《不良の俺、異世界で召喚獣になる》4章15話
「それで?わざわざ痛むに鞭を打ってここまで來たんだ。何か言いたい事か、聞きたい事でもあったんじゃないのかな?」
機の上に置かれている紅茶を傾けながら、シエラの目がキョーガを見つめる。
『おォ、そォだったァ』とシエラに視線を向け―――先ほどまでのふざけたような雰囲気が一変。全から鬼気を放ち、その場にいる者を震え上がらせる。
デントとラッセルが、豹変するキョーガの姿に息を呑み……真正面から鬼気をけるシエラも、膨れ上がる『反逆霊鬼リベリオン』の覇気を前にして、思わず背筋をばした。
「『忌箱パンドラ』の迷宮にいる時によォ、この學院の生徒は何人か見かけたんァ……だがァ、先生っぽいやつは1人も見かけなかったァ」
「……何が言いたいんだい?」
「はっきり聞くけどよォ―――おめェらァ、迷宮にいる時ィ何してたァ?そこのおめェらもだァ……まさかァ、リリアナだけが頑張ってたってわけじゃァねェよなァ?」
どうやらキョーガは、デントとラッセルが頑張っていた事を知らないらしい。
だが……シエラ學院長や、他の先生が何をしていたのかは、リリアナたちも知らない。
室の全員からの視線をけ……シエラの口から、小さなため息がれた。
「……私たち學院の教師は、生徒の安全を確保していた。私の召喚獣なら、デントの『金竜ファフニール』と同じ『転移魔法』を使えるからね」
「えっと……え?學院長も、一般の方を迷宮の外に送っていたんですか?」
「そうだ。デントとラッセルも私と同じ事をしていたとは予想外だったのだが……しかし、おかげで死人が出なかったのも事実だ。2人とも、ありがとう」
デントの言葉を肯定し、そのまま流れるように謝を口にする。
と、そこまで話して、今まで黙っていた人が口を挾んだ。アルマだ。
「……ちょっと待ってくださいよぉ」
「む?君は……『吸鬼ヴァンパイア』だったかな?どうしたんだい?」
「さらっと『転移魔法』って言いましたけどぉ……それが事実なら、あなたの召喚獣はあ・の・3・匹・のの誰か、って事になりますよねぇ?」
「あの3匹ィ?……ってなんだァ」
「『転移魔法』が使える3匹の事ですぅ」
現在の『サモンワールド』で『転移魔法』が使えるのは、全部で4匹。
『金竜ファフニール』のファニアに『厄災竜ディザスター』のフィディオ、『森霊エルフ』のセレーネ、『有翼人ハーピー』のハルピュイア。この4匹だ。
だが『金竜ファフニール』はデントの召喚獣……となると、殘る3匹のどれかがシエラの召喚獣という事になる。
「……君は、召喚獣に詳しいんだね」
「まぁそうですねぇ……『不死士リッチー』に比べればまだまだですけど、それなりには勉強させてもらってましたからねぇ……それで、あなたは誰と契約してるんですぅ?」
「……『霊族スピリット』、『森霊エルフ』のセレーネだよ」
「……なるほど……セレーネですですぅ……」
1人納得したように頷き、アルマが―――否。アルマの顔の誰・か・が、何かを噛み締めるように瞳を閉じた。
―――ピリピリと、焼け付くような覇気。
キョーガの覇気が剣のような鋭さなら、アルマの覇気は、さながら靜かに燃える炎のよう。
閉じた目をゆっくりと開き―――ふと、キョーガたちの空気に気づいたのか、キョロキョロと辺りを見回した。
「え、え?ど、どうしたんですぅ?」
「そりゃこっちのセリフだってのォ……急に雰囲気変えやがってェ。そのセレーネってやつと何かあったんかァ?」
「……25年前に、ちょっとですねぇ……」
「……何やったんだよォ」
「何と言うか……セレーネという『森霊エルフ』が、ボクに喧嘩を売ってきたんですよぉ。まあ、バッチリ返り討ちにしたんですけどぉ……」
「……んでェ?」
「『森霊エルフ』っていうのは、どいつもこいつもしつこいんですぅ。けた屈辱は倍にして、負った傷は何十倍にもして返さないと気が済まない……そんなやつばっかりなんですぅ」
『森霊エルフ』の分を思い出したのか、アルマが大きくため息を吐いた。
そのため息は……怖がってるというより、めんどくさがっているという方が正しいだろう。
「ああそれと、あの褐ロリと『森霊エルフ』は絶対に會わせない方がいいですよぉ?」
「へェ……そりゃまた何でだァ?」
「『地霊ドワーフ』と『森霊エルフ』は仲が悪いんですよぉ……それはもう、びっくりするくらいに」
アルマの言葉を聞き、ふとキョーガは思い出したように室を見回した。
……シャルアーラやマリー、サリスはどこに行ったんだ?
