《不良の俺、異世界で召喚獣になる》5章3話

「こんなじかァ……おめェらァ、朝飯できたぞォ。機の上片付けろォ」

「あは~♪マジメかよっ♪」

「うっせェぞボケェ。喧嘩売ってんなら買うぞォ?」

「……それじゃ、今日もやろっか♪」

キッチンに立つキョーガに向かって、茶髪のが飛び掛かった。

突然の攻撃に、キョーガは驚く―――事もなく、慣れた様子でに手を向ける。

キョーガとが取っ組み合いになり、手四つの狀態で力比べを始めた。

「うざってェなァ……!手ェ握り潰して二度と使えねェようにしてやろォかァ……?!」

「やれるっ、ならぁ……やってみなっ、よぉ……♪」

茶髪が獰猛に口元を歪せながら、さらに力をれる。

張り合うようにキョーガも力をれ―――家の床が、ミシミシと音を立てて軋み始める。どうやら、2人の力に耐えられていないようだ。

「オイてめェしつこいぞォ……!いい加減諦めろよォ……!」

「あっ、はぁ……♪そろそろっ、勝ちがしいからねぇぇぇ……♪それにっ、腕力も鍛えたいし~……♪ほら、もっと力れてよ~……♪」

「クソ犬がァ……!調子乗ってんじゃねェぞォ……!」

空間が軋み、2人のから覇気が溢れ出す。

いつも通りの景に、アルマが眠たそうな聲でキョーガを呼んだ。

「……キョーガぁ……そろそろ、ご主人様が起きてきますよぉ」

「チッ……おらサリスゥ、とっとと負けを認めろよォ……!」

キョーガが力をれ直し、前傾姿勢となって力を込める。

―――たったそれだけで、あっという間に形勢が逆転した。

キョーガのが鬼神のごとき覇気を放ち始め、サリスが表しずつ苦痛に歪ませ―――

「おはようございます!みなさん!」

「ご主人様……おはようございますぅ」

アルマが階段の方を向き、降りてきたに挨拶を返す。

と、いきなりサリスがキョーガの手を放し、降りてきたに飛び付いた。

「リリちゃん助けて~♪キョーちゃんにイジメられるよ~♪」

「もうキョーガさん。いい加減、力の加減を覚えてください」

「俺が悪わりィのかよォ……」

ため息を吐き、キッチンに置きっぱなしになっていた鍋を手に取った。

普通なら熱くて火傷してしまうであろう溫度だが……キョーガは顔1つ変える事なく、慣れた様子で鍋を機の上に置く。

「うっしィ……んァ、マリーはどうしたんだァ?」

「シャルアーラさんにの調整を頼んでいるそうです。もうそろそろ降りてくると思いますが……」

「―――【挨拶】 おはようマスター。アルマもサリスも、おはよう」

リリアナがそう言うのと同時、階段からしいが降りてきた。

長い金髪に緑の瞳、に合わせたような白いワンピースがらかく揺れている。

まさに造りのようなしさ……事実、このは造りなのだ。

「……う、むぅ……眠たいであります……」

金髪に続くように、白髪のが降りてきた。

ふわふわと雲のような白髪に、健康そうな褐。そして、青空を封じ込めたように澄んだ蒼眼。

眠たそうに目をこする褐を見て、キョーガが苦笑を浮かべ……そんなキョーガを橫目で見るアルマが、どこか不機嫌そうに頬を膨らませた。

「どうしたんだシャルゥ?眠そォだなァ?」

「早朝からいきなりマリー殿の調整でありますからね……まあでも、マリー殿の調整は楽しいから構わないでありますが」

腰のポーチに工れながら、シャルアーラが疲れた表ながらも楽しそうに笑う。

「全員揃った事だしィ、朝飯にすっぞォ。シャルの分はこっちだァ」

キッチンから別の皿を運び、シャルアーラの前に差し出した。

「……いつもいつも、申し訳ないであります」

「気にすんなァ、俺が勝手にやってるだけだからなァ」

そう言って、鍋にったスープのような料理をつぎ分ける。

リリアナとサリス、そして自分の分を用意し……アルマとマリーの分がない。

「キョーガっ」

「……はァ……後ろから吸えよォ?前だと飯が食えねェからなァ」

「わかってますよぉ」

「マリーもこっちに來いやァ」

「【了解】 失禮する」

キョーガの背中にアルマが飛びつき、首筋に鋭い牙を突き立てた。

ちゅーちゅーと吸するアルマ……と、キョーガの左手をマリーが遠慮がちに握った。

にぎにぎとを確かめるように何度も握って……目を閉じ、マリーがから力を抜いた。

力し、キョーガの手を握っているその姿は、さながら人形のようだ。

「あは〜♪いつもいつも思うけど、かなり異常な景だよね〜♪」

「はん。おめェがやってみるかァ?」

「う~ん遠慮しておくよ~♪アルちゃんにを吸われたりしたら、簡単に干からびちゃいそうだからね~♪」

へらへらと笑いながら、サリスが皿に顔を突っ込んだ。

手を使わず、まるで犬のように食事をするサリス。普通の人が見れば、思わず二度見してしまうような景だろう。

「相っ変わらず汚きたねェなァ……手ェ使って食えよォ」

「だって食べにくいんだもん♪あたしの手じゃ、爪がジャマして食が摑めないし♪」

