《不良の俺、異世界で召喚獣になる》4章14話
―――が、死ぬほど重い。
目が覚めると同時、キョーガは不鮮明な思考の中でそう思った。
指をかし、がく事を確認する。
ゆっくりとを起こし、現狀の確認をしようと頭をかそうとして―――
「がっ……!ぐゥ……?!」
中に、激痛が走った。
この痛みは……ずっと味わっていなかった痛みだ。この先、永遠に味わう事のないだろうと思っていた痛みだ。
筋の超回復―――いつぶりになるかわからない、筋痛。
と、キョーガのき聲が聞こえたのか、近くの椅子に座っていたがバッと振り向いた。
キョーガと目が合い……嬉しそうに、けれども心配そうに聲を掛けてくる。
「キョーガ……!大丈夫ですぅ?」
「アルマかァ……?……ここォ、どこだァ?」
「えっとぉ……ほけん、しつ……?とか言ってましたよぉ」
「保健室ゥ……?って事ァ、ここァまだ學院かァ」
キョーガの呟きに、アルマが無言で頷く。
……しずつ、何があったかを思い出してきた。
確か俺は……『忌箱パンドラ』を殺したんだ。それで、あのガルドルとかふざけた男を摑み上げて……
「そうだァ……!リリアナはァ?!リリアナはどこだァ?!」
「お、落ち著いてくださいよぉ。ご主人様は無事ですぅ。今は別室でこの學院の先生に事を説明してますぅ」
摑み掛かるキョーガを宥なだめるように、アルマが説明しながら扉の方に目を向ける。
アルマの視線を追い、扉を見つけたキョーガが、ベッドから飛び降りて―――ガクンッと膝を落とした。
「あァクソッタレェ……!久しぶりすぎてきちィなチキショォ……!」
「キョーガ?どこか痛むんですぅ?」
「……何もねェ……行くぞォ」
強がり、痛むを無理にかして扉を目指す。
―――と、アルマがいきなりキョーガの左足を蹴った。躊躇ちゅうちょなく。
パァンッ!という爽快音が室に響き―――突然の蹴撃を食らったキョーガは、目を大きく見開いて床に崩れ落ちた。
「いぎっ―――?!」
「……強がりたいのはわかりますけどぉ……足、ガクガクですよぉ?」
座り込むキョーガの背中を優しくでながら、心配そうに聲を掛ける。
蹴りの痛みに絶を上げなかったのは、キョーガが聲を出さないように踏ん張った―――のではなく、単に痛すぎて聲が出なかっただけだ。
「て、めェアルマァ……!筋痛の場所を蹴るとかマジふざっけんなよオイ……!」
「……まったく……いい加減、他人を頼る事を覚えましょうよぉ。あなたの目の前には誰が立ってるんですぅ?あなたに惚れ込んだがいるんですよぉ?……しくらい、ボクを頼ってくださいよぉ」
どこか悲しそうに瞳を揺らすアルマ……そんなアルマを見て、キョーガは小さく舌打ちした。
「……はァ……アルマァ、肩を貸せェ……リリアナん所に行くぞォ」
「……はい!」
―――この後、2人の長が合わなくて、よくわからない勢のままリリアナたちの所に向かったのは……まあ、言うまでもない。
―――――――――――――――――――――――――
「……今回の件。君がいなかったら大変な事になっていた。本當にありがとう」
しいが、向かい側に座るに深々を頭を下げる。
「そ、そんな、頭を上げてください、學院長。私は大した事はしていません。むしろ、アバンさんやデントさん、ラッセルさんの方が頑張っていました」
「何を言っているんだリリアナ。今回の騒、お前がいなかったらどうなっていたか……」
「そうよリリアナ!『忌箱パンドラ』なんて、ラナじゃ絶対に勝てなかったわ!」
苦笑を浮かべるデントが、リリアナの手を取るラッセルが、今回の騒について思い返す。
キョーガたちが『忌箱パンドラ』と戦っている時、デントとラッセルは、生徒と保護者の安全を確保していたのだ。
出口がないように思えた『封じられし忌迷宮ナイトメア・パンドラ・ボックス』……しかし、デントの召喚獣である『金竜ファフニール』の『転移魔法』を以もってすれば、外に出る事など簡単。
『氷結銀狼フェンニル』で『人類族ウィズダム』を探し、『金竜ファフニール』で外に出す。
デントとラッセルは、見えない所で活躍していたのだ。実際、2人のおかげで死人はいない。
「……ふむ……リリアナ」
「は、はい?」
「君は、何匹の召喚獣と契約しているんだ?」
慣れない褒め言葉に、リリアナが顔を真っ赤に染め……學院長の言葉に、今度は表を引き締める。
「君の噂は、前々から聞いていたよ。どれもこれも、あまり良い噂ではなかったがね」
「それは、まあ……そうでしょうね」
「しかし、今日の君の働きは、職員たちから聞いていた無能とは程遠い……初級召喚獣すら召喚できなかったはずの君が、どうやって『忌箱パンドラ』を討ち取った?君は、何匹の召喚獣と契約している?」
現在、リリアナは1人だ。
キョーガとアルマは保健室。サリスは……何故か消えてしまった。マリーとシャルアーラは、消えたサリスを探している。
『今日の自分たち、何だか人探しをしてばかりではないでありますか?』と言っていたシャルアーラが、マリーに引きずられて外に連れ出されたのはついさっきの出來事だ。
「私が契約しているのは、4匹の召喚獣です」
「ほう……種族と、召喚獣名は?」
「……『死霊族アンデッド』の『反逆霊鬼リベリオン』、『吸鬼ヴァンパイア』、『地獄番犬ケルベロス』。そして、『霊族スピリット』の『地霊ドワーフ』です」
「……うん?先ほどの金髪のは?」
「『機巧族エクスマキナ』という種族です。人工的に造られた種族……と聞きました」
ちなみにアバンは、この場にいない。別室で拘束されているガルドルの見張りだ。
「……ふむ……最上級召喚獣4匹と契約か……」
「で、でも、自分で召喚できたのは『反逆霊鬼リベリオン』と『地霊ドワーフ』だけで……『吸鬼ヴァンパイア』と『地獄番犬ケルベロス』は、たまたま契約できただけなので……」
「それでも、2匹の最上級召喚獣を召喚するなど……それに、『魂の』はどうなっている?4匹もの最上級召喚獣を許容する『魂の』など、聞いた事もない―――」
そこまで話して、ガチャっと會議室の扉が開けられた。
マリーとシャルアーラが帰ってきたか?と室の全員が視線を向け―――現れた2人の男を見て、思わず固まった。
不愉快そうに顔を歪めている黒髪の男と、『頑張った!』とニコニコ笑っている青髪。
どちらも底知れぬ覇気をその眼に宿しており、尋常ならざる実力を持っているのは明あきらか……なのだが。
「……キョーガ、さん?えっと……その勢は……?」
「聞くんじゃねェリリアナァ……!俺だってェ、俺だってこんな無様ぶざまな姿ァ……!クソォ……!」
に両足を持たれ、を引きずられているその姿は、とても『忌箱パンドラ』を討ち取った―――史上4度目の『神殺し』をした人には見えない。
なんというか……まるでキョーガがのようだ。
「オイアルマァ、手ェ放せェ……」
「大丈夫ですよぉ!ボクまだピンピンしてますぅ!このまま椅子に座らせますよぉ!」
「だから放せってェ―――がっ?!」
1歩踏み出し、會議室に足を踏みれた。
その際、キョーガが段差に頭をぶつけていたのだが……気づいていないのか、ズルズルと引きずって笑みを浮かべている。
「はいっ!著きましたよぉ!」
「……てめェ後で覚えてろよォ」
「そんなぁお禮なんて良いですよぉ!」
ビキキッとキョーガの額ひたいに青筋が浮かび上がる。
キョーガの手伝いができた事が嬉しいのか、鬼気を放つキョーガをスルーして一層笑みを深めた。
「はァ……んでェ、今ァどういう狀況だァ?」
「あ、えっと―――」
「君が『反逆霊鬼リベリオン』か?」
リリアナの聲を遮さえぎり、キョーガに問い掛ける。學院長だ。
「あァ……?……いや誰だてめェ。まずは名乗れや話はそっからだろォがァ」
「ああすまない。私は『シエラ・マスカレード』。この學院の學院長を務めさせてもらっている」
「學院長ゥ……?……そうかァ。俺ァキョーガだァ」
立ち上がり、握手を求めて手を差し出すシエラ。
対するキョーガは……ペコリと頭を下げるだけで、握手をわさなかった。
ギョッとした表でキョーガを見るリリアナが、『何してるんですか!握手してください!』と視線で訴えてくるが……それでもキョーガはかない。
いや……正確に言うなら、『かない』ではなく『けない』の方が正しいのだが。
もちろん、リリアナがキョーガの筋痛を知るはずもなく、強制的に握手させようとキョーガの腕を持ち上げた。
「バカバカバカバカやめろォッ!」
「何してるんですか?!キョーガさんが他人嫌いなのはわかってますが、握手を求めている相手に會釈だけってあんまりですよ!ほら、早く學院長と握手してください!」
「待てわかったァ!わかったから落ち著けェ!自分のペースで握手させろォ!」
震える足で立ち上がり、力のらない手で握手をわす。
そのままドカッと暴に腰掛け、背もたれに重を預けるようにしてシエラと向かい合った。
……だらしなく椅子に座り、シエラを見下ろすように顔を上げているキョーガの姿は……誰がどう見ても、生意気な小僧だ。
わざとではない。そうわざとではないのだ。
力をれるとが痛むため、とりあえず力しているのだが……それがむしろ、生意気さを引き上げている。
「……キョーガさん。いい加減にしないと、『命令』で立たせたまま話し合いに參加してもらいますよ?」
「いや違ちげェんだよォ。筋痛が酷いんだってェ」
「キョーガさんが筋痛なんてなるわけないじゃないですか!冗談もほどほどにしてください!私も怒りますよ!」
「冗談じゃねェんだってェ!」
さすがにこのままではキョーガが立ったまま話し合いに參加すると思ったのか、アルマがリリアナに事を説明し……キョーガを疑ったリリアナが、首が取れるほどの勢いで何度も謝ったのだが……それはまた、別の話。
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