「なァリリアナァ。サリスたちはどこ行ったんだァ?」
「サリスさんは……わかりません。どこかに消えてしまって……マリーちゃんとシャルさんが探しに行ってるんですけど……」
「―――【帰還】 帰ってきた」
「全然見つからなかったであります……あ、キョーガ殿!目が覚めたでありますか!」
會議室の扉が開かれ……そこから、マリーとシャルアーラが現れる。
しい蒼眼をキラキラ輝かせ、背もたれにを預けるキョーガに駆け寄る―――と、キョーガとシャルアーラの間にアルマがり込んだ。
「……………」
「え、えと……?あ、アルマ殿?どうしたであります……か?」
「……………」
「き、キョーガ殿?!自分、何かしたでありますか?!」
「いや俺に聞くなよォ……」
「で、でも!アルマ殿の目が―――む……?」
アルマの視線に怯えるシャルアーラが、素早くマリーの背後に隠れる。
そして―――何かに気づいたのか、怯えて背後に隠れていたはずシャルアーラが、目を細めてキョロキョロと辺りを見回し始めた。
室をグルリと見回し……シャルアーラの蒼眼が、シエラを捉えて止まった。
―――見た事がないほど、嫌悪をあらわにしている。
普段のシャルアーラからは想像もできない姿に、キョーガが驚いたように眉を上げ……直後の言葉に、思わず間の抜けた聲をらしてしまった。
「……雑草の匂い」
「はァ……?」
意味のわからない言葉を放つシャルアーラ……しかし、その顔は嫌悪に染まっている。
「……キョーガ。ボクがさっき言った事、覚えてますぅ?」
「あァ?……あァ、そういう事かァ」
『地霊ドワーフ』と『森霊エルフ』は、仲が悪いと言っていた。
だが……姿も見ていないのに、ここまで嫌悪を剝き出しにするなんて。というか、雑草の匂いとは何だろうか。
「ふ、む……?リリアナ、その子は『地霊ドワーフ』かな?」
「は、はい……そう、です……」
豹変したシャルアーラの姿に、リリアナも困しているようだ。
「……でェ?全然見つからなかったっつってたがァ、學院にいねェって事かァ?」
「いえ、學院にはいる……のでありますよね、マリー殿?」
「【肯定】 サリスの気配はじるのだが……何故か見つからない」
マリーとシャルアーラの言葉を聞きながら、キョーガはふと、迷宮での出來事を思い出していた。
―――『忌箱パンドラ』の所に行った時、サリスたちはリリアナと一緒にいた。
その時のサリスの表は……笑みを浮かべてはいたが、こめかみには青筋が浮かんでおり、怒っているのは一目瞭然だった。
にも関わらず、キョーガと『忌箱パンドラ』が戦っている時……一度も、攻撃をしなかった。
マリーとシャルアーラは、シャーロットの治療をしていたが……サリスは、ただ呆然とリリアナの隣に立っていただけ。
……何か、あったのだろうか?
「……マリー、サリスを探しに行くぞォ」
「【了解】」
「アルマとシャルはァ、リリアナと一緒にいろォ」
「えぇ?!い、イヤですよぉ!なんでボクがこの褐ロリと……!なら、ボクも一緒に行きますぅ!」
「今ァ太が出てんだろォがァ……いいから大人しく待ってろォ」
むくれるアルマを置き、マリーの肩を借りながらキョーガは外に向かった。
―――――――――――――――――――――――――
―――見つけた。
學院の屋上……そこに、座り込むの姿を確認。
「……なんだァ、簡単に見つかったじゃねェかァ」
「【疑問】 先ほどここを見た時は、サリスの姿は見えなかったが……」
「目ェ離した間に移したって事だろォ」
上空を飛ぶマリーとキョーガ……正確に言うならば、キョーガがマリーに抱き抱えられて、空を飛んでいる狀態だ。
「……【報告】 サリスの表が……」
「あァ……マリー、俺を降ろせェ。サリスと2人っきりで話がしてェ」
「【了解】 それでは、手を離す」
「……んァ?いやちっと待―――」
言い切る前に、マリーがパッと手を離した。
普段のキョーガなら、何の問題なく著地できる事だろう。マリーもキョーガの能力を知っているから、手を離したのだ。
だが……今のキョーガは、他人の手を借りなければ、まともに歩く事もできない狀態。
しずつ迫る地面に対し―――キョーガは、額ひたいから『紅角』を生やした。
無理な強化に、のあちこちが悲鳴を上げるが―――このままだと、満足に著地ができないのも事実。
「ぐっ―――ぬゥううゥうううううッ!」
ドズンッ!と重々しい音を響かせ、キョーガが屋上へと著地。
著地の際、全の筋痛が絶を上げ―――だが表には出さず、歯を食い縛りながらサリスに近づく。
と、キョーガの気配にようやく気づいたのか、サリスがゆっくりと振り向いた。
「……あは………………キョーちゃん、か……」
「……なんだおめェ……何っつー面つらァしてんだよォ」
そう―――振り向いたサリスの顔。
いつもは明るい笑顔を浮かべているしい顔は……今は、悲しみに染まっている。
「………………ね~……キョーちゃん……」
「んァ?なんだァ?」
目の端に涙を溜め、悲しみに震える聲で……は、キョーガに問い掛けた。
「……あたし、何のためにリリちゃんの召喚獣をやってるんだろ~ね……?」
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