皿に顔を突っ込んだままのサリスを見て、キョーガが深いため息を吐き……今度はシャルアーラに視線を向けた。

「おめェもなかなか変だよなァ」

「え?……変でありますか?」

スプーンをグーで握るシャルアーラが、不思議そうに首を傾げる。

サリスよりはマシだが……スプーンの握り方が小さな子どものようだ。

「……つーかよォ、『魔の波』がいつ來るかわかんねェとかァ、なかなかヤベェんじゃねェかァ?」

「仕方がありませんよ。4年に一度、冬から春に季節が移る間に起こる……という事しかわかってませんから」

「んでェ、『魔の波』が起こったらァ、俺が馬車で『ギアトニクス』に送らなきゃならねェんだろォ?クソめんどくせェじゃねェかァ」

「デントさんの『金竜ファフニール』に送ってもらえるよう、頼んでみますか?」

唯一まともな食事方法でスープを飲むリリアナの言葉に、キョーガは首を橫に振った。

「おめェデントがどこにいるのかわかんのかァ?」

「あ………………そ、それは……」

「はァ……まァ、俺が馬車ァ引っ張りゃァいいだろォ?こん前は角なしで走ったがァ、今回は角があるんだァ。もっと早く到著できんだろォ」

「えっ……あ、あれより早く……ですか……?」

二イッと兇悪に笑うキョーガを見て、リリアナが引きつったような笑みを見せる。

「安心しろォ、馬車を引っ張るんじゃなくて擔いで行きゃァ酔わねェだろォ?」

「そういう問題ですかね……?」

ヒョイッと擔ぎ上げるような仕草をして、キョーガの口元が獰猛に歪む。

これ以上言ってもどうにもならないと、リリアナの口から大きなため息が零れ落ちた。

「今から『ギアトニクス』に向かっちゃダメなんですぅ?」

「ダメっつーかなァ……『ギアトニクス』は今ァ、國の復興で手一杯なんだろォ?そこに俺らが行ったらァ……」

「迷……って事ですぅ?」

アルマの言葉に、キョーガが頷いた。

現在『ギアトニクス』は、『機巧族エクスマキナ』の事件があり、復興狀態だ。

そんな『ギアトニクス』に『プロキシニア』と『帝國 ノクシウス』の騎士や召喚士が向かえば……復興の妨げになるし、何より他國の人をもてなすほどの余裕があるとは思えない。

「だけど……うーん……」

「最善の手はァ、デントの『金竜ファフニール』に『転移魔法』で送ってもらう事だがァ……アイツの居場所がわかんねェ以上、自力でどうにか―――」

と、そこまで話して、玄関の扉がノックされた。

「……誰だァ……?」

「あ、私が出ますよ」

席を立ち、リリアナが玄関の扉を開けた。

朝の冷たい風が室に吹き―――扉の先に立っていた人を見て、リリアナが思わず聲を上げた。

「やあ、おはようリリアナ。早朝にすまないね」

「し、シエラ學院長?!」

そう、そこに立っていたのは、リリアナの通っていた學院の學院長、シエラ・マスカレードだ。

薄緑の髪を腰までばし、サリスと比べても引けを取らない貌は……キョーガをして、しいと思わせるほど。

「ど、どうぞ中へ!」

「ああ、ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうよ」

來客用の豪華な椅子に案し、リリアナがキョーガに目を向けた。

その目は……『學院長にも朝ごはんを出してください!』と、どこか焦ったような目だ。

「チッ……しゃァねェなァ……ほらよォ」

「おや……これは?」

「俺らの朝飯だァ。殘したら殺すゥ」

「キョーガさんっ!」

咎めるような視線をけ、キョーガがフイッと顔を背けた。

そんな2人の様子にシエラが苦笑し―――差し出されたスープを飲んで、固まった。

「……これは……リリアナが作ったのかな?」

「え?あ、違いますよ。キョーガさんが作ったんです。キョーガさんが作る料理は、とっても味しいんですよ!」

「スゴイね……とても味しいよ」

「はっ。てめェに褒められてもォ、これっぽっちも嬉しくねェなァ……それよりィ、こんな朝っぱらから何の用だァ?」

ドカッと椅子に腰掛け、目を細くして問い掛ける。

夢中でスープを飲んでいたシエラが、思い出したように姿勢を正した。

「そうだった。君たちに話があって來たんだ」

「話だとォ?」

「うん。『ギアトニクス』の警護に、私が參加する事になった。よろしくね」

「えっ……えぇ?!シエラ學院長もですか?!」

「そんなに驚く事かな?……それでね、『ギアトニクス』を守る部隊と顔を合わせなきゃならないんだよ」

「……それに俺らを連れて行くって事かァ?」

「正解。君たちも部隊の人たちに挨拶していないだろう?」

にこっと笑うシエラの言葉に、キョーガとリリアナは顔を見合わせた。

「……そうですね……それでは、私たちも部隊の方々に挨拶しに行きます」

「よし、それじゃあ行こうか」

    人が読んでいる<不良の俺、異世界で召喚獣になる>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください