクに惚れたですぅ?」

「惚れてねェよアホォ……」

キョーガが気絶したあの日から、アルマが猛アプローチするようになった。

を見られて吹っ切れたのか、それともアルマの頭の中では、キョーガとアルマは結婚している事になっているのか……定かではないが。

「そんじゃァ、ちっと早はえェが晝にすっかァ」

「お~♪いいね~♪」

予想外の人からの期待をけ、キョーガがし驚いたように目を眉を上げる。

「……はァ、珍しい事もあるもんだなァ?おめェが俺の飯を食いてェって言うたァなァ」

「あは~♪ま、そういう日もあるよ~♪……特に、食べた事のない料理を食べた日なんかは、ね~♪」

そう言って苦い表を見せるサリス。

サリスの表と言葉を聞いたキョーガは理解した。

ああ、コイツもシャルアーラの料理を食ったのか、と。

「珍しいやつからの希だァ……死ぬほど味うめェの食わしてやんよォ」

―――――――――――――――――――――――――

「……キョーガ殿、起きているでありますか……?」

深夜。みんなが寢靜まったであろう時刻。

控えめなノックが室に響き―――扉の先から、褐が顔を出した。

「んァ……?んっだよ珍しィなァ、おめェが來るたァなァ……どォしたァ?」

ムクリとを起こし、隣で眠るアルマを起こさないように気を付けながら、キョーガがベッドから降りる。

「いえっ、あの……実は……」

どこか恥ずかしそうに顔を伏せるシャルアーラ……その手には、枕が握られている。

「…………し、怖い夢を見たのであります……」

「……そうかァ」

それ以上は何も言わず、キョーガがベッドに戻る。

アルマを右側に寄せ、左側をポンポンと叩き―――

「……こっち來なァ」

「い、良いのでありますか?」

「あァ……ってかァ、そのために來たんだろっがよォ」

「……はっ!失禮するであります!」

「大聲出すんじゃねェ……アルマが起きっだろォ」

慌てて口を塞ぐシャルアーラが、イソイソと布団に潛り込む。

「……明日は早はえェんだァ……しっかり寢とかねェとォ、耐えらんねェぞォ」

「はっ、わかったであります」

モゾモゾとき、キョーガの肩に顔をり寄せる。

「……オイ、暑苦しィから離れなァ」

「……ダメ……で、ありますか……?」

「………………別にィ、ダメじゃねェけどよォ」

両側からの溫もりに、居心地悪そうに肩を竦すくめる。

―――アルマの溫もりには、し慣れた。

だが、他のやつ……シャルアーラの溫もりには、全く慣れていない。

だから……しだけ、拒絶反応が出てしまう。

「はァ……だから人ってのァ苦手なんだよなァ」

「……?……どうかしたでありますか?」

にぎにぎとキョーガの手を握るシャルアーラが、不思議そうに問い掛ける。

「んやァ、なんもねェよォ……ってかよォ、シャルって何歳なんだァ?メチャメチャいよォに見えんだがァ……」

「はっ、自分は13であります」

「13ってェ……中1じゃねェかァ……」

アルマと同じく、外見と実年齢がバラバラなのかと思っていたが……シャルアーラは、見た目通りの年齢のようだ。

というか、サリスとシャルアーラが2歳差というのは……信じられない。

「つーかよォ、13の子どもがァ、いきなり召喚獣になってェ……親とかァ心配しねェのかァ?」

シャルアーラは、この世界に來てから……一度も『サモンワールド』に帰っていない。

そこで心配になったのは……親などに許可を取っていないのに、ここで暮らしていて良いのか?という事だ。

シャルアーラの両親からしてみれば、13の娘がいきなり消えて、別の世界で召喚獣になっているのだ……だとすれば、親に何か言っておくべきだろう。

「はっ、大丈夫であります。自分の両親が、自分の事を心配するなんてあり得ないであります」

「……そりゃまたァ、なんでだァ?」

「……自分、『地霊ドワーフ』の中では『異端児』と呼ばれているであります。國を滅ぼした『反逆霊鬼リベリオン』のオルヴェルグ。彼の事をカッコいいと、英雄だと呼ぶ自分は、他の『地霊ドワーフ』から見れば、ただの頭がおかしいガキであります」

ぎゅっと強く手を握り、シャルアーラが聲の調子を落とす。

「……そりゃそうであります。國を滅ぼした殺戮者を英雄と呼ぶ自分は……普通の『地霊ドワーフ』からしてみれば、確かに異端児であります」

「異端児ねェ……」

「異端児?はっ、上等であります。召喚獣?はっ、やってやるであります!國外出?はっ!むところでありまぁす!あんな暗くて空が見えなくて息が詰まるような場所、こっちから願い下げであり―――むぐっ」

話していて徐々に熱がってきたのか、どんどん聲が大きくなり―――シャルアーラの口をキョーガが押さえた。

「……ちっと落ち著けェ」

「し、失禮したであります……」

黙り込むシャルアーラを見て、キョーガは―――どこか、親近を持った。

―――リリアナの周りに集まるやつは、みんな心に何かしらの傷を持っている。

リリアナも、アルマも……おそらく、サリスも。

そして―――キョーガも。

誰にも言えないような暗い過去を、深い傷を、必死に抱えて生きている。

このもまた、キョーガたちと同類だ。

気丈に振る舞ってはいるが……その聲は、瞳は、どこか泣きそうに揺れている。

「………………はァ……」

大きくため息を吐きながら、キョーガがシャルアーラの方を向き―――腕をばして、シャルアーラを抱き寄せた。

「はっ……はっ?!き、キョーガ殿?!いきなり何を―――」

「……んな顔すんじゃねェよォ……ったくよォ、おめェもアルマもォ、思ってる事が顔に出すぎなんだってんだよォ」

「顔……で、ありますか……?」

「あァいやァ……顔っつーか聲だなァ」

暗闇に包まれた寢室。

それでも……シャルアーラがどう思っているかなんて、聲を聞けばわかる。

「……本當は不安なんだろォ?いきなり召喚されてェ、親と離れてェ……」

「……キョーガ殿には、何でもお見通しなのでありますか?」

キョーガのに顔を押し付け、小さく震えるシャルアーラが続ける。

「そりゃあモチロン不安であります……見知らぬ土地にいきなり召喚されて。見知らぬ人に囲まれて。嫌いだった父殿と母殿の元から離れて………………不思議でありますね。あれだけ離れたかった両親から。あれだけ出ていきたかった國から離れて……こんなに不安になるなんて、思ってなかったであります」

そりゃそうだろう。シャルアーラはまだ13なのだ。

そんなが、いきなり他人の家で暮らすようになれば……不安になるのも、無理はない。

どうにかしてめようと、キョーガが必死に言葉を探し―――

「……きょぉ……が……?」

―――ふと、右側から聲が聞こえた。

眠たそうに目をこすりながら、聲の主が起き上がり……部屋の中を見て固まる。

「よ、よォ……起こしちまったかァ?」

「………………キョーガ……なんでその褐ロリが一緒に……というか、なんで抱きついてるんですぅ……?」

嫉妬に燃える吸鬼が、怒りを込めた視線でシャルアーラを睨み付ける。

―――この夜は、まったく眠れなかった。とだけ言っておこう。

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